未来を統べる翼と、優しいメイドの家   作:天野江

1 / 52
プロローグ
プロローグ 天野江セイカと室笠アカネ


 

「ふぁ~」

 

 

 朝日の光で目が覚める。

 重い瞼をこすり、大きな翼を一度羽ばたかせてから部屋を出た。

 

 私は天野江セイカ。ミレニアムの一年生で、空見観測研究部の部長。……と言っても、実際はこの宇宙戦艦「ソラノミ」で一人、空を観測しながら暮らしているだけ。身長190cmのこの身体も、背中の翼も、地上の喧騒から離れて生きるにはちょうどいい。

 

 連邦生徒会長の失踪なんて噂もあるけれど、雲の上にあるこの箱庭には、本来なら関係のない話のはずだった。

 

 部屋を出た瞬間、鼻をくすぐったのは香ばしい朝ごはんの匂い。

 

 

「あら……セイカさん、おはようございます。朝ごはん、準備していますよ」

 

 

 ……耳慣れた、けれどここにあるはずのない声。

 室笠アカネ。私の幼馴染で、C&Cに所属する二年生のメイド。……いや、待って。

 

 

「どうしてここにいるの? 夜間はずっと空を飛んでたはずなんだけど……」

 

 

 ソラノミは飛行中だったはずだ。並の手段で侵入できる場所じゃない。

 

 

「ふふ……それはですね……」

 

 

「それは……」

 思わず唾を呑み込む。

 

 

「飛ぶ前に侵入しました♪」

「……不法侵入じゃない」

 

 

 確信犯だ。何を「どやっ」とした顔で言っているんだろう、この子は。

 

 

「? セイカさんがこの前合鍵をくれたんじゃないですか」

「だからって勝手に入っていいってわけじゃないんだけど……」

 

「まあまあ。セイカさん、落ち着いて深呼吸してください」

 

 

 ああ……もういい。彼女に理屈を説いても無駄なのは、今までの経験で嫌というほど分かっている。

 

 

「もういいや」

 

 

 私はあきらめて食卓に着くことにした。

 

 

「いただきます」

 

 

 諦めて食卓に着く。

 並んでいるのは、炊き立てのごはんと味噌汁、そして焼き魚。完璧な和朝食だ。

 

 

「さすがアカネだね。ごはんがおいしそうだ」

 

 

 素直な感想を口にして、黙々と箸を進める。

 でも……さっきから視線を感じる。アカネがニヤニヤしながら、こっちをじっと見ているんだ。

 私の顔に、何か食べ残しでもついているんだろうか?

 

 

「何かあったの……アカネ」

 

「いえ、ただあなたの横顔がかっこいいなと」

 

「へっ」

 

 

 ……何を言っているんだ、この子は。

 不意打ちの言葉に、一気に顔に熱が集まっていくのがわかる。

 

 

「あら、今度はかわいくなりましたね♪」

 

「……ちょっと」

「ほらほら、食事が冷めてしまいますよ」

 

 

 完全にペースを握られている。上手くかわされた気がするけれど、せっかくのごはんを台無しにするのはもっと嫌だ。私は赤くなった顔を隠すように、食事に集中することにした。

 

__________

 

 

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

 

 

 さて、片付けくらいは私の仕事だ。

 

 

「食器は私が洗うよ。ここ私の家だし」

 

「いえ、それも私にお任せください。メイドとしてご奉仕させていただきます」

 

「だめ……これは譲れない。食事作ってもらったのに片付けもしないのは、私が納得できない」

 

 

 変なところで頑固だとは自分でも思うけれど、彼女に甘えっぱなしなのは私のプライドが許さない。

 

 

「ふふ……こうなったセイカさんは意地でも譲りませんからね。なら一緒に片付けるのはどうですか?」

 

「まあそれなら……」

 

 

 二人で食器を持ち、台所へ向かう。

 隣で並んで作業するこの時間が、意外と悪くないと思ってしまう自分がいた。

 

 

__________

 

 

 

 着替えを済ませた後、アカネに髪を整えてもらっている。

 水色のロングヘアは、自分一人の手には余る。こうして彼女が鼻歌を歌いながら櫛を通してくれる時間は、正直に言って、私の日常においてかなり助かっている部分だ。

 

 

「……毎回思っているけどそんなに楽しい?私の髪を整えるの」

 

「はいっ! セイカさんの髪は触り心地がよくて匂いもいいので楽しいです!」

 

 

 返事に迷いがない。少し食い気味なくらいだ。

 でも、その言葉がなんだか嬉しくて。

 

 

「わお……すごい食い気味。ならこれからもお願いして……いい?」

 

「ええ。お任せください」

 

 

 そう言うなり、彼女が正面から抱き着いてきた。

 私の身長が190cmで、アカネは164cm。正面から抱きつかれると、ちょうど彼女の顔が私の胸のあたりに来る計算になる。

 

 

「相変わらず大きいですね」

「……セクハラですよ」

「まあそんなこと言わずに...たしか服で押し付けているんでしたっけ?」

「え、ええ、そうだけど」

 

 

 物理的な制約で抑えている部分を指摘され、少し狼狽える。

 

 

「ふーん。そうなんですね。今度そのまま抱き着いてみてもよろしいですか。」

「セクハラですよ????」

 

 

 冗談なのか本気なのか読めない彼女を、私は腕と大きな翼で包み込むようにして抱き締め返した。

 

 外界の騒がしさも、観測者としての義務も。

 今は、この腕の中にある体温と、交わされるくだらない会話だけでいい。

 そんなことを思いながら、私のソラノミに、また新しい一日が始まっていった。

 

 

 





名前:天野江セイカ

所属:ミレニアムサイエンススクール

部活:空見観測研究部

部員:セイカ一人

宇宙戦艦に乗り込み、既に宇宙に出ていることで部活存続が可能

学年:1年生

身長:190cm(翼が巨大なためバランス重視)

大きな翼が生えており飛行可能
翼はある程度縮められる

体型:胸は大きめ、服で押さえつけるスタイル

髪色:水色(ロング)

目の色:紫

ヘイロー:船の舵輪(摩虎羅の方陣みたいなもの)

性別:女

年齢:15

誕生日:6月14日
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。