未来を統べる翼と、優しいメイドの家   作:天野江

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二話目で早速アカネがでない小説、はーじまーるよー

追記 4/12 誤字報告ありがとうございます。


空見観測研究部、廃部危機!?

 

 

 

 ミレニアムサイエンススクール、セミナー執務室。

 

 早瀬ユウカは山積みの書類を前に、頭を抱えていた。

 

 

「……空見観測研究部。部員数一名。活動実績……ほぼなし。普通なら即廃部なんですけど……」

 

 

 隣で生塩ノアが、いつものんびりとした声で言った。

 

 

「でもユウカちゃん、あの部、今年も存続してますよね? どうして?」

 

 

 ユウカはため息をつきながら、一枚の特別申請書をノアに差し出した。

 

 表紙にはこう書かれていた。

 

 

『空見観測研究部 特別存続申請書 ― 宇宙資源回収実績について』

 

 

__________

 

 

 

 同じ頃、ソラノミ内空見観測研究部の部室。

 

 分析装置の冷却ファンが静かに回る音だけが響く部室。私は、回収したばかりの宇宙由来の希少鉱石――その特異な結晶構造をじっと見つめていた。

 

 そこへ、聞き慣れた二人の足音が近づいてくる。

 

 

「……失礼します。天野江セイカさん、いますか?」

 

 

 ノアとユウカだ。私は手に持っていた工具を置き、ゆっくりと立ち上がって、いつものように淡々と頭を下げた。

 

 

「……はい。……何か、ご用でしょうか?」

 

「(……何かあったのかな。計算ミスで予算を削りに来た、とかでなければいいけれど)」

 

 

 私の嫌な予感は、ユウカの切り出した真面目なトーンで半分的中した。

 

 

「空見観測研究部を、今年も存続させる理由を説明してもらえますか? 部員はあなた一人です。活動実績も、部内での観測記録以外はほぼありません。ここ最近、予算も厳しいので……普通なら廃部になります」

 

 

 ……廃部。聞き流せない言葉だ。

 ここを失うわけにはいかない。私は少しだけ思考のギアを上げ、静かに、けれど正確に事実を並べ始めた。

 

 

「……確かに、部員は私一人です。しかし、私の部は……『観測』だけが目的ではありません」

 

 

 私はテーブルの上に並べた鉱石と、複雑な紋様を刻む金属片を指し示した。

 

 

「これらは、すべて私がソラノミで回収した、地球圏外の資源です。ミレニアムの研究に有用な希少金属、未知のエネルギー結晶、そして……現在進行中のプロジェクトに役立つ可能性のある未知物質です」

 

 

 ユウカの目がわずかに見開かれる。数値に厳しい彼女なら、これの価値がすぐにわかるはずだ。私は追い打ちをかけるように、具体的なデータを提示した。

 

 

「このひと月で回収した宇宙資源の総量は、ミレニアムが公式に調達した量の約1.7倍に相当します。特に、私が開発中のルミナス・コアに用いる未知のエネルギー結晶は、それを完成させるために必要不可欠です。今は試作品しかできていませんが、それでも現在ミレニアムで研究が進められている新型駆動系の効率を、28%向上させています」

 

「へえ……それって、かなりすごいことじゃないですか?」

 

 

 ノアが感心したように頷く。

 ……よし、手応えはある。

 

 けれど、ユウカはまだ腕を組んだまま、難しい顔を崩さない。

 

 

「……確かに、功績としては大きいです。でも、部活動として認められるには、部員の増加や部内での活動実績も必要です。一人ですべてをやっているというのは、部活動の体をなしていないと思います」

 

 

 私は少しだけ視線を落とした。部活動の定義、か。

 そんな枠組みよりも、守るべき秘匿事項の方が私には重い。

 

 

「……私は、一人で十分です。部員を増やせば、ソラノミの存在や……『空見の波』に関する情報が、外部に漏れる可能性が高まります。それは……避けたい事態です」

 

 

 私の紫の瞳をじっと見つめていたユウカが、やがて小さく、負けを認めるような息を吐いた。

 

 

「……わかりました。今年も、特別存続を認めます。ただし、来年は少なくとも部員をもう一人増やしてください。それが、ミレニアムのルールです」

 

「……了解しました。……ありがとうございます、ユウカ」

 

 

 ……来年までの執行猶予、か。

 二人が去った後、静まり返った部室で私は再び分析装置に向き合った。

 

 

「……部員を増やす、か。……アカネなら、喜んで入ってくれそうだけど……」

 

 

 独り言が、冷たい機械の間で虚しく響く。

 真っ先に浮かぶ顔はある。……アカネ。

 彼女なら、きっと「ふふ、喜んで!」と笑って隣に立ってくれるだろう。

 でも……。

 

 

「でも、彼女にまで危険な目に遭わせるのは……嫌だな」

 

 

 窓の向こう、成層圏に近い空を静かに見つめる。

 誰にも知られず、誰の干渉も受けない、私だけの「箱庭」。

 

 そこを守り抜けたことに安堵しながら、私はまた、孤独で愛おしい観測作業へと指を動かし始めた。

 

 

 

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