まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
よろしくお願いします
「お姉ちゃんのバカ!もう知らない!」
ある日の夜、ナノカは姉のホノカと口論になり家を飛び出した。
夜の街を走って走って、次第に歩きに変わっていく。勢いで飛び出した熱も走って荒くなっていた息と共に落ち着いてきた。
(どうしたら……)
とぼとぼと歩きながらナノカは考える。まだ家には帰りたくないし、誰かに相談したい。だが、夜遅いこんな時間に相談できる相手なんて……そう思った時一人思い当たった。
迷惑はかけるだろうが、彼女ならこの時間でも平気だろうとある種の信頼があった。早速ポケットからスマホを取り出して電話をかける。
「……もしもし?」
『よお。おめえからかけてくるなんて珍しいな』
電話の相手はアリサだった。元不良のアリサならこの時間によく遊び歩いてただろうし電話をかけても平気かも知れないと思った。
『こんな時間にどうしたんだよ?』
「ちょっと相談したいことがあって……」
ナノカの真剣な声にアリサはただ事ではないと察し、一度大きく息を吐いた。
『はぁー……ったく……会って話した方がいいだろ?どこいんだよ』
「──の辺りよ」
『分かった。ちょっと待ってろ』
電話を切り、近くの自販機の横に座り込むナノカ。安心したせいか、涙がぽろりと流れる。それを手で拭うと、櫃を切った様に涙が止めどなく流れた。
「おい!大丈夫か!?」
いつの間にか来ていたアリサが血相を変えてナノカの前にやって来た。泣いているところを見られて少し気恥ずかしいが、軽く袖で涙を拭いてからナノカはアリサを見上げた。
「平気よ。来てくれてありがとう。紫藤アリサ……」
「あー……これ使えよ」
手渡されたハンカチで改めて目元を拭う。
「……洗って返すわ。ありがとう」
「いいって別に……それで、どうしたんだよ?」
「……歩きながらでもいいかしら」
「構わねえけど……じゃあちょっと散歩するか」
二人並んで歩き出す。言い出すタイミングが掴めないのかナノカは黙ったままだった。
「話したい時に話してくれればいいからな……」
「うん……」
気を利かせたアリサが時々世間話を振れば、ナノカは一言二言返事を返して会話が終わる。
歩きはじめてそこそこ経つと、海が見えてきた。
「寄っていくか?」
「……任せるわ」
「そうか。じゃあ来ちまったんだし、近くまで行くか」
海岸までやって来たアリサは砂浜に腰を下ろす。少し遅れてナノカも隣に座り、海を眺めていた。
一定の間隔の波の音と潮の匂い。海の上の月だけが二人を見つめていた。
「……紫藤アリサ。あなたに相談したいことがあったの」
「ああ。」
本題に入りアリサはナノカの目を見て聞く姿勢を取る。
「実は……その、お姉ちゃんと喧嘩をしてしまって……」
「なんで喧嘩なんかしてたんだよ……?」
「それは……」
言葉が途切れる。一度深呼吸してからナノカはまた話し出す。
「私とお姉ちゃんは一つ違いだったの……だけど、お姉ちゃんは二年間ああだったから……今では私の方が年上と言っていい様なものでしょう?」
「ん……?そうか……?」
「それで思ったの。私が留年したらお姉ちゃんと一緒のクラスになれるかもって」
「は?」
アリサはぽかんと口が空いてしまった。冗談で言ってるのかと思えば、顔を見てみると真剣そのものだ。
「だから、お姉ちゃんにわざと留年したら一緒にいられるねって言ったら急に怒ってしまって……」
(そりゃそうだろ……)
どうしたものか。アリサは混乱しながらも話をまとめようとする。
「あー……そうだな……黒部はお姉さんと日頃から一緒にいられるんだから同級生にこだわる必要ねえだろ」
「でも……」
「だからな、今じゃねえとできねえ事した方がいいんじゃねえか?例えば……」
アリサは首を左右に傾げて少し考える。何かいい着地点は無いかと。
「今は黒部の方が年上?なんだから先に大学生になって先輩になって待つとかいいんじゃねえのか?」
「お姉ちゃんの先輩……?私が……?」
言ってみてから意外といい線だと思えたアリサは話を続ける。
「ああ。小中高とお姉さんが先で待ってただろ?それを今度はおめえがやるとかさ……」
「……そう言うのもいいと思うわ。……うん、そうね」
ナノカは納得したのか何度か頷いてアリサに向き直った。
「ありがとう。紫藤アリサ。あなたに相談してよかった」
「いいって別に……」
顔をそらしてアリサはぶっきらぼうに振る舞うが、頼りにされたことが嬉しいのかマスクの下の頬が少し朱くなっていた。
「……ねえ、どうしてあなたは今日来てくれたの?」
疑問に思っていたことをポツリとこぼす。
