巨大な黄金の豪華客船「ゴールデンフリース号」での激闘。そしてミレニアムサイエンススクールの最高危険人物・黒崎コユキの完全隔離作戦。
数々の難局を乗り越え、無事に空中戦艦「ソラノミ」へと帰還を果たしたC&Cの面々と室笠家の面々は、ようやく訪れた安堵の時間を満喫していた。
ソラノミのメインラウンジは、重厚な木目調のインテリアと柔らかな間接照明に包まれている。
アカネが腕を振るった特製ディナーの甘やかな湯気が立ち上り、クリスタルグラスの触れ合う涼やかな音が幾重にも響いていた。
「ふぅ……。今回もまた、とんでもない大騒ぎになったな」
カリンが深い溜息をつきながら、特製スープを優雅に口へと運ぶ。
その隣では、普段の荒々しさを少しだけ殺した美甘ネルが、皿に盛られた極上のローストビーフを豪快にフォークで突き刺していた。
「あー、マジで疲れたわ。あのバニースーツも二度と着たくねぇ。やっぱりC&Cの正装に限るぜ。なぁ、アカネ?」
ネルの言葉に同意を求めるように、ネルはラウンジの窓際に腰かけていた室笠アカネへと視線を向けた。
だが──返事はない。
いつもなら「ええ、ネル先輩の仰る通りです」と、優雅で茶目っ気のある微笑みを返してくれるはずのアカネが、置物のごとく固まっていた。
その細い指先には、ハーブティーの注がれた繊細なティーカップが握られているが、カップからはすでに湯気が消え、中身は完全に冷め切っている。
「……アカネ? どうしたんだよ、気取った顔して固まりやがって」
「……あ、あら……? そんな……嘘、でしょう……?」
アカネの唇から、かすかな、そして震える声が漏れ出た。
その顔からはサーッと完璧に血の気が引き、ミルクティーベージュの美しい髪すら、ショックでわずかに揺れているように見えた。
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「おいアカネ、顔色が真っ白だぞ。怪我でもしたのか? 潜入の最中にどこかのガードロイドに撃たれていたとか──」
異変を察したカリンが立ち上がり、アカネの元へと駆け寄る。
アカネは震える手で自らの胸元を抱きかかえ、ソラノミのクローク用ハンガーラックと、手元の個人端末を何度も往復するように見つめていた。
「い、いえ、カリン……お怪我ではありません……。ただ、私としたことが……生涯取り返しのつかない、あり得ない失態を犯してしまいました……」
「失態……? コユキのデータならすでにケイが完全凍結して隔離したはずだぞ。何が残っているというんだ?」
アカネは深々と息を吐き出し、意を決したようにその言葉を口にした。
「……私の……私のミレニアム公式メイド服が……ありません」
「……は?」
ラウンジ内の時間がピタリと止まった。
ネルが肉を口に運ぶ手を止め、アスナがオレンジジュースを飲む手を止める。
「……メイド服がないって、どういうことだ? お前、船から引き揚げる時に着替えただろうが」
「……潜入の際、ゴールデンフリース号の地下最深部──特命備品庫のロッカールームを簡易控室として使用していたのです。そこに、私のメイド服一式を厳重に保管しておいたのですが……コユキちゃんの爆走と追撃、そしてソラノミからの緊急回収ヘリへの脱出があまりにも慌ただしく……回収するのを、完全に失念しておりました……」
静まり返る艦内。
アカネ──あらゆる潜入・情報収集・後方支援を完璧にこなす「完璧なるメイド」。その彼女が、よりにもよって自分の「本着(メイド服)」を敵地に置き忘れてきた。
「な、なんだと……!? 敵地に……敵の巨大船内にC&Cの正装を置き忘れてきたというのか!? アカネ、正気か!?」
カリンの怒号がラウンジに響き渡る。
