決闘者セアミン(♂)   作:へるしぃーぼでぃ

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第一話のあとがき欄に掲示板回(ネット民によるデュエル観戦)を追加してみました。




ジュラックお姉さん再び!

 

 

 

「ぐへへへ……、また会えたねセアミンくんちゃんッ!まさか遊姫のお友達が君だったなんて……話を聞いてもしやとは思ってたけど、これはもはや運命ね!」

 

アパートの駐車場にて。

Dホイールを駆使して来訪した、スポーティなピチピチレーシングスーツに身を包んだ黒髪サイドテールの遊姫の叔母──ジュラックお姉さんこと珠羅(じゅら)。

 

彼女は、俺がこの世界でセアミとして目覚めて最初に出会った第一デュエリストである。

 

プロデュエリストらしい彼女が扱うジュラックデッキは中々に手強かった。

そんな彼女が今、およそ成人女性がしてはいけないセクハラオヤジ顔負けの顔で俺に迫っていた。

相手が美人なら役得だろって?

俺もかつてはそう思っていたが、今訂正しよう。

獣欲全開で迫ってくる相手は、例え美女だろうと怖い!!

 

「それ以上近寄らないでください」

 

「あぁん。相変わらず恥ずかしがり屋さんなのね、セアミンちゃん……いえ、セアミちゃんってば」

 

相対した俺は、ジリジリ距離を詰めてくる彼女に捕まらぬよう身構えパーソナルスペースを確保する。

そんな一触即発?な雰囲気の中、遊姫が助け舟を出した。

 

「ちょっと叔母さん、セアミが恐がってるから……。とういか、二人は知り合いだったの?」

 

「もち、激しいデュエルし合ったソウルフレンドよ!」

 

「知らない人です」

 

対称的な俺たちの反応に、遊姫は「えぇ?」と困惑する。

確かにデュエルはしたが、それで知り合いカウントにはならないだろう。

というかプロデュエリストとロリ(ショタ)コンという情報以外、マジで知らないぞアンタの事。

 

「そんなっ、私をあんなATK/7100パニッシャー(凶悪なモノ)でメチャクチャにしておいて、それはないでしょセアミちゃん!」

 

「変な言い方するな!ただのデュエルの結果じゃねぇか!」

 

この女、親密さをアピールするためにワザと語弊のある言葉をチョイスしているっ。思わず声を荒らげてしまった。

喋りながらもさらに近付いて来てるし、油断したらヤラれる……!

 

「……ふーーん。二人とも、仲良いんだ」

 

ほら!遊姫が凄いジトッとした目でこっちを見てるぞ!

だが珠羅のケアは早かった。

 

「もちろんアナタも可愛いわよ遊姫!ほらコッチおいで!」

 

「ぎゃっ!?ヤメテ!?」

 

シュッと滑るように移動した珠羅が、遊姫を抱きしめ凄まじい勢いでウリウリと頬擦りする。捕まったらああなるのか……

遊姫も口では抵抗しているが、叔母に構われて満更でもなさそうだ。仲良さそうでなにより。

ひと通り遊姫を愛でて満足したのか、「ふぅ」と息を吐いた珠羅。

そんな彼女は急にキリッとした表情で向き直った。

 

「さて、改めましてこんばんは。遊姫の叔母の珠羅です。一応プロデュエリストでDホイーラーライセンス持ちの、立場ある大人です。この度はウチの遊姫がご迷惑を」

 

「え。いや、むしろ俺の方が今回助けられたからそんな迷惑だなんてそんな」

 

急に慇懃な態度で話し始め、俺はちょっと変な受け答えをしてしまう。

急にマトモになるなよ!

