冥王星の彼女   作:メリーさんのアモル

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第六話「休日の風景」

「ほら〜、ぴーしぇちゃん〜、あたし達のことは〜、ママとパパって呼んで〜、良いんだからね〜」

「ぷるると……ママ?」

 あなたがホットケーキを焼いて戻ってくると、プルルートがそんな言葉をピーシェに言って聞かせていて、あなたは思わず、ホットケーキを乗せている皿を手から取り落としかけた。

「な、何言ってるの、プルルート!?」

「うわぁ〜、ホットケーキだ〜」

「ほっとけーき!」

 しかし、あなたの驚きの声は、プルルートとピーシェの喜びの声にかき消された。

 仕方ないな、とあなたは溜息をつきながらホットケーキの皿をテーブルにおいた、次の瞬間。

「わーい、あーくんパパー!」

「ガハッ」

 強烈なピーシェのタックルが襲いかかる。

「ぴ、ピーシェ、みぞおちにタックルは……やめようね……」

 強烈すぎるタックルにあなたは思わず崩れ落ちる。

「へっへーん、ぴいの勝ち! あーくんパパよわい!」

 倒れたあなたにまたがってピーシェがドヤる。

「うわ〜、駄目だよ〜」

 そこに慌ててプルルートが駆け寄ってきて、ピーシェの脇を掴んで持ち上げる。

「あーくん、大丈夫〜?」

「なんとかね。いてて、やんちゃな子だね、ピーシェは」

 プルルートがピーシェを椅子に座らせたのを見て、あなたもなんとか立ち上がる。

「さ、そんなことより、おやつ食べよ」

「うん〜。あーくんのおやつ大好き〜」

 あなたが席につくと、プルルートもそれに続きナイフとフォークを手に取る。

「おやつ! たべる!」

 ピーシェが嬉しそうにホットケーキを手で掴んで食べ始める。

「そ、そんな豪快に」

「うわ、手にバターがついちゃってるよ〜」

「おいしい!」

 べったべたの両手を天高く掲げて嬉しそうにピーシェが微笑む。

「うわぁ〜、駄目だよ振り回しちゃ〜、バターが飛び散っちゃうよ〜」

「ほら、ピーシェ、これで手を拭いて」

 目を丸くして慌てるプルルートのためにも、あなたはタオルを手にとってピーシェに渡す。

「ぴい、ふかなくてもへいきだよ?」

「プルルートとボクが気にするからね」

 まだ大丈夫そうだが、これが続くとそろそろプルルートの眉が上がってしまいそうだ。

「ありがとう、あーくん〜」

「大丈夫だよ。けど、床とテーブルの汚れを拭き取りたいから、ピーシェの手を拭うの代わってくれる」

「いいよ〜。ピーシェちゃん、こっち向いて〜」

 

 あなたが床とテーブルを拭き終えて、お皿を下げて洗ってから戻ってくると、プルルートとピーシェは日向のソファでうつらうつらしていた。

「ぐー」

 というか、ピーシェは殆ど眠ってしまっている様子だ。

(二人とも寝たのかな? なら、ボクは今のうちに晩ごはんの下拵えでも手伝いに……)

 先程キッチンでコンパが晩ごはんの下拵えをしているのを見ていたあなたはそう考えて踵を返そうとした。

 理由はどうあれ、教会に居候し、衣食住のうち二つを提供してもらっている身である、他所なりとも手伝うのが礼儀だろう。そう考え、あなたは積極的にコンパやネプギアの手伝いをしていた。

 が、今回は。

「あーくん〜?」

 プルルートはまだ眠っていなかったらしい。

「どこいくの〜? 一緒にお昼寝する約束でしょ〜?」

 眠そうなプルルートがぽんぽんと自分の隣を叩く。

「そうだったね」

 あなたはプルルートの隣に座る。

「早速騒がしくなっちゃったね」

 少し考えてから、眠そうなプルルートに声をかける。

「うん〜。あたし達に〜、子どもがいたら〜、こんな感じなのかなぁ〜」

 プルルートはそれに怒りもせず、ただ眠そうにそう答えた。

「えぇっ。ぼ、ボクらに子どもがいたらって……、ボクら別に……」

 思わず赤面して焦るあなた。

「ぴーしぇちゃん、両親がいないんだって〜」

 眠そうなプルルートはそれに気付く様子もなく、自分の話を始める。

「教会の前に捨てられてて〜、教会のみんなで育ててたんだって〜」

 自分がおやつを作っている間にマホから聞いたのだろう、プルルートらしからぬ長台詞でプルルートは話を続ける。

「だから〜、あたし達が〜、代わりになれたらいいよね〜」

「プルルート……」

 だからさっき、自分達をママだパパだと呼ぶように言っていたのか、とあなたは少し驚いた。

「うん、そうだね。一緒に頑張ろう」

 だから、あなたは決意してそう言ったのだが、プルルートから返事がない。

「プルルート?」

「すー」

「……寝ちゃったのか」

 じゃあ今度こそ、晩ごはんの下拵えに行こうかな、とあなたは立ち上がろうとするが。

 プルルートがその腕をがっしりと掴んで離さない。

「ま、約束だもんね」

 あなたは自分に言い聞かせるようにそう呟いて、プルルートに身を預けるようにして、自分も昼寝の体勢に入った。

 