「狙撃手が自分の愛銃を戦場に捨ててきたようなものだぞ! あのメイド服にはミレニアムの最高機密防弾繊維と、C&Cの通信暗号キーが組み込まれているんだぞ! 万が一敵の技術者に解析でもされたら……C&Cのプライドどころか、ミレニアムの安全保障が揺らぐ!」
「……申し訳ありません、カリン。言い訳のしようもありません……。すべては私の不注意です……」
いつも完璧なアカネが、弱々しく首を垂れる。
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「あははー! なんだー、アカネちゃんもドジ踏むことあるんだねー! 可愛いー!」
緊迫する空気を台無しにするように、一ノ瀬アスナが呑気に笑いながら話に入ってきた。彼女は特製ローストビーフの大きな塊を口に放り込み、幸せそうに頬を膨らませている。
「またあの船に入ればいいだけでしょ? 私、もう一回バニーガール着てもいいよー! 楽しかったし!」
「……アスナ先輩。回収に向かうのは当然だが、あのゴールデンフリース号の警備はすでに最高警戒レベル『レッド・アルファ』に引き上げられているはずだ。VIP専用のSランク招待チケットがなければ、港のドックにすら近づけない」
カリンが冷静に指を折り曲げながら指摘する。
しかし、アスナは首を傾げると、天使のような無邪気な笑顔でトンデモナイ事実を告げた。
「え? チケット? ……あ、あのキラキラした金色のお手紙のこと? あれならさっき、ヘリポートで風が強かったから、折り紙にして海に飛ばしちゃったよー! パタパタ飛んでいってすっごく綺麗だったなー!」
「「……は……?」」
カリンとアカネの口から、同時にかすれた声が漏れた。
Sランクチケット──ミレニアムの闇ルートでも数億クレジットの値がつく、あの豪華客船への唯一の正当な通行許可証。それを、海へ投げ捨てた。
「……ってことは、何か?」
地の底から響くような、重く冷たい声がラウンジに落ちた。
スカジャンのポケットからゆっくりと手を出した美甘ネルが、額に太い青筋を浮かべながら立ち上がる。その全身から、圧倒的な圧迫感と殺気が溢れ出していた。
「服もない。……正規の潜入ルート(チケット)もない。……なのに、もう一度あの胸糞悪い露出狂みたいなバニーガールを着て、セキュリティの跳ね上がった船に不法侵入して服を取ってこい……と?」
「ネ、ネル先輩……落ち着いてください……!」
「落ち着いてられるかぁぁぁ!! てめぇら全員バカか!!」
ネルの咆哮がソラノミの天井を震わせた。
「誰が好んで二度もあんな恥ずかしい格好するかっつんだよ! アスナのバカ! アカネのドジ! カリンの理屈っぽさ! もう知らん! 勝手にやってろ! 私は寝る!!」
ガンッ! と激しくテーブルを叩くと、ネルは肩を怒らせてラウンジを飛び出し、重厚なハッチを「バァン!」と叩きつけるように閉めて引きこもってしまった。
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「……状況を再整理しました。……回収対象:室笠アカネの所有物(ミレニアム公式メイド服一式)。……問題点:潜入パスの喪失、警備レベルの上昇、および最高戦力の作戦離脱。……ピースピース」
トキが静かに端末を操作しながら、感情の起伏がない声で現状を整理する。
「……ふふ、どうしましょう、先生。私のドジのせいで、C&Cの作戦が完全に破綻してしまいました……」
アカネが弱り切った表情で先生を見つめる。
だが、その時──
カチ、と静かな電子音がラウンジに響いた。
これまで静かに事態を傍観していた室笠セイカが、ゆっくりと立ち上がったのだ。その身に纏う青と白の光芒が、普段の静謐なそれではなく、どこか冷たく研ぎ澄まされた鋭利な輝きを帯びている。
「……セイカさん……?」
「……アカネ。……あなたの失態ではありません。……責めるべきは、奪われた衣類を未だに保持し、不当に占領しているゴールデンフリース号の側です」
