晄輪大祭というキヴォトス全土を巻き込んだ巨大な祭典。それが残した狂おしいほどの熱狂の余韻も、数週間の時の流れとともに街並みからすっかりと洗い流され、今や跡形もなくなっていた。あの時、スタジアムを揺るがした大歓声も、夜空を鮮やかに彩った華やかな花火の光も、すべては過去のログへと収束し、データベースの底へと静かに沈んでいく。
狂騒の後に訪れたのは、いつもの、どこまでも平穏な、そして変わり映えのしない日常だ。
ソラノミには、今夜も変わらない静寂が満ちていた。
リビングからは、アカネが淹れてくれる温かい紅茶の、わずかに甘く落ち着いた香りが廊下を伝って漂ってくる。それは彼女が茶葉の蒸らし時間からお湯の温度、カップを温める手際まで、完璧な計算と洗練された所作のもとに淹れた特別な一杯だ。
そのリビングのソファでは、ソラノミの愛すべき年少者であり、普段は毒舌混じりの徹底した合理主義者であるケイが、アカネの膝の上に頭を預けて無邪気に眠りについていた。
「ケイ、もう眠くなってしまいましたか? 本当に可愛い子……」
アカネは蜂蜜のように甘く、気品に満ちた上品な声音で囁きながら、ケイの柔らかな髪を細い指先で優しく撫でる。
ケイはその心地よい体温と、頭を包み込む柔らかな感覚に身を委ねながら、「……ん、おかあさん……」と、小さく寝息を漏らしていた。
血の繋がりなどキヴォトスにおいては何の意味も持たない。そこには確固たる「母と子」の、そしてソラノミという組織が守るべき因果の最適解そのものが存在していた。ただ世界を観測し、記述する。そのために必要なのは、狂信的な情熱ではなく、こうした徹底的な平熱の日常だ。
セイカは、リビングの入り口の影から、その愛おしい光景をただ静かに見つめていた。
「セイカさん」
アカネが小さく顔を上げ、セイカの視線を受け止める。その瞳は、丁寧なお辞儀と笑みの奥に、恋人としての深い包容力と、ほんの少しの独占欲を明確に滲ませていた。
「今夜もまた、遅くまで宇宙を観測されるのですか? あまり根を詰めては体に毒ですよ。私の淹れた紅茶、まだ温かいものが残っていますけれど……」
「ありがとうございます、アカネ。ですが、今夜の確率変動の収束を見届けてからにします。定時観測のログを終えたら、すぐに戻ります」
「……ええ、わかりました。でも、約束してくださいね。もし少しでもノイズや限界を感じたら、すぐに私のところへ戻ってくること。……あなたが一人で無理をすることだけは絶対に許しませんから」
アカネの甘く、しかし絶対的な拒絶を許さないトーンの言葉に、セイカは「善処します」とだけ答え、ほんのわずかに口元を和らげて静かな足取りでリビングを後にした。
廊下を進み、ソラノミの一角に設けられた広大な観測室の重い扉を開ける。
室内に足を踏み入れると、そこはリビングの温かさとは対照的な、冷徹な数理の世界だった。中央に据えられた、彼女の大きな体躯に合わせて作られた特注の大型の椅子。その前に展開されているのは、超精密な天体望変鏡と、幾重にも浮遊して明滅するホログラムディスプレイだ。
淡いブルーの光が、セイカの横顔を静かに照らし出す。彼女の頭上にある舵輪型のヘイローは、主の深い集中と同調するように、摩擦のない世界で回転するかのように音もなく、ゆっくりと、ただ一定の周期で回り始めていた。
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セイカは椅子に深く身体を預け、長い指先をキーボードとホログラムのインターフェースへと走らせた。
画面の向こう側で流動するのは、星々の運行データであり、光の瞬きであり、その裏側に潜む無数の確率の波。彼女の固有能力である『空見の波』は、キヴォトス全土に張り巡らされた因果のラインを、網の目のように感知し、それを正確な数式へと変換していく。
