未来を統べる翼と、優しいメイドの家   作:天野江

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戦闘シーンってこんな感じでいいのかな?


廃墟の残照 ——天野江セイカ、孤高の全方位演算(フルバースト)——

 

 

 夕闇が迫るミレニアム郊外。かつての栄華を留めぬ無機質な廃墟群を、私は一人歩いていた。砕け散ったコンクリートと剥き出しの鉄筋が、まるで墓標のように乱立している。この静寂が、かえって思考を加速させる。

 

 

「……観測データによれば、この区画に微かな乱れがあるはず」

 

 

 携帯端末の画面を凝視する。私が追っているのは、このキヴォトスにおいて極めて膨大なエネルギーの残滓だ。これを放置して、外部に漏らすわけにはいかない。

 

 

 

 ガシャン、ギギギ……

 

 

 

 静寂を切り裂く、金属同士が擦れ合う不快な音。

 

 廃墟の影、崩れ落ちた壁の向こうから、一台、また一台と、錆びついた自律稼働ロボット(オートマタ)が姿を現した。

 本来の目的を失い、暴走したAIに突き動かされる「鉄の死体」たち。その赤い光学センサーが、一斉に私を捉える。

 

 

「……なるほど。この乱れは、君たちが原因か」

 

 

 私は端末をポケットにしまい、背負っていたメテオバスターライフル2挺を躊躇なく引き抜いた。この鋼鉄の巨躯に不釣り合いなほど華奢なこの身体を、今は戦闘態勢へと移行させる。

 

 

「(……演算開始。障害を排除する)」

 

 

 

 

 ブォォォォン……

 

 

 

 地を蹴り、垂直に跳躍する。重力を無視するかのような瞬発力が、私の視界を廃墟の上空へと押し上げた。ライフルの銃身が急速にエネルギーを充填し、耳障りな唸りを上げる。

 

 

「天野江セイカ、……これより、対象を『駆逐』する」

 

 

 先頭のロボットが錆びついたアームを振り上げ、私へと襲い掛かる。

 

 

 

ドォォォォン!!

 

 

 

 爆音が廃墟に響き渡る。空中に舞った私が放った初弾は、ロボットの胴体を正確に貫き、背後の壁ごと吹き飛ばした。オレンジ色の爆炎が、薄暗い周囲を一瞬だけ鮮明に照らしだす。

 

 

「次」

 

 

 滞空したまま、流れるような動作で銃口を次の標的へ。後続のロボットたちが一斉に弾幕を張るけれど、私の目にはその弾道がすべて「予測線」として見えている。空中を滑るように移動し、最小限の動きですべてを回避する。

 

 

「演算誤差、なし」

 

 

 横一線に薙ぎ払うようにライフルを掃射。収束されたエネルギーの奔流がロボットたちの脚部を薙ぎ払い、その動きを強制停止させた。

 

 

 

ズガァァァァ、ガシャン!

 

 

 

 倒れ伏した鉄屑たちが火花を散らして沈黙する。だが、廃墟の奥からはさらに十数台。音に引き寄せられるように這い出してくる。

 

 

「……ふう。きりがないな」

 

 

 額の汗を拭い、残りエネルギーを確認する。……このまま物理的に押し切られるのは、少し効率が悪いかな。私はバックパックに意識を向け、ある武装の起動キーを叩いた。

 

 

「……そろそろ、君たちの出番かな」

 

 

 背後から音もなく射出される、幾何学的な形状をした端末たち。

 

――フィンファンネル。

 

 宇宙戦艦ソラノミの技術を転用した、私の全方位攻撃・防御システムだ。六基のファンネルが私の周囲を浮遊し、青白い光を帯びながら陣形を組んでいく。

 

 六基のファンネルが、セイカの周囲を浮遊し、青白い光を帯びながら陣形を組む。

 

 

「全ファンネル、展開。……これより、マルチロックオンによるフルバーストを開始する」

 

 

 脳内演算を極限まで加速させる。敵の移動速度、装甲厚、地形……すべてを一瞬にして完璧なパズルとして解き明かす。

 

 

 

 ピピピピピピ……

 

 

 

 ロックオン完了。

 

 

「……撃て」

 

 

 六基のファンネルと、手にしたライフルが一斉に火を噴いた。闇を切り裂く無数のビームは、地上に降り注ぐ流星群のようで。

 

 

 

 ズガガガガガガァァァァァン!!!

