決闘者セアミン(♂)   作:へるしぃーぼでぃ

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セアミン可愛さに書き始めました。
男女論争は中立派です。




vs.ジュラックお姉さん

 

 

 

 

 

「ふふふ!ジュラック・アステロの効果で『ジュラック』魔法・罠を1枚伏せ、私はターンエンドだ!」

 

勝ち誇った顔のお姉さんが、片っぽサイドテールを揺らしてターンを譲ってくる。

場には恐竜族S(シンクロ)モンスター、『ジュラック・アステロ』─ATK/2500が2体。

フィールド魔法✧『ジュラック・ボルケーノ』が展開され、伏せられたカードは十中八九、罠カード『ジュラック・インパクト』だろう。

 

隕石による大量絶滅がモチーフとされる『ジュラック』。

 

生半可な動きでは全てを破壊されてしまう。

なるほど、モチーフ通りの凶悪な盤面だ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

自分の口からまだ聞き慣れない可愛い声を出しつつ、袖口から後攻ドローする。

その瞬間、相手が「俺っ子!?たまらんっ」と叫んでから動いた。

 

「この瞬間、私は手札から『幻創のミセラサウルス』を捨てて効果発動!メインフェイズの間、私のフィールドの恐竜は君が発動した効果を受けない!ぐっふっふ、完璧な布陣……!さぁセアミンちゃん(・・・・・・・)、大人しく降参して私のパートナーになりなよ!」

 

「いやです」

 

ニチャァと、美人が台無しな満面の笑みを浮かべる対戦相手のお姉さん。

─【LP8000】

 

対する俺──セアミンは能面な顔で無下もなく断った。

─【LP8000】

 

……勝ちを確信する気持ちも分かる。

……セアミンが可愛いのも分かる。

分かるが、その舐めるような視線はやめてくれ。

ただでさえ和装ミニスカで落ち着かないんだ。

思わず裾を押さえたが、それを見てお姉さんはさらに気持ち悪い笑みを浮かべた。

っく、むしろ相手を喜ばせてしまったか……っ。

 

サイキック族のレベル3地属性チューナー『No(ノウ)-P.U.N.K.(パンク)セアミン』。

 

それが今の俺の姿だった。

そして街のど真ん中、帰宅ラッシュくらいの時刻。

デュエルコートの中で、俺はソリッドビジョンを駆使した遊戯王デュエルモンスターズをしていた──……

 

 

◆◇◆◇

 

 

──気付いたら遊戯王が覇権を握る世界で、カードの精霊セアミンとして目覚めていた。

 

何を言ってるか分からねぇと思うが、俺も分からねぇ。

とりあえずそういうモノとして、ありのまま起こっている今を話すぜ。

 

状況をザックリ説明すると、この世界では精霊とデュエルして勝つとその精霊がパートナーとなり、そのテーマのカードが入手出来るらしい(ソースは目の前のお姉さんなので、信ぴょう性は定かではないが)。

 

そして相手のお姉さんは街を彷徨う俺に一目惚れしたらしく、こうしてデュエルを挑んできたのだ。

目覚めてワケも分からぬまま、何故かデッキだけは持っていたので「まぁデュエルくらいなら……」と安請け合いしてしまった俺。

頼れるモノが何も無いので、例え負けてお姉さんに所有されたとしても良いか……と思っていたが、「でゅふふ、セアミンちゃんかぁ。可愛いねハァハァ」と息を荒らげている今の姿を見るに、その考えは改めた。

つまり負けられない戦いというわけだ。

 

デュエルに戻ろう。

 

盤面はアステロの特殊召喚無効破壊が2回に、罠のインパクトで全体破壊1回。

そしてアステロは墓地に行ったらフリーチェーンで『ジュラック・メテオ』をS召喚しての全破壊でも襲いかかってくる。脱法Sヤメロ。

墓地には化石よろしく大量の恐竜たちが眠っているので、アステロの効果は使い放題だ。

フィールド魔法✧ボルケーノにもメテオをS召喚する効果があるが、まぁこれは無視してもいいだろう。発動条件が遅いからな。

そして極めつけは、手札から墓地へ送られたミセラサウルスで、フィールドの恐竜たちには『メインフェイズ中は相手の効果を受けない』という強力な耐性が付与された。

 

……厳しい状況だ。が、この手札ならギリギリ行けるな。

 

