「あら?真希じゃない。貴女も来たの?」
「真衣。お前こそ何で」
憂太たちと再会、その後天元様から説明を受け各々の方針を決めたあと。私は呪具の回収のために家に戻った。
「呼ばれたのよ。じゃなきゃ戻るもんですか」
真衣は苦い顔で言う。まぁ確かに、要件もなけりゃこんな所来ねぇよな。お互い妙に気まずい。適当な話題を探す。
「それで、最近どうだ?」
「何ソレ?べつに、普通よ。それより貴女こそどうしたの?随分派手な火傷だけど」
「何でもねぇよ。呪霊と戦ってりゃコレくらい普通だろ」
あっそ、と少し後ろを歩く真衣。分かっていたがやっぱり上手く話せねぇ。
しばらく無言で歩いていると、不意に真衣が声をかけてきた。
「ねぇ。最近直子さんと会った?」
「ぁあ?・・・何でアイツが出てくんだよ」
真衣はアイツに懐いている。私が出ていってから、いやその前からか。妙に煽って来やがるから私はよく歯向かていったが、真衣は何故か姉呼ばわりで慕うようになっていた。
「べつに?誰かさんと違ってあのヒトの事は嫌いじゃないもの。少し気になっただけよ」
会ってはないが、恵や憂太たちから会ったことは聞いている。だから多分無事だろう。こちら側にどれくらい協力的かは知らないが、縛りも憂太と結んだみたいだから心配はない。
「(そのあたりは教えてもいいか?)」
それを言うのは腹立たしく思えた。
直子を姉のように慕っているのも気にくわないし、それを私には隠そうとするのも胸がザワつく。
どっちにしてもそもそも言えねぇし。こっちの動きがどこから漏れるか分かったもんじゃない
それっきり互いに口数が減る。それでも時々、真衣と会い互いにトゲのある軽口を交わしながら歩を進めていると本家が見えてきた。?何か騒がしいな。
「あら?何か聞こえない?・・・っ真希!」
家に近づくと何やら警鐘が鳴っている。何かあったのか!?
物々しさに胸が騒ぎ早足に門を潜ると家の連中がこちらを見つけ駆け寄って来る。
「あ!?真希、真衣帰ったのか!!ちょうどいいッ、お前たちも来い!!」
「ま、待てよ!いったい何があった!」
「乱心だッ」
直子が扇さんを殺した!!
「「・・・は(え)ッ!?」」
駆け出す真希の背中を見送る。躯倶留隊たちに混じって騒動の発端―直子さんのいる場所へ向かって行く。
当然私もついていこうとするけれど。
「真衣お前は来るな」
真希がそう言い残して走り出す。
何なのよ。いつも置いてきぼり。あの日も私をこの家に置いていった。
「・・・直子さんとは大違い」
小さく吐き捨てるようにそうこぼす。
私は直子さんがこの家の人間で一番好き。
ガサツで私を1人にした真希とは違う。一人でいると
『あっれぇ?真衣ちゃん♡こんな所で一人なの?かわいそッ。哀れ♡ぼっちの真衣ちゃんにお土産恵んであげちゃお。ほら、ありがとーは?』
そう言って構ってくれた。色々なお菓子を分けてくれた。
時々、いえ結構頻繁によく分からないことを言うし、言葉遣いは少しだけおかしかった気もするけどそれも今や愛嬌に思える。
それでも直子さんは実の親よりも優しく感じた。その言葉はすべて禪院家の誰よりも温かかった。
真希は恩知らずだ。あれだけ良くしてくれたのに、言葉遣いが気にくわないなんて理由でケンカを売りに行く。そしてその度に姉さんにあしらわれる。
『真希ちゃんのざーこ♡メガネがないと呪霊も見えない♡呪具持ち出したのにも関わらず素手でワタシにボロ負けした感想を述べよッ♡』
『ぐ、この・・・ックソ、クソ!!その、なんか分かんねぇけどその言い方辞めろッ!!』
『やーだょ♡辞めさせたいなら理解らせて?その前にクソザコ真希ちゃんをワタシが理解らせちゃうかもだけど(笑』
わからせるって何なのか。背が伸びた今の私でも結局よく分からないけど直子の言う事だから、きっと大事なことなんだろう。そう思えるくらいには彼女のことを信頼している。
「私も、私も行かなくちゃ!!」
知りたい。直子さんに何があったのか!いいえ、何があっても私は直姉さんの傍にいたいっ。
待ってて直子さん!!
無作法()していた扇を投射で理解らせてしまった。それについては悔いはない。ただ最高速度で理解らせたせいか派手に爆発音が響いてしまい、既に甚壱くんから蘭太くん、躯倶留隊の皆さんに囲まれている。
「何でこんな事を!?直子さんッ」
蘭太くんが聞いてくる。いや、何でも何もこのおっさんが抜かねば無作法(意味深)をしてたもんで。
しかもドブカス(TS)の写真でだぞ。ヴォエッ!!
