Fate/strange True Will   作:其為右腕

2 / 5
迷宮から出れなくなったので初投稿です。


プロローグ②

「・・やれやれ、想定外にも程があります。」

 

 ――隻腕のサーヴァントが逮捕された。

 この聖杯戦争の立役者の一人、ファルデウスは厄介な現状を前に頭を抱えていた。

 使い魔からの映像とテレビ中継の映像の二つには、騒ぎながらオペラハウス破壊の容疑で警察に連行されていく少年の姿が映っている。

 これだけでも魔術の秘匿という観点では十分に問題である。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼の視線の先には、協力者のフランチェスカから送られてきた、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 見れば、確かに逮捕されたサーヴァントと瓜二つの少年と――こちらは四肢が満足についているが――オペラハウスの外に気絶している状態で件の少年が()()()召喚されている。

 

「やはり、同じ存在とみるのが妥当でしょうか。」

 

 前例はない。が、そもそもこの聖杯戦争はシステムからして、他の聖杯戦争とは異なる。

 予想外(イレギュラー)は既に郊外でのアーチャーとランサーの戦闘から始まっている。

 おそらく、これからも。

 

「――胃薬の貯蔵をお願いします」

 

 それでも彼は戦う。

 すべては祖国(アメリカ)の繁栄のために。

 

 ――次の、真の聖杯戦争が動き出そうとしていた。

 

 今もなお流れ続ける映像に写る少年二人の輪郭に色が輝く、その意味に気づかぬまま――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハ! キハハ! キャハハハハ!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()() アハハハハハ! なら傑作だよ!! ホントかな? でもあの色は、ねぇ? そういうことでしょ!?」

 

 少女は笑っている。水晶玉の前で笑い転げている。その笑い声には、先ほどまでの嘲りはどこにもない。心底可笑しかったのか、心の底から笑っている。

 

「だってさ、そういうことでしょ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() おもしろいったらありゃしない! あああああああああ!!! おもしろい!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ここまで生きてきてよかったって、嘘偽りなく思っているよ!!」

 

 ――想定とは違う。だが、おもしろくなるアイデアは次々と浮かんでくる。

 先ほどまで食べていたポップコーンが辺りに散らばるが気にしない。そんなことよりも、今この瞬間を味わいたい。

 

「でもでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() なら、彼の関係者かな? 服装も今っぽいけど、そういうことなら・・」

 

 少女は考える。その頬を紅潮させながら、バレンタインのチョコをどうしようか悩む乙女のように。

 ――もっとも、実際はそんな甘いことはなく、たとえ彼女が仕掛けるサプライズがだれかを侮辱するようなものであったとしても、彼女は同じ表情を浮かべるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・老害(フランチェスカ)からの情報と違うな。」

 

 連行される少年を署長室の窓から覗き見る警察署長――オーランド・リーヴはそうぼやく。

 此度の聖杯戦争の黒幕の一人であり、同時にキャスターのマスターでもある彼はその性格と職務上、頭を悩まされる側の人間だった。

 

「情報通りなら、あの少年はセイバーということになる」

「ですが彼からは剣はおろか、服装以外にこれといったものは身に着けていないとの報告が」

「それが問題だ。 さらにマスターと思わしき人物はその場におらず、いまだ令呪による転移などの行動も見せていない。 よほどの間抜けか、魔術の素人が召喚したということに他ならない」

「クラン・カラティンは如何します?」

「全員署に集めておけ。・・本音は共闘を申し込みたいところだが、マスターがいないのでは話にならない」

 

 召喚したキャスターの扱いや、先のギルガメッシュともう一人の英霊との戦闘、そして逮捕されたサーヴァントの処理。

 ――特に最後は最悪だ。

 マスターのいないサーヴァントなど、放し飼いにされた猛獣に他ならない。一度でも宝具を使われたときには、並の被害では収まらないだろう。

 