ソラノミの目的は、世界を動かすことではない。ただ、正しく記述すること。
かつてセイカはそのために、自身の背中に幾何学的なシルエットを持つ独自の防衛兵装――フィン・ファンネルを構築していた。それは、万が一にもソラノミの平穏を脅かす因果のノイズが現れた際、それを完全に相殺し、家族を守るための「絶対的な盾」として用意された、彼女の意志の結晶だった。
「……トリニティの自治区、確率変動なし。ゲヘナ周辺、通常ノイズの範囲内。アビドス管区、砂嵐による微弱な減衰……すべて、平熱の範囲内ですね」
指先が滑らかに動き、ログが次々と更新されていく。
アカネの温もり、ケイの寝息。それらを維持するための計算式は、今夜も完璧に機能しているはずだった。
「――?」
不意に、セイカの紫色の瞳が微かに動いた。
コンソールの一角、キヴォトスの外縁部を指し示す因果のラインが、不自然な震えを見せたのだ。
最初は、ごくわずかな、演算エラーとも見紛うほどの小さなノイズ。しかし、それは瞬く間に拡大し、周囲の数式を次々と侵食していく。
「確率論的収束の拒絶……? いえ、これは因果の『上書き』……!?」
ディスプレイに明滅していた数式と星々のデータが、まるで水面に落とされた一滴の純白のインクのように、静かに、しかし抗えない速度で、一斉に白く染まっていく。
青かった観測室の光が、盲目的なまでの純白の輝きへと変貌していく。
おかしい。
バックアップシステムは機能していない。通信のエラーなどという生易しいものではなかった。キヴォトスの因果ラインそのものが、根底の、さらにその深淵から、何らかの巨大な質量によって強制的に書き換えられている。
異変を察知し、即座にフィン・ファンネルを起動、戦闘運用への移行を試みようとした。だが、彼女の意志よりも早く、ヘイローが激しい異常振動を起こし、キーンという金属音のような精神的ノイズが脳内を満たす。
視覚が、聴覚が、触覚が、1つずつ剥がれ落ちていく。
セイカの意識は、底のない深い漆黒へと突き落とされ、傷つく間もなく次の瞬間には、五感を失うほどの眩い「白」へと、急激に引き込まれていった。
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星も、時間も、上下の概念すら存在しない。完全なる白い精神世界。
耳を刺すような絶対的な静寂だけが広がるその空間の境界線に、セイカはぽつんと一人で立っていた。
実体を持たない幻灯のように、自身の身体が奇妙なほど軽く感じられる。重力という概念が消失したかのような錯覚。しかし、背中に装備されたフィン・ファンネルだけは、不思議なことに、冷徹な質量と確固たる存在感を伴ってそこに機能し続けていた。いつでも射出できる。だが、狙うべき敵の座標すら、この白の中では定義できない。
「……ここは。私の精神の内部、あるいは『空見の波』の果てに存在するデッドエンドですか」
セイカは平熱のトーンを保ったまま、警戒を孕んだ声で呟いた。
周囲を見渡しても、見慣れた観測室の面影はどこにもない。因果の計算式すら機能しない、未知の領域。
しかし、その静寂に応えるように、少し離れた場所に一人の人影が佇んでいることに気づく。
それは、一人の男だった。
青年というには少しだけ大人びた、二十九歳頃の、男としての確かな成熟を感じさせる佇まい。キヴォトスのどの学校の制服でもなく、彼が身に纏っているのは、肩や関節部に黒い補強パーツがあしらわれた、機能美に満ちた純白のノーマルスーツだった。
ヘルメットは外されており、脇にそっと抱えられている。少し縮れた、落ち着いた色合いの髪が、存在しないはずの精神世界の風に微かに揺れていた。