俺の心のツッコミを他所に、保護者の顔となった珠羅は淡々と遊姫に告げる。

 

「まったく遊姫、近頃はモンスター騒動で物騒なんだから、夜は出歩いちゃダメって言ってるでしょ?さ、帰るわよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!珠羅さんもセアミの事が好きなんでしょ?せっかく来たなら、珠羅さんもセアミの家にお邪魔してみよ?ね?」

 

もう帰らされそうな雰囲気に、まだ帰りたくない遊姫は必死にそう言い募る。

家主の俺を置いてその提案はどうかと思うぞ、遊姫。

俺としては貞操の危機を感じるからそのまま帰ってもらいたいのだが……

果たして、真面目モードの珠羅は判断を下した。

 

「え、そう?じゃあ……お邪魔させてもらっちゃおっかな?」

 

再びセクハラ顔になった珠羅が、ニチャリとした笑みを浮かべて俺の顔色を窺ってきた。

おい。保護者の顔はどこいった。

と、思ったらまたスッと真面目な顔になった。器用だなそのツラの良い顔面。

 

「ま、ちょっとマジメな話をすると、セアミちゃんの身の上をちょっとだけ調べさせて欲しいんだよね。ほら、最近の精霊実体化騒動のお陰でね?プロデュエリストは精霊を見つけたらモンスター(害意)判定を確認しなきゃならないのよ」

 

おぉ、そんな事になってるのか。お疲れ様です。

そう言われたら協力しないわけには行かないな。モンスター判定されたら堪ったもんじゃないし。

実体化のせいで精霊も職質される時代になったか…

 

「そういう事なら好きに調べて貰っていいけど、……ちなみに何を以てモンスターか否かの判定を?」

 

「単純に理性の有無、意思疎通が図れれば基本問題ナッシングよ」

 

調べるとか言うから少し身構えたが、だいぶ緩かった。

そんな安心した俺に「……でも」と珠羅が真剣な顔つきで言葉を続ける。

 

「最近はさらにもうひとつ、調査項目が増えたわ。ズバリ、『組織立って行動していないか』」

 

「組織……?」

 

遊姫が?マークを浮かべ、そんな姪に説明するように叔母は説明した。

 

「つい先日、歌舞伎シティのひとつの区がとあるテーマモンスターたちに占領されたわ。ソイツらの名前(テーマ)は……、クシャトリラ」

 

俺はつい「うわぁ」と口に出た。

ガチで強いヤツらじゃん。

 

「そのモンスターたちは意思疎通は出来るけど非常に好戦的で、話し合いに応じず問答無用で街に攻め込んできたの。宙に浮かぶクシャトリラ・シャングリラから次々と襲いかかってくるクシャトリラたちに、襲撃された区画は瞬く間に制圧されたわ」

 

単体でも強力なモンスターが、組織立って動いてくる……。

想像するだけで悪夢のような光景だ。

実体化騒動の初日の混乱が可愛く思えてくるな。クシャトリラって軍隊チックだし、なおさら。

遊姫が鼻息荒く聞く。

 

「そ、それでその街はどうなったの!?まさか今も……っ」

 

「いえ、緊急討伐依頼を受けた私たちプロデュエリスト連合が何とか奪還したわ。……あの戦いは辛かったッ!フィールドを使用不能にしたり、カードを裏側で除外するんじゃないわよ……!」

 

勝ったのか。スゴいなプロデュエリストたち。

クシャトリラの戦術を思い出してゲンナリ顔の珠羅だったが、俺に向き直ると眉を下げた。

 

「そういうわけで今、好戦的かつ集団行動してる精霊及びモンスターは、区別なく警戒の対象なの。ごめんねセアミちゃん、私はアナタがそんな事する子じゃないって分かってるけど、臨時規定だから」

 

「いえいえ、お仕事ご苦労様です」

 

最近は落ち着いてきたとはいえ、一部ではそんな事件が発生しているのか。しかもクシャトリラ相手とは、本当にお疲れ様です。

……でもその規定に俺、ちょっと抵触してるな?

もちろん俺に暴れる気は一切ないが、その項目に当てはまる部分(テーマで集まってる)があるので、内心ちょっとドキドキしてる。

まぁみんなも大人しいから大丈夫だと思うけど。

 

「そういう話なら、ちょっと家に上がって……」

 

俺は変に疑いを掛けられないよう、従順に案内しようとしたその時。

アパートの一室が爆散した。

 

「うおっ!?」

 

「わっ!?なになに!?」

 

「二人とも下がって!」

 

俺と遊姫を守るように珠羅が率先して前に立つ中、俺は見た。

爆散した部屋──俺の部屋から飛び出てくる深淵の獣(ビーステッド)とアメイジング・ドラゴンを。

 

「えぇい、貴様の脚本はつまらん!もっと破壊と絶望……そして混沌を詰め込め!」

 