俺はカードを1枚、バラ柄の振袖のクソ長(たもと)に置いて発動した。

 

「永続魔法∞『Ga(ガガク)-P.U.N.K.クラッシュ・ビート』発動」

 

「ふぅん、テーマ専用魔法カードかな?全破壊するにはまだ勿体ないか」

 

どうやら相手は本当にセアミンの姿に一目惚れしただけで、P.U.N.K.デッキの内容は知らないらしい。

これなら俄然イケるっ。

 

「続けて速攻魔法⚡︎『緊急テレポート』発動。手札・デッキからレベル3以下のサイキック族1体を特殊召喚する」

 

デッキから呼び寄せるのは、頼れるパンクな兄貴分。

 

「『Uk(ウキヨエ)-P.U.N.K.娑楽斎(しゃらくさい)』を特殊召喚」

 

「フッ、その特殊召喚は封じる!アステロの効果!墓地の恐竜族を2体除外し、その特殊召喚を無効にし破壊する!」

 

アステロの全身から炎が吹き出し、テレポートしてフィールドに降り立とうとした娑楽斎が破壊された。南無。

俺の残り手札は4枚。

 

「2枚目の⚡︎『緊急テレポート』を発動」

 

「2枚目ッ!?けど、私も2体目のアステロの効果発動!」

 

続けて呼んだ『Ga-P.U.N.K.ワゴン』も破壊される。

豊富な妨害回数を用意できたからか、気軽に効果を使ってくるな。

しかしこれで特殊召喚無効効果は使い切らせた。

 

「3枚目の⚡︎『緊急テレポート』発動」

 

「なっ!?そんなのアリ……!?」

 

さすがに愕然とするお姉さん。

仕方がない。なんか手札に来ちゃったんだ。俺もビックリだ。

 

俺は『No-P.U.N.K.セアミン』を選択。

 

俺のような紛い物ではない本物のセアミンが、遥か上空に出現したテレポートゲートから落下してきた。

重力を感じさせずにシュタッ、と着地する。

 

厚底すぎる草履。

ヒラヒラ舞うシースルーの布地に包まれたタイツの足が、和装ミニスカから艶めかしく伸びている。

長すぎる袂の先端には重そうなアンプが垂れ下がり、手には閉じられた扇子を持ち。

無表情で胡乱な翠の瞳に、耳飾りがユラユラ揺れている。

雅な衣装の柄が、その存在の主張するように淡く光っていた。

 

レベル3『No-P.U.N.K.セアミン』

-ATK/600

 

P.U.N.K.デッキの初動筆頭が、フィールドに降り立った。

やはり何度見ても可愛い。しかも夢にまで見たソリッドビジョンである。これだけでこの世界に来たことを許せてしまいそうだ。

お姉さんも「可愛い……!」と見惚れて呆けた後、しかしまたしても気味悪く笑いだした。

 

「連続テレポートには面食らったたけど……、カワイイから許すわ!……ぐふふ、絶対手に入れてやるからね!セアミンちゃん!!」

 

うわぁ……。

こんな下心満載なお姉さんに所有されたくねぇ。ナニされるか分かったもんじゃない。

続けてお姉さんが叫ぶ。

 

「手に入れるために心を鬼にして……っ、罠カード『ジュラック・インパクト』発動!フィールドに攻撃力2500以上の恐竜族がいる時、フィールドのカードを全て破壊する!」

 

伏せられたカードがオープンされ、(そら)から隕石(恐竜?)が飛来してきた。

ここで罠カード発動か。全破壊の大盤振る舞いだな。

 

隕石が着弾。

次いで閃光

吹き荒れる爆風と轟音。

 

その衝撃波に思わず腕で顔を覆い、袖がバタバタと荒れ狂う。

そして地響きが鳴り止んだ後。

跡地のフィールドには何も残されていなかった。

フィールド魔法✧も、永続魔法∞も、モンスターたちも。

すべてが無くなった。

残るは得意げな顔のサイドテールお姉さんが対面に居るばかり。

彼女は指をビシリと指し示して言った。

 

「さて、三連続テレポートは全部潰した。このデュエル、もはや君に勝ち目はない!」

 

確かに三連テレポートを凌いだのは凄い。勝ち誇るのも頷ける。

だが。

 

「それはどうかな?」

 

「何?」

 

これで準備は整った。

行くぞ!

