時は少し遡る……
俺は歌舞伎デュエル学園に通う、顔もデュエルもパッとしないいち男子生徒だ。
名前は……、まぁ俺の事はどうでもいいんだ。
それよりも俺の話を聞いてくれ。
最近赴任してきたカードの精霊、セアミさんについてだ。
小学生くらいの体躯に、無表情ながらも可愛らしく整ったその顔。
重たそうな和服を身に纏い、その和装ミニスカから伸びるタイツに包まれた太ももがたいへん艶かしいその姿。
ちょっと幼すぎる見た目だが、可愛い精霊の来校に俺たち男子生徒は盛り上がった。
可愛い精霊様に手とり足とりデュエルしてもらおうぐへへ、と。
だがそんな邪な思いは、セアミさんの次の言葉で色んな意味で吹き飛んだ。
「あ。俺こんな服装してるけど男なんで、そこん所よろしく」
お披露目デュエルが終わった後に語られたその情報に、下卑ろうとしていた俺たちは非常に困惑した。
え、男?
男って……、俺たちと同じ?
バッカ、そんなワケねぇだろ。あんな可愛い顔して……あんな可愛い顔で、男?
ち〇こ付いてるってコト……?
ザワザワと動揺が走る。
俺らは思わず和服ミニスカの一点を凝視した。
あの中に、俺たちと同じイチモツが収まってる……だと……!?
にわかには信じられない。
俺たちは脳みそのナニかが壊れそうな気持ちを抱いたまま、悶々としてその日の授業を受けるハメになった。
──そしてある日の放課後、俺は遭遇してしまった。
俺はトイレを人の居ない空間でしたいタチなので、もはや俺専用と言っていいほど誰も寄り付かない学園の隅の隅にあるトイレで「誰も居ないヨシ!」と用を足そうとしていた時だった。
「──ぅぉおお漏れる漏れるっ。よし、ここなら人居ねーだろ……、あ」
件のセアミさんが、俺の後から男子トイレに入ってきたのだ。
近くで見るセアミさんは、どこからどう見ても女の子にしか見えなくて。
そんな子が男子トイレに入ってきたら、誰でも驚くに決まってる。
俺はもう小便器の前でチャックを開けてスタンバってしまっていたのでその場から動けず。
そんな俺の姿を見て、セアミさんはちょっと気まずそうにしながらも便器一個分を開けて隣に並んだ。
「あー、もう限界だから勘弁な。こんな格好だから人の居ないトイレで用を足そうと思ってたんだが、もうムリ」
そう言って慣れた手つきでスカートがしゅるりとたくし上げられ、タイツが捲られて下ろされた。
ぽろん。
ちょぼぼぼ……
ぷるぷる。
小さな象さん。
小さな滝の落ちる音。
小刻みに震わして水気を切る行為。
俺は思わずガン見してしまった。
ミニスカをたくし上げなければならない仕様上、便器との距離が生まれ、その一部始終を余すところなくこの目に収めてしまった。
可愛らしい、けれど立派に生えている象さんを。
だがその視界は程なくして遮られた。
スッ、とバラ柄の袂が垂れて、局部が見えなくなったのだ。
俺はハッと顔を上げた。
そこには無表情ながらも、頬を赤く染め、ジトッとした目を向けてくるセアミさんと目が合った。
その小さな口からポツリと言葉が紡がれる。
「あんま見られると……その、さすがに困る……」
「ッッッッッ!!!!!!!」
この瞬間、俺の脳みそのナニかが決定的に壊れた。
呆然とする俺を尻目に、服を整えて手を洗い「邪魔したな」と和服をはためかせて出ていくセアミさん。
俺はその場から動くことが出来ず、セアミさんが出ていった出入り口をひたすら見つめていた。
「もう、男でもいっか……」
それからの俺はもう大変だった。
何が大変だと言われるとナニと答えるしかない。
元々俺は『氷の眼差し』氷さんに踏まれたいという至極健全な趣味を持っていたのだが、この日を境に新たな嗜好領域が開拓された。
寮生である俺は寮の部屋に帰り着くなり、ついその願望を口に出していた。
「あぁ……セアミさんのあの厚底に踏まれたいっ」
俺の言葉に、同行の士であるルームメイトがギョッと目を剥いた。
「え!?急にどうしたお前!?俺らのフェイバリット女王様は氷さんだろ!?それにセアミさんって男なんじゃ……」
「うるせぇそれが良いんだろうがよ!!!」
「ホント急にどうしたお前!?」
俺は語尾を荒らげて友に共有した。
さっきの出来事を。
セアミさんが本当にパオンだった事を。
「そうか……セアミさんが本当に男だったのを観測したのか……。けどお前、たったそれだけで我らが女王様から宗旨替えするほどか?」
「バッカお前あれを見てないからそう言えるんだっ。……想像しろ、あの能面顔が可愛らしく羞恥に染まってジト目上目遣いしてくるところを……ッ」
「……まぁ、可愛いけど」
「しかもそれで男の子なんだぞ?」
「そこが分っかんねぇなぁ。とりあえずお前の性癖が壊れたのだけは分かった」
友人には呆れられてしまった。
バカヤロウちんちん付いててお得だろうがよ!
