零崎家から出て、私はある人にメールをした。
内容は、今日泊めてくれないかと問うもの。
元々ダメもとだったから別に断られてもいいや、と思って送ったんだけど、返信内容は
直ぐ向かう
との事。
京都駅で待ってると返信し、待つこと約1時間強。
「うわぁ。めっちゃ速いね。東京からここまで遠いのに。こんな夜分にごめんね?
セルティ」
私がそう言ってほほ笑むと、セルティは肩を竦めた。
【お前の無茶ぶりにはもう慣れた。早く後ろに乗れ】
黒いヘルメットを渡され、それを被ってバイクに跨る。
【飛ばすから、ちゃんと捕まっておけよ】
「ん、りょーかい」
因みに私は一応読心術が使えるからPADを見る必要はない。
セルティはハンドルを握りなおすと、エンジンをかけ、物凄いスピードでバイクを走らせた。
スピード違反とかそんな次元じゃないな、これ。
振り落とされないようにギュッとセルティに捕まりながら苦笑をこぼした。
京都から東京の池袋まで本当にあっという間に着いた。
【そういえば、親にはちゃんと連絡したのか?というか、何でそんなにボロボロなんだ。てか、何で京都なんかにいたんだ】
「セルティー。質問は一つずつでお願いします。えーっと、親にはちゃんと連絡してあるよ。で、コレはまぁ…やんちゃした。京都にいたのはちょっとした頼まれ事をしていたから」
【頼まれ事?】
セルティは首を傾げ(首はないんだが)、頼まれ事の内容を聞いてくるが、裏世界に関わる事なのではぐらかしておく。
【まぁいい。今はもう遅いんだ。寝ろ】
セルティが自分の部屋を指さして言うが、
「私はソファーでいいよ。お休み」
そう言って反論は聞かず、リビングのソファーに寝ころんだ。
余程疲れていたのか、睡魔がすぐに襲って来て、私は眠りに落ちた。
「柚希!!?な、なななな何で君がここにいるんだい!!?」
朝は新羅のそんな声で目が覚めた。
「………っさい」
欠伸をし、時計で時間を確認すれば朝の7時。
寝たのが確か3時過ぎだから……4時間も寝れたのか。
十分十分。
グッと伸びをして、未だに私を見て固まっている新羅へと目を向ける。
「色々あって昨日セルティに迎えに来てもらったんだよ。久しぶり、新羅。去年刺されたって聞いたけど、大丈夫なの?」
「久しぶり。情報網は変わらず凄いみたいだね。それに相変わらず君は厚顔無恥のようだ。安心したよ」
「ははは。失礼だね。これでも迷惑をかけてる事ぐらい分かってるよ」
「そうかい?なら今すぐ僕とセルティの愛の巣のぶべらっ!!」
突然新羅が私の視界から消えた。
原因は勿論
【お前は何を言ってるんだ!!】
セルティだ。
「セルティ!酷いじゃないか!!柚希がここに来れば俺とセルティとの2人の時間が邪魔される!!傍若無人とは柚希の為にあるような言葉だよ!!」
「セルティ―。新羅の首絞めていいかなー?」
「すみませんでした!!」
態度を一転して変え、私の前で土下座をする新羅。
このやり取りも最早恒例となっている。
「っと、ところでその傷はどうしたんだい?見たところ、大分不可でみたいだけど。柚希にここまで傷を負わせるなんて、どんな怪力乱神な奴だい?」
「機械」
「機械?」
新羅は私の腕や足に巻かれた包帯を取りながら聞き返してくる。
「そ。機械。核を潰さなきゃ止まらないからさぁ…。大分手こずっちゃった」
あはっ、と笑うと、セルティに頭を叩かれた。
「これは…銃痕だね。痕は多分残らないと思うけど。こっちは刀傷。火傷もあるね」
【全て綺麗に治るのか?】
「うん、大丈夫だよ。処置が早かったのもあるけど」
新羅は何だかんだ言って色々としてくれる。
セルティへの一方的な愛を除けば、セルティしか見えないあの妄信的な部分を除けば、普通にいい奴だ。
私の信頼する医者でもあるし。
「全く。君のおかげでどんどん私は医療の知識が増えていくよ」
「感謝してね?」
「まず怪我をする前提で考えるのやめなよ。怖くないのかい?こんなに怪我して」
全ての処置を終えてくれ、呆れ顔で言われる。
「〝人生を恐れてはいけない。人生は生きるに値するものだと信じなさい。その思いが、事実を作りだす手助けとなるであろう〟」
「ウィリアム・ジョームズだっけ?」
「うん。この人も人生を恐れてはいけないって言ってるし!」
「いやいや。君の場合違う〝恐れ〟でしょ!?」
「そーかなー?」
「はぁ…」
深くため息を吐かれた。
セルティは私達のやり取りが面白かったのか、ずっと肩を震わせて笑っている。
「にしてもさ、新羅。友達いるの?」
「話を変えようとしてるのバレバレだからね!?僕に友達がいるように思うかい?」
「うん、ごめん思わない」
「2人いるよ!!」
「え…」
「何その夏虫疑氷みたいな顔。本当だよ!」
「いや、別にそこまで疑ってないけど…」
多分その友達って、平和島静雄と折原臨也だろうし。
「んじゃ、。私はもう帰るわ」
「え?もう帰るのかい?」
驚いたように目を丸くする新羅。
【まだいたらいいだろ。家は近くなんだし】
「んー。そうなんだけどそろそろ帰らないと父親が煩いんだよ」
「へぇー」
【あ、じゃあちょっと頼みたい事があるんだが…】
「じゃあの意味が分からないけど、何?」
【××って会社、知ってるか?】
「××?」
聞いた事あるようなないような名前。
携帯を開いて調べると、玖渚機関と懇意にしている会社だった。
「知ってるよ。どうしたの?」
【いや、仕事でな。そこに行きたいんだが…】
「あぁ、場所がわからない?」
コクリと頷いたセルティに、じゃあ、と提案する。
「私も一緒に行こうか?案内するよ」
【本当か!?】
「うん。こんな事で嘘言っても得なんてないし。セルティにはお世話になったしそのお礼」
「あれ、僕は?」
【いや、気にしなくていい。柚希は私の大事な友人だからな】
新羅をフル無視して、私達だけで会話する。
「それじゃ行こっか。新羅、またね」
「はいはい。次は怪我をしていない時に来てよ」
バイバイ、と手を振ってセルティと一緒に新羅のマンションを後にした。