 

 

 

 爆発音が連続し、迫りくるロボットたちはファンネルの精密射撃によって完璧に溶断され、鉄の瓦礫へと姿を変えた。

 

 土煙が晴れ、静寂が戻ったかに見えたその時、瓦礫の山が大きく震えた。

 下から姿を現したのは、全高5メートルを超える巨体。大型の重工業用機体を戦闘用に改造した、禍々しいエネルギーを放つ化け物だ。

 

 

「……っ、この反応。ただの暴走機じゃない」

 

 

 端末が異常な波形を描き出す。大型ロボットが巨腕を振り上げると、周囲の空間が歪むような感覚に襲われた。物理的な衝撃だけでなく、未来の可能性を阻害する干渉。ライフルを構え直す私の腕に、言いようのない重圧がかかる。

 

 

「(動きが……読めない? いえ、違う。可能性が多すぎて、演算が収束しないんだ)」

 

 

 脳裏に無数の「ありえる未来」が流れ込み、ノイズとなって思考を焼く。巨腕が空気を引き裂きながら私へと振り下ろされた。

 

 

「フィンファンネル、防御陣形!」

 

 

 即座に六基のファンネルがセイカの前に集い、ピラミッド状のバリアを展開する。

 だが、敵の巨腕が触れた瞬間、ファンネルの出力が激しく乱れた。

 

 

 

 ガガッ、ピーー!!

 

 

 

 

「くっ……!? なんて威力……!」

 

 

 弾き飛ばされ、間一髪で後方へ跳ぶ。背後の壁が砕け散り、コンクリートの破片が私の頬をかすめた。このまま物理演算だけで戦えば、確率の波に飲み込まれるのは明白だ。

 

 私は一度目を閉じ、深く息を吐いた。

 その時、私のヘイロー――舵輪が、重厚な音を立てて回転を始める。

 

『空見の波』

 

 私が観測する数多なる未来を確定させ、一気に制圧する力。

 

 

 

 ガコン

 

 

 

 目を見開いた瞬間、視界が変わった。廃墟の上に、幾重にも重なる「少し先の未来」が半透明の残像となって浮かび上がる。敵が次にどこを殴り、どの回路が火花を散らすか。不確定だったノイズが、一つのメロディへと収束していく。

 

 

「見えた。……そこだ」

 

 

 大型ロボットが突進してくる。回避不能なはずの質量攻撃。だが、私は一歩も動かず、ライフルの銃身を「何もない空間」へと向けた。

 

 

「ファンネル。私の観測した『一点』に、全出力を固定して」

 

 

 六基のファンネルが、ロボットの突進経路上の一点に集結する。

 

 

 

 キィィィィィィィィン!!

 

 

 

 突き進んでいた巨躯が、まるで目に見えない壁に激突したかのように停止した。慣性すらも「空見の波」によって書き換えられたのだ。

 

 

「これで終わりだ。……エラーは、私が消去する」

 

 

 無防備に晒された動力源――波の源泉へと、最大出力を叩き込む。

 

 

 

 ズドォォォォォォォォォォン!!!

 

 

 

 青白い光の奔流がロボットを内側から消滅させていく。爆炎すら発生させず、ただ静かに、その存在が「なかったこと」にされるかのように。

 

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 

 

 膝をつきそうになる身体を、ライフルを杖にして支える。まだ完成されていない「空見の波」。けれど、その力の片鱗は、確かに一人の少女を、次元の違う「観測者」へと変え始めていた。

 

 

「……帰ろう。チョコとアカネの淹れた、紅茶が飲みたい」

 

 

 独りごちた私の声は、夜の風に溶けて消えた。背後の廃墟には、ただ、運命をねじ伏せた私の足跡だけが残されていた。

 

 




メテオバスターライフルはツインバスターライフルみたいなのをイメージしています

フィンファンネルはセイカの髪に合わせて青と白のHi-νガンダムカラーです

セイカは「波」を使えば最強格と並ぶけど使わなかったらそれより弱い感じです
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