セイカの低く落ち着いた声が、ラウンジの空気を一変させる。
「……私の演算において、重要な定義が存在します。……室笠アカネの着用する衣類、およびそれに類する所有物は、すべて『室笠家の絶対的領土・財産』と同等に定義されています。……それを敵地に放置することは、我が室笠家の尊厳に対する重大な侵害であり、許容できないエラーです」
「え……? セイカさん、あの、ただの服なのですが……」
「……ただの服ではありません。……あなたがC&Cとして、そして私の『妻』として身に纏う大切な装束です。……それを他の男や敵対勢力の手に晒し続けること……私の嫉嫉により限界値を突破しつつあります」
セイカの周囲に浮かぶ数基のフィンファンネルが、微かな駆動音を立てて怪しく発光し始めた。
「……隠密行動による回収が不可能であるならば、選択肢は一つしか残されていません。……敵の防衛線を、我がソラノミの圧倒的火力をもって『排除』します」
「……え!?」
「……ん。お父さんの言う通り」
静まり返ったラウンジの隅で、銀髪を優雅になびかせるシロコがスッと立ち上がった。彼女の首元で青く冷ややかに光る透明なペンダントが、戦闘モードへの移行を告げるように怪しく明滅している。
「……隠れる必要なんてない。チケットがどうとか、メイド服がどうとか面倒なことは考えなくていい。……あの船ごと海に沈めるか、あるいは全フロアを蜂の巣にして、お母さんの服を回収すればいい。……私が先頭に立って、立ち塞がる扉も敵も全部撃ち抜く」
その声には一切の迷いがなかった。かつて孤独の絶望を知る彼女にとって、愛する家族の──特に「お母さん」であるアカネの尊厳と所有物を脅かす存在など、彼女の辞書において「排除すべき不純物」以外の何者でもなかったのだ。
「……肯定します。……シロコお姉ちゃんの提案は、軍事戦略的観点および室笠家の防衛プロトコルからも極めて合理的です。……これより、ソラノミの全システムを『隠密潜入モード』から『海上要塞強襲・制圧モード』へと完全シフトします」
ケイが高速で空中ホログラムを操作し、青かった表示ラインを深紅の戦闘色へと塗り替えていく。
ソラノミの重厚な艦底から腹に響く重低音が広がり、格納庫に眠る数十基のフィンファンネルが、戦闘用の高出力プラズマチャージを加速させていった。
「ま、待ってくれ! 船ごと沈めたら、肝心のメイド服まで海の藻屑になってしまう。あくまで回収が目的なんだから、全壊は少し……」
カリンが慌てて制止しようとするが、もはやセイカとシロコ、そしてケイの暴走(過保護)めいた制圧演算を止めることは誰にもできなかった。
「……心配は無用です、カリン。……ケイの超高精度スキャンにより、メイド服の分子構造と特定の繊維波形をすでに完全ロックオンしています。……艦砲射撃の余波で船体の一部が吹き飛ぼうとも、あの服が存在するエリアだけはピンポイント防壁を展開し、無傷で回収してみせましょう」
真面目な顔で恐ろしい兵器の運用方法を言い放つセイカ。
アスナは「うわぁ、ゴールデンフリース号が大変なことになっちゃうねー!」と呑気に手を叩き、アカネは圧倒されながらも、その過剰なまでの愛にどこか頬を緩ませていた。
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ラウンジから伸びる居住区画の通路。その奥にある美甘ネルの個人客室の前に、先生とアカネ、そしてカリンの三人が立ち尽くしていた。
重厚な耐熱気密ハッチは内側から完全にロックされており、赤いアクセス拒否のランプが寂しく点滅している。
「ネル先輩……開けてくださいませんか? 私の不手際で、ネル先輩にまでご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません……」
