まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
「《わがはい》はウェンディを演りたかった、か……」
アンアンは夜、寝る前に前の自分の記憶をふと思い出していた。あらためて、みんなで劇をやってみないかと言ってみるのも悪くないかも知れない。演るならばなにを……誰が誰を……そんな風に考えているとアンアンは眠りについていた。
「……て……きて……」
「んう……?」
眠りについていたアンアンの耳元で誰かが囁いている。ゆっくりと浮上する意識はその声をハッキリと認識していく。
「起きて……起きてくださいまし!」
「起きてください!」
「ぬあ!?」
両耳から大声を上げられ堪らず起き上がるアンアン。誰が起こしたのか、目をこすりながら見渡すが誰もいない。
「むぅ……!?なんなのだ、一体!わがはいの眠りを邪魔するのは誰だ!」
アンアンの言葉に返す者は誰もいない。プンプンと怒りながらも睡魔に負けもう一度寝ようとベッドに横になろうとすると……
「あっ!ちょっとお待ちになられて!」
「こっちこっち!こっちですよ!」
ぽう、と光るそれらがアンアンに語りかける。アンアンが目を凝らし見てみるとそれは黄緑と青の光に包まれた、小さな羽の生えた人間……妖精だった。
「な、なんだこれは……?わがはいは夢を見ているのか……?」
「そうかも知れないね、ウェンディ!」
唖然としながら口からこぼれた言葉に誰かが返す。窓の外から入って来たのは顔のいい少女だった。ベッドの周りを妖精とともに飛び回る少女たち。アンアンはすっかり目を奪われていた。
「さあ、ウェンディ。君を迎えに来たんだよ。私とともにネバーランドへ行こうじゃないか!」
アンアンの手を取る少女。いきなりの状況にアンアンが混乱していると妖精が待ったをかけた。
「ちょーっと待ってください!その前にまず、私たちの粉をかけないと駄目じゃないですか!」
「その前にまずウェンディさんにきちんと説明して、わたくしたちと一緒に来るかどうか聞くことの方が大事ですわよ!?」
「はっはっはっ!いやあすまない!そのとおりだね!」
朗らかに笑う少女にアンアンは説明を求めた。妖精とは?ネバーランドとは?粉とは?疑問に一つ一つ少女たちは答えた。
「ふむ、なるほどな……」
「どうだい?信じてもらえるかい?」
「信じてもらえないと飛べないないので信じてくれると妖精ちゃんは嬉しいです!」
空を飛びながら涅槃像のように横たわる少女とアンアンの周りをチカチカと光りながら飛ぶ妖精たち。アンアンの答えは決まりきっていた。
「わがはいは信じるぞ!楽しそうだ……!」
「その言葉を待ってたよウェンディ!」
「そうと決まれば気合入れて粉かけますわよ〜〜〜!」
「その言い方はどうなんですかね?」
妖精たちは光った。鱗粉がアンアンにかかっていき、それぞれがキラキラと瞬いてアンアンの中へ消えていった。
「おお!……それで、どうしたらいいんだ?」
「ウェンディ、楽しいことを考えるんだ。まずはそうだね……」
「ネバーランドへ行く前に私たちとともに夜の町を飛び回るなんてどうだい?ワクワクしてくるだろう!」
「グッドアイデアですね!」
「それじゃあウェンディさん!行きますわよ!」
「おお……!それはいいな!……では、やってみるか……!」
アンアンは心の中を楽しさでいっぱいにした。すんなりとふわりと浮いた体により、嬉しさと楽しさが心に溢れんばかりに湧いていた。
「よおし、それじゃあ早速出かけよう!」
少女と手を繋ぎながらアンアンは飛び回った。ビルの隙間を通り抜け、摩天楼を飛び越え、海の上の月と海に浮かぶ月の狭間をすり抜けて、時計塔で一休みして流れ星になったように星空の下を縦横無尽に飛び回った。
「楽しんでもらえたところで、そろそろ向かうとしようか」
