幻真赫月天 〜Phantom or Truth〜   作:咲野 皐月

1 / 3
 皆様、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。

 この度新しく新規小説を執筆するに至りました。


 今回から始まるお話は、モチーフ先を先に履修しておくと話の流れがスムーズになると思いますので、お時間のある時に見て頂ければ幸いです。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりお楽しみくださいませ。


#1 幻真星戦

 夢か(うつつ)か、そこに違いはあるのだろうか。

 

 人は夢を見る。夢の中に幸せを見出(みい)だしたならば、目を覚ます必要などあるのだろうか。

 

 その幸せは幻だと、切り捨てられるべきなのだろうか。

 

 (まぼろし)(まこと)か、その答えは霧の中。運命を変えし、そのカードの元に───。

 

 

 

──#1 幻真星戦──

 

 

 

「ただいま」

「お帰りなさいませ、キョウ兄様♪」

「ああ、桜雪もお疲れ様。晩飯の材料の買い出し、任せて済まなかった。支払いは後で構わないか?」

「構いませんわ。私はお夕飯の用意をしておりますので」

 

 

 過去最高気温を連日の様に更新し続ける日も、ようやく終わりを告げ……世間は秋を迎える準備に入りだしたこの頃。自宅に帰った俺──流川(るかわ) 京介(きょうすけ)は先に帰っていた妹──流川(るかわ) 桜雪(さき)に挨拶を返した。

 

 

 今日の晩飯を作る当番は本来なら俺だったのだが、帰宅前に行われたMorfonica(モルフォニカ)の練習が長引いた事を受けて、桜雪に代わりをお願いしたのだ。本人は嫌な顔ひとつせずに引き受けてくれるが、それでは俺自身の気が済まなかった為、こうして材料費等を負担する事にしている。

 

 そうして部屋に行こうとした時、俺は桜雪に伝言があった事を直前で思い出した。

 

 

「すまないが、明日は出かけてくる」

「お友達とですか?」

「いや、ましろとだ」

 

 

 俺がそう言うと、キッチンから大きな音が聞こえた。その音が聞こえた方を見ると……まな板を真っ二つに割っていて、包丁を握る手が強くなっている桜雪の姿があった。

 

 

「……キョウ兄様。聞き間違いで無ければ、先程『ましろと出掛ける』……とおっしゃいましたか?」

「あ、嗚呼そうだが……」

 

 

 俺が最後まで言いかけた時、何かが俺の頬を横切った。嫌な予感がした俺が恐る恐る通り過ぎた方を向くと、そこには壁に刺さっている包丁があった。

 

 そしてキッチンに再び目を向けると……片手に何処ぞの六爪流を思わせる様に包丁を指の間に挟んで、もう片方の手をナイフ投げのように包丁を構えている桜雪の姿があった。

 

 

「……キョウ兄様。貴方という人は。あの白いのとデートをするとは……これは一つ、調教する必要がありますわね」

「待て桜雪!」

「ただでさえ、いけ好かない後輩と、自称普通の生徒もいるというのに……! 私のキョウ兄様を誑かすとは……!」

 

 

 ……マズイ。

 

 そう感じた俺は即座に部屋の中に逃げ込み、桜雪からの追跡を何とか振り切る事にした。当然飯の時間になれば顔を合わせるので、どう言い訳を考えた物かと焦る事になった。

 

 

「……全く、勘弁してくれよ……。本当にこんなんだと行き遅れるぞ。あの人も俺と同じ様に引く手数多ではあるが、幾分かマシだぞ」

『ほう、困っている様だな。我が先導者』

「頼むからこんな事は金輪際無しにして欲しいもんだよ、いつまでも続く様ならシャレにならん……ん?」

 

 

 俺がそこまで言いかけた時、おかしな点に気づいた。

 

 その出処を確かめる為にデッキケースを開くと、その中の1枚が独りでに浮いて俺の前に現れた。どうやら先程の声の主はこのカードみたいだ。

 

 

『人間の考える事はわからん。だが、緊急事態である事は我でもわかる。それがキミに与えられた試練であれば、その手で乗り越えてみせるのだ』

「ち、ちょっと待て。何故カードが浮いている」

『ふむ、成程。惑星クレイから直接コンタクトを取る為、わかりやすい形で接触するべきと思っていたが……少し方法を変えようか』

 

