まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
『あなたは戻れませんよ……だってあなたの禁忌は、』
私は万年筆を砕きソレを前にする。必ず、必ずみんなを救うとソレを首にかけ……
私は【魔法】を発動させた。
私は【戻った】。魔女になろうと、みんなを救う為に自分の禁忌を犯して……しかし戻ったのは牢屋敷で目醒めた最初の日ではなかった。
それよりももっと前……私が初めて水難事故で死んだあの日だった。
訳がわからない。どうして?私は頭を抱えたが目に入った手を見てまた頭が痛くなった。
魔女化していないのである。さらに、その手は幼い頃の手そのままで、爪も伸びていない。身体を見回すがどこも魔女化の際に現れる黒澄みもない。
水面を見て顔を確認する。そこにはやはり魔女の顔はない。私だ。幼い人間の私がいた。
少し大きくなり自由に動けるようになった頃、私は少女たちが行方不明になった事件や都市伝説としての牢屋敷のことをインターネットや新聞で調べた。
ない。なにも見つからない。
行方不明になった少女は確かにいる。だが、それは年に多くて数人…12人も消えていないようだった。
都市伝説もそうだった。有名な話は変わらずあるが牢屋敷のことは影一つ見つからなかった。
一つの考えが過ってしまった。
私は、魔女因子のないifの世界の過去に【死に戻り】したのではないか?
私はみんなを、エマを救えないのか?ユキを倒せないのか?
今【死に戻り】をして戻るのはいつなのか?そもそも【死に戻り】は発動するのか?もしもこの世界が魔女因子のない……魔法のない世界なのなら……
背筋が凍った。私は、最悪の自体である可能性を考えないように、考えないように過ごす。かならずあの日へとたどり着き、救えると信じて。
人混みの中、電車の中、そして登下校中すれ違う人たちを私はつい見てしまう。見知った顔の少女たちがいるかも知れない。しかし誰かにの顔を見かけることは一度もなかった。心が軋む。
この世界が私の知っている世界ではないことをようやく確信した。
蓮見レイアがいない。テレビを見ていても、ネットで探しても彼女はどこにもいない。もしかしたら芸能人にならなかったのかも知れない。
城ケ崎ノアが、バルーンがいない。路上アーティストは何人もいるにはいるがそこにバルーンの名前も作品もない。もしかしたら楽しく家で絵を描いているのかも知れない。
沢渡ココがいない。一家連続殺人事件がなかった。きっと家族で仲良く暮らしているのだろう。
そして、エマが、桜羽エマがいない。
いや、エマはこの世界にいたが、交通事故で亡くなっていた。
エマに謝る事は二度と出来ない。
この世界でやり直して、エマと友達になることは叶わない。
ひび割れ、粉々になっていく心。抑えられない吐き気と絶望。
心が折れてしまった。私は、みんなを救えない……
中学を正しく過ごした。ユキは現れなかった。
高校を正しく過ごした。牢屋敷で目覚めることはなかった。
夢だったと逃避するには重すぎた。私に寄り添う命の暖かさで私は今この世界で生きているのだとようやく前を見た。
大学を正しく過ごした。私の心の支えるモノが今はある。
私は成人した。実家を出て一人と一匹で暮らしている。
実家にいた頃、野良猫が迷い込んできた。保護し獣医へ連れていってもらい、そのままうちで飼っている。
白い毛並みに少しだけ桜色の混じった箇所がある猫は私のそばを離れるのを嫌がった。
在学中は毎日あの子を何分も構ってから学校へ行っていた。
学校から帰ると必ずあの子は私を玄関で待っていてくれた。
就職し家を出る際、一人暮らしをするつもりだった。あの子が何かを感じ取ったのだろう。足にまとわりつきいつもよりも大きな声で鳴いていた。行かないでと言うように。独りにしないでと言うように。
離れたくないのは私も一緒だった。
押し負けた私はペット可のところを探すからと告げると一度鳴いて私を見つめたあとあの子は餌を食べに行った。くすりと私は笑った。
休憩時間に見守りカメラで確認をする。いつも通りのんびりとしている。帰宅して、ただいまと声をかける。あの子はゆっくりと歩いてきておかえりと言うようににゃあと鳴く。
休みになれば膝に乗ったままのあの子を撫でる。いつの間にか買い物に出かける時間になっていても膝に居続けるので持ち上げる。すんなりと受け入れているがここがいいとイヤイヤしていた頃が懐かしい。
獣医に連れて行く時もそうだった。だまし討ちすることは良くないので私は必ず獣医に行くからと告げて持ち運びキャリーケースに誘導する。2回目からはケースを見ると威嚇するほど嫌がっていたがいつからか諦めたように尻尾を垂らしてとぼとぼと入る。君の健康の為とはいえ辛い思いをさせているなと思い私は、いつもよりいいおやつを用意しておく。
あの子とはいつまでも一緒だ。
最近あの子はじっとしていることが多くなった。食べることが大好きだったのに餌を残すようになった。目やにが目立ってきた。爪をあまり研がなくなった。話しかけても気づかないのか反応しないことがある。
それでも私のそばにずっといる。
あの子の名を呼び、語りかける。
「エマ、君がいなくなったら私はきっと君を追ってしまう。だから……ずっとそばにいてくれ……」
おあいこしなかったヒロちゃんがペットを飼ってエマと名前をつける概念好き。それがやりたかっただけ