まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
監房で目を覚ましたエマは今日一日何するかを考えた。前日にした約束があるわけでもないし、ここのところ牢屋敷の捜索をしても目ぼしい物は見つからずスランプのようなモノを感じていた。何かするならば心機一転できるようなことやリフレッシュできるようなことをしたい。
「……そうだ!」
脳裏に一つの案が浮かんできた。よし、と意気込んで監房から出る。
「掃除をしよう!」
監房を出て、地下通路を上がっていき、ホールまでついた頃ラウンジから雑談をする声が聞こえてきた。シェリーとハンナのようだ。
「あれ?エマさんシャワールームに用事ですか?」
「今の時間は冷水でしてよ?」
「うん。なんだか最近どこを探しても手がかりがないから何かしたいなって思って、そうだ掃除しよう!って……」
エマは息抜きに掃除をしようと考えていたことを伝えた。そのためシャワールームまでの道中の物置にあるデッキブラシを取りに行こうとしていたところだったと。
「あら!それはいいですわね!わたくしたちも掃除しませんこと?」
「はい!ソファーやテーブルみたいな重い物を動かすならシェリーちゃんに任せてください!」
「それじゃあシェリーさんはラウンジをお願いしますわね。わたくしはロビーの方を掃除するとしますわ!」
その日の洗濯まで何をするでもなくシェリーと雑談していたハンナはすぐに掃除に賛成した。三人で物置まで行き、各々が使う掃除用具を手に取ってその場は別れた。
一心不乱にエマはデッキブラシで床を磨いた。端から端までゴシゴシと。時々シャワーで水を流してはまた磨いてを繰り返していると額には汗が浮かんでいた。洗剤を撒いて満遍なく磨いて水で流す。泡がすべて流れると綺麗な床が姿を見せる。
「ふう……こんな感じでいいかな?」
エマは床の掃除を終えて一休みしていた。そんな時、白く汚れている鏡が一つあるのに気づいた。
「あれ?この鏡だけ何も見えないや……」
水垢で見えなくなっていると思ったエマは、すぐに鏡をスポンジでこするがなかなか曇りが取れない。洗剤も使い、何度も何度もこすり続ける。するとようやく少しだけ反射した自分が映りだした。
「ふう……やっと落ちてきたかな?」
目に見える成果で達成感を感じ、諦めることなく鏡を掃除し続ける。昼過ぎに始めて監房に戻るのも忘れて、夕方のシャワールームが温水の時間になる頃には鏡は綺麗になり、エマを映し出していた。
「よし!これでいいよね!……あれ?」
夢中になって掃除していたせいでエマはその鏡に映る自分の妙な点に気づかずにいたが落ち着いた今、ようやくそれに気づき出す。
「嘘……?どうなってるの?」
鏡に映るそれは小さな帽子、白と桜色の髪、髪飾り、輪郭はそのままにあとは何もないナニかが映し出されていた。
「ボクの顔が……ない!?」
エマは慌てて顔を触る。手は顔の感触を確かに伝えていた。眼、鼻、口。それらがあることに安堵して鏡をもう一度見る。
「なんで……!?変だよ、この鏡……!」
やはりいるのはのっぺらぼうのエマだった。隣の汚れていなかった鏡を見ても映るのは同じモノ。気味悪がったエマはシャワールームから飛び出していた。
シャワールームを出てすぐの医務室の扉を勢いよく開け、急いで閉めた。ほんの少し走っただけでかいた心臓が早鐘を打っていた。
「誰かいないの!?メルルちゃん!?」
入ってそうそう声をかけ、周りを見渡すエマ。棚を整理しているメルルの後ろ姿を見つけて傍に向かっていくと……
「はい?どうしました?」
「良かった。メルルちゃ……ひっ!?」
「エマさん……?」
「ごめん!な、なんでもないよ!」
振り向いたメルルの顔には何もなかった。さっき見た鏡のエマと同じであった。小さく悲鳴を上げたが平静を装い医務室を出た。エマはラウンジへ走った。
「……それでですねー!」
「……なんでそうなるんですの!?」
掃除を終えたのか、談笑している二人の声がエマの耳に届いた。
(お願い……!二人の顔がありますように……!)
「あっ!エマさーん!」
「お疲れ様ですわ!」
どこを見ているのか分からないつるつるとした表面の顔が二つ、エマへと向けられる。
「う……ん……!お疲れ様……ちょっとボク外に行くから……!」
返事をして早々にラウンジから出るエマ。シェリーとハンナはお互いに首を傾げ合ってから掃除を再開することにした。
牢屋敷を出て走って、走って、湖まで来ていた。
(いつも外にいるアリサちゃんなら……!)
