テレビに映像が映っている。
「は、は、は、はじめまして。キセイ
薄水色の長い髪をした女性が講堂らしき施設の上で話している。
「うぇ、Web上に広がっている、え、え、映像についてはご覧いただきましたでしょうか!」
レイは言葉をつっかえながらも、言葉を続ける。
「わ、わ、わ、我が、キセイ女学園の生徒が、ゲイムスクールに所属する、め、女神により、ぼ、ぼ、暴行を受けているというものです」
映像がレイを画面左に映したままにしながら、画面右に新しい映像が映し出される。アイリスハートがリンダを鞭で攻撃している映像だ。
「わ、我らキセイ女学園は、め、め、女神による統治から脱却し、た、正しい規制の元に生きていこうと言う、も、目標を掲げてきました」
画面右の映像はあなたがアイリスハートとの間に割り込む直前で終わり、再び、レイが画面の中心に戻る。
「こ、こ、これは、明確な、我が校を目標とした攻撃です! き、キセイ女学園はこの、ふ、ふ、不当な攻撃に対し、い、い、い、遺憾の意を表明し、これまで以上に、この世界に、め、女神は不要であり、た、正しい規制と、と、と、統治の元に生きていく世界が必要であると、せ、宣言致します!」
画面が一度、「STOP 女神統治」「女神はいらない」「キセイ女学園」などと書かれた画像に差し代わって、そして、終わる。
ゲイムスクール、職員室。
「厄介なことになったもんじゃ」
プルルートとあなた、そして四カ国を代表する女神四人を前に、そう呟くのはダイジーンだ。
「そうはいっても話を聞く限り、悪いのは因縁をつけてきた向こうじゃない」
毅然とそう告げるのは頼れる幼馴染、ノワールだ。
「ですが、この映像、プルルートが鉄パイプを放り投げて鞭を振るうシーンから始まっていて、映像だけを見るとプルルートが一方的に攻撃しているようにしか見えないんです」
「……意図的にこのシーンだけを切り抜いて配信した人間がいるのよ」
アイエフが補足すると、ブランがそんなことを言う。
「たまたま〜、あたし達のことを撮影していた人がいる〜、ってことぉ〜?」
そんなブランの言葉にプルルートが首を傾げる。
「いいえ、プルルート。そんな偶然は考えられませんわ。因縁をつけた人間と撮影していた人間は協力関係にあったと見るべきですわね」
そんなプルルートの言葉に首を横に振るのはスタイルの良い金髪長髪のお淑やかな女性、ベールだ。リーンボックスを治める女神・グリーンハートでもある。
「えぇ、その想像が正しいと思います。カメラの画質が良すぎます。これは適当なスマートフォンなどでたまたま撮影したものではなく、性能の良いカメラで意図的に撮影したものと考えられます」
アイエフがベールの考察に首肯する。
「つまり、プルルートをハメて得した奴が犯人ってことだ。じゃあもう誰が犯人かは分かりきってんじゃねぇか」
「そうですわね」
「そうね」
ブランが怒りモードで拳を握りしめると、ベール、ノワールもそれに頷く。
「えっと、どゆこと?」
「あたしも〜、よく分かんない〜」
ネプテューヌとプルルートが理解できずに助けを求める。
「ざっくり言うと、さっきの映像に映ってたレイ学長って人が怪しい、ってことだと思うよ」
ノワールが説明してやりなさいよ、と視線であなたを見るので、あなたは苦笑しながら、二人に説明する。
「おぉ〜、分かりやすい〜」
「なるほど。つまり、次のボスはあのレイ学長! ってことだね! 行こ、ぷるるん」
ネプテューヌが頷いて、プルルートを連れて颯爽と職員室を出ようとする。
「ちょっと、待ちなさい」
「とめてくれるな、おっかさん!」
「誰がおっかさんよ! 私はネプテューヌじゃなくてプルルートを心配してるの。大体どこに行くつもりよ」
ノワールが慌ててネプテューヌとプルルートを止める。
「え、あのボスを叩きに行くんだけど?」
「……そんなことをしても、より女神へのバッシングが強くなるだけよ」
ブランもまた静止にまわる。
アイリスハートのリンダへの攻撃動画配信と、レイによる声明以降、女神への不信感が増幅されているきらいがある。そんな中で、女神がそのリーダーを叩けば、
「ぷるるんに任せて、陰謀だったって吐かせればいいんじゃないの? あの人気弱そうだったし、行けると思うんだけどなぁ」