その顔には、隠しきれない、長きにわたる精神的・肉体的な死線を越えてきたゆえの、深い疲れが滲んでいた。多くの裏切り、多くの別れ、そして多くの涙を見てきた男の顔だ。だが、セイカに向けられたその瞳は、驚くほど穏やかだった。すべての戦いを終え、何か大いなる結末をやり遂げた者だけが持つ、達観した雰囲気がその全身から静かに立ち上っている。
キヴォトスにおいては異質とも言える「ヘイローを持たない」その姿は、あまりにも自然体で、同時にあまりにも超然としていた。
その人物は、存在しない空を見上げたまま、静かに声を紡いだ。
「ここは、人の想いが一瞬だけ重なる場所だ」
その声には、不思議と敵意が一切なかった。
極めて高い警戒心を持つはずのセイカだったが、なぜか彼に対しては、自身のヘイローが演算ノイズを立てることもなく、奇妙なほどに凪いだ精神を保っていられた。目の前の存在が、世界に対する害意から最も遠い場所にいることを、彼女の直感が理解していた。
彼はゆっくりと振り返り、セイカの背中に浮かぶフィン・ファンネルへと視線を向けた。
その穏やかな瞳が一瞬だけ細められ、まるで旧友に再会したかのような、少しだけ懐かしそうな、愛おしそうな苦笑いがその唇に浮かぶ。
「君は、その翼を選んだんだな」
セイカは紫色の瞳を僅かに見開いた。
この装備は、彼女が自身の『空見の波』を完全に制御し、大切な家族を守るために構築した独自の防衛兵装だ。外部の人間がその詳細を知るはずがない。
「……この装備をご存知なのですか。私の記述した防衛機構のログに、あなたのような存在は記録されていませんが」
白きノーマルスーツの男は、小さく首を横に振った。
「知っている、というより……よく覚えている、と言うべきかな。形やシステムは少し違っていても、その根底にある思想は、俺にとって嫌になるほど見慣れたものだからな。誰かを守るために、孤高の翼を背負う。それはかつて、俺が宇宙に置いてきた命の形そのものだ」
彼の視線が、どこか遠い過去の、あるいは異なる世界の記憶を辿るように彷徨う。そして、その表情が、ほんの少しだけ陰りを見せた。
「その翼は希望でもある。誰かを守り、可能性を切り拓くための、大いなる光だ。……だけど同時に、因果の天秤は常に等価を求める。その翼は、必ず"対"を引き寄せるんだ。君の『
セイカは怪訝そうに首を傾げた。
「対……ですか。私の計算式には、そのような不確定要素は記述されていません。このフィン・ファンネルは、あらゆる外敵の因果を相殺し、ソラノミの平穏を維持するための『最適解』として用意されたものです」
「人は希望だけでは終われない。光が強くなればなるほど、その背後に生まれる影もまた、深く、濃くなっていくものさ。かつて、俺がいた世界でもそうだった。俺が戦場に立つたび、世界はその光に対抗するための『赤』を用意した。それは呪いのようなものであり、システムそのものの拒絶反応でもあるんだ。君がどれほど完璧な計算式で世界を拒絶しようとしても、その光の強さそのものが、新たな嵐を呼ぶ引力になる」
男は一歩、セイカの方へと歩みを進めた。その足音すら響かない白い世界で、彼の言葉だけが確かな重みを持ってセイカの胸に染み込んでいく。
「君がその翼で、その優しい平熱で誰かを守り続けるなら……いつか、それに敵対する"赤い翼"が、君の前に現れるだろう」
「敵……ですか」
セイカの声音に、微かな冷徹さが混ざる。
守るべき拠り所を脅かす存在であるならば、それが何者であろうと排除する。それがソラノミの、天野江セイカの絶対のルールだ。
しかし、彼は再び首を横に振った。
今度は、どこか寂しそうで、同時にどこか遠い未来の結末を見届けたかのような、深い笑みを浮かべて。
「いや」
彼は静かに言った。
「因縁だ」
