まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
「うん……おっ……おお……」
「大魔女様…もうそろそろ晩ごはんですよ?ピコピコ中断してくださいね……?」
「ふう……もうそんな時間ですか?」
大魔女月代ユキは今一軒家にメルルと共に暮らしている。一日中ゲームをしたり、漫画を読んだり、ゴロゴロしたり。堕落の二文字を表すとしたら今のユキがふさわしいだろう。今日もゲームをし続けて夜になっていた。
魔女因子をすべて集め、メルルと心中したはずだったが不思議なことが起こった。魔女因子が霧散し無傷の二人がその場に残ったのだ。
呆気に取られながらもどうしたものかと顔を見合わせていたらいいじゃないかいいじゃないかとなあなあになり、政府に監視されながら暮らせることになった。
エマとヒロがユキたちとすぐ近くに暮らせるようにとお願いしたが、監視対象は近くに集められれば集められるほど楽になるとのことですんなり了承が取れた。
「出来ましたよぉ大魔女様!」
「待ってましたよ……美味しそうですね。ええ……」
「それじゃあ、いただきましょう大魔女様……コホン」
いただきますをする前に小さく咳をするメルル。珍しい光景ではあったがメルルなら魔法で直せるだろうと晩ごはんに意識をすぐに戻して箸を手に取るユキだった。
「いただきますね、メルル……」
「はい!どうぞ召し上がってください!」
その日もメルルの料理に舌鼓を打ち、完食してまたゲームに戻った。メルルはニコニコしながらユキが食べた皿洗い、鼻歌を歌って家事をこなした。
次の日の朝。珍しくユキがメルルに起こされることなく目を覚ました。どうしたことかとメルルの様子をうかがう。
「メルル……?朝ですよ?」
ユキがメルルの顔を覗き込むとメルルの顔は赤く、辛そうにしていた。これは不味いと思い少し焦る。
「大丈夫ですかメルル……?」
額に手を当てると熱いのがよく分かる。熱を測らなければ。体温計はどこにあったか?風邪薬はあるのか?食事は?しなければならないことがユキの脳裏をぐるぐると巡る。その時ふと思いついたことをメルルに聞く。
「メルル?魔法で直せないのですか……?あっ」
うっかりしていたが、魔女因子を集めて霧散したため、ユキを含めて魔女候補の少女たちはすでにただの少女になっていたのだ。
どこにあるのか思いつかないユキはこの家について詳しい人物に聞くことにした。
「もしもし、ヒロですか?私です」
『ああ、もしもし。どうしたんだユキ』
「今、家にいますか?」
『いや……今は、エマと出かけていて……何か用があったのか?』
「実はですね──」
電話した経緯を話すユキ。メルルが熱を出したことをヒロに伝えると、すぐにエマに情報共有しているヒロの声がスマホから聞こえてくる。
『事情は分かった。すぐに帰るよ』
「ちょっと……出かけているんでしょう?聞きたいことを聞けたらあとは私がやれますから……」
『ユキが?そうか……』
「ええ、私が。早速ですが、体温計やなんかはどこに……」
『それなら──』
ユキとメルルの家に毎日顔を出しては世話を焼いていくヒロ。家のことをよく把握していてすぐに知りたいことをユキは教えられた。
「ああ、ありました。ありがとうございますヒロ。あとは平気ですから、楽しんでくださいね。エマにもよろしく伝えてください」
『ああ。そっちもメルルのことしっかりな』
通話を切り、メルルの元へと戻るユキ。
(思えば……私はこの家のことほとんど知りませんね……家人失格……と言うことでしょうか)
未だ顔が赤く、辛そうにしているメルル。ユキは持ってきた体温計をメルルの脇に挟む。最新の体温計のおかげかすぐにピピピと測り終えた音が鳴る。
「どれどれ……うっ、これは……」
表示された数値は高熱だった。メルルの額に手を当てて改めてその温度を直に知る。
「少し待っててくださいメルル……」
ユキは寝室を出て、ヒロに言われたアドバイスに従い替えのパジャマと濡らしたタオルを持って戻ってきた。
「今汗を拭きますから……ちょっと失礼しますね、メルル……」