 

 そう言うなりカードから発せられていた光は治まって、それと入れ替わりでポケットに入っていたスマホからバイブレーションが聞こえて来た。

 

 

「……何だこんな時に」

 

 

 そう思った俺がカードをケースに締まった後、スマホを取り出すと、直ぐ様。

 

 

『これがスマホか。地球の文明も良い時代になった物だ』

 

 

 ……色々聞きたい事は山程あるが、一先ずこれを聞く事にしよう。

 

 

「お前は誰だ」

『そうだな、挨拶が遅れた。我が名はヴェイズルーグ、赫き月の災いを打倒せし者』

「ヴェイズルーグ……お前はもしかして《月の門番 ヴェイズルーグ》なのか?」

『如何にも。今は惑星クレイに浮かぶ月より、因果で繋がったこの地球とコンタクトを取っている。我が先導者として、キミが選ばれたのだ』

 

 

 そう言ってヴェイズルーグは、自分の身の内を俺に明かして来た。赫き月の災いを打倒せし者……と言う言葉が妙に引っかかるものの、今起こっている状況は全て夢だと言うには苦しいのが現状か。

 

 

「俺は流川 京介だ。それでヴェイズルーグ、お前はここに何をしに来た。当然目的も無く俺に接触して来た訳では無いだろうが、念の為に聞いておこう」

『心して聞くのだ、キョウスケ。キミたちの……いいや、この世界に赫月の脅威が迫りつつある』

 

 

 ……ほう、赫月か。

 

 

「随分と非現実的な事を言うんだな。だが生憎此方は平穏無事そのものだ。その赫月、と言ったか? そんな脅威が間近に迫っていると言われても、何も実感が湧かん」

『事態はそんな単純では無いのだ。我は数ヶ月前に一度、この世界に浮かぶ月が赫く染まる所を目撃している。その時は一瞬にして元に戻ったからまだ良かったが、此度の災いは我の知りうる厄災のどれとも異なるのだ』

 

 

 ……何だと?

 

 

『此度の災いは、我の想定しているより規模が大きくなるやもしれない。そこでキミには、我と共に戦って欲しいのだ。後に目覚めるであろう幻真獣ファイターたち……それを束ねる者として、幻に立ち向かってくれないか』

「幻真獣ファイター、ね。ソイツらの選定だったりはもう決まってるのか?」

『既に終わっている。知らぬままに手に取った者も居る様だが、程無くして全ての幻真獣は目醒め、迎え撃つ準備が整うだろう』

 

 

 そうか、それならば安心か。

 

 ……と聞いたは良いが、俺はどうなるんだ? ヴェイズルーグの話だと自分は含まれてない様な言い方だが。

 

 

『安心すると良い。我の遣いたちは皆、幻真獣……故にキミは幻に呑まれる事は無い』

「そうか、それを聞いて安心した。しかし、赫月の呪いなんて空想での出来事かと錯覚しかねないが……実際に起こり得る物なんだな」

『もちろん。そして其れを打倒すべく、この我が出向く事になった。月の門に満ちた魔力を秘めた、月より出でし真なる獣……幻真獣。その者たちには自ずと己が成すべき道が開けるだろう』

 

 

 ……そうと決まれば、話が早い。

 

 

「先ずは夕飯を食べてくる。あ、わかってると思うが」

『心得ている。先程の会話を聞いている限り、あの者はキミの説得でも理解してくれる保証は無い……その間は也を潜め、様子を見守るとしよう』

「わかった」

 

 

 そう話した後に俺は桜雪の待つリビングへ戻り、待ちかねていたであろう彼女の用意してくれた晩飯を食べる事になった。赫月の呪いが襲い来る前のほんの一瞬の安らぎなんだ……存分に噛み締めなければな。

 

 そして夕飯も済んで風呂も済ませた後、俺は自室にあるハンモックに寝転がって、スマホに憑依したヴェイズルーグと話をする事にした。

 

 

