魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜   作:犬型大

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75協力者

「‘自分のことはこう呼んでください……ゴブリンナイツと……’」

 

「‘へっぽこ騎士だけどな’」

 

 何回かダンジョンに挑んだヘルンはすっかり調子に乗っていた。

 学習能力が高いことは認めてやる。

 

 ただすぐ調子に乗る。

 モコモコしてやや鈍めの突進しかしてこないイノシシ相手に、回避が完璧になったからとナイトを名乗るのは早すぎだ。

 

 俺から言わせてもらえばまだまだ。

 せいぜいへっぽこは外せないぐらいだった。

 

「まだ来ていないんですかね?」

 

 俺たちは今冒険者ギルドに来ている。

 酒場が併設された冒険者ギルドはいつ来てもザワザワとして騒がしく、ほんのりと酒臭い。

 

 そういえばこの体になってからお酒なんて飲んでいないな。

 別に飲みたいとは思わないが、飲んだらどうなるのか興味はある。

 

 クリアスもお酒が飲めるはずだけど、飲んでいるところは見たことない。

 そんなことに金使うなら、倹約して貯めておいた方がいいと考えているのかもしれない。

 

「失礼します、クリアスさんですね?」

 

 酒場の方でおつまみだけ頼んで暇そうにしているのは、人を待っているからだった。

 そんなクリアスに声をかけてきた一組の男女がいた。

 

「あっ、はい」

 

「どうも、冒険者ギルドのケットと申します」

 

「私はエルパーです」

 

 小柄ながらがっしりとした体つきの男性がケット、すらっとして背の高いショートカットの女性がエルパーと名乗った。

 ケットが連れているのは岩の塊のような魔物で、エルパーが連れているのはカメレオンのような魔物だった。

 

「どうもよろしくお願いします」

 

 クリアスが二人と握手する。

 こういう時、対応に当たらなくていいのは魔獣の楽なとこだ。

 

「キツソウがいるとジェレインさんから聞いています」

 

 ケットとエルパーが席につく。

 

「はい。何をしてるのかは知りませんが、この町にいます」

 

 緩やかな酒場の雰囲気に似合わないピリッとした緊張感のある空気が俺たちのテーブルに流れている。

 ケットとエルパーは協力者である。

 

 クリアスはキツソウがいるという内容の手紙をジェレインに送っていた。

 キツソウは冒険者ギルドによって指名手配されている犯罪者であり、ジェレインに伝えれば冒険者ギルドの協力を得られるのではないかと期待していた。

 

 上手く考えたもので、数日前にジェレインから返事が来た。

 

「ジェレインさんは今動けないので、私たちが代わりにキツソウの追跡を行います」

 

 指名手配犯がいると聞いては、冒険者ギルドも動かざるを得ない。

 ジェレイン本人はカリンのこともあって動けないらしかったが、代わりに冒険者ギルドの精鋭を派遣してくれた。

 

 それがケットとエルパーなのだ。

 硬く見られないように普通の冒険者風の格好をして、今もお酒とつまみを頼んで周りに馴染んでいる。

 

「キツソウが現れた……ということまで聞いていますが、細かな話を聞かせてもらえますか?」

 

「はい、偶然なんですけど……」

 

 クリアスはキツソウを見つけた状況を二人に話す。

 追いかけた結果、メルドランギルドと関わりがありそうだということもしっかりと伝える。

 

「てっきり国外へ出て、姿をくらましたと思っていました。しかしあまり遠くに逃げずに姿を隠していたのですね」

 

 ケットは眉間に深いシワを寄せて難しい顔をする。

 

「奴が何をしたいのか……その目的はいまだに分かっていません。ただ危険な思想を持った人物で、人を人とも思わぬイかれた奴だと聞いています」

 

「メルドランギルドというのもなんだか臭いますね。キツソウに協力しているのだとしたら危険なギルドがもしれません」

 

「逃げられると面倒だ。調査をしつつ、さらなる協力要請をかけておこう」

 

 話を聞いた二人は素早くどうするのか判断する。

 流石ジェレインはただの素人を送り込んだわけじゃなさそうで安心する。

 

 というか、ケットの魔獣である岩にずっと見られているのだけど、なんか文句でもあるのか?

 

「私たちはどうしたら?」

 

「関係者であることはうかがってます。ただ危険なことには巻き込めませんので、特別に何かをしてもらうつもりはありません」

 

 ケットは少し困ったように答える。

 情報提供者でありジェレインの身内ということで邪険にもできない。

 

 だからといって何かをさせるにはクリアスも素人だ。

 

「少し他のゴタゴタがあるせいで人手が足りていないので……手伝いを要請することはあるかもしれません。それまではいつも通り過ごしていただけると」

 

 大人しくしておけ。

 そんなことも言えずにケットは言葉を濁す。

 

 まあ、しょうがない判断だろう。

 クリアスは少し不満そうだが、ちょっとは感情を隠す練習もした方が良さそうだ。

 

「‘あいつらに任せるんすか?’」

 

「‘任せるしかないだろ。ナイト様ももうちょい強くなってもらわにゃならないしな’」

 

「‘ぬぐぐ……アニキより強くなってみせますよ!’」

 

「‘ああ、期待してるよ’」

 

「‘うーわー、余裕っすね!’」

 

 クリアスとしてはケットたちを手伝いながらキツソウに迫れると思っていたのかもしれない。

 しかしそれは難しそうだ。

 

 今のところはケットとエルパーに任せるしかない。

 

「早速動きます。情報提供ありがとうございました」

 

 ケットは運ばれてきたお酒を一気に飲み干すと立ち上がった。

 

「うー……せめてどこまで進んだのか教えてもらえるんでしょうか?」

 

 二人はそのまま冒険者ギルドを出ていき、クリアスは不満そうにため息を漏らす。

 さてはて、どうなるものやら。

 

 期待するしかないというのはもどかしいものである。

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