まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
便利に使った結果アンチヘイトになってるかもしれません
夏目アンアンの朝は淹れたてのコーヒーから始まる。
「うむ……!」
動画を見て欲しくなったコーヒーメーカーとミルなどの一式は倉庫にしまわれすっかり埃をかぶっている。飲むのはもっばらインスタントコーヒーである。まずは香りを堪能しふーふーとよく冷ましてから一口飲む。
「んぅ……!」
眉にシワを寄せて吐き出したくなるのも堪えてごくりと飲み込む。
「うぐっ……!はあ……うむ、美味かった」
舌をべーっと出してから強がりを言う。すぐに砂糖とミルクとこれでもかと入れ、黒いコーヒーはまだらになりぐるぐるとかき回せば優しいベージュ色のコーヒー牛乳になった。
「さて、今日は何をするかな……」
カップを持ちながらカレンダーの前に立ち予定を立てる。少し先の日まで見れば一つ桜の花びらで作られたシールが貼られていた。
「そうか、この日はエマが来る日か」
シールを貼ったマーゴはエマが島に来る日を毎回楽しみにしていた。いつも薄く化粧をしているがエマの来る日はあるしっかりとしている。
服装も最初こそいつもの服装でしていたがいつからかジャージで授業をして、エマと会う時は牢屋敷で用意された着物風ドレスを着るようにため、前日にきちんと用意しているのだった。
「……そうだ!良いことを思いついたぞ!」
アンアンはにんまりと笑ってからシールを一日後ろにずらして貼った。普通なら気づくだろうがマーゴは忙しなく過ごしているので一日伸びても気づかないかも知れない。
「これならばマーゴの今のいつもの姿を見せてやれるな」
うむうむと頷いてテーブルに戻ったアンアンはコーヒー牛乳を飲み干して朝食を食べ始めた。
約束の日……マーゴにとっては約束の日の前日。島に降り立ったエマを迎えたのはアンアンであった。
「エマっ!」
「アンアンちゃん!迎えに来てくれたの?ありがとう!」
「これくらい当たり前だ。それよりもだな、実は……」
アンアンがドッキリを仕掛けたことをエマは知る。
「ダメだよアンアンちゃんそういうことしたら。マーゴちゃん怒るよ」
「しかしだな、わがはいはいつものマーゴをエマに見て欲しくて……」
しょんぼりとするアンアンの言うことにエマは確かに、と続けた。
「確かにいつも来る時マーゴちゃんしっかりしてるし……たまにはいいのかなあ……?」
「いいに決まっている!それじゃあ早速行くぞ!マーゴに見つからないように隠れてわがはいたちの授業を見ていてくれ」
アンアンに手を引かれてエマは小走りで牢屋敷へ向かう。玄関あたりでアンアンは先に教室へ行き、エマは頭をひょっこり出して扉のガラスから授業を見ることにした。
「それじゃあ今日は……」
いつもと違い、ジャージでいるマーゴにエマは新しい発見をしたような気がした。少女たちに寄り添い、教え、聞き、導く姿はこうでもしければ見ることができなかっただろう。
「あら、もうこんな時間ね……それじゃあ、みんな休憩してちょうだい」
スピーカーから鐘がなり、その時間の授業が終わる。休み時間に少女たちは次の授業に使う教科書と資料を用意してわいわいと話をし始める。
マーゴもそんな少女たちを見てから次の授業の準備をしようと外へ出ると、この日いるはずのないエマを見てぎょっとした。
「エマちゃん!?どうして……!?」
「すごかったよマーゴちゃん!ボク、マーゴちゃんがこんなに頑張ってたなんて知らなかった!」
エマがマーゴに率直な感想をぶつけ、マーゴは照れながらたじたじとする。しかしそうなっても疑問を投げかけた。
「あ、ありがとうエマちゃん……そんなことよりどうしてここに?来るのは明日じゃ……」
「そのことなんだけどね、実は……」
エマは知ることをマーゴに伝えた。悪気があったわけじゃないから穏便に……とエマは言うがすべてを理解したマーゴは顔に手を当てひとつ大きなため息をついた。
「はあー……全くアンアンちゃんは……お仕置きが必要みたいね……」
「あはは……あんまりアンアンちゃんを責めないであげてほしいな。アンアンちゃんのおかげでボク今日の、この島にとっていつものマーゴちゃんを知れたんだし」
「……分かったわ。手加減はするわ。」
「ねえ、今日の残りの授業ボクも受けていいかな?興味津々なんだ!」
「えぇ……?常識が身についてるエマちゃんが受けても仕方ないと思うけど……いいわよ」
「やったあ!」
エマが喜んでいると教室から出てきたアンアンとノアがエマを見つけ、駆け寄ってくる。
「わあ〜エマちゃん!来てくれたんだあ」
「どうだったエマ!マーゴのだらしない姿は……あっ」