アカネがドア越しに優しく呼びかけるが、中からの返答は「知るか! 俺は寝るって言ったろ!」という短く怒気に満ちた叫び声だけだった。
「リーダー。気持ちはわかるが、今回はソラノミの全火力を投入した強襲作戦になるんだ。C&Cのリーダーであるリーダーが不参加でいいのか?」
カリンがドアをノックしながら説得を試みるが、ハッチの向こうからは「大体なぁ!」とさらに大きな声が返ってきた。
「服を忘れるアカネもバカだが、数億クレジットのチケットを折り紙にして海に流すアスナはもっとバカだ! あいつらの尻拭いで、なんで私が二度も恥ずかしい思いをしなきゃならねぇんだ! 今回は絶対に行かねぇ! ソラノミのバカ火力で船ごと吹き飛ばして来い!」
ネルの頑なな拒絶に、カリンは「だめだ……完全にヘソを曲げている」と頭を抱えた。
潜入ならいざ知らず、今回は文字通りの「正面衝突」。C&Cの最大戦力であるネルが不参加となれば、地上での突撃陣形にわずかな隙が生まれるのは避けられない。
しかし、その時──先生が静かにドアの前に歩み寄り、通信用インターホンに口を近づけた。
"ネル。今回の作戦、ネルが来てくれないと困るんだ"
先生の静かな声が、スピーカーを通じて部屋の中に響く。
一瞬、扉の向こうの気配がピタリと止まった。
"アスナもアカネも反省してる。でも、相手はあのゴールデンフリース号の強化警備部隊だ。ソラノミの火力支援があるとはいえ、現場で突入部隊の頭を張れるのは、世界中でネル、君しかいないんだ"
「……けっ。口上手いこと言ってんじゃねぇよ、先生。私を乗せようとしたって無駄だぞ」
『それに……バニースーツを着ろとはもう言わないよ。今回はC&Cのリーダーとして、一番カッコいい姿で暴れ回ってほしいんだ。……力を貸してくれないか、ネル?』
通信機の向こうで、長い静寂が流れた。
沈黙の中、ネルが小さく舌打ちをする音が聞こえる。
「……たくよぉ。……先生はズルイんだよ、いっつもそうやって……」
ボソボソとした呟きの直後、プシューッという高圧空気の排出音とともに、重厚な気密ハッチがゆっくりと左右へ開いた。
そこに立っていたのは、スカジャンを羽織り、二丁の機関拳銃(ツインウッズ)を両手に固く握りしめた美甘ネルの姿だった。その顔はわずかに赤らんでいたが、その瞳にはいつもの凶暴で頼もしい光が完全に戻っていた。
「……勘違いすんなよ! アカネのバカ服を回収するためじゃねぇ! 先生がそこまで言うから、特別に付き合ってやるだけだ! あと、あの船のガードロイドどもを片っ端から殴り倒さねぇと気が済まねぇからな!」
「ふふ……ありがとうございます、ネル先輩」
アカネが嬉しそうに目を細めて頭を下げると、ネルは「ふんっ!」と顔を背けながらラウンジへと歩き出したのだった。
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ソラノミの圧倒的な火力展開と、シロコ率いる強襲部隊の即応により、ゴールデンフリース号での「お掃除」は文字通り一瞬で幕を閉じた。
チケットを捨てたアスナの失態も、警備レベルの跳ね上がりも、ソラノミのピンポイント防壁と過剰なまでの制圧演算の前には一切の意味をなさなかったのだ。
ハッチが静かに開き、メインラウンジへと戻ってきた一行の先頭に立つのは、アカネだった。
その両手には、一筋のホコリすらついていない完璧な状態で取り戻された、あの愛着ある「ミレニアム公式メイド服」が大切に抱えられていた。
「……ふぅ。無事にお召し物を回収できましたわ」
アカネは深く安堵の息を吐き出すと、ミルクティーベージュの髪をサラリと揺らし、愛おしそうにメイド服の布地に頬を寄せた。
その隣では、二丁拳銃を腰に収めたネルが、大あくびをしながらスカジャンのポケットに手を突っ込んでいる。