「そっちの方がつまんねぇだろ!セッションは分かりやすく楽しく……ド派手にだ!」

 

✟漆黒の翼✟を生やして自論を喚くアルベルに、アメドラに乗って講釈を垂れる娑楽斎。

さらに遅れてビステたちと巨大獅子舞がノシノシガッポガッポと部屋から出てきて、最後に✧エクストリーム・セッションのビカビカ光る巨体がズムズム音を鳴らして出現した。

空でわーぎゃー言い争う男二人を他所に、✧セッションに乗るワゴンが俺を見つけて肩を竦めた。

 

「あ、すまんマスター。二人の劇論がぶつかってヒートアップした結果、部屋を壊してしまったでござる」

 

「バッカヤロー!!」

 

俺は叫んだ。

なんでよりにもよってこのタイミングで暴れてんだよ!?

俺は恐る恐る目の前のプロデュエリストを見ると、振り返る彼女と目が合った。

俺はなんとか弁解を試みる。

 

「えーと……。アレは芸術は爆発だ、的なノリなんで、無害ってことにならないですかね?」

 

「アレ、セアミちゃんの仲間だったの?ごめん、もうプロ連合本部にモンスター出現警報送っちゃった」

 

恐ろしく早い仕事。俺だけでも見逃しちゃくれない?

でも、そうは問屋が卸さなかった。

珠羅はこれまで何度も説明した事があるのか、滔々と言葉を紡ぐ。

 

「精霊の実体化問題は、何も野良モンスターだけではないわ。精霊の力を悪用したり、制御出来ていないデュエリストも私たちプロ連合の取り締まり対象なの」

 

「監督不行届って事か……」

 

「ええ。見逃してあげたいのは山々だけど、取り締まらせてもらうわよ。特にあの赤髪の精霊、見るからに邪悪そうだったし」

 

はい、完全にアルベルのせいです。あのヴィラン顔は本当に言い訳が効かないなっ。

でも娑楽斎も珍しく暴れて、実際にアパートを破壊してるしなぁ。

害意はなくとも、こういう力の発露が危険視されてるのだ、実体化した精霊たちは。

珠羅の雰囲気的にそこまで悪い扱いはされなさそうだし……、そうだな。

 

「仕方ない。潔く捕まるか」

 

「セアミ……」

 

俺のため息混じりの言葉に、遊姫が心配そうに俺と珠羅の顔を交互に見やる。

そんな彼女を安心させるように、珠羅は笑ってその頭をポンと撫でた。

 

「協力ありがと、セアミちゃん。遊姫もそんなに心配そうな顔をしないで。大丈夫、私がいい感じに取り計らうから」

 

「え?マスターが捕まるって!?そりゃいけねぇ!」

 

その時、耳聡く俺の言葉を聞いた娑楽斎が、アメドラを操って俺の方へ来た。

 

「マスター、掴まれ!」

 

「え、おい!?」

 

反応する間もなく、俺の身体はアメドラの口に優しく咥えられ空へ飛び立った。

珠羅と遊姫のポカンとした顔が妙に印象に残っている。

遅れて✟アルベル✟が隣を飛行してきた。

 

「ふむ、我がマスターとなった貴様が捕まると我も不便を被るからな。よくやった娑楽斎、このまま逃げるぞ」

 

「いや逃げた方が罪が重くなるんだよ!下ろせ!下りろ!」

 

ジタバタする俺の視界の下で、遊姫と2ケツ(タンデム)する珠羅のバイク(Dホイール)が走ってくるのが見えた。

 

「セアミちゃーん!下りてきなさーい!今ならまだ情状酌量の余地があるからー!」

 

俺は投降する気マンマンなのだが、上の娑楽斎が声を張り上げる。

 

「へッ、誰が下りるかってんだ!……しかしどこの誰だか知らんが、イカした鉄馬に乗ってんなぁ!創作意欲が湧くぜ!」

 

そして何やら空中にウキヨエを描き始める娑楽斎。

その隣のアルベルは、珠羅の警告にフンと鼻を鳴らした。

 

「煩わしい女だ。おい、貴様のデュエルで蹴散らしてしまえ」

 