 

「セアミン(2体目)を通常召喚」

 

召喚権を使い、再び現れるセアミン。

純構築ならセアミン3枚は必須です。

お姉さんが「2枚目か……素引きもしてたのねっ」と驚き、しかし不敵に笑う。

 

「けど、召喚権を使ったわね?なら墓地のアステロの効果発動!このカードを含む『ジュラック』モンスターを2枚除外し、『ジュラック・メテオ』をS召喚扱いで特殊召喚する!」

 

ゴゴゴ……と宙から再び飛来する、巨大な岩のような恐竜。

さっきの罠カードではない、本物のメテオの姿だ。

お姉さんが召喚口上を唱える。

 

「自らも破滅させる破壊の化身よ!(そら)より現れ、地上の万物を無に帰せ!S召喚!!」

 

レベル10『ジュラック・メテオ』

-ATK/2800

 

レベル合わせすらしない、脱法S召喚にて呼び出された隕石を纏いし恐竜。

ソレが地面に着地と同時、場に暴風が吹き荒れる。

俺のデュエルディスク兼用(たもと)がバタバタと暴れ、粉塵がモクモクと上がる。

破壊に次ぐ破壊。

これが大量絶滅がテーマの『ジュラック』の連続破壊。

お姉さんの勝ち誇った顔が煙の向こうに見えた。

 

「くっくっく……!さぁ、残り手札1枚でどうするつもり?まぁ何を出しても、もう一回メテオを呼んでブチ壊すけどね!はははは!………………っは?」

 

お姉さんの悪役チックな高笑いが中断された。

それはそうだろう。

なんせ隕石の破壊の跡地に、何食わぬ顔でフィールドにセアミンが佇んでいたのだから。

お姉さんが驚愕に満ちた声で叫ぶ。

 

「なっ、なんで破壊されてないの!?どういう事!?」

 

「罠カード『ジュラック・インパクト』の時に破壊された永続魔法∞『Ga-P.U.N.K.クラッシュ・ビート』の効果。相手によってこのカードが破壊されたこのターン、『P.U.N.K.』モンスターは相手の効果の対象にならず、そして効果では破壊されない」

 

俺はセアミンの無表情で淡々と説明する。この身体は表情筋が乏しいのだ。

俺の言葉にお姉さんが愕然とする。

 

「くっ、そんな効果が……!?……ッ、それじゃあ、もう1体の墓地のアステロも……無意味ッ」

 

この世界のデュエルはどうやら、デュエル中は相手のカード効果や墓地へ送られたカードを確認できないアニメ仕様のようだ。

俺はたまたまこの世界に来る前にジュラックと対戦してたから、そこだけはアドバンテージがあった。

案の定こちらの効果を知らなかったお姉さんだが、しかし彼女の闘志はまだ折れていなかった。

 

「……っまだだ!メテオのさらなる効果!全破壊後、墓地からチューナー1体を特殊召喚できる!現れろ、『葬角のカルノヴルス』!」

 

レベル6 『葬角のカルノヴルス』

-ATK/2000

 

メテオ(自身)は破壊したので続きの効果が適用されたようだ。

だがこれでもう直接的な妨害は無くなった。ようやく動き出せる。

 

「セアミンの効果。600LP払い、デッキから『P.U.N.K.』モンスター1枚を手札に加える」

─【LP8000→7400】

 

「くっ、サーチ効果……!」

 

アステロの効果を使いたそうなお姉さんだが、もう無意味な事を理解して悔しそうな声だけを上げる。

それを尻目に展開していく俺。

 

「手札に加えた『No-P.U.N.K.ライジング・スケール』の効果。手札か墓地の『P.U.N.K.』カードを除外し、このカードを特殊召喚」

 

俺は墓地の永続魔法∞クラッシュビートを除外、P.U.N.K.の上級モンスターであり展開の要であるスケールを場に出した。

 

レベル8『No-P.U.N.K.ライジング・スケール』

-ATK/2400

 

サラシ巻きのへそ出し海竜族少女。

この子のお陰でP.U.N.K.は大幅に強化されました。ありがとうございます。

 

「スケールの効果。特殊召喚した場合600LP払い、デッキ・墓地からレベル8以外の『P.U.N.K.』モンスターを1枚、手札に加えるかフィールドに特殊召喚する。現れろ、娑楽斎」

