冥王星の彼女   作:メリーさんのアモル

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第二話「朝・日直の風景」

 校門前のロータリー、プルルートを抱き抱えたパープルハートと、あなたを抱き抱えたブラックハートが到着する。

「とうちゃーく! いやー、朝から女神化して疲れちゃったねー!」

 そう言って、パープルハートが女神化を解除する。

 長かった紫髪が、短いショートカットヘアに変化、そのグラマラスな体躯も小柄なそれに変化する。

 彼女がパープルハートの変身前の姿、ネプテューヌだ。その変身による性格の変化の落差はともすればプルルートのそれにも匹敵する、とあなたは思う。

「ありがとー、ねぷちゃーん」

「いいんだよー。昨日は夜遅くまで一緒に遊んだもんねー」

 プルルートが微笑むのに、ネプテューヌが笑い返す。

「ちょっと、今日はいつもに増して起きてこないと思ったら、ネプテューヌのせいだったの!?」

「あははー、ごめんごめん、ベールに誘われた狩りが楽しくってさー」

「ベールとの狩り? あれは十一時には終わったじゃない!」

 ネプテューヌの言葉にノワールが目を丸くする。

「ノワールがログアウトした後にまたノートリアス・モンスターがポップして、それをみんなで狩ってまわってたんだよね……」

 あなたが頬を掻きながら苦笑する。

「誘い直しなさいよ!」

「だって、ノワール、ログアウトする間際に明日も早いから早寝しないと、とか言ってたじゃん」

「そ、それは言ったけど……で、でも誘われたら……」

 ぶつぶつとトーンダウンするノワールを見て、あなたは素直になればいいのに、と思ったが、そもそも自分もプルルートに素直に気持ちを打ち明けているわけではないので、他人のことは言えないな、と思い直す。

 そんなやりとりをしていると、校門前のロータリーにピンク色をしたスクールバスが到着する。

「お姉ちゃん!!」

 スクールバスが停車すると同時に、紫髪をロングストレートにした少女がバスを飛び出して駆け出してくる。

「あ、ネプギアー!」

 その様子にネプテューヌが手を振る。

 ネプテューヌの妹、ネプギアだ。

「もー、びっくりしたよー。いきなり窓から飛び出していっちゃうんだもん」

「ごめんごめんー。でも、おかげでぷるるん達も遅刻せずに済んだでしょー?」

「う、うん。それは良かったけど……」

 抱き合う二人。

「姉妹っていいよねぇ〜。あたしも〜妹、欲しいなぁ〜」

 そう言って、プルルートが指を絡め合わせて寂しそうに呟く。

「ぷ、プルルートにはボクとノワールという幼馴染がいるから」

「うん〜、そうだね〜。いつもありがとね、あーくん〜、ノワールちゃん〜」

 あなたの言葉にプルルートが微笑む。

 やや遅れて、黒色のスクールバスも到着する。

「お姉ちゃん!」

 スクールバスから降りてきた生徒の中には、ノワールの妹であるユニの姿もあった。

「あ、プルルートさんも、あなたさんも、おはようございます」

「おはよう、ユニさん」

「ユニちゃん〜、おはよう〜」

 ユニが礼儀正しく挨拶するので、あなたもプルルートも挨拶を返す。

 礼儀正しいユニは、姉の幼馴染である二人に対しても敬語で話す。これは礼儀正しいことだけでなく、ちょっとだけ、あなたやプルルートに対して壁を作っているからだ、とあなたは感じている。

 彼女は姉であるノワールを尊敬している。ネプテューヌとネプギアがそうしているように、もっと仲良くしたいはずだ。

 たが、ノワールは毎朝わざわざラステイションからプラネテューヌまで出向き、プルルートとあなたと共に登校している。ユニは少しそれが面白くないようで、二人に対しての壁はそんなところから形成されているようである、とあなたは分析している。プルルートは何も気付いていない……ように見える。

