まのさばで思いついた一発ネタ集 作:ないでーす!
本編後で書いてるのでネタバレ…?か?って感じです
「はい!シェリーちゃんにおまかせを!」
とある初夏の日。
シェリーが請け負ったのはご近所さんの猫探しだった。探偵業に猫探しはテッパン、とシェリーはウキウキわくわくしながらケージを受け取った。
「──と、言うことですので私はちょっとでかけますね!」
「あら、そうなんですの?じゃあちょっとお待ちなさいなシェリーさん」
昼食を食べ終えて二人は腹ごなしに雑談をしていた。先程あったことをハンナに伝え、ケージ片手にすぐ外へ行こうとするシェリーにハンナが待ったをかける。
掛けてあった大きめの帽子をかぶせ、水分補給のための水筒を用意しシェリーの肩にかけられたポーチに入れて、これでよしとハンナはうんうんと頷いていた。
「とりあえずこれでいいですわね。まだ夏本番でないとは言え、油断せず水分はマメに摂るんですのよ?水筒の中身がなくなる前に一旦帰って来なさいな?長くなりましたけど気をつけてくださいましシェリーさん」
「はーい!分かりました!それじゃあ行ってきまーす!」
コップに残った水を飲み干し氷をガリガリと噛んでシェリーは家を出た。
帽子をかぶり、すぐに取り出せるようにポケットに虫眼鏡を入れ、水筒とスマホが入ったポーチを揺らしながらケージを片手に太陽の真下をずんずんと歩き、探し回る。
日差しが強いのだから、猫もきっと木陰に避難しているだろう。シェリーは森林の方へ向かうことにした。
「ふーむ?いませんねー」
道を外れた先、緑色が少しずつ目立ち始めた。アーチのように囲う木々が道先を示す。聞こえていたセミの鳴き声が遠くに感じる閑静な道がシェリーの好奇心をくすぐった。
「へー!こんな道があったんですね!探検……は今度にして、今は猫を探さないと!ですね!」
どれほど歩いたか、猫に声をかけながら探し続けるが一向に見つからない。滲んだ汗をハンカチで拭いて一息ついた。
「猫さーん!いませんかー!……いませんねえ。はあ……」
その時だった。シェリーの耳に猫の鳴き声が聞こえてきたのは。セミの鳴き声が途切れた一瞬に聞こえてきた方へずんずんと歩みを進めると、寂れた小さな神社にたどり着いた。
朽ちながらも悠然と佇む鳥居と、高い木の先から差し込む日光が境内を所々照らす。その中の社は嘘のように綺麗に形を保っていた。
「いかにも、って感じの場所です!猫さんこの辺りにいたりしませんかね?」
鳥居をくぐり、社へ向かう。厳かな気配がする境内は、セミの鳴き声がいつの間にか消え去り、暑さが和らいでいる気がした。境内を進むとチリンと鈴の音が聞こえた。
「あれは……」
猫の姿が社からチラリと見えた。首輪には鈴がありアレがなったのだろうと推察する。
首輪と柄からして探している猫に違いない、とシェリーは猫を追いかける。
「あっ!待ってくださーい!」
境内の奥へ、奥へと進んでいく。いつの間にかぐるっと回って来たのか鳥居の前に到着していた。
「あれ……?」
猫の姿を見失い、辺りを見回すシェリー。景色に何か違和感を感じたが、まあいいかと気にせず猫探しを続けることにした。
境内を出て、綺麗な鳥居をくぐり抜け、道沿いを歩いていく。するとすぐに目に入る物が遠くにあった。大きくそびえ立つ木だ。
「あの木、目立ちますね……よーし!あそこを目指しながら探して進むことにしましょう!」
道すがらシェリーは色々なものを見つけた。杖の代わりになるいい感じの棒。棒で突くと逃げてしまった水たまり。
棒を引きずりながら歩いていると道にできた棒の跡が蛇になり何処かへ消えた。
おしゃべりをするようにふりふりと揺れる色とりどりの綺麗な花。話しかけ、猫を見てないかと問えば花たちは四方八方へそれぞれが花を向けて教えてくれた。
「うーーーん……何か引っかかるんですが……?」
シェリーは喉元まで来ている違和感にもやもやとしながら歩き続けた。いつの間にか目指していた木のすぐ近くまで。
「わあ!これは……おっきいですねぇ!」
見上げる程高い木はとても太く、高くそびえ立つ。いくつも伸びる枝には見たことのない実がぶら下がっていた。
「これ、何なんですかね?食べられるんでしょうか?」
ひとつもいでみようと背伸びをしながら手を伸ばすとひょいと実が逃げるように避けていった。