─【LP7400→6800】

 

特徴的なグラサンを掛けたアニキが再登場。

ニッ、と笑ってポーズをキメる娑楽斎の隣で、ボーッと突っ立っているセアミン。対比が激しい。

どんどん行くぞ。

 

「娑楽斎の効果。600払い、『P.U.N.K.』融合モンスターを特殊召喚する。融合素材は残り1枚の手札のセアミンと、娑楽斎自身」

─【LP6800→6200】

 

手札のセアミンとフィールドの娑楽斎が光となって混ざり、その中心部が吹き荒れる。

そして空中に描き出されるのは、サイケデリックに発光する巨大な魚。

 

レベル8『Uk-P.U.N.K.カープ・ライジング』

-DEF/2600

 

「魔法カードを使わずに融合召喚ッ。でも、その程度の守備力じゃあ……」

 

「ライジングの効果。融合召喚したこのカードをリリースし、手札・デッキからレベル8以外の『P.U.N.K.』モンスター2体を守備表示で特殊召喚する」

 

「2体!?……くっ、なるほど。その融合モンスターは更なるサーチなのね」

 

レベル3『Jo(ジョウルリ)-P.U.N.K.Mme.(マダム)スパイダー』

-DEF/600

 

レベル5『No-P.U.N.K.ディア・ノート』

-DEF/1800

 

ライジングの効果で傀儡人形と黒子のペア、そして刀を持ったミニスカ和装のお姉さんが現れる。

スパイダーの効果で600払い、『P.U.N.K.』罠カードを1枚サーチ。

─【LP6200→5600】

 

さぁ、ここからP.U.N.K.の真骨頂だ。

 

「レベル3チューナーのスパイダーに、レベル5のディア・ノートをチューニング」

 

2体のモンスターが光の粒子になり、それらがレベルの数だけ輪となって並び連なる。

光輪は八つ。

輪の中心に、光の柱がカッ!と貫いた。

 

「浮世絵の絵柄を身に纏い、フィールドという舞台を舞い踊れ。S召喚」

 

レベル8『P.U.N.K.JAMドラゴン・ドライブ』

-ATK/2700

 

カラフルな浮世絵風に描かれたドラゴンを被った、セアミンとディア・ノートが背中合わせで立ち並ぶ。

その背後ではドヤ顔の娑楽斎アニキが筆を残心させていた。

 

「融合の次はS召喚!?」

 

「ドラゴン・ドライブの効果。このカードがS召喚または『P.U.N.K.』の効果で特殊召喚した時、600LP払いデッキからサイキック族・レベル3モンスター1枚を手札に加えるか墓地へ送る」

─【LP5600→5000】

 

どんどんライフが削れていくが、構わない。

こういうコンセプトのデッキだし、セアミンたちに貢ぐと考えればむしろ全然足らないくらいだ。

 

「チェーンして墓地のディア・ノートの効果。墓地からレベル5以外の『P.U.N.K.』を1体特殊召喚する」

 

蘇らせるのはもう一人のお兄さん枠、ワゴン。

そしてワゴンの効果で600LP払い、デッキから『P.U.N.K.』魔法カードをサーチ。

─【5000→4400】

 

「あっという間にライフを3000以上削ったわね。そしてそれに見合う展開力と手札補充……!」

 

眺めることしか出来ないお姉さんが感嘆の声を上げる。

場にはレベル8のライジング・スケールとドラゴン・ドライブ。

そしてレベル3チューナーのワゴンとセアミンの4体が立ち並ぶ。

ソリッドビジョンのお陰で圧巻な光景だ。

さぁ、仕上げである。

 

「まずはワゴンとドラゴン・ドライブをチューニング。……ド派手に極彩色を撒き散らし、デュエルの荒波をどこまでも駆け昇れ。S召喚」

 

レベル11『Uk-P.U.N.K.アメイジング・ドラゴン』

-ATK/3000

 

描かれた鯉が龍へと昇華された 『P.U.N.K.』の最上級モンスター。ウキヨエの最高傑作だ。

ドラゴンの頭上でドヤ顔の娑楽斎がヤンキー座りしている。

お姉さんが驚きに目を見張った。

 

「レベル11のSモンスター!?っけど、どんな強力な効果だろうと私の恐竜は効果を受けないわよ!」

 