汗を拭いて着替えさせる。小さめの体のユキがテキパキとやるには無理があり、少し手こずりながらだったがなんとかやり終えた。
「さて、次は……」
パジャマを洗濯機に入れてポチポチと操作してユキは昼食の準備に取り掛かった。久方ぶりに作る手料理。ユキは少し緊張していた。
「お粥の作り方は聞いていませんでしたが……まあ、なんとかなるでしょう……冷蔵庫にご飯は残ってますかね……?」
冷蔵庫の扉を開ける。何時もは扉の内側にあるお茶やジュースしか気にしていなかったユキだが改めて見ると綺麗に整理され、分かりやすかった。
「ああ、これでいいでしょう。後は卵もいりますかね?……おっとこれは……」
冷蔵庫をくまなく見ているとある物が目に入った。梅干しだ。ヒロが持ってきたものでメルルが一つ食べるとすっぱいですぅ……と顔をしわくちゃにしていたことを思い出し、くすりとユキは笑った。
「これも一緒に出すとしましょう。さて、それでは作りますか……」
料理に取り掛かる。鍋に湯を沸かし、冷や飯を入れていい感じになったら卵を入れ、かき混ぜる。最後に塩を振り味を整えて味見をする。
「……?全然分かりませんね……?」
物足りないと感じて更に塩を振り再度味見をする。あまり塩っぱすぎても良くないと思い、ほんのり塩味の卵粥を完成させた。
トレーにお粥と梅干しと水を乗せて寝室に戻る。念の為食べる前に濡れタオルでもう一度拭いた方がいいと思いついて濡れタオルも持ってきた。
「メルル……?ご飯ですよ……」
「……んぅ……?大魔女様……?」
メルルは起きていたようで、返事もできていた。ひとまずホッと
胸を撫で下ろしてユキはトレーを机に置いてタオルを手にメルルの横へ来た。
「お粥を作ってきました。が、その前に汗を拭きましょうね……」
「大魔女様……そんな……自分で拭けますから……ケホッ」
「病人なんですから、おとなしくしてください……ほら、バンザイして……」
メルルの上半身を起こし、なすがままされるがままメルルはユキの看病を受け入れた。目に涙を溜めて。
「ああ、大魔女……ありがとうございます……とっても、嬉しいんです……」
「大袈裟ですねメルルは……はい。拭き終わりましたよ……」
拭き終えてユキはトレーからお粥と匙を手に取ってメルルの隣に座る。
「少し待ってくださいね……ふーっ、ふーっ……はい、メルル。あーんしてください……」
甘えてくださいと言わんばかりにユキは世話を焼く。メルルはあーんと口を開けて匙を頬張った。
絶品とは言い難いお粥。ただのお粥。それでも今のメルルにはとても美味しく感じた。
「おいしい……おいしいです……!」
ポロポロと涙を流してお粥を咀嚼して堪能する。何度もよく噛んで飲み込む様を見てユキはくすりと笑ってから次の分を用意した。
「大袈裟ですね。こんなの普通のお粥ですよ……ほら、あーん……」
「あーん……」
途中梅干しを挟んでメルルの酸っぱい顔を見てくすくすと笑い、またお粥を差し出す。お粥と梅干しを完食し、水と薬を飲ませて
ユキはメルルを横にさせた。
「食べたばかりですが大丈夫ですか……?眠れそうですか……?」
「はい、大丈夫です……ありがとうございます大魔女様……」
布団をかぶり、目を瞑るメルル。ユキがポンポンと身体を叩いているとすぐにメルルは眠りだした。
少し良くなったように見えるがまだ熱はあるようで眠りについても少し息苦しそうにしていた。
「薬が効いてくれるといいですが……もどかしいですね……」
先程よりは少し熱の無い額に手を当ててユキは心配そうに見つめる。しばらくの間メルルの呼吸のリズムに合わせてポンポンと叩き続け、いつの間にかユキも船を漕いで軽く眠っていた。
ハッとして目を覚ますユキ。ポケットか、スマホを取り出して時間を見ると夕方になっていた。
「ちょっと寝ちゃいましたね。そうだ、そろそろ乾燥終わってるはずですが……」
メルルを優しく撫でてからユキは寝室を出る。洗濯機の乾燥はとうに終わっており、扉を開けてパジャマを取り出し畳んで寝室に戻ろうとするとピンポン、と家のベルが鳴った。
「誰ですかこんな時に……」
インターホンのモニターを確認するとそこにはよく知った顔が二人立っていた。
