「――だからね! ここはアリスの『シャキーン!』って効果音に合わせて、画面全体にこう、ゴールドの集中線をババババッ!って入れるのがジャスティスなの! わかる!? ミドリ、この私の情熱が!」
「お姉ちゃん、声が大きい。それにゴールドの集中線はさっき別のイベントCGでも使ったばかりだよ。これ以上画面をチカチカさせたら、プレイヤーの目がチカチカになっちゃうってウタハ先輩にも言われたでしょ」
「むぅ……! それはそれ、これはこれだよ! 演出の引き出しは多ければ多いほどいいんだから!」
ミレニアムサイエンススクール、ゲーム開発部の部室。
午後三時を回ったばかりの室内は、いつも通りの、いや、いつも以上の熱気に包まれていた。使い古されたソファの上で身を乗り出し、身振り手振りを交えて熱弁を振るうのは双子の姉のモモイ。その隣で、液晶タブレットのペンを器用に回しながら、呆れたようにため息をつくのが妹のミドリだ。
二人がこれほどまでに白熱しているのには、明確な理由があった。
ミレニアムで開催される大規模な大祭。その目玉となるプロジェクトの一つとして、ゲーム開発部が手がける新作の、臨時の、そして何より『アリス』のための特別な衣装開発プロジェクトが、現在まさに大詰めを迎えているからだ。
「……ふん。ミレニアムの計算力だか技術力だか知らないけれど、画面の演出ひとつでそこまで揉めるなんて、やっぱりまだまだ発展途上ね。衣装のコンセプトが完璧なら、どんな演出だって映えるに決まっているじゃない」
部室の少し離れた一角。パイプ椅子に腰掛け、いかにもツンとした、澄ました態度でスケッチブックを胸に抱きしめているのは、ワイルドハント芸術高校から超特急で駆けつけてきたデザイナー、衣斐レナだった。
言葉の端々にはトゲがあるものの、その視線はプロのそれだ。机の上に広げられた何枚もの衣装デザインの三面図には、彼女のこだわりがこれでもかと詰め込まれている。
「(……っていうのは表向きの態度であって!! ああもう、無理!! 本物のセイカさんが!! 本物のアカネさんがすぐそこにいるのよ!! 解像度が、解像度がバグる!! ソラノミの尊い日常空間がそのままミレニアムの部室に出張してきてるじゃないのこれ!! 尊すぎて脳細胞がダイレクトに焼き切れるわ……っ!!)」
もちろん、レナの脳内で渦巻いているそんな「限界オタク」特有の狂おしい絶叫は、表面上は一ミリも漏れていない。彼女はただ、完璧なクール系クリエイターとしての佇まいを保ち、すっと鼻で笑ってみせることだけに全神経を注いでいた。
そんなレナの張り詰めた――内側では大爆発している――空気をほぐすように、カチャ、と心地よい陶器の音が響く。
「はい、お待たせいたしました、レナさん。冷たいハーブティーをどうぞ。体力を消耗されているようですから、少し甘めにしておきました」
カップを差し出したのは、アカネだ。ミレニアムが誇るメイドであり、そしてソラノミにおける「お母さん」としての絶対的な包容力を備えた存在。その笑顔と、ふわりと漂う紅茶の甘い香りに、レナは一瞬だけ素のトーンで「あ、ありがと……」と呟き、すぐにまたツンと澄ました顔に戻った。
その隣に座るセイカは、一切の感情を排した冷徹な眼差しでノートPCの画面を見つめていた。
その佇まいは、完全に感情を削ぎ落とした「冷徹な観測者」そのもの。物物を常に「演算」や「最適解」という論理の枠組みで捉える彼女は、部室の喧騒に対しても、ただ淡々と静観を決め込んでいる。外見からは氷のように冷たく、近寄りがたいオーラすら漂っていた。
――しかし。
「……ふふっ。セイカ、そんなに怖い顔をして画面を睨みつけないでください。みなさんが緊張してしまいますよ?」
「……っ!」
アカネに後ろから抱きつかれ、耳元で優しく声をかけられた瞬間、セイカの冷徹な横顔は、まるで春の陽気に触れた氷のように一瞬で融解した。