そう『幻創のミセラサウルス』の効果でこのターンのメインフェイズ中、相手の恐竜族はこちらの効果を受けつけない。

本来なら大量バウンス効果でド派手に盤面を捲るアメイジング・ドラゴンだが、そんなわけで今回はもう一つの効果を使う。

 

「アメイジング・ドラゴンの②の効果発動。墓地の『P.U.N.K.』モンスターを1体特殊召喚する」

 

蘇らせるは今、S素材として墓地へ送られたドラゴン・ドライブ。

さぁクライマックスだ。

お姉さんの脱法Sに対抗する時が来た。

 

「アメイジング・ドラゴンの上に、オーバレイネットワークを構築」

 

俺のかざした手に、アメイジング・ドラゴンが重なる。

そして俺の袂に光が集約、放出され、クロスして輝いた。

宇宙空間を背景に、超新星の如き爆発と暴風が吹き荒れる。

お姉さんが驚愕に目を見開いた。

 

「なっ!?エースモンスターを素材に、しかも1体だけでエクシーズですって!?」

 

「このカードは『P.U.N.K.』融合・Sモンスター1体の上に重ねて出せる。……踊り狂え、狂喜乱舞の宴を獅子が闊歩する。X(エクシーズ)召喚」

 

ランク8『P.U.N.K.JAM (パンクジャム)FEVER!(フィーバー)X素材:❶

-ATK/2800

 

P.U.N.K.下級モンスターたちが(あやつ)り織り成す、巨大な獅子舞が出現した。

レベルもモンスターの数も無視した、これが俺の脱法Xだ。

そして次がいよいよ最後。

真打の登場だ。

 

「レベル3のセアミンに、レベル8のドラゴン・ドライブをチューニング」

 

「1ターンに二度目のレベル11シンクロ……!?」

 

現代遊戯王ではさほど珍しくない最上級モンスターの連続召喚だが、アニメ準拠レベルのこの世界では目を疑う光景らしい。

そんな世界で連続メテオしてくるお姉さんも大概だから、俺も全力で勝ちに行かなければならない。

 

「終焉の時は今……その罪を正し、最後にして最高の罰を与えよ。S召喚!」

 

顕現する、デュエルを終焉へ導く破滅の懲罰者。

 

レベル11『サイコ・エンド・パニッシャー』

-ATK/3500

 

機械的で悪魔的な、痩躯な人型ドラゴンという様々なモンスターを複合したような姿の歪なサイキッカー。緑色の雷のようなエネルギー波がバチバチと迸る。

セアミンボディも語気が高まる、このデッキの絶対的エースだ。

その荒々しい姿を前にして、お姉さんも息を飲んで後ずさった。

 

「攻撃力3500!?さらにエースが控えていたっていうわけね!」

 

「墓地へ送られたセアミンの効果。フィールドの『P.U.N.K.』1体の攻撃力を600アップさせる」

 

『No-P.U.N.K.ライジング・スケール 』

-ATK/2400→3000

 

「ぐぅ、追い討ちを掛けるようにッ!……っ、でも、ちょっと待って」

 

何かに気付いたお姉さんが、今宵何度目かの不敵な笑みを浮かべた。

あれはまだ希望を捨てず、貪欲に勝利を求めるデュエリストの顔だ。

 

「ふふふ、最後の最後でツメを誤ったわねセアミンちゃん!そのエースモンスターは『P.U.N.K.』カードじゃない!つまり永続魔法∞クラッシュ・ビートの効果の適用外!私は墓地のアステロ(2体目)の効果発動!」

 

……ゴゴゴ、と暗雲再来。

凄いな。ここまで相手に展開されても、まだ冷静に闘志を燃やしている。天晴だお姉さん。

本当に……天晴だ。

遥か天空から、本日三度目の巨岩恐竜が飛来した。

 

「その危険そうなエースだけでも破壊するわ!いけ、ジュラック・メテオ!ジュラック……ッインパクトォ!!」

 

レベル10『ジュラック・メテオ』

-ATK/2800

 

大気圏に突入したメテオが炎を纏い、パニッシャーの頭上に迫る。

P.U.N.K.たちには永続魔法のバリアに守られているが、パニッシャーだけはその身を晒している。

 

「……」

 

だがパニッシャーは飛来物を見上げると、その禍々しい翼を広げて帯電し始めた。

そして展開される、極厚の電磁バリア。

そこへメテオが衝突、轟音、爆発。

ジュラック・メテオだけが爆散していった。

残骸がパラパラとフィールドに降り注ぐ。

 

