まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
その日の朝もエマたち四人が食堂で朝食を摂っていた。
「うーん……また今日もこれかあ……」
「ため息が出るほどまっじいですわ……」
「お野菜ときのこならたくさんありますから、一緒に食べてくださいね……?」
食べ物とは言えないような食事に飽き飽きし、島に自生する野菜やきのこ類を採り、それらを食べるようになったエマ達。
もしゃもしゃと食べるがもう少し何か食べたいとエマは完食しながら思っていた。
「ここから出る手がかりのついでに何か……缶詰とか見つけたいね」
「そうですわね……そう言えばここって非常食とかあるんですの?」
「今がまさに非常時と言えるのに、出てくるのがアレですからないんじゃないでしょうか?」
わいわいと言いたいことを言いながら食事を終える。食器を片して食堂を出てからメルルが何か思い出していた様だった。
「そう言えば……前に倉庫で役立ちそうな物を見た気がします……」
「メルルちゃんそれ本当?」
「それじゃあ今日は倉庫に行きましょうか!」
早速倉庫へ向かうエマたち。扉を開けて中に入るとメルルが思い出しながら目的の物を探していく。
「えーっと、確かこのあたりに……あっ」
メルルによって積まれていく物を一度外に置いていくエマたち。
ようやく目当ての物が見つかったのか、メルルが奥の方にあった細長い筒状の物を取り出してきた。
「ありました。これです……!」
入れ物から取り出すと出てきたのは十数本の竿であった。いくつもの輪っかが付いていて、先端に向かって先細りしているそれを見てシェリーはすぐに気づいた。
「釣り竿ですね!」
一つ手に取ったシェリーは軽くではあったが、ブンブンと振り回し強度を確認している。近くには針と糸、重りとウキ、そして古いリールがしまわれていた箱もあったらしく、メルルがそれらも持ってきた。
「わあ、これだけあれば釣りができるのかな?」
「それらしい物が近くにまだあれば、それも持っていけばいいんじゃありませんの?」
「ルアーが無いみたいですね。うーん……そうなるとエサを用意しないといけませんよね」
メルルが釣り竿を取り出してきた場所を重点的に探すがそれ以上めぼしい物は出てこなかった。どうするかと悩んでいるとメルルが口を開く。
「あの……エサなら余った食事を使うのはどうでしょうか?」
「えっ!?あれ……食べるのかな?」
「試して見ないことには分かりませんが、魚も食べないようであれば笑えますね!」
「笑えませんわよ……」
そうと決まれば、とエマたちは食堂へ向かった。道中で釣り竿が見つかったので釣りをやることを他の少女たちにチャットで伝えておいたが、今のところ返事は帰ってきていなかった。
食堂でハンナとメルルが食事を詰め、シェリーとエマは一階と二階に一人ずつ別れて役立ちそうな物を探すことにした。
「それじゃあ一階は任せましたよ!」
「うん、そっちはよろしくね」
エマは階段を上がってホールを通り娯楽室へ向かう。すると娯楽室で映画を見ているアンアンとミリアを見つけた。扉が開いた音に気づいたミリアが振り返り、挨拶をした。
「おはよう、エマちゃん」
「む?エマか……」
「おはようミリアちゃん、アンアンちゃん!さっき、みんなに通知したと思うんだけどボクたちこれから魚釣りするんだ!二人とも一緒にどうかな?」
「あー、さっきのやつ。うーん、どうしようかな……?」
「アンアンちゃんはどう?」
悩むミリアの横で、ミリアの体に頭を寄せて映画鑑賞をしているアンアンにエマが聞くとアンアンは露骨に嫌そうな顔をしてスケッチブックを取り出した。
「『断る。わがはいは医務室に居る』」
「あはは……あー、じゃあおじさんもパスしていいかな?アンアンちゃんと待ってるから……」
「うん、分かったよ!釣れたら持ってくるからみんなで食べようね!」
一緒にいたミリアがアンアンを連れて医務室に向かう。それをエマは見送ってから娯楽室を探すことにしたがめぼしい物が見つからなかった。
図書室へ向かうと娯楽室と同じく先客がいた。マーゴだ。
「あら、エマちゃん。何か探し物?」
図書室に入るなり、座って本を読んでいるマーゴに気づかずキョロキョロと探す素振りをしているエマにクスクスと笑いながらマーゴは話しかけた。
「あっ、おはようマーゴちゃん。実はね……」
