マブラヴ時空で現ナマは武器となるか? ~愛はお金で買えるのって少女漫画で言ってたから~ 作:行徳のり
――1948年 夏 九州・大神村 四角井造船本社 社長室
お客様窓口経由で、弊社の船外機の不良が見つかったそうな。
俺は眩暈がした。次いで吐き気。
ドイツにコピー取った2ストのモデルがヤバいらしい。
パンテント元から図面を引き直した時に起きた不具合である。
そんな話を持ってきた部下に俺はどんな顔をしてるんだろうか?
「………どんだけ何処に出てる?」
俺より年上の部下、船外機部門の社長が震える声で言った。
「全国です。国外にも出ています」
シャワシャワとセミの音が大きく聞こえた。
開け放たれた会社の窓の向こうには入道雲。
夕立が来てもおかしくない。
雨が降る前の臭いはしないが、じっとりと嫌な空気が社長室に満ちた。
「………敵対語だったがリコールを急がせろ、販売店には販売中止の文書出せ!」
キリキリと胃が痛む。
ウチの不祥事だがリカバリーは出来る。
幸いにも民間部門だ。民生の方だからまだ致命傷ではない。
これが海軍向けの艦艇やらタンカーだったら軍と商社に俺はぶっ殺されていた。
………それでも欧米製より安さで売れていた弊社の製品だ。
日本全国津々浦々の漁師や漁業関係者が利用していることを思えば軽視できる話ではない。
どれだけ漁師の皆さんがいるんだろうね??
「あたまいたいねん」
ズキズキ痛む頭を振りつつ、俺は引き出しから頭痛薬を取り出す。
「分かりました。社長は?」
「喧伝部に顔を出して謝罪広告を全国の新聞に出す。地方紙もだ」
ガラガラと瓶を振って頭痛薬を水なしで飲む。
それから弁護士の先生との面談をしなければと思い出す。
PL法は施行前だが、※①「不法行為責任」を財閥やライバル会社が持ち出せばヤバい。
実質的な弊社製品による被害者から訴えるのは難しくてもだ、このメーカーならやれる。
……もし仮に悪意を持って「製造者の過失(注意義務違反)」を立証されたら?
だから俺は速やかに対処する必要があり、技術的に複雑な製品の欠陥を証明出来ぬよう先回りする必要があった。
「いやさぁ……現実って厳しいわ」
「何ですって?」
部下の発言に俺は失言だと察した。
取り繕うように、俺は続ける。
「鳴滝中佐と献金した政治家の先生にも渡りをつけてくる。あと、図面の改定と問題の部品交換をウチで全額無料でやる」
「無料?! 社長!」
「信頼ってのは怖いんだわ!! ここでウチが民間をないがしろにしてみろ! 何されるかわかんねーぞ!」
怒鳴り返して社長を追い返し、俺は机の上で顔を覆った。
「勘弁してくれよ……だが、やるっきゃねえ」
そうして俺は社長自ら謝罪文を出した戦後初の社長となった。
※①……これを理由に攻撃できる時代であった
四角井くん「だからこんなんじゃ商品になんねぇんだよ(棒読み)」
不具合「カスが効かねえんだよ(無敵)」
四角井くん「」