「因縁……。それは確率論的な必然ではなく、ただの情緒的な結びつきを指す言葉では? 私たちソラノミは、そのような不確かな概念に依存しません」
「そうかもしれない」
男は少しだけ目元を緩め、まるで後輩の成長を見守るかのような優しいトーンで続けた。
「だが、計算だけで割り切れないものが、最後には世界を動かすこともある。君が背負うその翼は、ただの兵器じゃない。誰かを守りたいという、君の強い意志の塊だ。だからこそ、同じように強い意志を持った『赤い影』が、引力のように君を手繰り寄せる。かつて俺の前にも、執拗にその赤を纏って現れた男がいた。互いに相容れない思想を持ちながらも、魂の深いところで繋がり合ってしまったような……そんな因縁だ。君にもいずれ、それと向き合う時が来る」
彼は最後に、真っ直ぐにセイカへと視線を向けた。
その瞳の奥には、数え切れないほどの戦場を越え、無数の別れと涙をその背に背負ってきた人間にしか持ち得ない、絶対的な優しさと強さが宿っていた。
「戦いを恐れる必要はない、天野江セイカ。君のその平熱の精神がある限り、因果の波に呑まれることはない。君の周りにある温かい日常は、君が正しく世界を見つめている証拠だ。それを信じるといい」
彼の身体が、足元から静かに白い光の粒子へと溶け始め、精神世界の境界がゆっくりと崩壊していく。
「真に恐れるべきなのは、戦いそのものではない。……誰かを守る理由を、その胸の熱を失ってしまうことだ。光を失い、ただの冷徹な機械になってしまった時、君の翼は誰も救えなくなる」
消えゆく光の向こう側へ、セイカは思わず手を伸ばしかけていた。
「……あなたは。あなたはいったい、誰なのですか。そのスーツ、その言葉……あなたはどこのデータから漏れた存在なのですか」
自分が何者であるか、その名を明かすことは最後までなかった。ただ少しだけ、悪戯っぽく、しかし確かな信頼を込めて笑い、未来を繋ぐ者へ言葉を託す。
「名前なんて知らなくていい。君なら……君たちなら、きっと分かる日が来る」
その言葉を最後に、白きノーマルスーツの男は完全に光へと溶け、白い世界は猛烈な速度で反転し、元の暗闇へと収束していく。
視界が完全に閉ざされる直前、世界の耳鳴りのようなノイズの隙間から、彼が残した最後の言葉だけが、セイカの脳裏に直接焼き付くように響き渡った。
『――その翼の先には、必ず赤い影が待っている』
__________
「っ……!」
ハッと息を呑んで、セイカは椅子から身体を浮かせた。
視界に飛び込んできたのは、淡いブルーの光を放つホログラムディスプレイと、静かに佇む天体望遠鏡。いつもの、ソラノミの観測室だった。
ディスプレイの数値は何の異常もなく、星々の運行も、キヴォトスの因果ラインも、すべてが完璧な「正常」を示し続けている。先ほどまで世界を侵食していた純白の輝きなど、最初から存在しなかったかのように。窓の外を見れば、夜空には静かな星々が瞬いており、何事もなかったかのように平穏な夜がそこにある。
「……夢、ですか」
セイカは自身の大きな手を見つめ、それから背中のフィン・ファンネルへと触れた。冷たい、いつも通りの金属の感触。触覚は確かに現実を主張している。
だが、ただの夢として片付けるには、あまりにもあの男の穏やかな瞳はリアルで、そこで語られた「赤い影」の予兆は、あまりにも重々しかった。
胸の奥に残る、説明のつかない奇妙な高鳴りと、静かな予兆。
セイカが深く思考の海に沈み込もうとした、その時だった。
「――セイカさん?」
静寂に満ちた観測室に、上品で、蜂蜜のように甘く、それでいて明確に心配を孕んだ声音が響いた。
振り返ると、扉の隙間から、室笠アカネが顔を覗かせていた。手には、まだ湯気が立っている新しいマグカップが握られている。