「おいしそうなにおい!」

 突然ピーシェが頭を上げる。

「あいだぁ〜!」

 すると、ピーシェの頭が、頭上に存在していたプルルートの頭に激突し、プルルートが思わず悲鳴をあげる。

 それを気にした風もなくピーシェが部屋を出ていく。

「あ〜、勝手に部屋を出たら駄目だよ〜、迷子になるよ〜」

 プルルートが慌ててそれを追いかける。

 そうして、あなたが目を覚ますと、ソファには誰もいなかった。

「あれ、プルルート? ピーシェ?」

 慌てて名前を呼ぶが返事はない。

「二人でどこかに出かけたのかな?」

 あなたは体を起こして服のシワを伸ばしてから、部屋の外に出た。

 プラネテューヌの教会。即ち政治の中心にして女神の住居であるプラネタワーは結構複雑な構造をしている。

「二人とも、迷子になってないと良いけど」

 とりあえず、人の多いところに行ってみよう、とあなたはリビングダイニングに向かうことにした。

 リビングダイニングはネプテューヌやプルルートがいつもゲームをしていたり、ご飯を食べたりする場所だ。

「あ、起きてきたわね」

 するとアイエフのそんな声が聞こえてくる。

 ダイニングスペースの食卓にはネプテューヌ、ネプギア、プルルート、コンパ、アイエフ、そしてマホが揃っていた。

「おはようですー」

「あーくん〜、呼びに行くところだったんだよ〜」

 食卓には既に晩ごはんが並んでいた。

「ピー子が料理ができたタイミングでキッチンに飛び込んできたんだってさー」

「それで〜、私が迷子にならないようにぴーしぇちゃんを追いかけてたの〜」

 ネプテューヌとプルルートが事情を説明してくれる。

「はやくたべよ! たべよ!」

 ピーシェが両手を上げて今にもかぶりつきそうな様子だ。

「あーくんが〜、席についたらね〜」

「あーくんパパ! はやく! すわって! すわって!」

「うん」

 あなたが自分の席に座る。これまではプルルートの隣が定位置だったのだが、今はピーシェの面倒を見るために、プルルートと二人でピーシェの左右隣同士だ。

「それじゃ、みんな。いただきます」

 ネプテューヌがそう言うと、みんな一斉に手を合わせて食事を始める。

「はぐはぐはぐはぐ」

 すぐにピーシェががっつき始める。

「ごめんね、コンパ。今日から人数多くなったのに任せちゃって」

「大丈夫です。あーくんが、ぷるちゃんとお昼寝の約束をしていたのは聞いてたですから」

 あなたはまずコンパに謝る。するとコンパは快く許してくれた。

「うわ〜、ぴーしぇちゃん〜、こぼしすぎだよ〜」

 そんなやり取りをしていると、プルルートがそんな声を上げるので、あなたはすぐにピーシェの方へ向き直り、ピーシェがこぼした食べ散らかしを拭き取る。

「ピーシェ、もっと上品に食べなよ」

「ぴい、これでたべれる」

「も〜、ちゃんとあーくんの言う事聞かないとダメだよ〜」

「ごめんねー。あーしらも色々教えたんだけど、なかなか聞いてくれなくて。女神の仕事も忙しかったし……」

 ピーシェとあなたとプルルートのやり取りを見て、少し罰が悪そうにマホが謝罪する。

「マホちゃんは悪くないよ。ぴーしー大陸の治安が悪くなってるのは、全部『マジェコンヌ』のせいなんだから」

「ぎあちー……」

 そんなマホをネプギアがかばう。

「まじぇこんぬ〜?」

「大規模な犯罪組織の名前だよ。昔、この大陸を裏から支配していて、四カ国の戦争も裏で手を引いていたと言われてるんだ」

「ほえ〜、あーくん、物知り〜」

 プルルートが首を傾げるので、あなたが自分の知る限りの情報を教えると、プルルートは嬉しそうに頷く。

「でも、『マジェコンヌ』は、四カ国が友好条約を結んだことで撲滅したって聞きましたけど。また聞くことになるなんて」

「はい、でも一部の残党がぴーしー大陸に逃れていて。それで、プラネテューヌはそれに対処するためにぴーしー大陸と技術交流することになったんです」

 あなたの疑問にネプギアが説明する。

「あーしらの留学も、この大陸がどうやって『マジェコンヌ』に対処したかを学ぶためって意味もあるの」

 その説明をマホも少し引き継ぐ。

「それだけじゃないわ」

 アイエフが口を開く。

「最近、ぴーしー大陸で再興した『マジェコンヌ』が、再びこの大陸に……」

「わー、ちょっと待ったー」

 そこにネプテューヌが声を張る。

「これはのんびりのほほんとした夢小説だよ! シリアスな雰囲気禁止!」

「お姉ちゃん……、一応この話はプラネテューヌも関係ないわけじゃ……」

「はぐはぐはぐはぐ」

「あ〜! ぴーしぇちゃん、でみぐらすはんばーぐを手で掴んじゃダメ〜」

 ネプギアの言葉はピーシェの突飛な行動とプルルートの声で防がれる。

「あはは」

 その様子を見て、マホが吹き出す。

「マホ、ちゃん?」

 その様子にネプギアが問い返す。

「そうだよね、楽しい食事の場だもん。こんな話はまた別の機会にするのがいいっしょ」

 こうして、一同は食事を再開するのだった。

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