まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
独自設定あります。ご都合主義です
エマ、君が嫌いだ。忌々しい君が大嫌いだ。
食事を摂り、エマを殺すために牢屋敷の中を歩き回りながら考えるがなかなか良い案が思いつかない。そんな時は、掃除をしたくなるものだ。
シャワールームへやってきた私は早速掃除を始める。ブラシを手に持ち床を擦る。この時間隊は温水は出ないため、誰かが使用することは無いだろう。掃除をするのなら今のうちだ。
掃除をしながら殺害方法を考える。一つ、また一つと思い就くことはあるが決め手にかける。確実な方法と完璧な隠蔽か必要だ。
床の掃除を終え、次は鏡を拭き始める。
何かが聞こえる。耳を澄ますと水が流れる音でもラップ音でもない。これは、人の声か?周りを見渡すがシャワールームにいるのは私一人。念の為、ダストシュートを開き中を覗くが何も見えず、声はしない。気のせいか。再度鏡を拭こうと思い、鏡の前に立つとやはり聞こえる。
「鏡の中からか……?」
私は音の発信源を鏡と決め打ちする。裏に何かあるのか、軽くノックしてみたり、外そうとしてみたりするがなんの変哲もないただの鏡だ。やはり、気のせいだったと私はシャワールームを出ようとするとまたしも声がする。
「いたずらならやめてくれないか!」
怒りながら振り返ると先程までと違うモノがあった。鏡に何かが映っている。黒く塗りつぶされてるような鏡に恐る恐る近づくとそれはなにか語りかけてることが分かった。いたずらではなく、何らかの怪異。警戒をしながら耳を澄ませる。
『マ……エ……エマ……』
(エマ……と言っているのか?)
怪異の呪詛のようなエマと言う呟きを聞き流しながら今度は鏡を注視する。黒いソレはぼさぼさに伸び切り、傷んだ髪の毛のように見える。
「お前は、なんなんだ」
意を決して鏡に語りかける。怪異が反応をした。少し赤みがかった黒く長い髪を振り乱しているようにも見える。すると鏡の中央に怪異が顔見せた。ひどく痩せこけ、濁った赤い瞳。白目は血走り焦点が定まっていない。
『エマ……話し……エマ……ない……』
ハッキリと聞こえるエマという単語のあとの言葉は上手く聞き取れない。が、この怪異は……エマと何か関係があるようだ。
怪異をよくよく見る。赤い瞳に赤みがかった黒い髪。まるで私のようだ、と。背中を冷や汗が伝う。もしかして、まさか、これは……
「私……なのか?」
牢屋敷ならば、鏡越しに異世界や未来と繋がるかもしれない。ありえないことだと切って捨てることができない。
『わた……な……』
こんな人として正しくないモノが私だと?ありえない!怒りに身が震え、未だにエマと言い続ける怪異をキッと睨みつける。
「いい加減にしてくれ!エマ、エマとうるさいんだ!」
「私は、お前とは違う!私は私だ!」
グッと握り込んでいた拳を鏡に叩き込みたくなる衝動を抑え、踵を返す。シャワールームを出るまで呪詛は続いていたが、夜にシャワーをあびる為に来た時にはすっかりいつもの鏡に戻っていた。
あれ以降私は、あの鏡が忌々しく感じられた。叩き割ることも考えたが備品を壊すのは正しくない。ならばどうするか?鏡の横に描かれている絵を見て思いついたことがあった。
ノアに絵を描かせよう。ここの鏡だけ描いていいと許しを出せばきっと描いてくれるはずだ。私はすぐにノアを探すことにした。
「えー?本当にいいの?ヒロちゃん」
「ああ。ここだけなら構わない。見てくれればわかるが、この鏡だけ曇っていて見づらいからね。」
「うーん…?のあには違いが分からないや……本当にいいの?本当に本当?」
「ああ、いいよ。全部の鏡じゃなく、ここだけならね」
「よーし、じゃあ描いちゃおっかな〜なに描こうかな〜」
ノアをその気にさせ、シューッとスプレーで鏡を塗りだすのを見届けてから私はシャワールームを出た。これでもうアレを見ないで済む。私はきっと笑顔になっていることだろう。
あれから何日も経った。誰かを殺し、処刑され、魔女化に怯え自ら命を絶ち、それに付き合う者がいた。
ついにはエマと私の二人だけになった。エマは魔女だ。必ず私を殺すはずだ。
深夜から早朝にかけて、下のベッドから物音がしてすぐに目が覚める。
(やはり、動いたか)
目をつむり、たぬき寝入りをしながらエマの動向を探る。凶器になる物は持っていないはず。ならば私の首を締めに来るかも知れない。もしそうなればエマ相手ならば私は返り討ちにできる。
思っていたとおりエマは二段ベッドの上にいる私のもとへ来る。私の首に手をかけ──
ることはなかった。
(なんだ……?)