マーゴがいることに気づかなかったアンアンはすぐ横に立つマーゴを見つけしまったと口に手をやる。
「どうやら手加減は必要ないみたいね、アンアンちゃん」
語尾にハートがついているような言い方をするマーゴがだが背後はチリチリとしているような殺気を発しているとアンアンは察した。
「まずい!エマ!ノア!逃げるぞ!」
逃げ出すアンアンをすぐさま確保してほっぺたをグリグリとしまわすマーゴ。
「アンアンちゃ〜ん?」
「むぐう!すま……マー……!」
ひとしきりやり終えたマーゴは準備に戻ろうとしたがアンアンの口はまた開いてしまった。
「まったくマーゴめ……まるで鬼ババアではないか」
すぐさまアンアンの脳天に衝撃が走る。ふらふらとするアンアンをノアとエマが支えた。
「それじゃあ次は……」
休み時間が終わり次の授業が始まる。最前列にはノアとたんこぶで少しだけ座高が伸びたアンアンと楽しそうなエマが座っていた。
一日の授業が終わり、エマはマーゴに話しかけた。
「ねえ、このあと少し話せるかな?」
「もちろんいいわよ」
約束を取り付けたエマはマーゴが片付けをし始めるの見て、それを手伝ってから図書室へ二人で向かった。
図書室でエマとマーゴが談笑し始める。途中から島から出て暮らさないかとエマがマーゴに聞き始めた。
「ねえ……遊びに来たりするのもいいけど、やっぱりボクたちとこっちで暮らしたりしない?」
「私はいいの。ここであの子達がみんな復帰できるまではここにいるわ」
少女たちを全員助けたいと言う思いはマーゴを島に残ることに十分な物だった。少しずつ、何回かに分けてするそれは時間がかかるだろう。
「なれはてだった子たちがみんな島から出たら……マーゴちゃんも出るの?」
「そうね……みんなが島から出ても、私は島に残るんじゃないかしら……」
「独りで寂しくはない?」
「この桜の木を見ているとね……なんだか、寂しくないのよ」
「そっか……」
マーゴの決意にエマはそれ以上踏み込むことはしなかった。マーゴが島からでなくても、エマたちが島に赴き会えばいいのだから。
それから何年も経った。少女たちは島から卒業し、晴れてその人生を再び歩みだす。また新たな少女たちを解凍して、卒業して、その繰り返しである。
その間にリハビリを終えたナノカの姉がナノカとともに帰っていった。名残惜しそうな姉妹の背をマーゴは優しく見送った。
ノアとアンアンも本土へ行った。すっかりトラウマを克服したノアが島の外で絵を描くことを決め、アンアンも小説を完成させるために外へ出ることを決めたからだ。完成したら見せて欲しいと言うマーゴと必ず見せると約束をした二人はすっかり大人になっていた。
何年も監獄島で暮らしているとなぜかマーゴが老けなくなっていたことに気づいた。エマやヒロたちが会いに来るたびに老いないことを羨ましがられ、彼女たちに刻まれていく皺を見ながらマーゴはあなた達のその姿が人として正しいのだと応える。
最後の数人となったなれはてだった少女たちに留守を任せ、珍しくマーゴは島から出る。魔女候補として囚われていたマーゴと同期の12人の少女たちのうち一人の葬式である。
棺に寝かせられ、白装束を身に纏い、死に化粧を施されている大往生をした老婆は桜羽エマだった。エマの孫と間違われる若さのマーゴはエマに手を合わせた。家族と友人たちに見送られエマの葬式は終えた。
葬式の後11人で集まり、昔話に花を咲かせた後、島へ帰りマーゴは図書室で独り酒を呑んでいた。少しずつ呑んでは思い出を噛み締めてエマを想う。
頬が朱に染まり目が潤って来た頃、ふわりと桜の花が散った。ふわふわと落ちてくるそれはマーゴの手に持つお猪口へと向かっていった。お猪口に桜の花が浮かぶとマーゴは一気にあおり桜の花ごと飲み込んだ。
飲み終えた瓶や器を片付け、マーゴは桜の木に寄りかかる。エマと肩を寄せ合わせているような気がして、くすりと笑うとそのまま眠りについた。
目を覚ましたマーゴは魔法がかけられた桜の木を見上げた。今まで常に満開だった桜が少し散り始め枝を見せていることに気づいた。今いる少女たちが島を出る頃にはすべて散り、枯れるかもしれない。マーゴは木の幹に手を当てた。少しだけ手の甲が年老いて見えて自分もみんなと同じ最後を迎えられるのではと嬉しくなった。
某所で話に乗っかってちょっと投げた部分を伸ばしたやつ(2回目)
酔いながら書いてたのでいろいろ急なとこ変なとこあると思います。シラフでも大して変わりません
アンアンはえらい凝ったコーヒーを作る機械一式を欲しがって買っても一度使って飽きるどころか途中でめんどくさくなって誰かにやってもらってそうなイメージ。かわいい
予約投稿してあります15日0時ですよろしくお願いします