「キャスター殿は如何しましょうか」

「逮捕された英霊共々、監視の目を怠るな。やつの事だ。『自分が取り調べる』と言い出しかねん」

 

 自身のサーヴァントもそうだが、英霊というのは一筋縄ではいかない。警戒はしすぎに越したことはないのだ。

 

「クラン・カラティンにより一層警戒を強めろと言っておけ。 マスターのいないサーヴァントを逮捕したのだ。 他陣営だけではなく、野良の魔術師の目もこの署に向く」

 

 ――人間の手による英霊の打倒。

 聖杯戦争の目的も明確だが、その前に自分たちは警察だ。あの老害や愛国者が気にもかけない市民の安全のために動く。それがたとえ自身が道半ばで死ぬことになったとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オペラハウスから離れた建設途中のビルにて。

 名もなき暗殺者はいた。

 その心は、ただただ自身の未熟を恥じていた。

 

 ――彼らは聖杯を求めていたか?

 ――彼らの意思は?

 ――それも分からぬまま、私は何をした?

 ――彼の反撃は正当なものなのでは?

 

 ならば先ほどまでの自身の行為は――

 

 彼女は恥じる。

 先ほどまでの行為は獣と大差ないものだと。

 かつて伝え聞いた逸話に残る「死徒」なる怪物が振る舞う、徒に死を運ぶあり方と何が違うのか――

 

 彼女は確かに狂信者だが、無辜の民の犠牲をよしとはしない。それがたとえ異教徒であったとしても改宗して同胞となる可能性も捨てきれない。自身の手でその芽を摘むってしまうなど、論外も論外だ。もっとも、あからさまに殺意を向けてきたときは、有無を言わさずその命を刈り取るが。

 

 だがあの少年の攻撃に()()はなかった。

 初めの攻撃こそ、その気配がした。だからこちらも御業を使い、すぐにでも仕留めようとした。

 が、自身を追い払ったあれは違った。

 威力など最初の攻撃とは比べものにならないほど大きいものだったが、その時の彼の目に攻撃的な意思は見られなかった。

 むしろそこにあったのは――

 だとすれば自分は――

 

 だからと言って止まるわけにはいかない。

 この街にはまだ魔術師の気配も、それより大きい、自身と同じ存在もまだ残っている。

 ならばそれを滅ぼすまで、止まらない。止まることは許されない。

 それが自身の在り方だから。そこまで譲ってしまったら私は私でなくなってしまう。

 

 再び、黒衣が街を巡る。

 

 長達への侮辱への報いのために。

 

 願わくば、彼らと再び会い、今度こそ対話を為すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そんなアサシンの様子を、死んだはずのマスターの青年は嗤って見守る。

その在り方をめちゃくちゃに凌辱し、喰らうために、今日も今日とて暗躍する。

夜は彼の――死徒にとっての絶好の舞台なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・まさかここまでのイレギュラーだとはな」

『文字通り外からの来訪者、か。 これで、我々の観測する宇宙も世界も、数ある中の一つに過ぎないと証明されてしまったのかな』

「存外、長く生きてみるものだ。 これにはあの魔物(バカ)も一際はしゃいで世界を汚すだろう」

『ボクとしてはあまり喜ばしいものではないがな。 確かに彼女の宇宙には期待したが、それよりも彼女が呼び寄せた者だ。 正確には彼自身ではなく収まっている器が問題だ』

「ほう、その心は?」

『貴方も意地の悪い。 ()()()()()()()()()()()()()()()ことなど、貴方なら分かるだろうに』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

『彷彿とさせるのが嫌なのかもしれない。 言葉ほど嫌でもないのかもしれない。 こればかりはボクもどうしようもないさ』

「ところで()()()で思い出したが、かつてこれと似たような事象があったな」

『・・まさか』

「そのときもあれは性懲りもなく絡んでおったが、それは最後の最後だった。 おそらくこの事象については何も知るまい」

 