「ヒロちゃん……ボクね、本当にまた会えてよかったよ……」
「嫌われてても、それでもボクは……ヒロちゃんが大好きなんだ……」
「ボクは……ヒロちゃんに、生きて欲しいんだ……」
エマは寝ている私に語りかける。最後に私の手を握った。震えている。少しして名残惜しそうに手を離して監房を出た。私の耳にエマのさよならと言う言葉は届かなかった。
ベッドで疑問が頭を巡る。何故だ、何故エマは私を殺さなかったのか?数分ほど考え、それから監房から出たエマの事が気がかりになった。ベッドから降りてエマを探すことにしよう。
「エマ?どこにいる?」
スマホで電話をかけつつ声をかけて回る。調理場、食堂、WCCを経て進んで行くとシャワーの音がした。
(シャワールーム……こんな時間に?)
「エマ、ここにいるのか?」
ノックをしてからシャワールームを開ける。ノアの描いた鏡とその隣のひび割れた鏡。そして、
血塗れで倒れているエマがそこにいた。
「エマ!」
ぐったりとしており、白いシャツは首元から真っ赤に染まっていた。鏡の破片で頸動脈を深く切ったのか、首から出血しているエマ。駆け寄り、首を抑える。冷たい。息を確認するととても浅く、今にも途切れそうなほど、か細く呼吸をしていた。
「エマ!しっかりしろ!エマ!」
何度も呼びかけると朦朧とした意識のエマは口を少し動かす。
ヒ、ロ、と確かに口が動いた気がした。
「そうだ!私だ!ここにいるぞエマ!」
私の声が聞こえたのか定かではないが、エマの口元が少しだけ緩んだ。そしてエマは、息絶えた。
「どうして!?何故なんだエマ!君は、君は……」
「魔女じゃ……なかったのか……?」
エマから伝わる体温が、私をどこまでもこれが現実だと伝えていく。頭が冷え、疑問が氷解していく。あんなにも憎かったエマが……確かにエマはユキのことで許すことが出来なかった。だからと言って何故私はあんなにも過剰に嫌悪していたのか。
「魔女因子の、殺人衝動……か?」
自然と口から漏れた答えがすっかりと腑に落ちた。おかしくなっていたのは私で、正しくないのは私だった。エマは私を殺す気などなかった。エマの亡骸を抱きしめ私は……気を失った。
目を覚ますと私は白い部屋に寝かせられていた。見回すと白一面で窓がなく、机と椅子、鏡付きの洗面台とその隣はおそらくトイレ。スピーカー。出入り口らしい厳重な扉。壁沿いの角に出っ張りと近くに有るスライド。
まるで隔離施設のようだと他人事のように考えてしまう。事実そうなのだろう。私は着替えさせられていて、鏡を見るといつの間にか首輪をさせられていた。
(夢を見ているのか……?)
考えても何もわからず、時間が過ぎていった気がするがトケイモ窓もないここではどれだけ時間が経ったかまるで分からない。しばらくしてスピーカーから音声が響く。
私は最後の一人になるまで生き残っていた。しかし私の魔法が何なのか最後まで分かることがなかった。黒幕であるメルルがいなくなった為、魔女候補は殺処分をしようと提案されたが待ったがかけられ、条件付きで隔離することになった。それがこの首輪らしい。これは魔法を封じ込めることができる素材で出来ていてるのでこれで封じ込めれば安心だそうだ。こんなことしなくても私を殺してくれれば……そう考えた時あの時のエマの言葉がリフレインする。生きて、と。
それから私は、生き続けた。エマときちんと話し合えていれば何か変わったのかもしれないと後悔しながら。このような場所で時間の感覚もわからずただひたすら後悔しながら生きていると気も病んでくる。意識が途切れては私は夢遊病のように先程までいた位置と違う場所にいる。手入れを欠かさなかった髪は見る影もなくぼさぼさになっていた。食事はあまり喉を通らず、食べては吐いて栄養失調寸前だろう。いつからか追加で出されるようになった錠剤を飲んで生きながらえる。日記を書くことを許され日付の感覚がないまま何も変わらない日常を正気の時に書き記す。
途切れていた意識が戻る。目の前に恐ろしいモノが現れ私は倒れ込む。
「……ぁ……!」
言葉を発しなくなってどれほど経っただろうか。うめき声のようなものが喉を通り発せられた。驚きの声すらままならなくなっていた。
立ち上がり、化物を見る。……なんてことはない、それはただの鏡で、化物のようになった私を映していただけだった。
(待て……私は今の私を見たことがある……?)