「出来たぜマスター!これが俺のP.U.N.K.な単車だァ!」

 

娑楽斎が即興で描いたのは、アメドラをモチーフにしたであろうDホイール。

それが実体化し、アメドラに咥えられた俺を上手いことソレに乗せるとホイールが勝手に回転、ドシュウゥン!と空中から射出された。

 

「う、ぉおおおお!?」

 

咄嗟に精霊姿(和服)に換装。

キィィイ、ギャリギャリギャリ!と接地で倒れそうになる車体をアクセル吹かしてなんとか着地する。

アメドラに乗る娑楽斎がピュー♪と口笛を吹いた。

 

「お。マスター、乗り慣れてんねぇ!」

 

「……一応、バイク乗ってたから」

 

キイイィ、とDホイール特有の駆動音が闇夜に響く。

……おいおい、なんか流れに逆らえず走っちゃってるけど、この後どうすればいいんだ?

とりあえずオーガ・ナンバーの鬼の面をヘルメット代わりに被りながら、そんな戸惑う俺に追いついてきた珠羅が併走してきた。

ヘルメットを被った遊姫が「セアミすごーい!バイク乗れたの!?」と目を輝かせる中、珠羅はその目に同情心を込めて喋ってきた。

 

「セアミちゃん……、悪いけどデュエルを受けてもらうわ。持ち主(マスター)を倒せば精霊も鎮静化するから」

 

「……始まった瞬間サレンダーすれば、俺だけ被害者側に行けない?」

 

「ダメね。サレンダーすると逆に精霊が暴走する事例が数件報告されてるわ。大丈夫、私がしっかりアナタを倒すから」

 

俺はその言葉に少し、少しだけピクリと眉根を寄せた。

この状況、俺が悪い(主に娑楽斎とアルベルだが)のは重々承知だが、デュエリストとしてはその言葉は看過できない。

俺は思わず挑発するように言ってしまった。

 

「……前は俺が勝ったのに?」

 

対して珠羅は、バイザー越しに余裕たっぷりに微笑んだ。

 

「ええ。あれから私、強くなったのよ。アナタに勝つために!」

 

ほう?

そう言われたら、いちデュエリストとして引き下がる訳にはいかないな?

どうやら俺の思考は、自分が思ってる以上にこの遊戯王世界に染まってきたらしい。

どのみちデュエルする事は避けられないみたいだし、しかも夢にまで見たライディングデュエルだ。

これはもう、闘うしかない!

 

「ふおお!珠羅さんとセアミのデュエルを、こんな特等席で!どっちも頑張れー!」

 

珠羅の背に抱きつく遊姫が歓喜の声を上げる中、俺たちはアクセルをブン回した。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!」」

 

 

 

 

 

 







倒壊した建物、ひび割れて土が剥き出しになる路上。
満身創痍な人々(デュエリスト)と、倒された数多のクシャトリラの雑兵が転がる中。
依然として頭上を占拠するクシャトリラ・シャングリラの赤い機体がゴウゥン…と無慈悲に胎動した。

その中から現れるは『クシャトリラ・アライズハート』。

完全武装したライズハート。
すべてを無に帰さんとする凄まじい波動が、眼下のデュエリストたちを襲った。

「とうとう真打の登場ってワケね」

それでも立ち上がるデュエリストたち。その筆頭、『ジュラシッククイーン』恐姫(きょうき)の珠羅。
どんな絶望的な状況でも、どんなに相手が強くても決して諦めない。
そのライフが尽きるまで。このデッキが尽きるまで。

「すべてをこのドローに掛ける…!私のターン、ドロー!」

この1枚が、彼らの命運を左右する。


◇◆◇◆


──××年、具現化モンスター討伐シリーズ『劇場版:クシャトリラ強襲編』全国ロードショー。

珠「きゃー見て見て!私の話を元にして作った、私自身が主演を張った映画よ!ライズハート君も協力してくれたし、みんな観てくれた?絶賛公開中よ!」

遊「見た見た!カッコよかったよ珠羅さん!」

氷「観ましたしカッコよかったですけど、ポスター見かける度にはしゃぎ過ぎですよ。もう公開から一年経ってるのに。ていうかいつまで公開してるのよコレ」

セ「プロデュエリストってこんな事もすんの?」

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