呆けるお姉さん。

 

一部始終を見届けるまでもなく目を瞑る(セアミン)

 

そしてフィールドには、電磁バリアを解いて無傷のパニッシャーとP.U.N.K.たちが居た。

その光景を見てお姉さんは涙目になってこっちを見てきた。

その目が「……な、な、なんでよぉお!?どういう事!?どうしてメテオの効果でパニッシャーが破壊されないのよ!?」と語っていたので、俺は説明してあげる事にした。

 

「……S召喚したパニッシャーは、自身のライフが相手より低い時、相手の発動した効果を受けない」

 

「そ、は、そんなっ、ミセラサウルスのような能力を……っ!?ッ私はァ!メテオの効果で『葬角のカルノヴルス』を墓地から特殊召喚ンッ」

 

まだ頑張るお姉さん。若干ヤケクソ気味だけど、デュエリストの鑑だな。

さて、自身のライフを削るプレイスタイルのP.U.N.K.と、相性抜群な自他ともに認めるエースカード、パニッシャーが出揃った。

これで幕引きだ。

 

バトルフェイズに移行する。

 

袖の先端のアンプからMD(マスターデュエル)でのデュエル佳境シーンのBGMが重低音で流れ始め、(セアミン)のおかめヘッドギアが勝手に動いて装着された。

ブォン、と目元が妖しく光る。

 

「バトル。この瞬間、パニッシャーの効果発動」

 

「まだ何かあるのぉ!?」

 

「互いのライフの差分、攻撃力がアップする」

─【LP4400】

 

『サイコ・エンド・パニッシャー』

-ATK/3500→7100

 

「ウソォ!?」

─【LP8000】

 

この凶悪極まりない効果に本格的に泣き出すお姉さん。

俺は無慈悲な攻撃宣言を下した。

 

「ライジング・スケールでカルノヴルスを攻撃」

 

怒涛の攻撃力でキメる。これがP.U.N.K.のデュエルだ。

しかしまだ、お姉さんは諦めていなかった。

 

「まだよ!このターンは凌ぐ!カルノヴルスの効果!自分か相手の攻撃宣言時、手札から恐竜族モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する!私は手札から『究極伝導恐獣(アルティメットコンダクターティラノ)』を……」

 

負けじと展開しようとするお姉さんに、俺は声を被せた。

 

「FEVER!の効果!自分の墓地にレベル3サイキック族が存在する時、エクシーズ素材(オーバーレイユニット)を1つ取り除いて効果発動。モンスターの効果を無効にし、破壊する」

❶→✲

 

「なんですってェ!?」

 

P.U.N.K.たちが操る巨大獅子舞が、効果を発動しようとしたカルノヴルスにガブリと噛み付いて破壊した。

最後の希望だった最上級モンスターは日の目を見ること叶わず、お姉さんのフィールドはガラ空きになる。

 

「ライジング・スケールの攻撃を続行。プレイヤーへダイレクトアタック」

 

俺はそこへ容赦なくサラシ海竜っ子を突っ込ませた。

ライジング・スケールが操る、空中浮遊する籠手がバシン!とお姉さんを叩いた。

 

「んぁあ!!」

─【LP8000→5000】

 

へそ出し少女にブッ叩かれて、悲鳴だか嬌声だか判断に迷う声を上げるお姉さん。

俺は引導を渡すことにした。

 

「パニッシャーでダイレクトアタック。停滞の(スタグレイション)……終焉(エンド)!」

 

「あ、ちょっ、そっちの攻撃はご遠慮願いた……ッイヤァァアア!?」

─【LP5000→0】

 

パニッシャーの歪な腕からエネルギー砲が放たれ、相手のライフを一気に刈り取った。

 

〔〔〔WINNER:セアミン〕〕〕

 

……デュエルは終わった。

なんとかロリコンお姉さんの毒牙からは逃れられたようだ。

お姉さんはガックリと項垂れている。

 

「まさか、私の大量破壊ジュラックを完封されるとはね。デッキもかつてないほど回ってくれたのにっ。……ッあーんもう!可愛くて強いセアミンちゃんと仲良くなりたかったー!」

 

大人の女性が女の子座りで人目を憚らずワンワン泣き始めた。

え、ちょ。

デュエルコートとはいえ街中で、しかもギャラリーが結構集まってる中でそんな反応は非常に困るんだけど……

会社帰りだろうサラリーマン(ギャラリー)たちのヒソヒソ声が断片的に聞こえてくる。

 

「おい、“ジュラシッククイーン”が負けたぞ」

 

「あの和服の精霊の子、とんでもないパワーのレアカードを使ってたな」

 

目の色を変えて見てくるギャラリー。

ひぃ!?この世界の大人は遊戯王に本気過ぎる……!