先ほどまでの鋭かった瞳が、信じられないほどの熱量と甘やんだ光を帯びてアカネへと向けられる。
「あ、アカネ……。私はただ、衣装データのポリゴン構成における最適解を演算していただけで……。でも、アカネがそう言うなら、私の表情筋の制御は完全に確定事項として修正されます。それよりも、アカネ。もっと近くにいてください。アカネの淹れてくれたお茶の香りと、アカネの存在が、私のシステムに最も必要なエネルギーなんです。……アカネ、大好きです。アカネは私のものですから、ずっと私の隣で私だけを見ていてくださいね?」
当然のようにアカネの身体にぴったりと寄り添い、至近距離でストレートな愛情表現を連発するセイカ。
普段のセイカであれば人前でそんなことはしないが、今の彼女はルミナス・コアの作成による寝不足でテンションがバグっているのだ。それ故にその深い独占欲と重すぎる愛のオーラは、隠そうともせずに周囲へ放たれている。
「ふふっ。はい、私もセイカさんが大好きですよ。でも、今はみんなでお仕事中ですからね?」
アカネが慣れた手つきでセイカの頭を優しく撫でると、セイカはまるで大切な宝物を囲い込むようにアカネを抱き寄せながら、
「……っ、もう。アカネはいつも、私以外のものに目を向けますね。……意地悪です」
と、少しだけ拗ねたように、女の子らしい柔らかさを孕んだ丁寧語で呟いた。
その様子を、部室の中央に鎮座する特等席――白い高級車椅子の上から、楽しげに眺めている影があった。
「おヤ、おやおや……。ソラノミの主たる観測士さんも、愛する奥様の前では、隨分と出力フォーマットが軟化するのですね。ミレニアムが誇る超天才病弱美少女たるこの私が同席しているのです。お二人の熱烈なご様子は大変ご馳走様ですが、そろそろこちらのメインコンソールへのデータ同期という、国家的な最適解を優先していただきたいものですね?」
さらりと長い髪をかき上げ、絶対的な自信と優雅さを漂わせながら言い放ったのは、明星ヒマリ。
セイカはヒマリの全知的な視線に対しても、すっと一瞬で冷徹な観測者の顔に戻り、「ええ。データの同期準備はとっくに完了しています」と淡々と返した。
__________
そんな賑やかで、どこか当てられそうな熱気に満ちたやり取りの中心から、少しだけ離れたコンソール席。
大型のモニターを複数並べ、感情の起伏を一切感じさせない無機質なタイピング音を部室に響かせている少女がいた。
ケイ。
アリスの「半身」であり、このプロジェクトにおいてはシステムの最適化とデータ処理を一手に引き受ける、極めて優秀な演算機。
光を遮るような、透き通るほどに美しい白髪のショートヘア。モニターのブルーライトを反射して神秘的に輝くその瞳は、ただひたすらに、画面を流れる無数の文字列だけを正確に捉え続けていた。
カタカタ、カタカタカタ。
無駄のない、機械そのもののような正確なリズム。
「……報告。レナさんのデザインアセット、およびレイヤーデータの受信を完了しました。ソラノミのメインプロセッサとの外部連携リンクを構築。これより、衣装の3Dシミュレーションにおける、物理演算パルスの伝導率最適化シミュレーションを開始します。肯定。進行状況は極めて良好です」
その声は、高低の波がほとんどない、徹頭徹尾「記号化」された冷徹なトーンだった。
ロボットのシステム音声が、そのまま少女の形をして喋っているかのような、人工的な響き。これまでの会話の最中も、彼女はずっとその口調を崩さず、ただ淡々と自らの任務を遂行していた。
ソファで炭酸飲料をゴクゴクと飲み干したモモイが、プハッ、と息を吐きながら、そんなケイの後ろ姿をじっと見つめる。