アカネは静かに部屋に入ってくると、セイカの表情をじっと見つめた。その聡明な瞳は、セイカのわずかな強張りや、いつもより少しだけ速い呼吸のテンポを、瞬時に察知していた。丁寧で物柔らか佇まいを崩さないまま、彼女はゆっくりと歩み寄ってくる。
「やっぱり、まだ起きていらしたのですね。……どうかなさいましたか? なんだか、酷くうなされているような気配が……寝室にいる私のところまで伝わってきましたけれど」
アカネは特注の椅子の傍らまで来ると、お茶の入ったカップをコンソールに置き、そっとセイカの大きな手に自身の両手を重ねた。その掌は、いつものように温かい。
「顔色が優れません、セイカさん。いつも平熱を崩さないあなたが、そんなに険しい目をするなんて……。何か、良くないデータでも観測されましたか?」
「……いえ。データの異常は一切記述されていません。すべては正常周期の中にあります」
セイカはいつも通りの淡々としたトーンで答えようとしたが、アカネは騙されなかった。重ねられた手のひらに、きゅっと、少しだけ独占欲を孕んだ強さで力がこもる。
「私を誰だと思っていらっしゃいますか? ……そんな風に、私にまで隠し事をして一人で抱え込もうとするのは、少し寂しいです」
アカネはふっと、慈愛に満ちた、しかし少しだけ拗ねたような、甘く柔らかな笑みを浮かべた。
「ケイも、あなたのその静かな強さに守られています。もちろん、私だって……。ですが、あなたが守ろうとしている私を、もっと頼ってくださってもいいのですよ? 大切な人が一人で暗い宇宙とにらめっこして傷ついているのを黙って見ているなんて、私にはできませんから。あなたがどうしても話したくないというのなら、無理にとは言いませんけれど……その代わり、私の前ではちゃんと、弱いところも見せてくださいね?」
「アカネ……」
セイカは視線を落とし、アカネの手の温もりをじっと感じていた。
精神世界で出会ったあの名もなき男の言葉が、再び脳裏をよぎる。
『真に恐れるべきなのは、戦いそのものではない。……誰かを守る理由を、その胸の熱を失ってしまうことだ』
守る理由。それは、今こうして自分の手を握ってくれているアカネであり、寝室で眠るケイ、空見観測研究部、そしてソラノミというかけがえのない大切な居場所そのものだ。因果の天秤がどれほど過酷な影を引き寄せようとも、この温もりと、向けられる絶対的な愛がある限り、自分が見失うことはない。胸の中にある、この静かな熱だけは、決して手放さない。
「……少し、奇妙な夢を見ただけです」
セイカは、ほんのわずかだけ口元を和らげ、平熱の、しかし先ほどよりもずっと柔らかな声音で言った。
「ですが、もう大丈夫です。計算式のノイズは完全に処理されました。あなたのおかげです、アカネ」
「……そうですか? セイカさんがそうおっしゃるなら、今は信じることにいたします」
アカネはまだ少しだけ心配そうにセイカの顔を覗き込み、その手を優しく包み込みながら微笑んだ。
「ほら、お茶が冷めないうちに召し上がってくださいね。それを飲んだら、今夜はもうおしまい。ちゃんとベッドで、私と一緒に寝るのですよ、セイカさん?」
「はい。そうします」
アカネの蜂蜜のように甘い声音に促され、セイカは温かい紅茶を一口啜った。心の中に染み渡る温かさが、先ほどの白い世界の冷徹な静寂を完全に消し去っていく。
胸の奥に残る、言葉にできない予兆。
世界が大きく歪み始める、ほんの少し前。
己の名を語らぬ先達から託された言葉を胸に、超然たる観測者は、愛する恋人を、家族を、その未来に待ち受けるであろう「赤い影」から守り抜くための静かな決意を、その胸の平熱の中に、確かに灯していた。
いったい誰なんだろう(すっとぼけ)
ところでセイカちゃんのフィンファンネルってHi-νガンダムのカラーなんですよね。
つまり、対になる赤は……