決闘者セアミン(♂)   作:へるしぃーぼでぃ

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vs.深淵の獣アルベル─急

 

 

 

 

 

アルベル─【LP7100】手札:3枚

レベル8『灰燼竜バスタード』

-ATK/4100

 

セアミ─【LP1200】手札:1枚

レベル9『サイコガンナーMk-Ⅱ』

-ATK/3200

 

フィールドを圧迫していたカードが軒並み消え、風通しの良くなった場に夜風が吹き抜ける。

俺のMk-Ⅱ(エースモンスター)の返り咲きに驚いていたアルベルだったが、しかし彼は不意に笑った。

よほど楽しいらしい、パチパチと拍手までしてくる。

 

「いやはや、見事なデュエルタクティクスと言わざるを得ないな。しかしこのターン、Mk-Ⅱ(そのモンスター)は『嗤う黒山羊(ルンペル・トイフェル)』の影響でフィールドで発動する効果は使用できない」

 

「ああ、分かっている。でももう、このターンでMk-Ⅱを倒す算段は無いんじゃないか?」

 

これだけ展開したんだ。もう碌な手は残っていないだろう。

そんなタカを括る俺の希望的観測は、アルベルの雄叫びに破られた。

 

「いいや、我はまだこのターン、召喚権を行使していない!我はこのカードを通常召喚する!」

 

アルベルがホールディスクにカードを叩き付けると、フィールドにズズズ……と豪奢な玉座が現れた。

そこにアルベル(プレイヤー)自身が優雅に座る。

 

レベル4『深淵の獣(ザ・ビーステッド)アルベル』

-ATK/1800

 

「……デュエル中に座るなんて、エラい余裕じゃないか」

 

「仕方がないであろう。ビーステッドのアルベル()はこうなのだ」

 

そう零しながら肘掛けまで使い、頬杖まで突くアルベル。

余裕たっぷりじゃないか、嘘つきだぞこの人。

俺の訝しむ視線に、アルベルはやれやれと空いている手のひらを振った。

 

「余裕などあろうはずもない。負けたくはないからな。我は墓地のマスカレイド(闇属性)を除外し、∞復烙印にてドローしたこのカード……バルドレイクを特殊召喚する」

 

レベル6『深淵の獣(ビーステッド)バルドレイク』

-ATK/2500

 

ここへ来てさらに新たなビーステッド──鎖に繋がれた四足獣モンスターが現れる。

っくそ、復烙印(あの時)の1ドローが雑に強いな!

 

「バルドレイクは確か……素材を使って召喚したモンスターを葬る効果のビーステッドだったか?次のターンの俺の展開への牽制か」

 

「そうだ。……だが一手読みが甘いぞ!我は『ビーステッド』モンスター2体を贄に、墓地からこのカードを特殊召喚する!」

 

アルベルはせっかく座った玉座から立ち上がると、その玉座を無造作に蹴り飛ばした。

フィールドから落ちていく玉座に、バルドレイクがその後を追って飛んでいく。

視界の下にはいつの間に出現したのか、巨大なホールが空間に開いていて。

そこに玉座とバルドレイクは吸い込まれるように消えていった。

その代わりにホールからゴゴゴ……と巨大な何かが浮かんでくる。

こ、これは……!?

 

「このカードはフィールドの『ビーステッド』2体をリリースした場合のみ、手札・墓地から特殊召喚できる。……深淵に祀られし竜よ。清濁入り乱れる闘争の場に顕現し、無限の喪失を我々に与えよ!」

 

アルベルの召喚口上と共に、それは浮かび上がってきた。

ギラギラ輝く鱗に、機械のような無機質感が漂う身体。

双頭の龍の頭がギラリと睨む。

赤い雷をバチバチと全身から迸らせ、そのモンスターは咆哮を上げた。

 

レベル12『深淵の獣(ザ・ビーステッド)アルバ・ロス』

-ATK/3500

 

ここへ来てさらなる最上級モンスターだと!?

一体いつの間にそんなモンスターを墓地へ……っ烙印融合の時か!

相手の墓地確認が出来ないこの世界のデュエル……、どっちにしろ対処のしようが無かったが、そこまで気が回らなかった……!