「ありゃ、駄目みたいですね!」
スッパリと諦めて根本に設置されたベンチに腰掛ける。ポーチから水筒とアルコールティッシュを取り出し一休みし始めた。
「はぁー……生き返ります!さて、ここまで来ましたけど猫さんはいませんね……どうしましょう?」
顎に手をやりうんうんと考えるが名案が浮かばない。ならばとシェリーは立ち上がり棒を手に取った。
「困った時の棒占い!猫さんはどこですかー?」
立てた棒からパッと手を離し倒れた方向へ探しにいくつもりだったシェリー。手を離すやいなや棒はシェリーから逃げ出し倒れることはなかった。
「あっ!待ってください!どこにいるか教えてくださいよー!」
棒を追いかけていると周りはいつの間にか太陽で埋め尽くされていた。よくよく見ればそれはひまわりだったが、なんだか太陽がたくさんいるような暑苦しさをシェリーは感じていた。
「うぅ〜ん……」
ひまわりは誰も彼もが空を見上げていた。シェリーも釣られて空を見れば太陽と目があった。
「暑いと思ったら太陽が近くに……なるほど!納得です!」
ポンと手を打ってからひまわりをかき分けて猫探しを再開する。どれほど歩き回ったか、入り込んだひまわり畑はとても広かったようで、あるき続けても果までたどり着かなかった。
「も〜!どこまで続いてるんですか!?嫌になって来そうです!誰か教えてくださーい!」
大きな声を上げながらシェリーは問う。頭上の太陽がくすり笑い、シェリーは太陽を見る。
太陽はシェリーを見つめていた。口に手を当て、しーっ……とジェスチャーで何か伝えようとしている様だった。
「……?」
目を瞑り、耳に手を当て、音をよく聴く。
チリンと鈴の音が聞こえた。シェリーが振り返ると、ひまわりの中に誰かの後ろ姿があった。
麦わら帽子に白いワンピースの少女。金の髪が二房風に揺れている。
「あれ……?ハンナさん?こんなところに来てたんですか?」
シェリーが話しかけながら少女に近づくと、スッと指をある方向へ指し示した。
「あっちに何かあるんですか?って……あー!あの尻尾は!」
すぐ近くに探し猫と思われる尻尾が見えていた。ひまわりをかき分けながら歩いていくと、ようやくシェリーは猫を見つけ出した。
「いい子ですねー……はい!この中に入ってください」
ケージを開けてしゃがみ込みながら、おいでおいでと手招きをする。猫はのっそりと起き上がりケージの中に入っていった。
「よーし!これであとは引き渡すだけですね!ハンナさん!ありがとうござい……あれ?ハンナさん?」
振り返り、礼を言おうとするシェリー。逆光で顔が見えない少女は、手を振りながら風で揺れるひまわりの中へ消えていった。
「さて、それじゃあ戻りましょうか。猫さん」
来た道を戻っていくシェリー。ひまわり畑を抜け、先程休憩した木の下のベンチを通り過ぎ、野を超え川を超え山を超えて。ようやく見えてきた鳥居をくぐり抜け、社で一度休憩をすることにした。
「はぁー……疲れましたねー!まだまだ知らない場所があって、なんだか冒険をした気分です」
猫はチリンと首輪の鈴を鳴らして応えた。
シェリーは水筒を取り出す。半ばほど入っている水を少し飲んでから、手を皿にして水を注ぎ猫に飲ます。開いたケージの扉から顔をぬっと出し、すんすんと嗅いだあとにぺちょぺちょと飲み始めた。満足してケージの中に戻ったのを確認してから閉めて帰ることにした。
「あっそうだ!忘れるところでした……太陽さーん、ありがとうございました!」
太陽へ手を振ると太陽も手を振り返す。さよならをするように手を振る太陽はすぐに沈んでいき、辺りはすっかり赤く染まり始めていた。
「よーし、それじゃあ帰りましょー!」
意気揚々と歩き出すシェリー。境内を通り、鳥居をくぐり抜け神社の外へ出る──
ブワッと暑さがシェリーを襲ってきた。あたりでセミが鳴き、油断できない西日の強さにくらっと来て、思わずもんどり打つ。
「あれぇ?さっきまで暑くなかったのに……あっ!」
振り返るシェリー。そこにあったのは朽ち果てた神社。跡地と言ってもいいような荒れ果てた場所だった。鳥居は崩れ落ち、間から見える社も既に倒壊している。
「どうなってるんでしょう?」
シェリーの問に答えるのは猫の鳴き声とセミの鳴き声だけだった。