「けっ、拍子抜けもいいところだぜ。セイカのバカ火力が敵のガードロイドを全自動で無力化しちまうから、俺の出番なんかほとんど無かったじゃねぇか」
「あははー! でもネル先輩、途中でノリノリでドア蹴り破ってたよー!」
「うるせぇアスナ! 喋るとまたお前を海に投げ込むぞ!」
いつもの賑やかな口喧嘩がラウンジに響き渡る。
カリンは愛銃のメンテナンスを始めながら「まあ、誰も怪我なく、C&Cの機密も守られて無事に終わったならそれが一番だ」と、満足げに口元を緩ませていた。
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「……ん。お母さん、よかった」
シロコが静かに歩み寄り、取り戻されたメイド服の裾をちょんと指先で突いた。その首元で揺れる透明なペンダントが、任務完了を祝福するように穏やかな青い光を放っている。
「……私の射撃で、ロッカーの鍵も完璧に破壊できた。……お母さんの大切な服、傷ひとつついてない」
「ええ、本当にありがとう、シロコ。あなたが一番にロッカールームへ駆け込んで防壁を張ってくれたおかげですわ」
アカネが優しくシロコの頭を撫でると、シロコは少し照れくさそうに目を細めた。
「……肯定します。……回収対象の損傷率、0.00パーセント。……室笠家における財産保護プロトコル、完璧に達成されました」
ケイも満足げに端末を閉じ、小さなカップからハーブティーを一口含んで吐息を漏らす。
アカネがメイド服を忘れたことから始まった大騒ぎだったが、終わってみれば室笠家とC&Cの絆をより一層強固なものにしただけに過ぎなかった。
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カチ、と静かな電子音が響き、ラウンジの奥から室笠セイカがゆっくりと歩み出てきた。
彼女の視線は、真っ直ぐにアカネ――そして彼女の胸に抱えられた黒い正装へと注がれている。
「……お帰りなさい、アカネ。……そして強襲部隊の皆さん。無事の帰還を歓迎します」
「ただいま戻りました、セイカさん。……ほら、ご覧くださいな。私のお召し物、無事に取り戻せましたわ」
アカネが少し誇らしげにメイド服を見せると、セイカは一切の迷いなく歩み寄り、アカネの腰を引き寄せて固く抱きしめた。
「……ええ、完璧です。……ですが、私にとって最も重要なのは、服の無事ではなく……あなたが傷一つなく、私の元へ帰ってきたことです」
「セイカさんったら……皆さん見ていらっしゃいますのに……」
アカネは頬をほんのり桜色に染めながらも、愛おしそうにセイカの背中に手回り、その温もりを確かめるように身を寄せた。
「……さて。不要な雑音はすべて清算されました。……これより、仕切り直しとなる『室笠家・C&C合同勝利宴』を開始します。最高級シェフAI、特製フルコースの再加熱を許可」
セイカのアナウンスとともに、ラウンジのテーブルには再び温かな湯気を立てる極上料理の数々が並べられていく。
「やったー! 今度こそお腹いっぱい食べるぞー!」と一番に席へ飛びつくアスナと、それを怒鳴りながら追うネル。
先生の隣に静かに座り、美味しそうにスープを飲むシロコとケイ。
展望ウィンドウの外には、ミレニアムの静かな夜景と、戦いを終えたゴールデンフリース号が遠ざかっていくのが見える。
「ふふ、セイカさん。私、やっぱりこの服を着ている時が一番落ち着きますけれど……あなたの前にいる時が、一番幸せですわ」
「……当然です、アカネ。あなたのその笑顔こそが、私の全演算における絶対の正解なのですから」
見つめ合い、優しく微笑みを交わす二人。
夜空を滑るソラノミの艦内には、温かな笑い声と、室笠家という「確定された絶対の幸福」が、どこまでも深く、優しく満ち溢れ続けていたのだった。