「あまりに短絡的すぎますわ。失敗した時のリスクが大きすぎましてよ」
ベールもまた否定にまわったため、四女神としては三体一でネプテューヌに分が悪い。
「えぇ。これそんな政治的なお話なの? 読者が求めてる方向性ってこんなかな? ね、あーくんもぷるるんが行けば一発だと思うよね?」
「え? ボク?」
話が振られると思っていなかったあなたは思わず動揺する。
「あたしも〜、あーくんの考えが知りたいな〜」
プルルートもあなたを見ている。
「ぼ、ボクは……プルルートがこれ以上、衆目に悪い意味で晒されるのは避けたいよ。それに、プルルートを、その、拷問のための人、みたいに考えるのには反対かな」
迷った末、あなたは自分の思ったことを素直に伝えた。
「あーくん〜」
その言葉に嬉しそうに、プルルートがあなたの側に戻ってくる。
「でも、じゃあどうしたらいいのさー」
そんな様子に不満げなのはネプテューヌだ。
「今の所、どうしなければならない、と言うことはないわい。女神へのバッシングは多少増えておるが、依然大多数は女神を支持しておる。下手に支持を下げるようなことはせず、まずは普通にするのが一番良いじゃろう」
その疑問にダイジーンが口を開く。
「そうね、ちょっとポジティブなキャンペーンをやる手はあるにしても、露骨に対策するのは却って後ろめたいことがあると思われるだけだもの」
ノワールが冷静に頷く。
「あ、そうなの? じゃあここからまた日常編に戻るんだ。よかった。読者離れが心配になるところだったよ」
と、よく分からない事を言うネプテューヌ。
「それから、あなたはよくプルルートを止めようとしたの。今、学長は忙しくて顔を出せぬが、アイエフから報告を聞いた時はその成長を大層喜んでおったぞ」
「あ、ありがとうございます」
その言葉はあなたにとって何より嬉しい言葉だった。プルルートのパートナーに相応しい存在として、さらに近づいた気がして。
「プルルートは、もっと怒りを制御できるようになる事じゃな。でないと、いつかその力であなたを傷つけてしまうことになるかもしれんぞ」
「あーくんを傷つけたくはないから〜、気をつけます〜」
そのやり取りの末に、一同は職員室から解放された。
「あれ? あいちゃんは教室に帰らないの?」
「えぇ、エージェント科の生徒として、ちょっとキセイ女学園の事を調べておきたいの。イストワール様からも頼まれてる、正式な仕事よ」
教室とは反対方向に歩いていくアイエフにネプテューヌが声をかける。
「あ、そうだ」
そういって、アイエフがあなたに近づき、耳元に口を近づける。
あなたはプルルート一筋ではあるが、アイエフも美人な少女である。顔を近づかれれば多少ドキドキはする。
「あなたはプルルートのこと、気にかけておいて。理由は分からないけど、昨日の事態は明らかにプルルートを狙って仕掛けられてたと思う。もしかしたら、何らかの理由でマークされている可能性もあるわ」
「!」
それじゃ、とアイエフはその異名の如く一陣の風となって廊下を走り去っていった。
プルルートが狙われている? それはあなたにとって看過できない事態であった。
その一方。
「ねぇねぇ〜、あーくん。さっきあいえふちゃんとこっそり何をお話ししてたの〜?」
「え、いや、プルルートには関係ない話かな」
狙われている、などと聞かされればプルルートも内心穏やかではないだろう、と考え、あなたは誤魔化そうとするが。
「ふぅーん。あたしには聞かせられないことなんだぁ〜」
なぜか、不穏にプルルートが微笑む。
「さっき、お話しをしながらドキドキしてたもんねぇ〜、良かったねぇ、あいえふちゃんと仲良くできて〜」
「待って、プルルート、何か誤解してない?」
「してないよ〜。あたしちょっと、お花摘んでから教室に戻るね〜、先に教室に戻っておいて〜」
プルルートの語気が強い気がしてあなたは、食い下がろうとするが、プルルートは聞く耳を持たず、トイレの方に歩き始める。
「え、でも……」
「あーくん、このままだと始業に遅刻しちゃうよ。ぷるるんがあぁ言ってるんだから、一旦そっとしておこうよ」
「う……うん……」
あなたはすっきりしない気持ちを迎えながら、教室に戻るのだった。