猫を無事届け、お礼を貰ってシェリーは帰って行った。家につく頃には既に辺りは暗く、静かな夜だった。
「ただいま帰りましたー!」
「シェリーさんおかえりなさいまし」
「あれ?ハンナさん着替えたんですか?」
「何を言ってますのあなたは……着替えるも何も今日はずっとこのままですわよ」
「あれー?」
シェリーは先程見たハンナの格好を思い出そうとするがモヤがかかったようなおぼろげにしな思い出せなかった。しかしハンナに助けられたことはしっかりと覚えていた。
「さっきはありがとうございました!ハンナさんのおかげで無事見つかりましたよ!これはお礼だそうです!」
「わたくしの……?」
頭にハテナが浮かび上がるハンナ。よくよく考えて出かける前に焼いた世話のことだろうと思い当たる。いつものことだと特に気にすることなく、むしろシェリーの持つダンボールが気になっていた。
「あら、これは……おっきなトマトですわね!」
「採れたてだそうですよ!」
「ありがたく晩ごはんに使わせてもらいますわね。シェリーさんお疲れ様ですわ。お風呂に入ってくださいまし」
「はーい!」
シェリーが靴を脱いで家に上がる。ハンナはダンボールからトマトをいくつかスカートの裾に乗せているとシェリーの背中から葉っぱがひらひらと落ちるのが目に入った。
「あら……」
葉っぱがついていたところを見て林や山にでも入って行ったのだろうと安易に想像ができ、クスリと笑った。
夕食にはそうめんとトマトがずらりと並んでいた。ご近所さんたちから食べきれないからと受け取ったそうめんはまだまだ残っている。ハンナは美味い美味いと毎日食べているがシェリーは数日で飽きつつも毎日食べている。
「またそうめんですか。いただきます」
「またそうめんですわよ。召し上がれ」
目の前に置かれたつゆの入った茶碗を手に持ってシェリーは気づいた。
「これトマトのつゆですか?」
「ええ。今日はトマト尽くしですわよ」
そうめんを取りつゆに浸す。スッと啜ると細かく切られたトマトの果肉と一緒に口に入る。いつもと違う味とアクセントにシェリーは目を輝かせた。
「ハンナさん!これ美味しいですね!」
「うんめえですわ〜〜!うんめえですわ〜〜〜!!」
ズルズルと食べ続ける二人。いつもよりもそうめんの山は
早く消え去り、コップの水を飲んで一息つく。
「今日はお疲れ様ですわシェリーさん」
「本当ですよ!なんだか今日はいつもより疲れちゃいました!」
「この暑さなら仕方ねえですわ……うぅ、できれば扇風機だけで乗り越えたいのに……」
「駄目ですー!絶対エアコンは付けますからね!」
ピッとリモコンを操作してエアコンを付ける。少ししてからひんやりとした空気が部屋に流れ込む。冷房が効き始めてハンナはハッとしてシェリーに注意し始めた。
「ちょっとシェリーさん!もう日が暮れて涼しくなってるんですから必要ありませんわよ!」
「要りますー!それに、ハンナさん涼しいーって顔してましたよ?」
「うぐ……それは……そうなんですが……」
「じゃあいいじゃないですか!」
「よくねーですわ!ああ……もう……」
「無理するのもよくありませんよハンナさん!」
「あー言えばこー言う……!」
やいのやいのと楽しく言い合っていると時間はあっという間に過ぎ、夜も更けていた。
「……あら?もうこんな時間ですの?」
「そろそろ寝ましょうか」
「ですわね……」
部屋の電気を切り二人は寝室へ向かった。寝室のエアコンを寝やすい温度に設定し横になる。
「おやすみなさいハンナさん」
「おやすみなさいシェリーさん」
明日はどんな楽しいことがあるだろう、ハンナと楽しく過ごせるだろう。そんなことを考えながらシェリーはすぐに眠りについた。
ハンナはすぐに聞こえてきたシェリーの寝息が耳に入り、明日もシェリーに振り回されるであろうことを考える。
気苦労も振り回され過ぎて吹き飛んでしまうだろう、くすりと笑みがこぼれすっかり楽しい気持ちで満たされる。
ハンナはチラリとシェリーの寝顔を見てからもう一度おやすみなさいとシェリーに言い眠りにつく。
部屋は二人の寝息と、時々風に揺られた風鈴の音が遠くからしていた。
次はお盆過ぎに出来たらいいな…って思いながら書き足してますが全然進んでません
ココ誕はネタが思いついてないので多分ないです…