 やがてルウィーから来た白いスクールバス、リーンボックスから来た緑色のスクールバスがそれぞれ到着し、校門前は次第に賑やかになっていく。

「あーーーーーーー!」

 そうして、賑やかになる校門前で、突然プルルートが素っ頓狂な声を上げた。

「うわ、突然どうしたの」

「のわぁ、突然どうしたのよ」

 あなたとノワールの声が重なる。

「あたし〜、今日日直だったぁ〜」

「あ、本当だ。ボクもだよ」

「はぁ、あ なた達何やってるのよ」

 あなたとプルルートの二人とノワールはクラスが違う。なので、ノワールは二人が日直だと知らなかった。

「お〜、あーくんも一緒か〜、じゃあ〜、安心だね〜」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

「言ってる場合じゃないでしょ! 早く教室に行きなさい!」

 ノワールに急かされ、あなたはプルルートの手を取って、教室に向けて走る。

「あら、おはよう、日直のお二人さん」

 教室に入ると、茶色の長いワンサイドアップの少女が既に座っていた。緑の若葉型のリボンが特徴的な彼女は。

「おはよう〜、あいえふちゃん〜」

「おはようございます、アイエフさん」

 アイエフ、あなたやプルルートと同じくプラネテューヌ出身の少女だ。

 幼馴染であるあなたとプルルートほど仲が良いわけでもないが、同じ国の出身でクラスも同じなのでそれなりには親交のある友人である。

「あれ〜、あーくん〜、あたし達が、鍵を開けてないのにあいえふちゃんが教室にいるよ〜?」

「ふふん、ゲイムギョウ界に吹く一陣の風たる私には容易いことよ」

「ほえ〜、すごいねぇ、あーくん」

「そうだねぇ」

「相変わらず、二人してホワホワしてるわねぇ」

 呆れたようにアイエフが笑う。

「えへ〜、褒められちゃった〜」

「褒められたのかな?」

 嬉しそうなプルルートの言葉にあなたは一瞬首を傾げるが、まぁ、プルルートが言うならいいか、と思い直す。

「とりあえず、ボクは学級日誌を取ってくるから、プルルートは黒板を綺麗にしておいてくれる?」

「うん、分かった〜。あーくん、ありがとうねぇ〜」

 そう言って、微笑んでくれるプルルートを見て、あなたは内心とても心を跳ねさせながら、職員室へ向かう。

「おや、あなたさん、おはようございます」

 職員室に入り、紫組の学級日誌を回収しようとすると、金髪をツインテールにまとめた妖精のような二頭身くらいの少女に声をかけられた。

「イストワール学長、おはようございます」

 どう見ても妖精のような少女にしか見えない彼女はイストワール。何を隠そう、このゲイムスクールの学長である。

「プルルートさんはどうしていらっしゃいますか? ちゃんと学校に来てますよね?」

「はい。毎日ちゃんと迎えに行っているので大丈夫です。今日はちょっと遅刻しそうでしたけど」

 今でこそプルルートはちゃんと学校に通っているが、通学が決まった当初のプルルートはあまり学校に行きたがらなかった。

 プルルートは基本的に面倒臭がり屋なのだ。学校に通う前のプルルートは部屋着外着兼用のヨレヨレの服を常に身に纏い、外でも中でもスリッパで、髪もボサボサ、という有様だった。

 尤も、今もあなたが身の回りの世話をしていなければ、制服のまま寝て、ヨレヨレの制服で通学していることだろうが。

「そうですか。その調子でお願いします。ゲイムギョウ界の女神は皆、このゲイムスクールの女神養成科で教育を受ける、それがルールですから」

「わ、分かってます。友好条約下における女神のルール、ですよね」

 四カ国はかつて力の源である「シェア」を武力で奪い合っていた。それを抑止するために四カ国が結んだのが「友好条約」。そして、友好条約の象徴として作られたのがこの大陸中心部に存在するゲイムスクールであった。

「分かっているならいいんです。プルルートさんは今はフリーの女神ですが、この先、どの国に所属するのか、独立するのか、彼女の行動一つがゲイムギョウ界の今後を左右する可能性があることをゆめゆめ忘れないようにお願いしますね」

「プルルート本人に言った方が良いと思いますけど……」

「本人がどこ吹く風だからあなたさんに言ってるんです。彼女のパートナーとして、よろしくお願いしますね」

(パートナー……か)

 その認識自体は少し嬉しい。けれど同時に、女神とただの人間という立場の違いを思い知らされるようで、どこかプルルートと距離を感じてしまう。

「おかえり〜、時間かかったねぇ〜」

 イストワールにお辞儀をして、職員室を出て教室に戻ると、プルルートが笑顔で出迎えてくれた。

「ちょっと学長に話しかけられて」

「え、いーすんに怒られたの〜? 大丈夫だった〜?」

「う、ううん。怒られたわけじゃないよ。ただプルルートの最近の調子を聞かれただけ」

 いーすんはイストワールの愛称だ。

「そっか〜、良かった〜。あ〜、黒板は、あたしが綺麗にしておいたよ〜」

「う、うん。だけど、プルルート、服が汚れちゃってるよ」

 プルルートの制服はチョークの粉で白く汚れてしまっていた。あなたが定期的にクリーニングへ出してピカピカにしてもらっているはずの制服が見る影もない。

「もー、ほら、じっとしてて」

 あなたはカバンからブラシを取り出し、優しくプルルートの制服についたチョークの粉を落としてあげる。

「えへへ〜、ありがとう〜、あーくん」

 プルルートが微笑む。

「あー、二人ったら、朝からイチャイチャしちゃってさー」

「いや、側から見てたら、ネプ子とネプギアのやり取りも大差ないわよ」

 それを見てるネプテューヌの言葉に、アイエフがやれやれ、と首を横に振る。

「もー、ねぷちゃん〜、そんな風にあーくんをからかったら可哀想だよ〜。あーくんは〜、あたしのお世話をしてくれてるだけなんだから〜」

「う、うん、そうだね」

 あなたとしてはイチャイチャしているというのでも良かったが、やはりプルルートとしては、あなたの行動は幼馴染として世話をしているだけ、というもののようだ、とあなたは感じた。

「授業を始めるぞー、席につけー」

 そこに教師がやってくる。

 授業の時間が始まる。

「ふわぁ〜」

 プルルートは早速、あくびをしていた。

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