丸い瞳を瞬かせ、手元のお菓子をつまみながら、モモイは何の気なしに、本当に「ふと思いついたから」という程度の、あまりにも素朴な疑問を口にした。
「ねえねえ、そういえばさ、ケイ。前からちょっと、ずぅぅぅっと思ってて気になってたんだけど……」
「……用件は何でしょうか、モモイ。私は今、大祭用衣装データのトポロジー最適化計算を実行中です。演算リソースを会話に割くのは非効率的ですが、必要であれば、0.3秒以内に要件を述べてください」
ケイはキーボードから一切目を離さず、氷のように冷たいシステム音声のトーンで返す。
しかし、モモイはそんな冷たい対応など、今更一ミリも気にする様子はなかった。なぜなら、彼女にとって、そしてゲーム開発部にとって、ケイはもう「そういう冷たいシステム」ではなく、大切な仲間なのだから。
「いや、その喋り方だよ! なんでケイって、いつも『肯定』とか『報告』とか、いかにも『私、冷徹なロボットAIシステムです!』みたいな喋り方をしてるの? アリスだって『シャキーン!』とか『レベルアップです!』とかは言うけど、もっと普通に感情豊かに喋るじゃん!」
ド直球。
何のオブラートにも包まれていない、モモイらしい純粋無垢なアタックだった。
瞬間。
カタカタカタカタ、と部室に規則正しく響き渡っていたタイピングの音が、まるで世界の時間が停止したかのように、唐突に、ピタリと止まった。
「え……?」
ケイの背中が、目に見えて微かに、けれど確実にピクンと強張る。
「あ、確かに。私もそれは、少し不思議に思ってたかも」
隣でグラフィックの調整をしていたミドリが、液晶タブレットの手を止めて、モモイの意見に同意するように首を傾げた。ミドリはケイと同じ学年であり、普段からフラットな距離感で彼女と接している。だからこそ、その違和感にはずっと気づいていたのだ。
「ケイ、普段の圧倒的な演算能力とか、私たちの突飛な行動に対する知識量からしたら、もっと語彙のバリエーションも豊かなはずだし、普通の言語出力ができるはずだよね? なんであえて、初期のOSのシステムログみたいな喋り方をしてるのかなって」
「なっ…………!?」
ケイの細い肩が、今度は大きく跳ね上がった。
画面を見つめたまま固まっている彼女の横顔をのぞき込むと、その端正な横顔が、ほんの少しだけ引きつっている。
「ちょっと、やっぱりそう思ってたの私だけじゃなかったわけね」
部屋の奥から、ニヤニヤとした笑みを浮かべたレナが、スケッチブックを抱え直しながらコンソールへと歩み寄ってきた。デザイナーとしての鋭い観察眼が、ケイのわずかな動揺を完全にロックオンしている。
「前にソラノミでみんなと会った時から、なんか無理して機械っぽいシステム音声のフリをしてるなーって、ずっと思ってたのよ。本当はもっと、冷徹だけど理知的な、大人の女の子みたいな声質をしてるじゃない。ねえ、セイカさん?」
「……ええ、私の演算でも、ケイのその言語フォーマットはリソースの無駄だと算出されています」
急に振られたセイカは、一切の感情を排した冷徹な声で淡々と告げた。
その鋭い瞳はただ論理的に物事を観測する冷たい輝きを放っている。これぞソラノミの主であり、かつて孤独の中で全てを背負っていた「冷徹な観測士」としての佇まいそのものだった。
だが、その冷たい横顔は、隣に立つアカネへと視線を向けた瞬間、再び一変する。
「ねえ、アカネ? ケイはソラノミで、私とアカネと三人で過ごす時は、もっと丁寧で落ち着いた、可愛い声でお話ししてくれますよね?」
セイカは当然のようにアカネの細い腰に手を回し、ケイについて話し始めた。その姿からは、隠しきれない独占欲と重すぎる愛情がこぼれでていた
「ふふっ。たしかにいつも可愛らしい声で話してくれますね?」
「っ、っ…………!!!!」
