まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
どこまでも遠く、飲み込まれるように暗く、星も見えない曇り空の間から夕暮れが漏れる。夕方と夜の狭間の色が分けられ、フィルターで通した微妙な空を牢屋敷から少し遠く離れた場所から見上げてエマはため息をついた。つかの間のマジックアワーはすぐに夜に塗りつぶされる。
「せめて星空が見えたらなあ……」
「エマさーん!そろそろ帰りましょー!」
「今日もこれと言って手がかりは無し!残念です!」
「また明日頑張りましょうね……みなさん……!」
エマはみんなに聞かれないようもう一度ため息をついてからよし、と切り替える。少女たちとスマホのライトで暗くなった帰り道を照らしながら牢屋敷へと戻る。今日も何も収穫がなかった。何日も曇りが続くと洗濯物がよく乾かない。気が滅入る。そんなことを少女たちと話してまた一日が終わる。
うっとおしいほどに曇りが続いていたが、何日かして曇り空が過ぎ去り晴天になっていた。気持ちのいい陽射しを浴びて伸びをしてからエマはシェリー、ハンナ、メルルに話を持ちかける。
「ねえ、久しぶりにこんなに晴れたんだし、花畑でピクニックでもどうかな?」
「あら、いいですわね。バスケットでも持っての〜んびりとするのもたまにはいいと思いますわ!」
「最近これといったモノが見つかりませんしねー。外で気分転換するのもいいと思います!ただ……」
「そのバスケットに詰める、食べるものがアレですけど」
「う……そう言えばそうですわね……メルルさんと頑張ってなんとか……なりやがりませんわね……多分」
「はい!食堂のお食事のアレンジ頑張りましょうね……!」
「そうだ、どうせなら今日はお野菜なんかをついでに探しませんか?」
「メルルちゃんそれいいよ!よーし、ボク頑張るね!」
ピクニックの予定を立ててエマたちは張り切る。明日に向けてピクニックの場所と食材も探しつつその日は探索を終えた。きのこ類と野菜をたくさん摘んできたエマたちは久しぶりに笑顔で牢屋敷へ戻ってきた。
メルルは昨日集めた材料を持って厨房へ行きく。昨夜のうちから塩水につけたきのこ類を数分熱湯で煮て水に上げる。野菜をサッと水で洗い、きのこと一緒に手際良くカットしていく。ドレッシングは無いが、色とりどりの野菜とサラダを作った。半分はピクニックに持っていき残り半分はマーゴたちへの差し入れにする様だ。
「マーゴさん……サラダを作ったので、よかったらみんなで食べてください……」
「あら、ありがとうメルルちゃん。いただくわ。」
マーゴは早速ナノカとアリサにメルルが来たこと、サラダの差し入れをしてくれたことを伝え一緒に食べようと連絡を入れる。二人はすぐに返事を返してきた。ナノカはすぐに行くと返し、アリサは少しかかると返した。
返信通りすぐにやって来たナノカはメルルに近づき懐から袋を取り出す。
「ありがとう氷上メルル。ピクニックに行くと聞いていたから用意していたの。みんなで食べて」
「わあ!ありがとうございます……」
袋にはクッキーが包まれていた。看守の目を盗み、倉庫から材料を持ってきて厨房で焼いたのだろう。ナノカはエマたちがピクニックに向かう前に外で渡すつもりだったようだが、メルルが来ていたなら外のどこで待っているかエマたちを探すより早く、確実だと判断した。
「たくさん焼いたから私たちもあとで食べましょう。宝生マーゴ」
「あら、私たちの分もあるのね。それは嬉しいわぁ。それじゃあ、お茶を淹れるから座っててちょうだい」
メルルがピクニックへ向かってからすぐにアリサもやって来た。
「なんだ、黒部おめぇか……」
「今宝生マーゴがお茶を淹れてくれるわ。そっちに座って待ってましょう」
素直に頷きアリサは席につく。少しの間静寂が流れた。二人に取って心地のいい静かさだったようで、黙っていながらも楽しく待てたようだ。お茶を淹れたマーゴが来て三人でサラダとクッキーを美味しく食べたそうだ。
「今日もよく晴れて最高のピクニック日和ですわね〜!」
「シェリーちゃんの日頃の行いがいいおかげですね!」
「あはは、そうかもね」