というか今宵、もはや何体目の大型モンスターだ?ボスラッシュが過ぎる。

プレイヤーの位置に戻ったアルベルが振り返りながら、得意げな顔で見下してきた。

 

「先に教えといてやろう。アルバ・ロスがフィールドに存在する限り、儀式及び融合・S・X・L(EXモンスター)の効果は全て無効化される。我のバスタードも、そして墓地から蘇ったそのMk-Ⅱもな」

 

レベル8『灰燼竜バスタード』∅効果無効

-ATK/4100→2500

 

レベル9『サイコガンナーMk-Ⅱ』∅効果無効

-ATK/3200

 

またしても敵味方問わず、無差別で効果を撒き散らすアルベルのモンスター。

せっかく強化したバスタードの攻撃力すら下げてまでっ。

しかし、この場面ではそれだけの価値があるカードだ。

 

「これで我はターンエンドだ。さぁ、この凶獣を越えられるものなら越えてみろ、特異点!」

 

最後の最後に特大のモンスターを召喚してターンを渡してきたアルベル。

頼みの綱として復活させたMk-Ⅱが封じられ、後続のEXデッキも封じられたに等しいこの状況。

正直、厳しい状況だ。

俺の手札には嗤う黒山羊(ルンペル・トイフェル)からようやく解放されたライジング・スケール1枚のみ……

残りライフは1200……

 

「俺のターン……」

 

冗談ではなく、このドローに勝敗が掛かっている。

何か来い!逆転のカード!

 

「ドロー!!」

 

引いたカードは……、一瞬ガッカリしたが、直ぐに思い直した。

これなら……、よし!行ける!

脳内に組み立つ、勝利へのルート。まさかこのカードがここまで役に立つ日が来るとは……

俺は引いたカードを発動した。

 

「俺は魔法カード『サイコパス』を発動!800LP払い、自分の除外状態のサイキック族を2体まで手札に戻す!」

─【LP1200→400】

 

「なに?除外カードを回収……?ッ、まさか!?」

 

俺が使った古のカードに怪訝な表情を浮かべたアルベルだったが、彼も直ぐに気付いたようだ。

 

「気付いたようだな。だがこれはアルバ・ロスではどうにも出来ない!俺が手札に戻すのは、『No-P.U.N.K.セアミン』と『寡黙なるサイコミニスター』!」

 

∞『烙印の即興劇(エチュード)』で軒並み除外されていた俺の素材モンスターたち。まさかここへ来てそれが活きてくるとはっ。

除外ゾーンから手札に戻ってくるカードに、ギリリと歯を噛み締めるアルベル。

 

「おのれ……!」

 

ここまで相手を順調に追い詰めていたはずの即興劇(エチュード)の効果が、まさか終盤で自らの首を絞めてくる展開になるとは夢にも思わなかったのだろう。

俺も同感だが、サイコ系は元より除外ゾーンの行き来を得意とするカテゴリーである。

相手が悪かったな!

 

「行くぞ!俺はセアミンを通常召喚!さらにサイコミニスターを自身の効果で特殊召喚!……そして現れろ、魂に響くサーキット!召喚条件はカード名が異なるモンスター2体!この2体をリンクマーカーにセットし……L召喚!」

 

LINK-2『クロシープ』↙↘∅効果無効

-ATK/700

 

「ッ、だが、L召喚したところでその効果は無効化される!」

 

「ああ、だけどまだだ!さらに!墓地のアブソリュートサイキッカーの効果!このターンに墓地に送られていないこのカードを除外し、EXデッキからサイキック族・レベル10融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!」

 

「墓地効果まであるのか!?っく、バルドレイクで除外しておくべきだったか……!」

 

アブソは光属性だから、正直ヒヤリとした。

墓地確認が出来ないこの世界のデュエルはこういう所が恐いぜ!

 

「沈黙する超能力者よ。神託と交信を繋ぎ、超常極まるその力を如何なく発揮せよ!融合召喚!」

 

レベル10『サイキッカー・オラクル』∅効果無効

-ATK/2900

 

ここへ来て俺の更なる融合モンスター~脱法エディション~が登場する。

これで準備は整った。

ここでコイツの効果を発動だ!

 

「墓地のサイコミニスターの効果発動!墓地のこのカードとサイキック族1体を除外する事で、フィールドのモンスター1体をエンドフェイズまで除外する!俺はプロトタイプサイコガンナーを除外し……アルバ・ロスをフィールドから除外!」

 

サイコミニスターの小さな光線銃が、巨大なドラゴンを次元の彼方へと強制移動させた。

これでフィールドのEXモンスターたちの効果が使えるようになる!