無論、俺は宗旨替えなどしていない。まだ氷さんに踏まれたい願望は持ったままだ。
そこは揺るがない。
それにプラスして、セアミさんにも踏まれたくなっただけなんだっ。
さらに言えば、俺は氷さんといつも一緒に居る遊姫さんにも踏まれたかった。
あの天真爛漫な男装の麗人。
どこまでもデュエルにひたむきな、閃刀姫使いの女の子。
一部の女子からは『王子様』なんて呼ばれているイケメンフェイスな彼女だが、スケベな俺たちは知っている。
遊姫さんは意外と胸がデカい事を。
男勝りな性格だからか、彼女は誰に対しても距離が近い。
カードの話をすればホイホイ近寄ってくる無邪気さで気軽にスキンシップもしてくるので、その柔らかな感触を味わって勘違いした男は数知れない。
髪を逆立てたイケメン風だが、まつ毛長いし髪の毛サラサラだし、なんか良い匂いするしで同学年の初恋ハンター(無自覚)である。
さらにタチの悪いことに、本人はまだ性に関して無頓着らしく、「胸なんか大きくてもイイ事ないよー。動きづらいし」と言いながら、サラシで潰した胸を教室で晒すなどという暴挙を働いた前科もある。
スレンダーな氷さんが「はしたないからやめなさい!」と引っぱたきそれは一瞬の出来事で済んだが、あれはスゴかった……
「あぁ……性に疎いながらも豊満な女体を持つ遊姫さんに、ドン引きされながら踏まれたい」
「お。そうだな」
こんな感じで遊姫さんと氷さんのペアは、この歌舞伎デュエル学園の女神として、俺たち変態紳士組合や偏執淑女連合などから崇められていた。
見目麗しくデュエルも強い。
これで人気が出ないわけがない。
それに加えて今日、俺は個人的にそこに新たな神を追加するッ。
セアミさん……──
煌びやかな和服をアバンギャルドにミニスカで攻めたその服装。
タイツに包まれた太ももはムチムチで、とても男とは思えない曲線美を描いている。
だが男だ。
しかしそれがイイ!!
こんな気持ちは初めてだ。まさか俺が男相手にこんな気持ちになろうとは……っ。
あの無表情なジト目が目に焼き付いて離れない……
俺は氷さん、遊姫さん、セアミさんの三人から侮蔑の視線を向けられて踏まれる妄想をしてトリップし始めた。
彼女たちは仲睦まじく、いつも一緒に居る。
どうにかしてあの輪の下に俺を置けないだろうか?
「……まぁ、お前が幸せならそれでいいよ。くれぐれも犯罪は犯すなよ?」
同じ変態紳士である友人が忠告してくるが、それは当たり前である。
変態紳士は妄想はするが、他人に迷惑は掛けないのだ。ゼッタイ。
この話は俺が勝手に性癖を壊されただけの話である。
はぁ。まさかあんな可愛らしい顔立ちをしたセアミさんが本当に男の子だなんて。
君のせいで今大変なんだから……ハァッ……
しかしまさか、俺がセアミさんの揺るぎない♂を観測した事を起点に世界の方も大変な事になるなんて、俺は知る由もなかった。
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遅筆で本当申し訳ない。もっとポンポン書けるようになりたい…