「しかもそれには()()()()()()()()()も多分に含んでおった。 儂の知るものではない。 だが今回の呼び水は()()()側だ。 なに、筋書きはそうは変わらんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・俺が何をしたってんだ」

 

 隻腕の少年は失意のどん底にいた。

 いくら自分が犯人でないと証言しても流され、あほみたいな時間、多くの警察官に見られて、結果、身分を証明できるものがないからとしばらくはこの牢屋で待機となった。

 あんまりだった。

 

「・・そもそも、()()()()()

 

 ――今回の取り調べが難航した原因の一つに、まず記憶喪失が挙げられる。家族や住んでいる場所、出身、その他諸々、自分の名前すら分からない状態。犯行の動機も、その手段も不明瞭。取り調べを行った刑事も、彼が隻腕であることもあってかなり懐疑的である。が、それでもこうして取り調べに時間を取ったのは()()()()()()だからなのだが――

 

「腹減った。 疲れた。 不幸だと喚く余裕もない。 でもそれだとなんだか自分のアイデンティティがどんどん失われていっている気がする」

 

 そんなこと少年には関係ない。ただただこの状況を噛みしめるしかない。目的もなく時間をつぶすしかない状況こそが、人を最も着実に追い詰めるものかもしれないと、彼は後に語る。

 

 「そういえば、いつから電気消えてたんだ?」

 

 消灯時間だろうか。確かに夜は夜だし、ここは独房だ。就寝時間は早いか遅いかだったら、前者だろうと思う。だが、今の今まで、職員が声もかけられていないのだ。もう寝る時間だともいわれていない。

 

 ――耳をすましてみても、物音ひとつしない。

 

 おそらく何かがあった。

 この署に関すること、その職員の命が脅かされていること、それに準ずることが――。

 

 ではなぜ俺は放置されている?

 

 ――分からない。いくら容疑者とは言え、今の今まで何も言われないことなんてありえるのか。身の安全の確認にもきていない。警察側の事情があるのか。それともこちら側に何かあるのか――。

 

「・・分かんねえ」

 

 考えても真実は見えてこない。だが、これはまずい。()()()()()()()()()()()()()

 不思議とそう思えた。彼に記憶はない。名前もない。助けてくれる人もいない。

 

 ――それがどうした。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 分からないがそう思えた。――それはどんな時でも彼が彼だからだろうか。

 ともかく、今、誰かが苦しんでいるのかもしれない。誰かの手に負えない事態が迫っているのかもしれない。

 そう考えたときは、いつも――

 

 

 

 

 

 ――――独房に光が満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆめのなか

 

 いえのむこうがわにひかりがみえた。

 ()()()()()()()

 あのかみなりとはちがう。

 かみなりとちがってあたたかい。

 かみなりとちがってうるさくない。

 かみなりとちがってまぶしくない。

 かみなりとちがって――こわくない。

 ふしぎとげんきがでてきた。

 なにかやってやるぞって。

 わたしにもなにかできるかもって。

 

 

「――まっくろさんもそうおもうでしょ?」

 

 

 

 ――黒が揺らいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この気配は・・」

 

「――自分の足で歩こうとするその意思について、僕は嬉しく思うよ」

 

「でも、その在り方までは、肯定はできないかな」

 

 そう独り言ちながら、槍兵の英霊は、銀狼を撫でる。

 

 

 

 

 ――もう一つ、それと似た気配がこちらに向かってくるのを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか、ジャックさん?」

 

『待ってくれ、今その独房の近くに――!?』

 

「ジャックさん!? どうしまし――!!」

 

『・・その様子だと君も感じたかね』

 

「・・これ、ちょっとまずいかもですね」

 

 

「それだけじゃないですよ! 多分今のでサーヴァントが一騎、それとこの人、いや、これは・・」

 

『接触を急ぐとするかな、マスター?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あまり進まないし、短いし、そして分かりにくくてすいません。
区切りがいいので今回はここまでにします。
次回からはどんどん戦闘も増えて、話も進むと思います(多分)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。