 

「ッ、だが!相手の効果でフィールドから離れたアルバ・ロスの効果!相手エンドフェイズまで、互いの裏側のEXデッキのカードをすべて表側で除外する!」

 

互いの残り枚数少ないEXデッキが、消えゆくアルバ・ロスが最後に放った赤い雷によって消失した。

いつもは絶対に頼るアメイジング・ドラゴンやサイコ・エンド・パニッシャーが除外されていく……、今回は活躍させられなくてゴメン。

でも、デュエルには勝つ!

 

「厄介極まる強力な効果だが、一手遅かったようだな!」

 

「チィ!」

 

厄介なアルバ・ロスを退かし、これで残すはバスタード-ATK/2500と残りライフ7100のアルベルのみ!

だがまだ、アルベルは諦めていなかった。

 

「まだだ!我は墓地のマスカレイドの効果発動!相手フィールドに儀式及びEXモンスターが存在する場合、墓地から特殊召喚できる!我が壁となれ、赫灼の竜よ!」

 

レベル8『赫灼竜マスカレイド』

-DEF-2000

 

うわっ、まだ出てくるのかソイツ。せめて自分ターンだけにしてくれよ、復活効果くらい。

融合召喚ではないからコスト600は飛んでこないようだが、しつこ過ぎる!

だが、それでもギリギリ倒せる……!

 

「アルバ・ロスが居なくなった事で!俺はMk-Ⅱの効果発動!除外ゾーンから蘇れ、アブソリュートサイキッカー!」

 

レベル11『アブソリュートサイキッカー』

-ATK/3400

 

さっきは効果でしか活躍出来なかったが、今度こそその高火力で活躍してもらう!

そしてさらに、アブソリュートサイキッカーが再起した場所はクロシープのリンク先!

 

「クロシープの効果発動!リンク先にモンスターが特殊召喚された時、このカードのリンク先に居るモンスターの種類によってそれぞれ効果を適用する!」

 

クロシープのリンク先にはMk-Ⅱ(シンクロ)アブソリュートサイキッカー(融合)の2種。

 

「まずは融合モンスターの場合の処理!墓地からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!蘇れ、セアミン!」

 

レベル3『No-P.U.N.K.セアミン」

-ATK/600

 

「そしてSモンスターの場合の効果!自分フィールドの全てのモンスターの攻撃力は700アップする!」

 

レベル9『サイコガンナーMk-Ⅱ』

-ATK/3200→3900

 

LINK-2『クロシープ』↙↘

-ATK/700→1400

 

レベル10『サイキッカー・オラクル』

-ATK/2900→3600

 

レベル11『アブソリュートサイキッカー』

-ATK/3400→4100

 

レベル3『No-P.U.N.K.セアミン」

-ATK/600→1300

 

「ぐぅ……!まさかサイコパス(1枚のドロー)から、ここまでっ!」

 

この圧巻の光景に、流石のアルベルも一歩後退(あとずさ)る。

だが同情の余地はない。

 

「バトルだ!俺はアブソリュートサイキッカーで……灰燼竜バスタードに攻撃!」

 

前のターンの仕返しだ!

アブソリュートサイキッカーが全身から緑の雷を放ち、バスタードの堅牢な鱗を意に介さず撃破した。

 

「ぐうぅ!?……だが、墓地に送られたバスタードの効果で、エンドフェイズ時にデッキからカードを……」

─【LP7100→5500】

 

「エンドフェイズは来ない!Mk-Ⅱでマスカレイドに攻撃!そして他のモンスターで……ダイレクトアタックだ!」

 

Mk-Ⅱの次元咆がマスカレイドを貫き、アルベルまでの道を拓いた。

そして殺到する、クロシープのぬいぐるみアタック、オラクルの銃撃と斬撃。

そしてセアミンが手に持った畳まれた扇子で、アルベルの頭をブッ叩いた。

 

「ぐああ!?」

─【LP0】

 

〔〔〔WINNER:セアミ 〕〕〕

 

「勝った……っ」

 

今までで一番強敵だったかもしれない。

少なくとも精霊相手の中じゃダントツだった。

片膝を付いてこちらを睨んでくるアルベルに、俺は厚底靴を鳴らしながら近づいた。

 