ここに来る前から、来てからもずっと鏡を無意識に避けていた私は今の私をじっくりと見つめる。既視感の正体がすぐに理解できた。
(あの時の私だ……あれはやはり私だったんだ……)
あの時のことを思い出す。もしかしたらこの鏡が過去に繋がるかもしれない……私はすぐさま声を出す。声にならない声を出し続ける。何日経ったのか分からないほど私は声を出し続けた。いつしかうめき声は形となって言葉になっていった。
「エ……マ」
発生ができるようになった。私は、正気の時はずっと呼びかけ続けていた。食事は私が気を失っている時に私が摂っているようだし眠るのも正気の私がしなくていい。
「エマとよく話せ」
「エマは魔女ではない」
「私のようになるな」
私に伝えるための言葉を何度も何度も繰り返した。大丈夫だ。言えているはず。
何日、何週間、何ヶ月経ったのか分からないがいつしか鏡に変化が現れていた。曇り始め、真っ白な部屋と私を一切映さなくなったかと思えばスッと晴れていきあの牢屋敷のシャワールームと繋がった。
私が私に気づくまで念じるように、一心不乱に、鏡にかぶりつくように私はあちらへ唱え続けた。
──私を嫌悪した私がシャワールームから去っていく。
あの時の私のように鏡の向こうの私も戯れごとだと切って捨て聞く耳を持つことはなかった。私は曇った鏡の前でもう届かない言葉をぽつりぽつりとつぶやき続けている。正気を保っていると思っていたが今の状態を客観的に見れば鏡につぶやき続ける人間なんて正気とは言えない。それでも私は鏡の前にいる。一度過去に繋がったのならもしかしたら、また別の過去の私に繋がるかもしれない……
意識が戻った私は、今日も鏡に話し続ける。昨日と変わらないそれに意識が途切れるまで。
幻聴が聞こえてくる。鏡の中から、誰かが、ボクを見つけて欲しいと。もはや声を思い出すことをできなくなっていたその声を私は聞いた。
『ねえ……誰か……気づいて……ボクはここにいるんだ……出してよ……誰か……』
間違いない。エマがそこにいた。あの日のあの姿のエマが鏡の中にいる。
「エマ」
声をかける。びくりと鏡の中のエマがあたりを見回す。
『誰!?ボクに言ってるの……?ボクが分かるの!?』
「エマ」
続けて声をかける。エマがこちらを見た。
『ひっ……』
息を呑むエマ。ああ、エマ、会いたかった。
『エマ』
「ひぃっ……!誰か!助けて!」
鏡の中に囚われていたエマがようやく見つけた希望はあっけなく消え去ったように思えた。エマ、とだけ繰り返す化物にエマは怯えきっていた。何度も何度も呼ばれるうちエマは心の支えの、大事な友達の名前を呼ぶ。
「助けて!ヒロちゃん!」
「エマ」
ふわり、と風が吹いた。風なんて吹くはずのない鏡の世界に。風が魔法を運んできたのか、鏡の向こうにいるエマを呼ぶ化物が、エマが助けを求めるヒロに見えた。柔らかな笑顔でエマを呼ぶような幻は消え去ることはなく鏡に映し出されていた。
「えっ……?ヒロ……ちゃん……?」
「エマ」
問いかけに答えることなくエマを呼び続けるヒロにエマは安堵し涙を流して話しかける。
「ボク……ずっとここにいて……誰にも気づいてもらえなくて……怖くて、寂しくて、どうしようもなくてずっと泣いてたんだ」
「ヒロちゃん、ヒロちゃんなんだよね?そこにいるんだよね?」
「エマ」
エマは鏡に手を当てる。するりと通り抜けて、あちらへ行けるような気がして。ぴと、と手は鏡に当たる。向こうには行けない。
そして鏡の向こうのヒロもエマの手に合わせるように手を当てた。
「鏡越しだけど、ヒロちゃんに会えたんだね。ボク……ずっとヒロちゃんと仲直りしたかったんだ……」
「ねえ、ヒロちゃん……もう何処へもいかないで……ボクを置いていかないで……」
「全く……君は、バカだな。私で良ければずっとそばにいるよ」
鏡の中のシャワールームでひとりぼっちだったエマはもう寂しくない。息遣いが聞こえそうなほど近くで、それでいて触れ合うことができない隔たりは鏡一枚で出来ていた。エマが話しかけるとヒロは応える。鏡にかけられた魔法が解けるその時まで。
隔離された魔女は今日も鏡に呪詛を唱える。食事を摂らず、睡眠を取らず、人ではなくなり朽ち果てたようなそれは何も映さない鏡にいつまでもささやき続けた。エマ、と。
ちょっと出来ました。明日も予約投稿で投げます。
UAが毎日あってすごく嬉しいです。ありがとうございます。
雑感と言い訳。嫌いは好き。エマ、君が好きだ。愛おしい君が大好きだ。になる。できてねえな?
よくある鏡のネタから始まって鏡の中のエマBADを絡ませたいなと思ってたらこんな感じに
すぐに理解するご都合主義。心情が二転三転してちぐはぐな気が…勢いで書いてるのでよく分かってない。思いついた展開にするために感情や思考が支離滅裂になってる…