魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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68情報収集

 相手が分かったのなら、次やるのは情報収集だ。

 こんな時に情報収集でも役に立ってくれるのは、冒険者ギルドだったりする。

 

 冒険者ギルドは多くの人が集まる。

 魔物や金の話だけでなく、噂話や人の話など情報交換の場にもなっているものだ。

 

 冒険者ギルドの酒場で飲んでいる奴らは大体暇を持て余している。

 だから普通の顔をして何か話を聞けば、よほどのことがない限り軽く教えてくるのだった。

 

「メルドランギルド? あんまり目立たないところだよな」

 

「でもあそこのギルドハウス、結構デカいよな。何してそんなに稼いでんだか謎だな」

 

「でもよ、割と魔獣が強くて腕が立つなんて話もあるよな」

 

 昼間から酒を片手に楽しそうに話しているおっさんたちは、クリアスが声をかけるとあっさりと応じてくれた。

 俺は酒臭さに顔をしかめているが、ヘルンは別に平気そうだ。

 

「なんだか怪しい噂もなかったか?」

 

「怪しい噂? そんなものあったか?」

 

「若い奴らを騙してる……そんな話なかったか?」

 

「メルドランギルド……だったか?」

 

「そんな感じの話があった、っていうぐらいもんだけどな」

 

 酒に酔ってる雰囲気もあって、話も本気かどうかは分からない。

 本気の情報というよりも話半分に聞いておくほうが身のためだ。

 

「‘なんというか……中身のないギルドだな’」

 

「‘中身がない?’」

 

 何人かに話を聞いてみた。

 メルドランギルドというギルドのことは聞いたとことがあるという人は意外と多かった。

 

 ただ実際にどんなギルドか、という話になるとあまり具体的なことが出てこない。

 ギルドとしての中身がないのではなく、誰も詳細に知らないという不思議な中身の分からなさがある。

 

「‘こんな時は二つに一つだ’」

 

「‘なにと、なにですかね?’」

 

「‘本当に中身のないギルドか……ヤバいギルドかだ’」

 

 時に道楽なことをしている人はいる。

 お金や名声なんかに必要とせず、気の赴くままに活動する。

 

 自分のしたいようにするから、活動としては目立たないような人もたまには存在するのだ。

 または危険なことをしているギルドである可能性も否定できない。

 

 目立たず情報を出さないように活動しているのは、裏で犯罪行為などのしているからとも考えられる。

 

「‘まあ、十中八九後者だな’」

 

 そのうちのどっちなのかは分かりきっている。

 

「‘なんでっすか?’」

 

「‘そりゃ、お前やお前の契約者がされたことを考えれば、な’」

 

 ヘルンの復讐相手がメルドランギルドの誰なのかもまだ分かっていない。

 だが、メルドランギルドの一員なことは分かっている。

 

 人を殺して魔獣に食わせ、ヘルンをどこかに売り飛ばそうとした。

 まともな人間のやることじゃない。

 

 仮に道楽でそんなことやってるならヤバすぎる。

 となると犯罪者組織の可能性の方が高い。

 

「‘だがそうなると結構面倒だな……’」

 

「‘なんでっすか?’」

 

「‘お前ちょっとは自分で考えろよ……’」

 

「‘アニキが分かってんすから聞いた方が早いでしょ!’」

 

 ヘルンはドヤ顔で胸を張る。

 わかったようなツラされて、分かってないままに話が進んでいくよりはいいのかもしれない。

 

 聞けないよりは聞いた方もいい。

 なんとなく納得いかないところはあるものの、所詮はゴブリン。

 

 期待しすぎるのは御法度だ。

 

「‘お前の復讐は個人相手じゃなく、組織相手になるってことだよ’」

 

 復讐相手が個人で活動しているなら、そいつだけ殺せばいい。

 それで復讐はおしまいだ。

 

 だが復讐相手が組織として行動していた結果にヘルンの契約者を殺していたのだとしたら、復讐の対象は相手組織全体になるだろう。

 ただ復讐相手だけを狙ってもいいが、組織としてさらに復讐してくる可能性も否めない。

 

「‘要するに復讐が大変になった……てことだ’」

 

「‘なんと……’」

 

 大変ならまだいいが、組織を相手にするのは俺たちには厳しすぎる。

 少し言葉を濁して言ったものの、実際は無理な感じだろうな。

 

「おばさんへの手紙、届いたでしょうか?」

 

 あまり聞いて回りすぎても相手にバレて怪しまれる可能性も出てくる。

 ほどほどのところで切り上げて、冒険者ギルドを出てきた。

 

 だが何も情報収集して打ちひしがれるだけが俺たちにできることではなかった。

 俺とクリアスの狙いはクソ研究者のキツソウだ。

 

 メルドランギルドは怪しい噂こそあるものの、それだけで動いてくれるところなどありはしない。

 

「‘ジェレインの力借りられたらな’」

 

 だがキツソウは違う。

 指名手配されているようなヤバいやつで、わざわざ俺たちの家までワラワラと確かめにきたほどだ。

 

 つまりキツソウのことを通報すれば、冒険者ギルドの力を借りられるかもしれない。

 そこでクリアスはジェレインにキツソウがいることを知らせる手紙を、冒険者ギルド経由で送っていた。

 

 思わぬ知恵の働かせ方に俺も驚いた。

 

「‘上手くいけば……キツソウと一緒にいるメルドランギルドも一網打尽にできるはずだ’」

 

「‘そのジェレインって人が誰なのかは分からないっすけど、期待できそうなんすね?’」

 

「‘まあ、それなりには期待できると思うぞ’」

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