先程と同じように、釣りをすることをマーゴに伝える。するとマーゴは指先を口元に当て考え始めた。
「そうね……ずっと本を読んで根を詰めていたし、少しくらいは外に出るのもいいかしら……」
「本当!?それじゃあ、あとで湖に来てね!」
「ええ、またあとで。良いところまで行ったら切り上げるから、その時に」
ひらひらと手を振るマーゴと別れてエマは図書室から出る。本ばかりの図書室で本以外の物を探すのはすぐに終わったようだ。
これといった物が見つからなかったエマはシェリーにそちらを手伝う連絡を入れて一階へ向かった。
「お疲れ様ですエマさん!そちらはどうでしたか?」
「ごめんね、ボクの方はあんまり……」
「謝らないでください!私の方もあんまりでしたから!」
あら方探し終えて二人が食堂へ戻ると準備を終えたハンナとメルルが待っていた。
「それじゃあ行きましょうか!」
クーラーボックスや魚籠の変わりに倉庫にあったバケツを用意して湖へ向かった。魚が釣れたらこれで冷やせる、とバケツの中にはメルルがどこかから持ってきた氷の塊が入っていた。
バケツと道具一式を軽く持ち上げたシェリーが先頭を歩いていく。雲のない晴れの日差しが四人の影を伸ばしていた。
湖には畔で横になっているアリサと、アリサに絡むココがいた。
「あれ?ココちゃん!来てくれたんだね!」
「やっほ〜エマっち〜。暇だからさ来ちった」
絡む標的を変えたココに安堵してため息を一つするアリサ。
「アリサちゃん、お邪魔するね」
「構わねえよ……この場所はウチのモンじゃねえしな」
「ありがとうアリサちゃん!ねえ、アリサちゃんも一緒にやろうよ!」
「あー……ウチは遠慮しとく」
アリサが断るとニヤニヤと笑いながらココがまた絡みに来てアリサを煽る。
「ヤンキーさあ、ひょっとして魚が怖いんじゃね?つかあてぃしに釣りで負けんのが怖いんじゃね?」
「あぁ!?んだと!?」
「んじゃあさあヤンキーもやるよね?釣り大会にしてさあ、負けたら罰ゲームすっから!」
「上等だ……!てめえには絶対負けねえ……!」
「ココちゃん、アリサちゃん!喧嘩は駄目だよ?」
「止めてくれんな桜羽!」
煽りにすぐさま着火したアリサはそのまま売り言葉に買い言葉で釣りに参加することになった。
「勝ち負けどころか釣れるか分からないんですけどいいんでしょうか?」
「いいんじゃありませんこと?」
いつの間にか釣り大会になったがそれも良いと全員が許諾し、開催されることになった。
そのまま釣りの準備をしているとマーゴが遅れてやって来た。大会になったことを伝え、セッティングされた釣り竿を受け取り、近くにいたココの隣に陣取る事にしたようだ。
弾力のある食事を少し指で取り、丸めて針に付ける。各々が釣れそうな位置に着いて始まりの合図を待っていた。
「それじゃあハンナさんよろしくお願いします!」
「えっ!?わたくし!?」
急な振りに驚きながらもハンナは息を深く吸い込んだ。
「釣り大会スタートですわ〜〜〜〜!!」
ハンナの掛け声により釣り大会は始まった。一人、また一人が湖に糸を垂らす。
一向に釣れる気配がないが、湖には気持ちのいい風と温かな日が差し、和やかなムードが漂っていた。
「こうしてゆっくりしてるのも、たまにはいいわね……」
水面を見つめながら魚がかかるのを待つ。そんな時間にリラックスする少女も多いが、釣れないことがストレスになる少女もまたいた。
「あてぃしとしてはさっさと釣れてくれた方がいいんだけどな〜。撮れ高は大事っしょ!なのに絵面変わらないし、盛り上がらないし、つまんねー!」
「忍耐が足りねえんじゃねえか?根性見せろよ」
しばらくするとハンナの竿にファーストヒットが。
「どうしたらいいんですの!?どうしたらいいんですの!?」
あたふたしながら竿を引いているとすぐにやって来たシェリーが手伝い、するりと一匹釣り上げた。
「やりましたわー!シェリーさんありがとうございます!……それで、これはなんて魚なんですの?」
「うーん、分かりません!この島独自の種とかですかね?」
食べられるか分からないが見た目は普通の魚に見えるそれをジッと観察する。
「あの、大丈夫だと思いますよ。医務室にお薬がたくさんありますし、万が一の時は私の魔法もありますから……!」
そう言う事なら、と針を取ってバケツに魚を入れて釣りを再開するハンナ。ハンナの初釣りを皮切りに少女たちが一匹、また一匹と釣れていく。