「良いデュエルだったな、アルベル」

 

「……フン、負けた我には良いも悪いも無い。煮るなり焼くなり好きにしろ。精霊である我はデュエルに負けた今、もはや貴様に逆らえん」

 

そういえば精霊(そう)だったな。

隣に住んでるし普通にアツいデュエルだったから、相手が精霊だということをすっかり忘れていた。

 

「別に煮たり焼いたりしないって。今後も良き隣人として普通に生活してくれていいから」

 

「……そうか。まぁ、我からしたら貴様は良き隣人ではないのだがな」

 

「それはメチャクチャ気を付けます」

 

アルベルはフッと、毒気が抜けた笑みを見せた。

悪役顔だけど、やっぱ結構普通の人なんじゃないか?アルベル。

俺は手を差し伸べると、アルベルは少しの逡巡の後、手を取った。

 

そしてアルベルの身体がパァッと淡く光り、俺の手に『デスピアの導化アルベル』、『深淵の獣(ザ・ビーステッド)アルベル』、そしてトークンカード『凶導者アルベル』の3枚のカードが収まった。

 

まさかの3種扱いなのか。

まぁ最近のモンスターはちょっと名前変えただけの同一人物リメイクが多いし……。こういう事もあるのか。

と、思ったのも束の間。

 

「んへ?」

 

突如、内臓が浮き上がる浮遊感に襲われる。

足場にしていたホールが、なんの前触れもなくフッと消えたのだ。

 

「お、ぉぉぉおおおお!?ちょいッアルベル!!なんで足場を消すんだよ!?」

 

手元のカード(アルベル)に唾を吐きかける勢いで文句を言う。

すると半透明のアルベルが目の前に浮き上がり、申し訳なさそうに言った。

 

『スマン、我が負けた時のことは考えてなかった。そして今の我には足場を作れるだけの力は無い。自力で何とかしてくれ』

 

「そんなんで何でわざわざ空中に移動したんだ!?」

 

「その方がカッコイイであろう?」

 

「バカヤロー!!」

 

相手の命を顧みずにカッコイイを優先する奴が居るか!

負けるつもりは毛頭ないからこそのパフォーマンスだったのかもしれないが、デュエルは時の運も絡む。

どんなデュエリストでも100%勝てるデュエルなんて無いんだから、やめてくれよそういうのは!

 

「落ちる!うおぉお!?」

 

遥か下の地面ではセアミンたち精霊一同が、落下する俺を救出しようと各自動き出して……、……いや、深淵の獣(ビーステッド)の背に乗って低空飛行を楽しんでるだけだアレ!セアミンボディの超絶良い視力が捉えた。精霊同士で仲良くなってやがる!

デュエルの決着タイミングは地上からは分からないとはいえ、仮にも君たちがマスターと慕ってる人間のピンチですよ!?

 

「うおお!セアミンの謎パワーで何とかなれぇ!」

 

救援は望めないと切り替える。

以前、セアミンと共に5階の屋上からダイブした時の事を思い出し、身体がセアミンの俺もそれが出来ないか気合いで試してみた。

しかし当然、何も起きない。ただ叫ぶだけで終わった。

万事休すだ。

終わった……(2回目)

 

「──……ァミ!セアミぃ!」

 

諦めの境地に至った、その時。

俺より高い位置──空の彼方から俺の名を呼ぶ声と共に、何やらアフターバーナーを吹いて輝く黒い機体が視界に入った。

ソレは自由落下する俺なんて目じゃないほど速く。

あっという間に俺の目の前に到達すると、その機体に乗っていた人物が手を伸ばしてきた。

俺は伸ばされたその手を咄嗟に掴み、見事に空中キャッチされる。

繋がる手に引き寄せられ、俺はお姫様抱っこされる形でその人物を見上げた。

 

「セアミ!大丈夫!?」

 

「遊姫!?」

 

頼れる男装系主人公が、俺の窮地を救いに参上した。

その背後のコックピット──鉄駆竜スプリンドの背には、イラスト違い(旅装束)のアルバスの落胤と白の聖女エクレシアが同乗しながら。

なんか色々……こう、急展開過ぎない?

 

 

 






セアミンでトドメ刺せて満足✌︎( ˙-˙ )✌︎
今回はデュエル内容、致命的な間違い無いやろ!ガハハ!風呂入ってくる!
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