俺は戦略的撤退する事にした。

 

「それじゃあ、デュエルありがとうございました」

 

「ああん!待ってセアミンちゃん!!行かないでぇ!」

 

立ち上がらずに手だけ伸ばし、悲壮感に溢れた顔で懇願するお姉さん。ちょっと悲劇のヒロインムーブ的な空気を楽しんでません?

体格にものを言わせて強引に引き留めようとも出来るハズだが、デュエルに負けたからか、そんな事はしてこないようだ。遊戯王世界は平和だな。

 

……まぁでも、そうだな。

 

離れる前にひとつだけ、ずっと気に掛かってた事だけ言っとくか。

俺はクルリとお姉さんに近付くと、泣きっ面のお姉さんはパア!と笑顔を輝かせた。

期待させるような事してゴメン。ちょっと主張したいだけなんだ。

 

「ひとつだけ言っておく。俺、男なので、ちゃん付けはやめて欲しい」

 

「………………はぇ???」

 

面白いくらいキョトンとするお姉さん。

分かる。俺の見た目は完全に女の子だからな。ミニスカだし。

精神が男──、という話でもない。

まぁそれもあるが、そんなこと話しても信じて貰えないだろうし。

それとは別にこの身体、この肉体が……

 

「ほら」

 

俺は顎を上げて喉元を見せた。

白くて細い、華奢な喉。

そこに、喉仏が浮かび上がる。

そう。このセアミンボディ、まさかの男の子なのである。

 

「??????」

 

宇宙猫になっているお姉さんを尻目に「では」と素っ気なくデュエルコートを去る。っていうか今更ながらデュエルコートってなんだよ。

身も心もれっきとした男の俺は、ちゃん付けがムズ痒かったのでそれだけ主張したかったのだ。

 

今度こそデュエルの場を後にする。

 

デュエルの勝者は尊重されるのか、獲物を狙う目のギャラリーたちはモーセの如く道を開けてくれた。

身構えていた分、すんなり通してくれて拍子抜けだ。

そのままアテも無く歩き去る俺。

見物人の視線が消えたところで、俺はほっとひと息ついた。

そして声を上げる。

 

「いや本当、どういう事だよ」

 

俺は周囲を見渡す。

俺がセアミンになる前の世界と、一見ほとんど同じ道。街並み。文明。

違う点を上げれば、路地裏の片隅にはゴキボールが転がり、目の前のビル群は摩天楼スカイスクレイパーだし、空には赤き竜が飛んでるし、その先の夜空の果てにはゴーティスが優雅に泳いでいた。

 

そして俺は……、セアミン(♂)。

 

……。

遊戯王世界なのはまぁ、いい。よくある二次創作設定だし。遊戯王好きだし。

問題なのは何で俺がカードの精霊セアミンとして転生(?)してるかだ。

俺の最後の記憶は、家でゴロゴロしながらMDでP.U.N.K.デッキの構築を考えながら寝落ちしたところだ。

それがなぜ、異世界転生してるんだ?死んだのか俺?

だがこれも、今の俺には考えても分からない問題なのでとりあえず置いておく。

 

最大の問題は、♂の部分だ。

 

これは重要だ。学会が割れる大問題だ。

確かに、セアミンが男の子説はあるにはある。

……が、俺はフツーに女の子派だ。

確かに男の子説もオイシイ(・・・・)のは分かる。

俺自身、女装とか男装とか、オトコの()とかの異性装モノは好きだし。

でもあのカードイラストの可愛さとムチムチの太ももは完全に女の子だろ。

女の子はきちんと女の子として扱ってください。

 

そしてさらに許せないのが、中身が俺という点だ。

 

それこそ解釈違いである。

セアミンは可愛いが、セアミンになりたい訳では無いのだ。可愛いけども。

さっきのお姉さんじゃないけど、俺もセアミンに一目惚れしたクチだ。俺も愛でたいのだ。

 