「えぇ~?まぁハズみだよ蘭太くん。叔父様の無作法()なんて見ちゃったら、蘭太くんだっておんなじことしちゃうと思うよ?」
これに関しては正直自分が正しいと心底思う。原作からしてあまり良い印象はなかったと言えど、メスガキの影響でまさかこうなっちゃうなんて。これも天与呪縛のせいなんだ。
「え?無作法って・・・ッまたワケのわからない事を!わかるように説明するべきだ!!」
無作法を共通言語にしろ。分かるように言ったら生々しいんだよ。てか何で娘ころころする前に一旦シてたの?扇さんやべーな羂索も倫理を説くんじゃない多分。
こんなパッとしない無作法サイコパスの死に本気で動揺し、その原因であるこちらに本物の憤りを向ける蘭太。禪院家の善玉菌さすが真っ直ぐだ。お前禪院家降りろ。
「直子、一度だけ聞く。なぜ扇を手にかけた?」
すると甚壱が静かに、しかしよく通る声で語りかけてくる。
蘭太はもちろん、周囲の躯倶留隊の皆さんも水を打ったようにシン・・・と静まり返る。
「・・・ま、甚壱くんには教えるべきかな?2人で話せない?」
「今の直子さんと甚壱さんを2人になんて」
「蘭太。大丈夫だ」
甚壱が蘭太を手で制し、目でこちらに訴えかけてくる。「何か理由があるんだな?」と。そうそうあるんだよ。察しのイイ甚壱くんは好きだよ。もちろんライクのほうね。
短いやり取りの中で話しがまとまりかけたその時。
「直子ッ!」
真希ちゃん久しぶり。髪切った?
『女なのに天才で次期当主として認められているヤツがいる』
みんなが噂していた。
『直毘人様と同じ相伝を継いでいる。人をよく煽るけど』
みんな言う。性格はともかく才能は本物。次の当主はソイツだって。
私と同じ禪院家で産まれた女なのに強いって。
もしかしたら、私も強くなれるかな?真衣が泣かないで済む居場所を作ってくれるのかな?
『マジで強い。時々転ぶけどそこもイイ。いや、そこがイイ』
どんな凄いやつなんだろう?どんなカッコイイひと何だろう?
『ざーこ♡よわよわ♡間抜けた面構えホント笑っちゃう♡ねぇねぇ今のお気持ちは?躯倶留隊のお兄さん、ねーってばぁ♡屋根より高いプライド(笑)のクセして実力は井のなかの蛙♡』
は?きっつ・・・
オマエは。
「え、ちょ。何でイキナリ飛びかかってくんの!?びっくらポンなんだけどもッ」
オマエは真衣の居場所じゃねぇ!!!
今までの鬱憤を晴らすように直子へ斬りかかる。分かってる。これは父親を殺された仇討ちなんて殊勝な理由じゃない。
憧れていた噂の人が“あんな”ヤツだった。そしていつからか大事な妹が、そんなヤツの話ばかりをして懐いていることに気づいた。
これは八つ当たりだ。付き合ってもらうぞッ直子!!
「しょうがないにゃあ・・たまってるってヤツ(殺意が)?」
相変わらずふざけてやがるコイツッ!!
でもその口ぶりからは想像できないくらいに強い。
こちらの攻撃―竜骨の連撃をすべて躱す、捌く。
まるで当たらない。術式によるものだろう。まるで見えない!!違和感が少しあるだけで、どんな理屈でその速さを実現しているのかッ
「お前、直子!!」
手を止め間合いを離す
「ん〜?なぁに真希ちゃん。もう疲れちゃったの?」
「ちげぇよッ。お前何で反撃しない・・・!!」
そう。直子は避けて防いでいるばかりでまったく攻撃をしてこない。舐めんなよッ、クソ!!
「えぇ~、だってだって。力加減間違ったら真希ちゃん理解らせちゃうかもだしぃwあ、ちょっと待ってなんか・・・♡(ムズムズ」
イラッ
「おい、その変な喋り辞めろマジで辞めろ!」
「ぇえ♡やめてほしい?やめてあーげ・・・」
この感じ、、、!まさか!!