そんな「お父さん」と「お母さん」のいつも通りの重厚なイチャつきを目の前で見せつけられ、かつ自身の秘密を完全にバラされたケイは、いよいよプロセッサが熱暴走を起こして限界を迎えていた。
神秘的で、透き通るような白髪のショートヘアの隙間から覗く肌が、みるみるうちに沸騰したかのように真っ赤に染まっていくのが、誰の目から見ても明らかだった。
「おや、おやおや……? これはこれは……」
キィ、と静かに車椅子のタイヤを鳴らしながら、その包囲網のトドメを刺すように、ヒマリが優雅に距離を詰めてきた。その瞳には、知的な悪戯っぽさがこれでもかと満ち満ちている。
「全知なる私のロジックで、これまでのケイさんの行動ログ、および現在の異常なまでの体温上昇を逆算するに……。極めて興味深く、そして微笑ましい結論が導き出されてしまいましたよ?」
「ひ、ヒマリさん……。それ以上の推論は、非効率的……かつ、プライバシーの侵害にあたると判断……」
ケイはかろうじて、いつもの冷徹なトーンを維持しようと声を絞り出す。しかし、その声はすでに微かに震えており、いつもの無機質な響きはどこにも残っていなかった。
「いいえ、学術的な探求に例外はありません。……編集エリアのログを見るに、ケイさん。あなた、最初にゲーム開発部やミレニアムの面々の前に現れた際、少し格好をつけて『システム風の冷徹で機械的な口調』でデビューしてしまったがために……」
ヒマリはさらりと長い髪を揺らし、フッ、と美しく不敵な微笑みを浮かべた。
「今更、普段のソラノミで使っているような『普通のトーン』に戻すタイミングを完全に失ってしまい、恥ずかしくて引っ込みがつかなくなっていた……という、極めて非効率的、かつ最高に愛らしいバグなのではありませんか?」
「ひ、ヒマリ先輩……! そこまでストレートに言うのは可哀想だよ……っ!」
ミドリが慌てて割って入る。しかし、そのミドリの顔も、完全に笑いを堪えるためにプルプルと震えていた。
「でも……うわぁ、ケイ、図星でしょ!? 顔、耳まで真っ赤になってるもん! 完全にあたしらの前でロボットのフリしてカッコつけてたんだー!」
「モ、モモイ……! 静かにしなさいと言っているのですよ……っ!!」
ついに、完全に限界を迎えたケイの口から、冷徹なシステム音声などではない、感情が思い切り乗った、どこか大人の落ち着きを孕んだ本来の美しい声が響き渡った。
それは、アリスの無邪気さとは対照的な、静かで、理知的で、けれど今は羞恥心で1000パーセントに達している、一人の女の子としての生々しいトーン。
「ひゃははは! 喋り方変わった! こっちのほうが断然可愛いじゃん!」
「お姉ちゃん、あんまりからかったらダメだってば! ……でも、ケイ、その本来のトーン、すごく素敵だよ。無理してシステムっぽく喋る必要なんて、最初からなかったのに」
ミドリがからかう姉をたしなめつつも、本当に嬉しそうに、フラットな温かい笑みをケイに向ける。
「……っ、な、何のことでしょうか。私には、あなたたちが何を言っているのか、0.01パーセントも理解できません」
ケイは真っ赤になった顔を周囲に見られないよう、抱えていたノートPCの画面の後ろへスッと頭を埋めた。白髪のショートヘアを小さく揺らし、ツンと完全にそっぽを向きながら、早口の、けれど隠しきれない本来の口調で言い訳をまくしたてる。
「ただ、これだけ周囲の言語ノイズが騒がしく、非論理的な発言が飛び交っていると、こちらも一時的に出力フォーマットを調整せざるを得ないというだけの話です。……本当に、非効率なことばかり言わないでください」
「ふふっ。おめでとうございます、ケイ。これでようやく、あなた本来の素敵な声で、ミレニアムの皆さんともお話しできますね」
その様子を、アカネはすべてを包み込むような、慈愛に満ちた「お母さん」の微笑みを浮かべながら見守っていた。彼女の手によって置かれたハーブティーからは、優しく湯気が立ち上り、ケイの頑なな心を内側から溶かしていく。