「それでだ、ヴェイズルーグ。俺の知っている範囲だと、幻真獣に選ばれているのは二人……この時点で俺も含めて三人が判明しているとしたら、残る三人は誰なんだ?」

『何れ分かる。ただ一つだけ言える事があるとすれば、程無くして目醒めるだろう。そう遠くないうちにな』

 

 

 そう遠くないうちに、か。

 

 

 ヴェイズルーグの話をそのまま汲み取るなら、もうその赫月の呪いとやらは、既に此方へ牙を剥こうとしてる所なのだろうな。敵の方から姿を見せてくれるのなら、問答無用で落とし前をつけさせる所だが……相手もそこまで迂闊じゃないはずだ。

 

 俺たちの消耗しきった頃合……或いは、仲間が集まりきっていないタイミングを狙って襲撃して来る可能性がある。

 

 

「どうなっても良い様に、備えておかないとな」

 

 

 俺がそう言って、さっきから襲い来る睡魔に大人しく身を委ねようとした……その時だった。

 

 

『……っ、キョウスケ!』

「どうした、ヴェイズルーグ」

『外に出ろ。念の為、必要な物は持っておけ』

「はいはい」

 

 

 ヴェイズルーグから声をかけられた俺は、財布等の貴重品とデッキケースをショルダーバッグに入れ込んで、未だにフヨフヨと浮いているスマホは俺の手元に来る様に誘導し、部屋の電気を消して家の外に出た。

 

 その道中で桜雪とすれ違わなかったのは幸運だったが、その後にもっと驚くべき事が起こっていた。

 

 

「……な、なんだよ……あれは……!」

 

 

 俺とヴェイズルーグの眼前に現れたのは、明らかにそこには無かった巨大な塔だった。螺旋階段を描く様に天に向かっているその塔は、底知れない威圧感をこれでもかと放っていた。そしてその後ろに浮かぶ月は……全て満ちたうえで、赫く染まっていた。

 

 

「な、なんだよ……これは……」

『キョウスケ!』

「今度はなんだ、うわっ!」

 

 

 その塔と赫き月の存在に驚いている俺を他所に、周囲から霧が立ち込めて来ていた。俺はヴェイズルーグからの呼び掛けに一瞬だけ返答が遅れてしまい、突然意識を失う事になったのだった。

 

 

『キョウスケ、キョウスケ……キョウスケ!』

「ん、んん……なんだよ、これは……。って、ヴェイズルーグ。今はどうなっている」

『キミはあの塔を見た後、我の呼び掛けに一瞬だが返答が遅れていた。そして突如として意識を失っていたのだ』

 

 

 ……なるほど、それは申し訳ない事をしたな。

 

 

『立てるか』

「嗚呼、問題無い。これがお前の言っていた災いか」

『そうだ』

 

 

 ヴェイズルーグからの返答を聞いた俺は、辺りを軽く見回して状況確認をした。通行には支障は無いものの、至る所に霧が出ていて、そしてそれが異質だと示す様な塔に赫き月。架空世界での話かと思われていた出来事が、今こうして現実に起こっていると実感させられた。

 

 

「……んで? これから俺たちはどうしたらいい。一応お前の指示通りに貴重品やら持って来たが、出掛けるのか。こんな夜遅くに」

『一先ずは情報収集だな。赫月は生物に影響を及ぼす……キミに分かりやすく説明するのなら、正しく月の呪いだ』

「月の呪い……か。いよいよ現実味が湧かなくなるな」

『そう言ってもいられん。明日からは情報収集だ、人々の生活に異変が無いか調査をする事にしよう』

 

 

 ……まあ、それが無難か。

 

 そう思った俺は今来た方向に踵を返して、自宅に戻ろうとしたのだった。……しかし、この後に見た光景は……俺の想像を絶する物だったと言っておこう。

 

 


 

 

「……しかし、まだ信じられん。ここは、本当に俺たちの知っている世界じゃないのか」

『ああ、残念ながらな。キョウスケ、キミには我が使命に巻き込んでしまった責任がある……どんな謂れも甘んじて受けよう』

「……いや、良い。今はとりあえず、この世界を何とかするのが先決だ」

 

 

