二番目ならまぁ耐えっしょ   作:ラトソル

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超かぐや姫!、もう三回目劇場に行ってくるよ。脳やられたよ。

曇らせの素質あり過ぎる世界ですよね!

この世界は、『五条悟が渋谷事変にて、一般人の救出を諦めて領域展開をした』世界線です。


イロハって一万回は聞いたわ

 荒野。

 

 そうとしか形容できないほどに、辺り一面が焼け野原となっていた。

 

 晴天とは程遠く、空は曇天が支配していて光なんて射し込んで来ない。終わらない暗闇が、世界を覆っていた。

 

「……………………なんで」

 

 辺りを見渡す。変わらない焼け野原。

 ぱちぱちと音を立てて小さな炎が其処彼処に立ち上り、細かな木材が散乱している。

 

 きっと、その少女に嗅覚というものがあるのなら、今すぐに鼻を手で覆っていたことだろう。

 

「………………………………ねぇ」

 

 記憶に新しい町並み。

 

 決して、発展はしていなかった。

 

 木でできた小さな家がぽつりぽつりと建っていて、高層住宅の無い小さな町には、それでも多くの人が居た。

 

『また明日!!!』

 

「────────」

 

 そう、昨日約束した言葉が木霊する。

 

「…………平和に、なったんじゃないの…………?」

 

 少女……ウミウシの身体を通して声を発する超常の存在は、目の前にある木材の山の間から見える黒い腕のようなものと、隙間から零れてくる呻き声に涙を溢す。

 

 縄文から世界中を駆け巡り、八千年に迫る時を旅して再び日本へと戻ってきた少女に降り掛かる絶望。

 

「…………し……たぃ……」

 

「────────」

 

 声が聞こえた。

 風が木の隙間を通ることにより生じる音だと目を背けたかった。

 

 それでも、プログラムから超越してしまった聴覚が小さな呻き声を捉えてしまった。

 

「────しに、たい」

 

 聞こえてしまった。

 

 全身を火傷し、木造の一軒家の瓦礫の下敷きになり、身動きの出来ない身体に。

 

 昨日、笑顔で『また明日遊ぼうね!』と手を振っていた幼子が、黒焦げの手で死神を招くように自身の死を渇望していた。

 

「……なんでなの?」

 

『会いたい者がいるのだろう?』

 

 数百年前に交流を重ねた女性の声が思い起こされた。

 

『はっ……そいつァ、スウィートじゃねぇな』

 

 今まで出会ってきた数え切れない人達との交流が一気に降り掛かってくる。

 

『外国に行きな……羂索に目を付けられたら面倒なことになる』

 

 走馬灯じゃない。死に直面した訳じゃない。

 

 それでも、今までの全てが津波のように襲ってくる。

 

 良い思い出、悲しい思い出。

 

「────もう、イヤだ……よ…………」

 

 折れかけた少女を立ち直らせるには、不十分なものだった。

 

『かぐやっ』

 

 逢いたい、と渇望する一人の少女。

 

 もう名前以外が曖昧になって来てしまったけれど、それでもこの八千年を生きてこれたのは少女と再び出会うという想いがあってこそのもの。

 

 別れがあった。死を看取った。喧嘩した。戦争という存在を知った。

 

 けれどそれらは穏やかなものであり、戦国の時代のものであり、文化の違いであり。

 

 平和な世界へと向かって歩み出した日本で、こんな光景はあってはならなかった。

 

「……待って」

 

 死を渇望する幼子の手が止まる。

 

「…………待って」

 

 私を殺してくれと手招きをするその手がだらんと下げられて止まる。

 

「………………お願い」

 

 くねくねと身体を動かし、大きく身を翻してその幼子の目の前に着地したウミウシはその手を見上げる。

 

 それは、幼子にとっては女神からの慈悲だった。

 

 それは、少女からすれば幸せを望んだ自身へと突きつけられた絶望だった。

 

「いかないで」

 

 ウミウシの中から世界を俯瞰する少女……かぐやは、終わりを悟る。

 

 見渡すまでも無く、どこを見ても黒いナニカが落ちている。

 

 目玉を零し、口から内臓を出した人型のナニカが呻き声を上げて歩き、倒れていく。

 

 積み重なる黒いナニカが焼かれていく。

 

 西暦で言えば、あと数百年と経たずに待ち望んだ瞬間がに立ち会えるのだろう。

 

 けれど、かぐやの心はもう。

 

「……なんで生きてるの、わたし」

 

 ────シューッッッッ……。

 

 未来を諦めようとした少女の目の前に立ったその存在を、かぐやは予見出来なかった。

 

「なんだお前?」

 

「────」

 

 二人の邂逅は、そんな最悪の状況下で起きたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 広がるは和の景観。

 そびえ立つは木造の伝統建築。

 

 空を泳ぐ魚の光。浮かび上がる光の玉。

 

 角を生やし、尻尾を携え、和服を纏いし幾億の住人。

 

 そこは、一つの『世界』。

 現実と隔離された、仮想現実と呼ぶべき現実。

 

「────いと可愛ゆし」

 

「何言ってんのお前」

 

 天上までそびえ立つ塔。その頂上に位置する、柵で囲われただけの和室にて。

 

 純白の髪を結い、世界最高峰の美を体現した世界の管理人たるヤチヨは、扇子を開き口元を隠して目の前で胡座をかく男へと一言贈る。

 

 カラスが白いと言ったとて、万人が頷くほどに美を放つヤチヨの言葉を一刀両断したその男に、慣れたように笑みを浮かべる。

 

「えーん! (れい)ってばほんと辛辣〜っ。ヤッチョ、鋭い言葉が刺さって泣いてしまいそう〜、よよよ〜……」

 

「急に変なこと言い出したのお前だろ。俺はアバター作ってないんだから現実と同じ顔と姿してるし変わんねぇだろ」

 

「ぶー。そんなの知ってるよーだ。雰囲気で言っただけだよ〜」

 

 この世界……ツクヨミでは珍しく、和服ではなくジャケットを羽織りいわゆるオフィスカジュアルな服装で下界を俯瞰する男……零と呼ばれたその男は、一息吐いてからヤチヨを見る。

 

「楽しそうだなヤチヨ。なんかあったか?」

 

 百年ばかりの仲になるヤチヨの様子の変化を見逃さず、零は特に関心を寄せないながらにも質問を飛ばす。

 

 零の視線を受けたヤチヨは嬉しそうに頬を緩ませて、うんっ、と幼子のように声を弾ませる。

 

「むふっ。あのねあのね! ついこの間にね! 来たんだ!」

 

「なにが」

 

「彩葉!!!」

 

 嬉しそうに。渇望した存在に会えたのだと。

 

 その姿はまるで恋する少女……ではなく。

 長年焦がれ、焦がれ、焦がれ……自分の命を繋ぎ止めていた存在に出会えたという喜びが、ヤチヨから溢れていて。

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながらその名を口にしたヤチヨに、僅かに目を見張った後に目を細めた零は、いつの間にか手に収まっていたグラスを傾けて口元に運ぶ。

 

「一万回聞いたわ、その名前」

 

 その声が聞こえていない悪友へと、溜め息を吐きながら零はもう一度外を眺めた。




続くとは言ってない。
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