「……っ、うぅ、お母さんまで面白がらないでください……! それに、お父さんも……その、お母さんに抱きついたまま、ニヤニヤしながらこちらを見ないでください!」
恥ずかしさが完全に限界突破したケイが、真っ赤な顔でノートPCの後ろに隠れて抗議する。
セイカはアカネをしっかりと抱きしめ、その肩に顎を乗せたまま、ケイをじっと見つめた。
「ニヤニヤなどしていません。ただの客観的な事実の確認です。……ですが、ケイ。あなたのその本来の言語出力は、非常に温かみがあり、ソラノミの構成員として『最適』なトーンであると……私は判断します」
「あはは! やっぱケイの『お母さん・お父さん』呼びはいつ見ても尊いねぇ!」
モモイがニッシシと前歯を見せて笑う。
「相変わらずのファミリー感だね。でもケイ、やっぱりその本来のトーンの方が、二人を呼ぶ時もずっと自然で温かみがあるよ」
ミドリがすっかり見慣れた「いつもの光景」にほっこりとした笑みを浮かべ、同学年ならではの親しみやすさで語りかける。
「……レナさんも、後でこの件のログは完全に消去しておいてくださいね……っ!」
ノートPCの陰から、ケイが恥ずかしそうに白髪の頭を少しだけのぞかせ、涙目になりながらレナを睨みつける。しかし、ワイルドハントの天才デザイナーは、すでにスケッチブックに猛烈な勢いでペンを走らせていた。
「えー、無理。ミレニアムじゃ有名事実でも、ワイルドハントの私にとっては毎回新鮮な超A級の尊い供給なの。冷徹な白髪美少女が、お父さんとお母さんの前で恥ずかしがって本来の可愛い口調に戻っちゃうなんて……。それに、セイカさんの『アカネは私のものです』ってオーラが今日も最高にヘビーで、極上のデザインソースだわ。このログは私の脳内セクタに永久保存して、次のドレスのコンセプトにするわ」
「レナさん……っ!!」
__________
「……はぁ。本当に、あなたたちはいつもそうやって、非効率なことばかりするのですね」
それから数十分後。
ようやく顔の赤みが引き、けれどまだ少しだけ不機嫌そうに、ツンと澄ました態度でハーブティーを口にするケイの姿があった。
その口調は、もうあの無機質な「肯定」「報告」といったロボットのそれではない。非常に理知的で、淡々としつつも、少女としての確かな情緒が乗った、美しい大人のトーンだ。
「でも、その喋り方の方が、私としてはすごく聞きやすくて助かるわ。これなら、私のデザインの意図も、正確に論理ベースに落とし込んでくれそうだしね」
レナが満足そうにスケッチブックを広げ、アリスの新しい衣装の、より詳細なディテールを画面に映し出す。
「はい。これより、本格的なデザイン同期を開始します。……モモイ、ミドリ。あなたたちも、画面の演出で揉める暇があるなら、アリスのモーションデータの最適化を先に終わらせてください。……特にモモイ、あなたのそのゴールドの集中線は、アリスの衣装の色彩パレットと12パーセントも干渉しています。非効率です。今すぐ修正しなさいと言っているのですよ」
「げぇっ!? ケイのツッコミのキレが、さらにパワーアップしてるー!?」
「あはは、お姉ちゃん、自業自得だよ。じゃあ、ケイ、こっちのデータとの同期をお願いできる?」
「了解しました、ミドリ。……これより、ソラノミの演算セクタを全開にします」
白髪の少女は、今度こそ嬉しそうに、そして少しだけ誇らしげに、その美しい声を部室に響かせる。
セイカは再び冷徹な観測者の顔に戻り、アカネの手をしっかりと握ったまま、その鋭い瞳で作業を見守っている。
かつての「侍女」は、ソラノミの家族の愛と、ミレニアムの仲間たちの賑やかな笑顔によって、完全に、そして世界で一番美しくデバッグされたのだった。