 ミラージュタワーが突如として出現し、人々の生活も何もかもが一変して一週間後の夜更け……俺は東京の街並みが一望出来る高台に登って、展望台から街中を見下ろしていた。

 

 こんな風に夜風を外で楽しむのは、気分が良い時にするのが鉄板なのだが、今の俺はどうしてもそんな気分になれなかった。

 

 

『辛いのか?』

「わかっているなら聞くな。まだアイツに……妹に、赤の他人呼ばわりされた事が今でも堪えてるんだ」

『……そうだな。キョウスケ、今日の散策でわかった事を纏めよう。我々には時間が無いのだ』

「嗚呼。To-Doリストを出してくれ、ヴェイズルーグ」

『承知した』

 

 

 俺の指示を受けたヴェイズルーグは、自らが憑依した俺のスマホを少し操作して、散策時に記したメモを纏めたリストを開いて見せた。そこには……。

 

 

「……こうして見ると、残酷だな」

『そうだな。キミの友人知人、そして血縁関係に恋人……全てに聞き込みを行なったが、(ことごと)く空振りと来たものだ』

「確か俺の存在は不都合を修正する力とやらの所為で、街の人々の記憶から消えてるんだろ」

『その通りだ。いずれ目覚めるであろう……幻真獣カードの所有者たちも皆、キミと同じ様に世界から異分子として弾かれる。元の記憶を保持した状態でな』

 

 

 元の記憶ね……。

 

 今のこの始末だと、そもそも俺が誰なのかと言う事も忘れている可能性が高い。こんな時にあの人が居てくれたのなら、と思う事はあるけれどな……。

 

 

「……なあ、ヴェイズルーグ」

『言わずともわかっている。ミラージュタワーが出来て既に七日が経過しているのだ……この地を発生源として、霧は徐々に覆い尽くす範囲を広げている。ぼんやりしている暇は無いぞ、キョウスケ』

「……わかっている。明日、もう一度」

 

 

 そう言って俺がその場を立ち去ろうとした……その時。

 

 

『キョウスケ、あれを見ろ』

「……なんだ、ヴェイズルーグ……」

 

 

 そこには黒い霧が徐々に集約していて、その後に一人の人物がその場に立っていた。……即席の子供騙しの悪戯にしては、相当タチが悪いな。

 

 

『夜分遅くに失礼する、幻真獣カードの所有者よ』

「……随分と礼儀正しいんだな。じゃあ、俺の今の気持ちもわかってくれるのか? この世界で一人だけ疎外された、はぐれ者になった俺の気持ちが!」

『私はその事を伝えに来たのでは無い。お前とゲームをする為にこの場に姿を見せた』

 

 

 ……チッ、ゲームか。

 

 

『先ずは名乗っておこうか。我が名はガブエリウス。この幻世界(まぼろしせかい)の支配者となりし者』

「……俺は流川 京介だ。そんで、ガブエリウスとやら。この幻世界でお前は俺と何をする気だ」

『知れた事。お前たち幻真獣カード所有者と、我ら幻影(ファントム)ファイターの間で行なう、双方の世界を賭けたゲーム……その名を』

 

 

幻真星戦(げんませいせん)

 

 

「幻真星戦……その戦いとは何だ」

『我が手にあるのは幻創カード。幻世界を支える、赫月の魔力を集積したカードだ。お前の望む(まこと)の世界を取り戻すには、このカードが必要となる』

 

 

 幻創カードか。大方、幻を創るカードって事だろうな。

 

 ……随分と、手の込んだ事をしてくれるじゃあないか。ただあの言い方をするのなら、他にもなにかありそうだな。

 

 

「ガブエリウスとやら」

『ん?』

「もし仮に俺が今ここで幻創カードを寄越せ、と言ったら、お前は素直に渡してくれるのか?」

『その様な儚き希望が叶わぬ事、最早お前たちに語るまでも無いだろう。……ルールは至ってシンプル。お前たちの勝利条件は、ヴァンガードで幻影ファイターを全て倒し、ミラージュタワー最上階の我が元まで辿り着き、この幻創カードを手にする事だ』

 

 

 そう言えば、さっきからそのワードが出て来るな。

 

 

