デュエル書き切んなかったんで、更新はまた来月…
遅筆で申し訳ねぇ
遠くでレクスタームの暴れ回る音が響く中、神祇官の静かだがよく通る声が聞こえてきた。
「ほう、私のことを認知していたとは。光栄の至りですね。……しかし逃げた先で特異点と出逢えるとは、不幸中の幸いとはこの事」
何故か俺に向かって恭しく頭を下げてくる神祇官。
コイツが俺のことを“特異点”と呼んでいる、何か事情を知っていそうなモンスター。
佇まいや雰囲気もさぞ「私が裏から全てを操っていました✌︎」とでも言いそうなキャラだし、そんな奴が早々にコンタクトしてくるとは……っ。
というか、『逃げてきた』って?
「何だ?アンタ、珠羅さんから尻尾巻いて逃げてきたのか?」
俺が今だに暴れ回るレクスタームを指差すと、神祇官は特に否定することなく「ええ」と頷いた。
「彼女は些か手強すぎるのでね。こちらも出し惜しみせず最高戦力のフルルドリスを当てて、私は態勢を立て直すために避難していたところです。しかしその行動のお陰で、私が求めていた特異点たるアナタに出逢えた!おぉ、我が神よ、この巡り合わせに感謝します」
急にトリップしだした神祇官。なんだか絵に書いたような狂信者だな。
ツッコどころは多々あるが、俺は警戒を解かずにまずは尋ねた。
「なぁ、その“特異点”って何なんだ?俺は別に大層な力なんか持ってないぞ?」
「おや、自覚が無いのですか?力ではありませんよ。その存在の“揺らぎ”とでも言いましょうか……、本来とは異なる性質に心当たりはありませんか?それが今、この世界に異変を
揺らぎ、って……、やっぱ♂の事、か?
ていうか、え?異変を齎してるって……
俺の困惑を感じ取ったのか、神祇官は続けて言葉を紡いだ。
「その揺らぎが今の異変……私たちデュエルモンスターが実体化している現象を引き起こしていると、私は考えています。いわば精霊と人間の位相のズレの始点となっているのですよ、アナタは」
「そんなバカな事が……」
セアミン性別論争程度の話が、なんで世界にそこまでの影響を与えてるんだよっ。
え。ていうか精霊実体化現象、俺のせいなのか……?
突然の情報にグルグル考える俺。
顔は見えないが、マスクの下で愉快な笑みを浮かべていそうな神祇官。
その間に、遊姫がズイ、と一歩進んで入ってきた。
その顔は真剣そのもので、彼女は俺の肩に手をポンと置いた。
「セアミのせいな訳ないじゃん。それにもし、その話が本当だとしても、それを利用しようとしてるアイツが純粋に悪いじゃん」
「遊姫……」
遊姫のフォローに少しだけ冷静さを取り戻すが、神祇官は鷹揚に首を横に振った。
「やれやれ、分かっていませんね。我々はみな被害者ですよ?私はこの法則の乱れた世界で、私の
つまりコイツは、マジで学園を乗っ取ってドラグマを建国するつもりなのか。
もしヤツの言う通り、俺という存在が世界を歪ませているのなら、それは申し訳ない。
だが、だからって乗っ取るのは違うだろう。
神祇官を睨む遊姫も、俺と同じ意見で反論する。
「確かに神祇官さんも、いきなりこの世界に実体化しちゃって苦労してるのかもしれない。けど、それで学園を乗っ取るのは違うよ。それに一方的に被害者ぶってるけど……学園のみんなは、何処に行ったの?」
遊姫の最後の質問に、神祇官は至極当然といった様子で答えた。
「もちろん、皆さんご健勝でいらっしゃいますよ。私は侵略者などでは断じてありません。ここは平和な理想郷………ほら、今もアナタ方の目の前に元気で居るではないですか」
「目の前、だと……?」
俺らの視界には神祇官とデスピアンたちしか居ない。
そういえば、デスピアンの背景ストーリーは、デスピア国民の成れの果ての姿……
おい、それってまさか……ッ
「そのデスピアンたちが……学園の人達だって言うのか?」
「やっぱり……」
戦慄する俺たちに対して、神祇官は見るからに芝居掛かった仕草で悲しそうな声を出した。
「そう、彼らは私との融和を拒否したので、誠に不本意ながらデュエルにて決着を付けさせてもらいました……。ですが私はそんな彼らも救います!私の理想郷を賑やかす
なんて事だ……っ、融和とか救済とかほざいているが、たった半日でもうこんなにやられたのか!?あまりにも制圧が早すぎるっ。
実力はピンからキリとはいえ、この世界の住民は全員がデュエリスト。その話が本当だとしたら、この神祇官、相当強いぞ……!