僅かな希望にすがるエマ。しかし、直ぐに曇ることになる。
人影が見えた。あの後ろ姿はアリサだ。安心したからか、足をもつれさせエマは倒れ込む。
「あうっ!」
「桜羽……?おい、大丈夫か?」
「あ、ありが……と……う……」
エマの手を掴みそのまま立たせるのっぺらぼう。手を払いたい気持ちを必死に押し込み、お礼を言ってエマは踵を返し、走り去った。エマの求めた希望はやはりありませんでした。
「わぷっ……!」
走り回り、疲れ果てたエマ。いつの間にかシャワールームまで戻ってきたエマは濡れた足場で滑り、倒れ込んだ。ばしゃりと水が顔にかかった時、水と一緒に何かが流れ落ちていくのを感じた。
「あら……?どうしたのかしらエマちゃん……?」
図書室で本を読んでからラウンジで一休みしていたマーゴはよろよろと歩いていくエマを見かけ、心配になって追いかけてきた。マーゴがシャワールームへ入ると倒れ伏したエマがいた。
「エマちゃん!?大丈夫!?」
思わず駆け寄るマーゴ。エマの体を起き上がらせて下を向いていた顔を向き合わせる。
「なんてこと……!?」
エマの顔に何もない。喉から出そうになる悲鳴を堪えマーゴはエマに声をかけ続けた。
「エマちゃん!しっかりして!」
ピクリとエマの肩が動いた。気がついたかのように反応をして頭が動いた。
「マーゴ……ちゃん……」
「大丈夫よ、エマちゃん。すぐにメルルちゃんのところへ……」
立ち上がらせようとするマーゴ。そのマーゴの顔にエマは手を沿わせて、震える声で囁いた。
「ボクの顔……なくなっちゃった……」
言い終えるとエマの顔が中心から溶け出すように無くなっていく。
「きゃああああああああああ!!」
エマの手はマーゴの顔を固定した。そのせいで目を離す事ができなかった。中心、輪郭と溶けていきついには首から上が消えてなくなった。
ばたりと倒れたエマの手はとうにマーゴから離れていたがエマがすべて無くなり、いなくなるまでマーゴは見続けていた。
マーゴの悲鳴を聞きつけたナノカがシャワールームへ駆けつけてきた。座り込み、浅く息をしているマーゴを見つけて構えていた銃を下ろしそばに寄った。
「宝生マーゴ、何があったの?」
「エマちゃん……確かにいたのよ……エマちゃんだったのよ……」
焦点の定まらない目はナノカを見ずにいた。今は話を聞けないと判断したナノカは直ぐに【幻視】を行うが上手く見ることができず歯がゆくなった。
エマが失踪して数日。日に日に衰弱し、気を病んだマーゴに気遣い、あるいは触れないように同室のナノカとメルル以外の少女たちは接することなく過ごした。未だにエマは見つかっていない。
「宝生マーゴ、昼食を持ってきたわ。」
同室のナノカがトレーに食事と言えないような食事と水の入ったコップを持ってきた。いつもは座り込んでいるマーゴがベッドのそばで身を丸めているのが目に入り机にトレーを置いて駆け寄る。
監房でマーゴは思い詰めていた。ふと気づくと顔から何かが滴り落ちたのを感じ、恐る恐る手を顔にやった。
「ああ……嘘……」
触れている手は顔をなぞっていく。声を発しているのに唇は無く、監房の、部屋の中の匂いを感じているのに鼻は無く、前を見ているのに眼が無かった。マーゴは今、あの時のエマと同じ顔をしていると感じていた。
「……宝生マーゴ?」
ナノカがマーゴの肩に手をやるとマーゴはその手を取り振り返った。
「……っ!!」
「ない……ないのよ……どこにも……!」
「ひっ……!」
驚き、尻もちをつくナノカにマーゴが覆いかぶさるように近寄る。壁まで押され、何もないその顔がナノカの顔すれすれまで近づき悲鳴を漏らして顔をそらした。パニックで勢いよく頭を動かしたせいで壁に頭をぶつけてナノカは気を失ってしまった。
ナノカが目覚めた時、マーゴはすでにいなくなっていた。
「宝生マーゴ!?一体どこに……」
スマホを取り出してマーゴがいなくなったことを伝えてから【幻視】でマーゴを探るが見つけることはできなかった。すぐに監房から出てナノカは探し回った。
夜になり、ナノカは監房へと戻ってきた。著しい結果はなくエマもマーゴも消えてしまった。誰かの魔法か、過去の囚われた魔女候補の少女たちの魔法か、はたまたこの島の不可思議な現象か。結論に至ることがないままその日は監房のベッドで眠ることにした。
ずるり。
何かがずれ落ちる感覚で目を覚まし、顔に手を当てた。
翌朝、黒部ナノカもいなくなった。
なんとか形になった?ので投げました。変則的エマーゴとマゴナノと言えるような気がします
書き終わった時に読み直してチェックしてると気づかなかったのに、投げてしばらくして加筆するのに読み直してると誤字脱字誤変換が多くて自分の適当さが良く分かります…本当すみません…今回の分もどこかしら絶対にやってる
勢いで書いてるとこあるので読み返すと恥ずかしい読み返すのもなんか恥ずかしい
次は15日に予約投稿してあります。よろしくお願いします