バロックエンジン~男の娘と混沌と機甲傭兵~   作:福ノ権兵衛

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ジャンク品回収

ー2130年9月15日 ブリティッシュ・コロンビア州、プリンス・ルパートー

 それから数日後、アレックはニックのガレージでオッド・アローをチェックしていた。コックピットの中で内部のパーツも壊れていないか入念に点検する。すると、買い出しに行ったニックがハンバーガーを携えて帰って来た。

「飯を持ってきたぞ。そろそろ休憩しないか?」

「ああ、今行く。」

 時刻は12時15分、彼は作業を中断し外に出た。リフトで降りると、半壊した機体を見上げる。

「こうして見ると、よく生き残れたな。」

「運が良かっただけさ。それで、具合はどうだ?」

 彼はタブレットを操作して、機体の損傷箇所をニックに見せる。

「メインカメラがいかれてる。右腕もフレーム、バッテリーもだめだ。」

「そうか。直せるか?」

「それは難しいな。在庫がない。」

「それだったら、ドーソン・クリークに行こう。最近、あそこで大規模な戦闘があったそうだ。使えるパーツは多少残っているだろう。」

「分かった。だが残党にあったらどうする?」

「そこはコボルトで代用するさ。」

 

ー翌日 ドーソン・クリークー

「ついたぞ。」

 ドーソン・クリークに辿り着いた2人。トレーラーを停めて、濃藍色のコボルト2機を出した。護身用のサブマシンガンと盾、捕縛用のスタンランチャーを、背中にはコンテナを背負っている。アレックがHUDで辺りを見渡す。

「死屍累々だな。」

「見慣れた光景さ。」

「そうだな。俺は向こうを探してみる。」

「頼んだぞ。いいの見つけてくれたらご飯奢るぞ。」

 アレックと別れた後、ニックは瓦礫を退かし、使えそうなパーツがないか探す。しかしどれも軽HAV用で目当ての物が出てこない。その事に彼はため息を吐く。

「無駄足だったか。」

「何かお探しか。ニック・ローマン?」

「っ!?」

 いかつい男の声と共に瓦礫の中からHAVが現れた。色と黒のツートン、少ない装甲に装備もショットガンと超音波ナイフ、虎のエンブレムが描かれた右肩には機関砲。その機体は睨むようにモノアイを赤く光らせた。

「お前、ゴーマン・ネイピアか。なぜ俺を知っている。」

「これから死ぬお前に言って何の意味がある?」

 銃口を向けるゴーマン。

「待て、ゴーマン。交渉だ。」

「命乞いの間違いじゃないのか?」

「とりあえず聞いてくれ。アルバータで割の良い仕事をくれるフィクサーがいる、多分お前の雇い主より高額で雇ってくれるさ。銃を下げてくれれば口利きしてやるよ。」

「ほう・・・。」

 それを聞いたゴーマンは少し考えた。

「いや、ダメだ。それじゃあ俺の評判以前に命に関わる。悪いが取引はナシだ!」

アクセルを踏みしめ、襲い掛かるゴーマン。

 その瞬間、ニックはスモークディスチャージャーで煙幕を張った。

「させるか!」

 ゴーマンが機関砲を乱射する。ニックはマシンガンでけん制する。その隙に廃墟群に逃げ込んだ。

「隠れても無駄だ。」

 ゴーマンが当たりを探す。しかし10mという巨体は閉所では不利だった。

 

「あれは・・・。」

 別の場所、アレックは遠方からの銃声に気が付く。ガラクタを捨て、現場に向かう。

「残党でもいたのか?」

 すると、通信が入る。

「アレック、聞こえるか。」

「ニック、何があった?」

「HAVの同業者と交戦中だ。今、倉庫の廃墟に身を隠した。俺としては鹵獲したいが・・・」

「了解。HAV向けのマチェットを拾ったんだ。上手く使えば姿勢を崩せるだろう、その隙にニックはスタンランチャーを撃ち込んでくれ。」

「現在地を送る。近くの小道に誘い込んで叩こう。」

 

「そこか!」

 ゴーマンがショットガンを撃ち込む。しかしニックは路地を縫うように回避し続けた。

「逃げるんじゃねぇ!!」

 迷路のような廃墟群を通り抜ける2つの機体。やがてジグザグした道から真っすぐな小道へ入る。

「直線なら避けれまい!」

 しびれを切らしたゴーマンが銃を向けた時だった。前方で煙幕が展開するが、構わず煙幕に向けて撃ち始める。

 その瞬間、真横の煉瓦の建物からアレックのコボルトが飛び出し、持っていたマチェットをゴーマン機の右ひざに振り落とした。

「もう一機!?」

 関節が鈍い金属音と共に切り裂かれ、姿勢を崩す。すかさず機体を電流が襲った。

 バチバチっと鋭く弾ける音が機体を包む。機体は膝から崩れ機能を停止した。ハッチを開けるとスタンランチャーを握ったニックがいた。

 

ー1時間後ー

 戦闘が終わった後、彼らは回収したパーツと鹵獲した機体をトレーラーに積んだ。

「アレック、どうだ?」

「フレームやカメラもほぼ無傷だし、装甲は付け足せばいい。ゴーマンは?」

「ビーコンと一緒に木に縛り付けたさ。」

「そうか。」

「さっきは助かった。お前のおかげでランチャーを拾えた。」

 礼をいうニック。それにアレックはいった。

「雇い主に死なれちゃ困るんでね。」

「そうだな。よし、約束通り夜は俺が奢ってやる!何が食いたい?」

「海沿いのダイナーかな。あそこはまともな酒も出るし。」




機体解説
タイガーファング:ゴーマンの機体。ベースはオッド・アローと同じだが、色は黄色と黒のツートン、一部装甲が剥がされ軽量化している上、装備もショットガンと超音波ナイフ、虎のエンブレムが描かれた右肩には機関砲と近接戦闘に特化している。頭部もヘッドギア風のロールバーが付けられている。
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