「向かう……?ああ、そうだったな!」
すっかり忘れていたアンアンにくすりと笑って少女は大仰な仕草でアンアンの手を取り、夢の島へと誘った。景色が歪み、光が瞬き、気づけばアンアンは平原に立っていた。
「ようこそ、ネバーランドへ」
「おお、ここが……」
少女に手を引かれながらアンアンは先に進む。谷を越えて、泉で遊び、森に入り、その奥にある隠れ家へ。
トロッコに乗ってあたりを回ったり、動物を観察したり、横になって空を見上げて一休みしたり。アンアンは少女たちと大いに楽しんでいた。
アンアンと少女が踊りを楽しんでいると、妖精の一人が大慌てで飛んできた。
「あぁ、マズイですわ!あれはフック船長ですわ!」
「なんだって!」
少女が踊りをやめ、懐から取り出した望遠鏡で妖精の指差す方を遠見する。そこには海賊船と、望遠鏡を覗いている船長とその手下がいた。
「見つけたぞ〜〜!今日こそはワニの餌にしてやろう〜〜〜!」
アンアンは急に出てきた海賊に少し恐怖した。ネバーランドは楽しい夢の島ではなかったのかと。
「安心してください!もしもの時は私がガツンとやりますから!」
「ええ、心配いりませんわ……と言うかあなたがやったら本当に洒落になりませんわよ?」
縮こまるアンアンに少女は笑顔で応え、任せておけと力こぶを見せる。
「いい加減しつこいと思っていたからね。打って出ようじゃないか!」
海賊船が川を上流する。急げ急げと手下を急かして船長は船の上を走り回る。
アンアンは少し遠い安全な場所から見守ることになった。少女が空から飛んできて船長はニヤリと笑って腰のレイピアを抜いて切っ先を少女に向けた。
「やあ〜〜〜〜!とお〜〜〜〜!」
「フッ!ハッ!」
互いのレイピアが幾度もぶつかり合い火花を散らす。船長が押していたと思えばすぐに少女が押し返す。
「え〜い、小癪なあ〜〜!」
船長が憤り、地団駄を踏む。少女はその隙を見逃さなかった。
「そこだ!」
少女が船長のレイピアを弾き飛ばし、続けたなぎ払いで船長は川へ落ちた。勝敗は決まった。
「命までは取らないよ。さあ、私たちの前から消えるといい!」
「おじさんは、まだ、負けてないんだからねぇ……!」
川の大きな岩にしがみつく船長は負けを認められず這い上がって少女のもとへ行こうとした。後ろから影が迫っていることに気づかずに。
「あぁ、船長!後ろ!後ろですぅ!」
「え?後ろ?」
船長が後ろを振り向く前に背後からガブリと音がした。
「ぎょえええええええ!!!ワニ!ワニ!ワニ!!」
船長はお尻をワニに噛まれ、川から飛び上がった。少女たちのことなど気にも止めず一目散に走り出した。
「待ってくださぁい……!私が治しますからぁ……!」
手下の少女は船から飛び降りて船長を追いかけた。アンアンと少女たちは船長たちを見送ってから勝利を喜びあった。
「すごかったな!わがはい、見入ってしまった!」
「ふふふ、そうかい!?それは良かった!もっと見てくれたまえ!」
「無様ですわね〜〜〜〜〜!!」
「何とかなって良かったです。もしもの時は、私がどかーん!としちゃうところでした」
楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去った。船長とその手下に狙われることがなくなったアンアンたちはネバーランドを隅から隅まで満喫した。
「ウェンディ、楽しかったかい?」
「うむ!」
笑顔で答えるアンアンに、少女は改めて質問する。
「ねえ、ウェンディ。君さえよかったら私たちと一緒にこのネバーランドで暮らさないかい?」
「毎日ドキドキワクワクできますよ!」
「お菓子もありますわ」
「それも良いかもしれない……」
「しかし、わがはいだけこんなに楽しんでいてはもったいないな……ノアと一緒に……ノア?」
アンアンは友達のことを思い出した。先程までの、妖精の粉で飛んでいた時の浮遊感とは違う、ふわりとした感覚を感じた。