なぜ俺がセアミンに……。

 

思い当たることと言えば、MDでセアミンとサイコ・エンド・パニッシャーのロイヤル加工を引いたくらいだ。逆に他のロイヤル加工は全く引けなかったけど……

それからずっとP.U.N.K.カードばっかり使っていたのだ。

 

俺はデッキからカードのセアミンを取り出して、眺める。

 

うん。可愛い。こんなに可愛い子が男の子なわけがない。

やはり俺はパチモン。

よし。一蹴回って落ち着いてきたな。

 

「本物を探そう」

 

目覚めてワケも分からぬまま、ボーッとしていた所をお姉さんにデュエルを挑まれて、今。

まだ状況はうまく掴めていないが、デュエルの勝敗が全てを決し、カードの精霊が実在するイカれた世界だということは分かった。

 

なら、何処かに本物の女の子のセアミンが居るはずだ。P.U.N.K.使いとして是非とも逢いたい。

 

どういう因果で俺がセアミン♂としてこの世界に来たのか謎だが、これ以上一人で考えても答えは出ないだろう。

いっそ夢だと思って楽しんでしまおう。

差し当たって当面の目標は、本物のセアミンの捜索だっ。

 

「本物のお前はどこに居るんだろうな……。というかもしかして、このカードに宿ってたり?」

 

決意を掲げて歩き出した俺は、手に持ったセアミンのカードを見てそう思いつき、口にした。

すると、そのカードが淡く光り、目の前にシュタッと和装の子どもが降り立った。

 

厚底すぎる草履。

ヒラヒラ舞うシースルーの布地に包まれたタイツの足が、和装ミニスカから艶めかしく伸びている。

長すぎる袂の先端には重そうなアンプが垂れ下がり、手には閉じられた扇子を持ち。

無表情で胡乱な翠の瞳に、耳飾りがユラユラ揺れている。

雅な衣装の柄が、その存在の主張するように淡く光っていた。

 

カードイラストそのままのセアミンが、目の前に居た。

 

俺は突然の出来事に頭が追いつかず、しばし呆然とする。

 

「え……。……、セ、セアミン……?」

 

「……(コク)」

 

今の俺の姿と瓜二つ。まさに鏡合わせ。

しかし紛い物の俺と違って、本物(?)の精霊セアミンだ。

 

「いや本当に出てくるのかよ!?」

 

俺は思わず叫んだ。

セアミンは俺に向けて無表情ダブルピース

✌︎( ˙-˙ )✌︎している。お茶目で可愛いなチクショウ!

じゃなくてっ。ツッコんでいる場合ではない。

俺は脳内で溢れ出す疑問──この世界についてとか、なんで俺がセアミン♂なのかとか──を全て飲み込んで、まずは聞いた。

 

(ホンモノ)は男の子なのか!?女の子なのか!?どっちなんだ!?」

 

俺の魂の叫びがビルの谷間に響き渡る。

ダブルピースのまま固まるセアミン。

固唾を飲んで待つ俺。

翡翠のぐるぐる目が交差する。

 

「……」

 

互いの時が止まる中。

精霊セアミンのおかめヘッドギアが突如としてウィーンガチャン、とひとりでに作動して顔を隠した。

目元がブオンと赤く光る。こわっ。

そして閉じたままの扇子を振り上げると、俺をベシンと叩いてきた。

 

「いたっ!?え、ゴメンなさい!?でも気になるじゃん!?」

 

突然の暴力に狼狽える俺。

そんな俺にもう一発……と思いきや、精霊セアミンはカードを1枚スッと差し出してきた。

 

「え……、あ。600LP払ったってこと……?」

 

どうやら先ほどの暴力はセアミンのサーチ効果のコストだったらしい。

俺は恐る恐るそのカードを貰う。

カードを手にした俺を精霊セアミンはジッと見つめたあと、彼女(?)は緊急テレポートのゲートを潜って何処かへ消えていってしまった。

一人ポツンと取り残される俺。

 

「っええ?結局何も分からずじまいじゃんっ。これから俺はどうすればいいんだ!?」

 

遊戯王が覇権を握る異世界の夜空に、俺の叫びは消えていった。

 

 

 

 





好きな遊戯王アニメシリーズはVRAINSです。

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