『幻影ファイターとは、この世界を護る戦士の事だ。お前と同じ様に元の世界の記憶を保持してはいるが、抱く志は全くの別と言って良いだろう。この幻の世界を守護する為に、お前たちに牙を剥く。それと』

「……今度は何だ」

『ミラージュタワーには特殊な結界が張られている。その結界は幻影ファイターを倒す事でしか解ける事は無い』

 

 

 元の世界を取り戻したければ、幻影ファイターをヴァンガードで倒し、このガブエリウスとか言うヤツを倒した後に幻創カードを手に入れろ、と言う事か。

 

 

「へぇ、戻し方を教えてくれるなんて律儀だな」

『当然だ。お前たちにもメリットが無ければ、幻真星戦を受ける理由にならないだろう。……だが、そうするのであれば、其方にもそれ相応のデメリットがある』

「……なに?」

『今はそれを伝える時では無い。だが、今この場に居る幻真獣ファイターはお前一人……そんな状態でどう戦うつもりだ。そんな事では、簡単に幻が真に取って代わる』

「おい」

 

 

思い上がるのもそこまでだ

 

 

『なに?』

「お前は何か思い違いをしている。確かに今は俺一人かもしれないが、いずれ全ての幻真獣が覚醒(おき)る。その時こそ、お前たちの最期だ」

『ふん、良い啖呵だ。では、運が良ければまた会おう』

 

 

 そう言ってガブエリウスは、その場から忽然と姿を消して行った。そして周囲は再び闇に包まれ、この周辺一帯を静寂が包み込んで行った。

 

 

『キョウスケ、わかっていると思うが……ここから先は負ける事が一切許されない戦いだ。勝って真を掴むか、負けて幻に呑まれるか。我々が生き残る為には、勝ち続ける以外に道は無い』

「元よりそのつもりだ。……あのガブエリウスとか言う野郎は、俺が直々に手を下す。勝手に世界を幻で包んで、あろう事か宣戦布告までして来たんだ……それ相応の報いは受けさせる」

 

 

 そうヴェイズルーグに語って、俺はその場を後にした。

 

 今は夜で桜雪が居る……この状態で家に帰っても、また不審者として通報されかねない。ヘタをすると、さっきの始末以上に自分の立場を悪くするのが関の山だ。

 

 

 ……さて、どうしたものかね……。

 

 

「……そういえば、ヴェイズルーグ」

『何だ?』

「あの人と連絡が取れるか、少し掛けてみてくれ。あの人なら何か知っているかもしれない」

『……わかった。少し待て』

 

 

 俺はヴェイズルーグにそう伝えると、ミラージュタワーの方をもう一度向き直した。……ガブエリウスの野郎が何を企んでいるかは知らないが、この俺に喧嘩を吹っ掛けて来た事は、かなりの自信がある物だと見える。

 

 

 ……だったら話は簡単だ。

 

 幻影ファイターとやらを全員倒して、その先に居るガブエリウスから幻創カードを手に入れる。今に俺に喧嘩を売った事を後悔させてやる。

 

 

『キョウスケ、待たせたな』

「どうだ、ヴェイズルーグ」

『……ダメだな。我も何度かリコールしてはみたが、強力なノイズが発生していて、その向こうの音は聞こえるが肝心の声が聞こえん。察するに、意図的に妨害されているのかもしれない』

 

 

 ……意図的に?

 

 

『詳しい事は我にも分からん。しかし、今お前が頼ろうとした者は、既に幻影ファイターとして動き出している可能性がある。もしそれが本当であるならば、その者に頼りを出すのは危険が付き纏う』

「……そうか、ありがとう」

『これくらい構わん。我にはキミを我が使命に付き合わせた責任がある。協力は惜しまない』

 

 

 そんな事を話しながら、俺たちはその場を後にした。

 

 

 そしてガブエリウスから幻真星戦(げんませいせん)の開戦を告げられて数日後、俺はヴェイズルーグと共に幻真獣ファイター探しに奔走していた。

 

 多少捜索は難航するのを覚悟していたが、ここまでの事態になるとは予想外だった。まあ、いきなりこの世界が幻だった、と言われて素直に信じられる方が無理ではあるが。

 

 

 

