魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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70木の中の森のダンジョン1

「‘ほーう、なかなか面白いな’」

 

 俺たちは町の近くにあるというダンジョンに向かった。

 この世界の雰囲気としてダンジョンは切っても切れない関係にあり、ダンジョンの近くにある町は規模が大きくなる傾向がありそうだ。

 

「‘なんか飲み込まれるみたいで嫌っすね’」

 

「‘まあ、そう言われるとそんな感じもあるな’」

 

 ダンジョンの入り口にも様々な種類がある。

 普通に何かの入り口っぽいこともあれば、一見して入り口に見えないようなものもある。

 

 今回のダンジョンの入り口は見て入り口だなと分かる感じはある。

 ただ形状はかなり特殊であった。

 

 森の中にある巨木がダンジョンの入り口だ。

 巨木の幹に大きな穴が空いていて、そこに入っていくと中にダンジョンがあるのだ。

 

 それだけでも不思議な入り口だなと思うのだけど、見た目も不思議なのだ。

 

「‘おじいさんの顔みたいっすね’」

 

「‘口開けたジジイか’」

 

 巨木の幹のデコボコがまるで人の顔のようになっているのだ。

 もさっとした眉や髭が生えた年配の男性のようにも見える。

 

 そして幹に空いたダンジョンの入り口は、ちょうど顔のように見えるところの口部分となっている。

 

「‘人間が木の化け物に喰われていくみたいっす’」

 

 そんな見た目だから、ダンジョンを離れて見ていると巨大な木の魔物の口に人が吸い込まれていくような感じすらあった。

 

「私たちも行きましょうか」

 

 顔のある巨木を、思わず少し眺めてしまった。

 ただ巨木を眺めていても時間が過ぎるだけ。

 

 俺たちは他の人と同じように巨木に飲み込まれていくことにした。

 

「‘中も森っすか’」

 

「‘木の中に森があるってなんだか不思議なもんだな’」

 

 巨木の中のダンジョンは森だった。

 見渡す限りの森が広がっている。

 

 外よりも少しだけ木が多くて大きいかなと思うぐらいで、大きな違いもない。

 

「見ての通りの森がダンジョンですね。実際端っこまでかなり広いらしいです」

 

 いつものようにクリアスが調べた知識を披露してくれる。

 別に色々聞いてた横に俺もいたりするのだけど、状況の再確認、共有は大事なものだ。

 

 俺はともかくヘルンは何も聞いていない可能性も否定できないので、念のためにクリアスの邪魔はしない。

 

「二回層にダンジョンですが、一回層だけでも前に入ったダンジョンより広いかもしれません」

 

 ダンジョンも色々と種類がある。

 前に入ったダンジョンは人工の迷路のようになっていた。

 

 壁が植物だったりと洞窟とも違うが、大まかな分類では洞窟型とよばれるようだ。

 対して今いるダンジョンはフィールドタイプと呼ばれる、外の環境にも近い構造のダンジョンとなっている。

 

「‘空……空なのか?’」

 

 俺は空を見上げる。

 そこには天井ではなくて、空が見える。

 

 日こそないが、雲もない青空が広がっていた。

 

「‘なんか変だな’」

 

 日がないのに明るいせいか、よく観察してみると奇妙な感じがある。

 なんというか、イメージだけで作られた人工的な空って印象。

 

 あんまり見ていると不安で胸がざわつく。

 やはりここは外のように見えてもダンジョンの中なのだろう。

 

「二回層ではありますが、魔物が現れる頻度は高くて意外と稼ぎ悪くないらしいですね」

 

 階層が二つしかないと聞くと、魔物も取り合いになるのではと思うのだけど、それぞれの階層が広くて魔物も多いのでそんなに取り合いにもならないらしい。

 ここで大金持ちになることは難しいが、生きていけるだけ稼ぐことはできるダンジョンのようであった。

 

「出てくる魔物は獣タイプが数種類。下の階層に行くと敵がちょっと強くなったりボスがいるようです」

 

 ダンジョンの類型や魔物のタイプとしては割とありふれた感じ。

 

「‘今の所難しい感じはないな’」

 

 俺も腕が鳴ると内心やる気だ。

 

「‘むっふっふぅ〜任せてくださいよぅ!’」

 

 ヘルンもやる気を燃やしている。

 ゴブリンに歯はあるがあまり鋭いとも言えない。

 

 爪もあるけれど同じようにあまり鋭くない。

 人間相手なら傷をつけられるだろうが、少しでも丈夫な相手となると途端に使い物にならなくなる。

 

 その点でいえばコボルトよりも貧弱と言っていい。

 だから普通のゴブリンの多くは武器を持っている。

 

 死んだ人の放置された武器や落ちていた太い枝を使った棍棒なんかが有名だ。

 ヘルンにも装備が必要だろうと優しいクリアスは考えた。

 

 俺としては何も持たせず囮にしてもいいと思っていたが、さすがはクリアスだ。

 ということで、俺のお下がりのナイフと小さめの盾をヘルンは持っている。

 

「‘んふふ〜やってやりますよー!’」

 

 武器をもらえてヘルンは嬉しそう。

 少なくとも盾があればすぐに死ぬこともないだろうと思う。

 

「今日はお試しでヘルンさんの試しながら行きましょうか」

 

 お金を稼ぎにきたが、切羽詰まっているわけじゃない。

 様子を見つつ、どんな感じがいいのか確かめていくぐらいの余裕はある。

 

「ラクさん頼みますよ!」

 

「‘おう、任せとけ’」

 

 こうして俺たちはダンジョンの中を進み始めた。

 森という環境はなかなか難しい。

 

 木が多くて視界が制限される。

 こうした時に役立つのは俺のミミや鼻だ。

 

 俺は五感を研ぎ澄ませて周りに魔物がいないかを探る。

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