「・・・来るぞ」
いつの間にか観戦していた甚壱たち。その中でも最年長の長寿郎がそう告げた直後
「ないっ♡ざーこざーこ♡ねぇ昔っからだよねぇ♡何でぇ?やめて欲しいなら理解らせてって言ったのにぃ♡まだ理解らせてくれないの♡だっさぁwもしかして手加減をご所望?そうなら言ってよwやーい貧弱貧弱♡ワタシに攻撃を与えるという真実に到達することは決してないザコ♡」
押し寄せる煽り。それを一身に受ける禪院真希は―
「(ブチッ」
キレた。プッツンした。フィジカルギフテッドの完成には至らないものの、その猛攻は壮絶だったと後に観戦した者たちは語る。
「落ち着いた?真希ちゃん♡」
「、、るせぇ」
あービックリした。いやいきなり飛びかかって来られたときはキャンタマひゅんってなったけど。でも今キンタマないや。
外見は恐るべき覚醒真希ちゃん。それでも真衣ちゃんが無事なため覚醒に至っていないという訳だ。
今まで幼少期から好感度上げようとしてきたのに懐いてくれたの真衣ちゃんだけだし。十中八九煽りのせいだとは思うけど。
「ま、ちょうど良かったかもな。何だかんだ周りに誰もいない場所へ来れた」
信郎が言う。今この場には呼んだから来てくれた甚壱、その甚壱についてきた蘭太。そしてエネルギッシュな真希、呼んでないのに着いてきた信郎、何故かいる長寿郎。
「それで?なぜ扇を殺した」
甚壱くんが問う。ストレートに聞かれると、、、いや言うけど。後悔すんなよ?
選ばれし禪院家のネームドキャラたちに事の発端を伝える。
真希真衣をころころするために忌庫に陣取り、何故か直子ちゃんの生写真で無作法していたこと。
見られた事に慌てふためき逆上した挙げ句、ズボン(袴だけど)も上げずに術式解放してきたこと。
なのでマッハパンチでブチのめしてしまった旨を。
真希と真衣の父は、メスガキが性癖だったことを
「え、は・・・?」
蘭太と真希は概ね理解が追いついていない。分かるよ、さっきまでソッチ側だったから笑。信郎は痛ましい顔でこちらをみてくる。見んなよもみあげ。
甚壱に至っては何度も真実か疑っていたものの、縛り込みで真相をあらためてお話ししたことから得たくもない確証を得てしまい頭を抱えている。
いたたまれない空気の中。長寿郎が呟く。
「じゃ、今回の件は不問」
「ありがとおじーちゃん♡」
やったわ(ガッツポーズ)
一方真希が直子へ襲いかかり、その騒動であの場にいた全員が出払った後。一人這うように動くパッとしない何者か。
「詰めが甘いのだ、あの小娘ェぇ・・・!!」
ぬかった、、、まさか直子が忌庫に来るなどッ!
いくら堪えられなかったと言えど、あの時間帯はマズかったかッ
「頭痛がするッ・・吐き気もだッ・・・!」
「兄に劣らぬこの私が当主に選ばれないなぞあってはならない!
ましてやあんな生意気な乳房でこちらを罵倒する、真っ白な太ももがときどき袴から見え隠れする小娘が次期当主など、、、!!」
ハァハァと直子から受けたダメージが原因で荒い呼吸をしながら這いずる扇。いや、もしくはただ単に興奮しているかもしれないその男。誰もいない忌庫の一角に2人の影が・・・
「じゅ、呪力を練らねば・・・!」
銃声が響く
日本では聞き慣れない複数の破裂するかのような音。
必死に呪力を練ろうと足掻く扇の背後から吐き出された形ある殺意は正確に扇の急所を貫く。
「、、、!!?ふ、ざけるなッ!呪力が練れんッ、出来損ないがァァァ・・・ァ」
「真衣。終わったの・・・?」
母さんが聞いてくる。その手には包丁が握られており、私がいなければ代わりにこの男に引導を渡していたのだろう。
「えぇ。終わったわ。ホント吐きそう。こんなのが私や真希の父親だなんて、、、」
偶然だった。真希が直子に襲いかかった、なんてトチ狂った話しを耳にして必死で後を追った。他の人たちが真希たちを見失い追いつけない中、焦燥に駆られる私はジッと立ちすくむ母の姿を見つけた。
「母さん、、、?」
母はこちらに気が付くと控え目に手招きをした。駆け寄ると母は指を唇に当て、静かにとジェスチャーで伝えてくる。
ひとまず言う通りにすると、そうすべき理由がよくわかった。
直子さんの声!!思わず安心する。彼女が負けるなんて思っていないけど無事を確かめられたからか全身から力が抜ける。
しかし安心も束の間。直子さんの声へ向いていた意識は、その会話の内容を拾い始める。
「・・・は?」
直姉さんの、写真で・・・なに?それ。
信じられないと母を見ると、母は驚くほどの無表情だった。元々表情に乏しい人だったけれど、能面のような顔がとくに印象的に見えた。
どちらともなく忌庫へ向かう。腐っても親子だからか。何故か分からないけど分かった。まだ生きているって。他の人がはけている今しかない。
直姉さんを汚した忌むべきアイツのいる場所へ。
待ってて直子さん。その綺麗な手を汚さないでいいの。私が片付けるから。
ちなみに直子の目的は生き残ることくらいしかあまり考えていませんです