「ノア!そうだ……どうしてわがはいは、ノアのことを忘れていたんだ?」
「ウェンディ」
「こんなに楽しいこと、わがはい一人で楽しんでいたらノアに悪い……」
「それは、つまり……君の友達のもとへ帰ってしまうってことだね」
妖精たちは顔を見合わせ、悲しそうに少女の肩に留まる。少女は真剣な顔でアンアンに話をし始めた。
「ウェンディ。君が眠っていたベッドに戻ってお別れをしたら、私たちは次にいつ会えるか分からないんだ。君が大人になる前にまた会えるかどうか……」
「なに?」
気軽に行き来が出来ると思っていたアンアンは寝耳に水だった。新しい友達とネバーランドを取るか、牢屋敷でともに暮らす親友を取るか。アンアンが選んだのは、どちらもであった。
「よし、決めたぞ!わがはいは必ずまたお前たちと会う!ノアも一緒に!それなら問題ない!」
「でも、会えるか分からないんですのよ……?」
「わがはいを【信じろ!】わがはいはまた会えると信じている!」
自信満々に答えるアンアンに、少女は目を丸くした。
「ふふっ、あっはっはっ!そうだね!そのとおりだ!信じていればまた会えるさ!確かに、それなら問題ない!」
笑い合うアンアンと少女たち。一段落ついた頃、アンアンは世界が眩しく感じられていた。まるで朝日が差し込んだように。
「ああ、もうお別れの時間のようだ。ウェンディ」
少女が名残惜しそうに別れを切り出そうとする前にアンアンは違う言いながら手を横に振った。
「わがはいは夏目アンアンだ。」
「私たちの友達のアンアン。もしもまた会えたらその時は、君と君の友達をこのネバーランドに招待しよう!必ずね!」
「アンアンさん!また会いましょうねー!」
「お待ちしてますわよー!」
少女たちが、ネバーランドが、世界が輝く。光が辺りを埋め尽くす。眩しさに目を瞑ろうとするがアンアンは最後まで見つめていた。白一面に広がる世界にアンアンは大きく手を振りながら別れを告げた。
「んあ……?」
「おはよう寝坊すけちゃん。もう朝よ」
アンアンは朝日の眩しさで目を覚ます。マーゴが開けたカーテンの向こうにはいつもと変わらない、傍から見れば夢と魔法のような風景が見えていた。
「ナノカちゃんが朝ごはん作ってくれてるわよ。ノアちゃんと顔を洗って着替えていらっしゃい」
「うむ……」
寝ぼけまなこをこすりながらアンアンは少し濡れた裾を見て首を傾げた。
「アンアンちゃんおはよー」
「おはようノア」
ノアと顔を合わせ、一緒に着替えるアンアン。ふと、朝見ていた夢を思い出した。そうだ、ノアと一緒に行くと決めたんだ、と。
「ノア、今日からわがはいと一緒に寝ないか?」
「えー?いきなりなんで?楽しそうだからいいけど」
「聞いて驚け!実はな……」
アンアンは思い出した夢の話をノアに語った。小さな妖精たちと楽しく空を飛び回る少女のこと。未知と不思議に溢れた夢の島のこと、時々現れては悪さをする海賊のこと。
そして、また会って大切な親友も一緒に連れてきて、みんなでまた遊ぼうと約束をしたこと。
「わあ!いいね、いいね!のあも行きたい!」
「うむ、ノアも一緒に絶対行くぞ!」
二人は遊びに行ったら何をするかと言う話に夢中になった。腹の虫が鳴いて、ようやく朝食がまだだったことを思い出して急いで食堂へ向かった。
その日の夜、一つのベッドで眠る二人の少女。次の日も二人は一緒に眠りについた。
いつかの夜、すうすうと寝息を立てて同じ夢を見ているそのそばで二つ光がキラキラと輝いた。
色々とごっちゃになってますピーターパンのストーリー曖昧です
夢の何でもありとピーターパンとあとはまあ牢屋敷の魔法とかなんかそんなんでいい感じになれ!
今までのやつの加筆ちょこちょこしていけたらなと思います
ペース落ちますがまた何か書けたら投げます。ありがとうございました