牢屋敷の外でメルルを待つエマたち。ハンナが食堂の料理を詰めたバスケットを持ち、ハンナが巻き畳んだシートぶんぶん振り回している。エマは水筒を肩に下げているが、手持ち無沙汰なようで少し落ち着かない様子だった。
すぐにぱたぱたと手を振りながらメルルが駆けてくる。
「お待たせしましたぁ!」
サラダを詰めたバスケットを持ったメルルは少し息が切れていた。メルルが息を整えてからエマたちはピクニックする場所へ歩いていく。花畑の少し先の、辺りがよく見える平地に昨日決めていた。
シートを敷き、靴を脱いで四方に重し代わりに置いてピクニックは始まった。
「さあ楽しみますわよ〜!まずは……うう……昼食を食べきりませんこと?」
「美味しくありませんからねー。さっさと片付けてお茶にしましょうか」
「お野菜は美味しいですよ……たくさん、食べてくださいね」
「それじゃあ、いただきます!」
バスケットに詰められたアレやソレを口にするエマ。いつもどおり美味しくないそれらは一口目はピクニックと言うイベントのおかげで少しだけマシに感じられた。二口目にはいつもと変わらない不味さを口いっぱいに感じ苦笑いをする。そしてサラダで口直しして美味しいと笑い合う。暖かい空の下で少女たちはピクニックを今の状況なりに楽しんだ。
昼食を処理しきりサラダも感触したあとお茶を飲んで一息つくエマたち。バスケットに昼食とサラダに使っていたラップをしまっているとエマは光る物を見つけてバスケットから取り出す。
「あれ?これはなにかな?」
エマがバスケットから取り出したのは1つの小瓶だった。中には、キラキラとした粉末が少し入っていてエマは興味深そうに見つめる。
「なんでしょうか?わたくしは知りませんわね……」
「シェリーちゃんにもさっぱりです!スパイスの一つですか?」
「詰めたときにあったんでしょうか……?私も……覚えてません……」
誰も知らない小瓶を訝しんだエマはバスケットに戻そうとする。
「え!?」
急に正面から吹いた風にあおられエマは驚いて小瓶を落としてしまう。むずむず、くしゅんとかわいらしくくしゃみをしてからエマはフワリと宙に浮いた。重力に逆らって空へと向かっていく。
「どうしようどうしよう!?誰か!助けて!」
「えーい!」
シェリーが勢いよくジャンプしてエマを助けようとする。しかし少し届かなかった。
「エマさん!」
シェリーのジャンプと同時に浮遊していたハンナがエマに手を差し伸べる。しかし、ハンナの浮遊ではエマのところまで浮かぶことが出来なかった。
「エマさん!エマさーーーん!!」
なすすべなく空へ飲まれるように、浮かぶに連れ小さくなっていくエマを少女たちは見ているしか出来なかった。
エマは地上に向かって叫び続けた。
「シェリーちゃん!ハンナちゃん!メルルちゃん!助けて!助けて!!!」
いつしか息苦しくなり声を出すことをできなくなったエマは万年筆を握りしめ、いなくなったヒロのことを考えた。
(ヒロちゃん……)
万年筆を離すことなくエマは気を失ってしまった。空を、成層圏を突き抜け、単身で、生身で宇宙目前まで飛び続けたエマはそのまま息絶えた。やがて魔法の粉の効果が切れ重力に再び囚われ、落下していく。エマの体は万年筆と共に燃え尽きた。牢屋敷から離れた位置の空高くで。
「あれって、空飛ぶ魔法の粉だったんですね……すっかり忘れていました。どうしてバスケットなんかに入っていたんでしょうか?」
「まあ、もうなくなっちゃいましたしどうでもいいですね」
メルルはゴクチョーと共に深夜に外に出ていた。昼間飛んでいったエマと小瓶のことを少しだけ思い出して、すぐに切り替えた。
「あ、流れ星。何か、いいことあるといいですねえ……例えば、私の仕事が減るとか」
「ふふふ……大魔女様が見つかったら、ゴクチョーさんにお休みをあげてもいいですよ?」
冗談ですけど、と続けてメルルは牢屋敷へ戻る。ゴクチョーは夜空を見上げやれやれと意味を込めてホー、と鳴いてどこかへと戻っていった。
多分ティンカーベルの粉みたいなやつ
4等分するのならきのこは多少あっても平気なのかな?幻覚を見るきのこだけ少なくして他は普通に食べられるきのこにしたのかな