「っ、やっぱり同情の余地は無いね!ボクとデュエルだ、神祇官!ボクが勝ったら学園を……みんなを元に戻せ!」
怒りのままにデュエルディスクを構える遊姫。
当然だ。こんな暴挙、許されるはずもない。
一旦、俺の身の上話は混乱するから置いておこう。
俺も
いくら相手が強かろうが、こんな惨状を作った首魁を野放しにしておく訳にはいかない。
そんな臨戦態勢な俺らに対し、神祇官はユラリと動き……──
「いやはや、手中に収めたい特異点との決闘ならともかく、貴女の相手はご容赦願いたいですね。あの恐ろしい恐竜使いの女挟との血縁である遊姫さん」
「なんでボクの名前を……っ」
「貴女の相手は、それを教えてくれたこの方に任せましょう。さぁ、来なさい」
神祇官がバッ!と腕を上げると、デスピアンの群れの中から一人、誰かが進み出てきた。
その人物は真っ黒なヴェールを被り、顔は見えない。
ヴェールを被ったデスピア陣営といえば聖女たちが該当するが、この人物は……
「学園の制服?ウチの生徒がなんで神祇官の言いなりに……」
遊姫が訝しむ。
そう、その人物は人間の服──ノースリーブミニスカの制服を纏っていたのだ。
実体化した精霊たちなら着替える事も可能だろうが(実際、セアミンたちはパジャマを着ていた)、まさかこの状況で聖女たちがコスプレするとは思えない。シリアスな空気ブチ壊しだ。
「さぁ、味方同士で争いなさい」
神祇官のセリフで、やはり人間だという事は確定。
その女子生徒は腕輪型デュエルディスクを構えてカードを5枚浮かばせると、言葉を発した。
「ごめんね、遊姫、セアミ。私の願いを叶えるために、貴女たちを倒させてもらうわ」
「!?」
「その……声はッ」
俺と遊姫は激しく狼狽した。
その声は聞き間違えるはずもない。
いつもクールで、一歩引いた位置から遊姫を見守り、時に怒り、笑い合う遊姫の親友。
彼女はカードをタップし、彼女を象徴するカードがフィールドに現れた。
「私は『
レベル『
-ATK/1000
「どういう事なの!?氷!?」
遊姫の悲痛な叫びに、ヴェールの下から覗いた冷徹な瞳は黙したままだった。
一方その頃、ライディングデュエル中の珠羅vs.フルルドリス(フルルドリスは飛んでる)──
「……アナタ、本気を出してないわね?ならどうしてこんなに大規模な侵攻を?アナタたちは一体何が目的なの?」
「済まない。信じて貰えないかもしれんが、この惨状は私としても不本意なのだ。立場上、私は神祇官に表立って逆らぬ故……」
「あら、そうなの?ふーん……、なら仕方ないわね!私は精一杯抵抗するから、アナタも全力で私を止めなさい!この
「……フ、そうだな。貴女ほど手強い者が相手なら、この苦労して顕現させた
「そうよ。私たちの攻撃の余波でその神祇官さんを巻き込んじゃったとしても不可抗力よ。なんなら私がDホイールで轢いちゃうかも」
「フフ……轢かれる神祇官……ンフっ」
(意外とノリが良いわね。鎧で顔見えないけど可愛い)