「あぁ?そりゃ……心配だったし、友達……だからな」
「……そう。そうだったの」
「チッ……忘れろ」
しばらく二人は黙り込んでさざ波の音を聞いていた。心地よい音と流れていく時間。安心したこともあってつい、うとうととしたナノカはアリサの肩に頭を乗せてしまう。
「……そろそろ帰った方がいいだろ。送っていくから案内してくれ」
「……うん」
先に立ち上がったアリサに手を差し出され、ナノカはその手を借りて立ち上がる。軽くお尻をはたいて砂を落としてから海をあとにする。
ここに来るまでと同じようにぽつぽつと話しながら帰路についた。
「お姉ちゃん、ただいま」
「おかえりなのちゃん!」
ナノカが玄関を開けるとすぐにホノカが飛んできた。
「さっきのことだけど、私が間違ってたわ。ごめんなさい……」
「ううん、いいんだよなのちゃん」
姉妹の仲直りを見守ってるアリサ。生暖かい視線に気づいたのかホノカがナノカの後ろのアリサに気がついた。
「誰!?まさか、送り狼!?お姉ちゃんの目が黒いうちはなのちゃんはあげません!残念でした!さよなら!」
「……うっす……」
ホノカの勢いにたじたじになりながら帰ろうとするアリサに、ナノカが待ったをかけた。
「ちょっと待って。お姉ちゃん、紫藤アリサよ。それと紫藤アリサ、もうこんな時間なのだし泊まっていって」
「なのちゃん!?」
「いや、でもよ……」
「友達なのだし泊まるのもいいでしょう?」
「うっ……あー……分かったよ……じゃあちょっと連絡させてくれ。……よし、これでいいか」
玄関の前に立っていたアリサは靴を軽く叩いて砂を落としてから黒部宅に上がり込む。
「潮風で髪がきしんでるかも知れないし、お風呂に入りましょう」
「なのちゃん!!?」
「あぁ……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうかな」
他所の家で裸になることに少し気恥ずかしさを感じながらアリサはそそくさとお風呂場に入る。
「あーっと……どれがどれだ……?」
「こっちがシャンプーでこっちがトリートメント。それがボディーソープよ」
入る前に聞けばよかったかな、と考えたアリサにすぐに教える声が。
「ああ、ありがとよ……って、おいっ!?おめえ、まだウチが入ってんだろ!?」
お風呂場に入ってきたナノカにアリサは驚いてシャワーを止めた。
「別に一緒に入っても問題ないんじゃないかしら?友達、なのだし……」
「チッ……」
自分から友達だと言い出したことと、客人であることからアリサは受け入れて一緒に風呂に入ることにした。
「ねえ」
「なんだよ黒部」
「それのことなのだけれど」
「どれだよ……」
首を傾げるアリサだが思い当たる節はあった。
「あー……下の名前で呼べってか?」
「そうしてくれると嬉しいわ。その、……アリサ」
風呂の熱さのせいか少し顔を赤くしながらも、ナノカはアリサの目を見て名前で呼びかける。
「別に呼び方なんてどうでもいいだろ……ナノカ」
照れくさいのか目と目が合っていた視線を外し小さく名前を呼ぶ。ちゃんと聞こえていたようで、ナノカは笑顔になっていた。
体育座りで向かい合う二人。会話は多くなかったがアリサは思いの外リラックスして湯船に浸かっていた。
風呂から上がり、ナノカの服を借りてナノカとホノカの部屋で過ごしているとすっかり夜も更けてしまっていた。
いつも二人で寝ているというベッドにアリサはナノカ、ホノカに挟まれ横になっていた。三人でも窮屈になっていないが、精神的にアリサは圧されていた。右手は指を絡ませるナノカ、左手はぎりぎりっぎゅっと握ってダメージを与えるホノカ。
「あのよ……黒部……あー、ナノカ……この手は……?」
「……?いつも寝る時はこうだから……何かおかしかった?」
「いや、構わねえけどよ……」
おかしいと言うな、と言わんばかりに左手を握られアリサは冷や汗をかきながら言葉を濁す。
「おやすみなさい、お姉ちゃん。……アリサ」
「おやすみなのちゃん!アリサ。」
「お、おう……おやすみ……」
方や名前で呼ばれ気恥ずかしながらも嬉しく、方や名前で呼ばれ背筋が凍るアリサはぎゅっと目を瞑るが眠れずにいた。時計の針の音がやけに耳に残る。
何分か何十分かはたまた何時間か経ち、すうすうと二つの寝息が聞こえてくる。それが心地よく感じられた。左手の痛みはまだあるが、いつの間にか右手と同じように指が絡まれている。まあいいか、と受け入れてそのまま寝息に合わせて呼吸をしてすぐに眠りに落ちた。
ナノカとお姉ちゃんにアリサ挟んだら話が進んだわって感じのナノアリ(ホノ)
2-2とXの情報で形成される誇張されたお姉ちゃんにココロノクライで本名が追加。さらに戦えるようになったんではないでしょうか