「エマとヒロじゃないですか……出掛けてたんじゃ……」
どうして?と思いながらユキはインターホンから呼びかける。
「どうぞ、上がってください」
「お邪魔します!ユキちゃん!メルルちゃんはどう?大丈夫?」
「ええ、落ち着いたと思いますよ……それより、どうしたんです?出掛けていたんじゃ……?」
「やあ、ユキ。エマが心配してすぐお見舞いに行かなきゃと言ってね……ああ、ゼリーを買ってきたんだ。冷蔵庫で冷やさせてくれ」
「えっ、ゼリーですか?ありがとうございます……なんだか、悪いことをしてしまいましたね……」
「いいんだよユキちゃん!おでかけならいつでも出来るから」
「そう言うわけだ。」
上がりこみ、手洗いうがいをしてからヒロは台所へ向かっていった。同じように手洗いうがいをして上着を脱いでからエマはメルルの様子を見に行った。
すうすうと寝息を立てるメルル。どうやら熱は引いてきたようでかなり楽になったように見える。エマもホッと胸を撫で下ろした。
「メルルの様子はどうですか?エマ」
「あっ、ユキちゃん。だいぶ良くなったんじゃないかな?」
濡れタオルとパジャマを持ってきたユキ。額に手を当てると熱は引いているように感じた。
「ふむ……これなら大丈夫そうですね……よかったです……」
一安心してから寝ているメルルの汗を軽く拭く。着替えは起きてからでいいだろうと近くに用意して、ユキはエマと他愛のない話をし始めた。
話の途中、窓を見るととうに暗くなっているのに気がついた。そろそろ夕飯の準備をしなければ……そう思ったユキの鼻腔をいい匂いがくすぐった。
「この匂いは……」
「ヒロちゃんが用意してくれたのかな?見てくるね」
目を輝かせたエマを見送ると丁度いいタイミングでメルルが目を覚ました。
「おはようございますメルル。大丈夫ですか?」
「あっ……大魔女様……。はい、すごく良くなりましたぁ……ありがとうございます……!」
「いいんですよ……いつもあなたにはお世話になってますしね……」
言いながらユキはメルルの汗を拭いて着替えさせる。着替えが終わった時にコンコンと寝室がノックされた。
「ユキ、メルル。私たちだ。入るよ」
「晩ごはん持ってきたよ!」
ヒロが作っていたのはうどんの汁だった。出汁のしいたけに彩りのあるにんじんとほうれん草。さっぱりとして食べやすい鶏肉のシンプルな物だったが上品な色の汁は濃すぎず薄すぎず、丁度いい塩梅の色と味だった。
「わあ……ありがとうございますぅ……美味しいです……!」
「みんなで食べると美味しいね!」
「その言い方ではみんなで食べるおかけで美味しいかのようだな……いや、冗談だよ」
「メルル。デザートもありますからね。ヒロたちが買ってきてくれましたよ……」
和気あいあいと夕飯を終えて、薬を飲んだメルルは早くに眠り、お腹が一杯になったエマも一緒に眠っていた。
「大変だったな。ユキ」
「感謝しますよヒロ……」
「なんだ?君が素直に礼を言うなんて……少しくすぐったいな」
「あなたの世話焼きのおかげです……あなたはまるでお母さんですね……」
「……なんだと?それは褒めてるのか?」
「もちろんですよ。いえ、ちょっと待ってください……やっぱり姑の方が似合いますよ……」
「……ユキ。そこに正座しろ。だいたいだな、君はいつもいつも……」
その日ユキはヒロの説教を正座で聞き続けた。数時間にも及ぶそれを受けながらもユキの顔には笑みがこぼれていた。ヒロは頼りになる、と。
その笑みを見逃さなかったヒロは反省が足りないと判断して椅子に座って説教をさらに長時間コースにしてすることにした。
翌朝メルルは完治した。いつものようにユキより早く起きて朝食の準備をしてユキを起こす。
いつもと違っていたのはユキが食事の準備の手伝いをし、食べ終えたあとに流し台まで皿を持っていったり、家事を手伝ったりしたことだった。
メルルは二人三脚で家事をできることに喜び涙をしていた。ユキは大袈裟ですね、と言いながらも協力することは悪くないと感じていた。
新し目の体温計ってマジで早く終わってビビる…
おかゆとうどんは自分でやってる時の適当なやつなんで医学的に良いかは知りません見逃してください