「……まさか、幻真獣ファイターを見つけ出すのが、こんなにも手間がかかるとは」

『だが、そうも言ってられないぞ。幻影ファイターはいつ何処から現れるかわからん』

 

 

 ……確かにな。

 

 この世界が霧に包まれ始めてから、既に一週間以上が経過している。直ぐにでも全員と合流して、反撃の狼煙を上げ始めないと行けない頃合だ。

 

 

『現時点で目覚めたのは、紫炎の幻真獣悠久の幻真獣無双の幻真獣の三体。前者二体に関しては、同じ場所で固まっていたと言う幸運にも恵まれたな』

「そうだな。一応、他の幻真獣ファイターを探す傍らで、幻影ファイターと出会ったら退けてくれとは言っている。俺たちの真を消させる訳には行かない」

『さて、何処から手を付けたものか』

 

 

 念の為にヴェイズルーグには、俺の手元に納まって貰う事にした。普通の人ならば、スマホが独りでに浮くなんてのは異常だろうし……傍から見れば独り言を喋っている様にしか見えない。

 

 

「へぇ、じゃああたしはその退ける対象、って事ですか」

 

 

 誰だと俺が問うより早く、今し方声をかけて来た人物の傍に居た者たちによって俺は気絶させられた。そしてヴェイズルーグからの呼び掛けに答えられず、次第に意識を手放して行った。

 

 


 

 

「……っ、ここは」

「気が付きましたか、京介さん」

 

 

 目を覚ました俺の前に立っていたのは、ハロー、ハッピーワールド!のDJ担当である、奥沢(おくさわ) 美咲(みさき)だった。大方彼女の近くに居たのは、こころの家に仕えている黒服だろうな……全く。

 

 

「驚きましたよ、まさか京介さんがこの世界を消そうとしているなんて」

「……それはお互い様だ。何故お前はこんな事を」

「あたし、こころの代わりに今の財閥の舵取りをしてるんです。本当なら一人娘であるこころが継ぐのが正しいんですけど、なかなか首を縦に振ってくれなくて」

 

 

 確かこころの家は、弦巻財閥って言う大きなグループだったのは覚えてる。でもそれを何故だ……?

 

 

「それより、話は聞いてましたよ。あたしの事、この世界から消すつもりなんですよね」

「……具体的には何処からだ」

「周りにバレない様に、敢えて通話してる様相を作ったつもりでしょうけど……そんなの無駄です。あたし、黙って消されるつもりはありませんから」

 

 

 ……そうか。なら、俺もこれを最後に聞くとしよう。

 

 

「ここは何処だ。俺を拉致して何をするつもりだ」

「ここは牢屋ですよ。あたしたち幻影(ファントム)ファイターの進む道を邪魔する者たちの、鳥籠!」

 

 

 彼女がそう言うと、俺のスマホから着信が聴こえて来た。

 

 そこに記されていたのは……。

 

 

幻真星戦(げんませいせん)

 

流川 京介vs.奥沢 美咲

 

 

「……やるしか無いのか」

『キョウスケ、用心しろ。今の彼女からは途方も無い力を感じる』

「嗚呼。……始めるぞ」

「はい」

 

 

 俺たちがそう言葉を交わした後……床が突如として赫く発光して、その下から螺旋を描く様にファイトテーブルが現れた。それを見た俺は定位置に着き、美咲と向かい合った。

 

 

奥沢 美咲流川 京介

カードを掲げよ。

 

そして叫べ、開戦の狼煙を。

 

 

か」「か」

「「ディヴァイン」」

 

 

時は満ちた。

 

これより、

世界を賭けた一戦を始めよう。

 

 

 

「……お前たちの好きにはさせない。もし負けたとしても俺を恨むなよ」

「恨みませんよ。勝つのは、あたしですから」

 

 

スタンドアップ・

ル・Z・

ヴァンガード

 

 

裁秤大隊(ライヴレイト) ゲヴェーアル・ドラゴン

月の使者 レプソルト




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次回より……幻真星戦、開戦です。

 幻を消し去るか、真に取って代わるか。その戦いの果てに待つモノとは。これからの展開をどうぞお楽しみに。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。

 ……ちなみに、本作品は土曜更新となります☆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。