「おーい!まだやってるかーい?」
声のする方を見るとミリアがアンアンの手を取ってこちらへ来ていた。
「やっぱりさ、こう言うレクリエーションは参加した方が良いかなって思って。アンアンちゃんもおじさんが餌付けるなら釣りしてみたいって言ってくれてね!」
「うむ。ミリアがどうしてもと言うからな……」
十分もしないうちにアンアンの竿に魚が食いついた。おっかなびっくり竿を握る。
「おお!?どうしたらいいんだ!ミリア!ミリアー!」
すぐに助けを求めるとミリアは自分の竿を置いてアンアンの竿を一緒に支える。リールを引いて合わせているとあっという間に一匹釣り上げた。
「見ろミリア!これわがはいが釣ったんだ!」
「良かったねえアンアンちゃん。おじさんも負けないぞー」
わいわいとはしゃぐ中、いつの間にか参加していたナノカが魚を片手にメルルのところへ来ていた。
「氷上メルル。これもお願いするわ」
「わあ……ナノカさん、来てくれてたんですね」
「ええ。でも戻ることにするわ。釣果は挙げられたし、邪魔したくないもの」
「そうなんですか……分かりました」
魚と釣り竿をメルルに渡し、ナノカはすぐに雑木林へ入り、消えていった。
日が暮れ始めて、湖の周りが暗くなり始めた頃。
「そろそろ終わりにしよっか」
「名残惜しいですが賛成ですね!ハンナさん、締めてくれますか?」
「ええ……?またわたくしが言うんですの……?」
戸惑いながらもハンナはこほんと咳払いをしてから息を吸い込み、声を張る。
「終〜〜〜〜了〜〜〜〜〜!!!」
大会が終わり、バケツに入った大量の釣果に少女たちは笑顔になっていた。が、ハンナがそう言えば……と話をし始める。
「それで、誰が優勝なんですの?」
「あっ……そう言えば釣れたら全部メルルちゃんのところへ持って行っちゃったね……」
「釣れた数も分かりませんし、大きさもどれが誰のか分かりませんね!」
締めの言葉を聞いた少女たちが釣りをやめ、続々と集まってくる。
「私はビリかしらね?ボウズだったから」
「え〜?優勝したらヒッキーのスケッチブックで魚拓取りたかったのにな〜つまんね〜」
「ウチは……まあ、楽しかったし勝ち負けはこの際気にしねえよ」
「思いの外楽しかった。わがはいは釣りの天才かもしれん」
「アンアンちゃん良かったねえ。おじさんは……ちょっと疲れちゃったよ」
思い思いの感想を言い合って帰り支度をする少女たち。シェリーがバケツを軽く持ち上げ、釣り竿を各々が持って牢屋敷へ帰っていった。
シェリーが調理場に魚を置いて行ってからシェリーは片付けの手伝いに行き、釣り竿を片したハンナがすれ違い入ってきた。
「さあてメルルさん!わたくしも手伝いますわ!」
「ハンナさん、ありがとうごさいます。でも、今日は私に任せてくれませんか……?」
「どうしてですの?」
「私、今日何もしていませんから、せめてこれくらいは……みなさん汗かいてますよね?みなさんでシャワー浴びて待っててください……!」
「何もしてないわけじゃないと思いますけれど……では、お言葉に甘えさせてもらいますわ」
メルルが一人で調理していると、ゴクチョーが飛んで来た。盛られていく皿のうち一枚を見て首を傾げる。
「おや、一枚、量が他と比べて足りない様ですが……」
「ああ……それはですね」
少女たちのために魚を捌いて焼き、蒸し、煮ていくつかの料理を作っていくメルルはゴクチョーの疑問に答えた。
「私の分はちょっと……だって……あんまり食べたくないですよね?湖で消えちゃった子や湖の底でまだ泳いでる子がいるところにいるお魚なんて……ね?」
食堂へ出来上がった料理を持っていくメルル。座って待っていた少女たちの前に皿を置いていくとエマがメルルの分が極端に少ないことに気づいた。
「あれ?メルルちゃんの分は?」
「私の分なら大丈夫です。味見した時にちょっとつまみ食いもしちゃったので……」
「そうなの?じゃあボクの分少し食べてよ!」
「それじゃあわたくしの分も」
「シェリーちゃんの分もどうぞ!遠慮なさらず!」
少女たちがみんなで分け合いメルルの前には山盛りの魚料理が立ちはだかっていた。
「よかった、これならメルルちゃんもたくさん食べられるね!」
笑顔で言うエマ。少女たちの好意を無碍にできないメルルは涙しながら残さずすべて平らげることになった。
どひー!なオチ。弱い
次はナノカ誕生日に投げられたらなと思ってます。
ぐしゃぐしゃ良かった…