「挑んだボクからの先行で行くよ!」
アニメ特有の言ったもん勝ち先行をユウキが元気に宣言。
俺はこの先行取りに勝てたことがない。
セアミンの無表情ボディじゃ迫力に欠けるので、相手の勢いに勝てないのだ。普通にジャンケンとかコインで決めようよ……
俺の憂いを他所に、ユウキはデュエルを進行する。
「ボクは手札から『閃刀姫─レイ』を召喚!」
プラチナブロンドの髪。
膝丈のスカート。
赤い刀身の刀を持った凛々しい少女が、フィールドに現れた。
レベル4『閃刀姫-レイ』
-ATK/1500
「閃刀姫デッキ……」
現代遊戯王の象徴となるテーマ。
主人公が持つに相応しい、強さと魅力を兼ね備えたデッキだ。これは……ヘタしたら負けるかもしれない。
「さあ行くよ!ボクはレイの効果発動!このカードをリリースし、EXデッキから『閃刀姫』1体をEXモンスターゾーンに特殊召喚する!現れろ、『閃刀姫=ゼロ』!」
フィールドのレイが光に包まれ、その身に変化が訪れる。
背が少し高くなり、髪が伸びて白亜に輝き、簡素な衣服が鎧となってその身を包んだ。
LINK-2『閃刀姫=ゼロ』↙↘
-ATK/2000
閃刀姫の最終形態、レイとゼロが合体(多分)した姿。
早速のエースの登場にユウキは得意げな顔でニヤリと笑い、ゼロもそんなユウキに半身で振り返って少し口角を上げている。意思疎通してらぁ。
そしてどうでもいいけど初手脱法
そんな俺の感想など知らず、ユウキは展開を始める。
「ゼロの効果発動!このカードが特殊召喚した時、デッキ・墓地から『閃刀』魔法カードを1枚手札に加える!ボクはデッキから『閃刀起動─エンゲージ』を手札に加え、そのまま発動!」
デッキからハニカム構造の光の格子が伸びて、エンゲージの効果で速攻魔法⚡︎『閃刀起動─リンケージ』1枚がユウキの手に収まる。
ナチュラルにソリッドビジョンが物質に干渉しているが、この世界のテクノロジーは遊戯王に関してだけ天元突破している。
ダイレクトアタック等のダメージも、痛くはないが衝撃波を
ユウキ少年のデュエルが加速する。
「⚡︎リンケージを発動!その効果でボクはゼロを墓地へ送り、カガリをEXモンスターゾーンに特殊召喚する!」
LINK-1『閃刀姫─カガリ』↖
-ATK/1500
合体モードが解け、レイの姿へ戻る。
そして今度は刀に炎を宿し、千手観音の如く背に刀を並べた姿に換装される。
攻撃に特化した姿だ。
「カガリの効果!このカードが特殊召喚に成功した時、墓地の『閃刀』魔法カードを1枚手札に加える!ボクはエンゲージを選択!そしてもう一度エンゲージを発動!」
ターン1制限の無いエンゲージが再度発動され、再びデッキからカードを手札に加えるユウキ。
そのカードは『閃刀機─ウィドウアンカー』。
「まだまだ行くよ!現れろ、未来を切り開くサーキット!」
ユウキが空に手をかざすと、空中に幾何学的なサーキットが現れる。
ようやく正規のL召喚か。
「アローヘッド確認!召喚条件は水属性以外の閃刀姫モンスター1体っ、ボクはカガリをリンクマーカーにセットする!サーキットコンバイン!」
カガリが光の矢となって、コントローラーから見てサーキットの左上のマーカーに吸い込まれた。
サーキットがひと際白く輝く。
「リンク召喚!現れろリンク1『閃刀姫─シズク』!」
LINK-1『閃刀姫─シズク』↗
-ATK/1500
今度は防衛力の高そうな、ゴツくてメカメカしい装備に換装したレイがフィールドに降り立った。
「ボクは手札からカードを4枚伏せて、ターンエンド!そしてターン終了時、特殊召喚したシズクの効果!同名カードが墓地に存在しない『閃刀』魔法カードをデッキから1枚手札に加える!」
ユウキは『閃刀術式─アフターバーナー』をこちらに見せ、ターンを渡した。
単騎のシズクに、驚異の4枚伏せカードか。
内1枚はウィドウアンカーだが、閃刀姫カードにはターン1制限が無い。2枚目3枚目のウィドウアンカーが伏せられている可能性もある。
まぁ何が伏せられているにせよ、やるしかない。
「さぁ、来なよセアミ!」
「俺のターン、ドロー」
テンションの高いユウキに対し、どこまでもフラットなセアミンボディ。
最新の腕輪型デュエルディスクから、電子化されて宙に浮くカードを引いた。
俺の眼前に6枚の手札が整然と並ぶ。
俺はその中から1枚のカードをタップした。
ユウキの初手レイに倣って、俺もそれで行こう。
「手札からセアミンを通常召喚」
レベル3『No-P.U.N.K.セアミン』
-ATK600
フワリと和服をたなびかせ、フィールドに着地するセアミン。
氷がほぅ、と息を飲んだ。
「可愛い。……それにどことなく、セアミちゃんに似てるわね?」
「ホントだ。同じ服着たらそっくりなんじゃ?顔立ち同じじゃん」
観客の氷の言葉に、ユウキもそう呟く。ユウキ少年、大正解。
フィールドのセアミンと俺をしばらく見比べていたユウキが、ハッとなった。
「おっと、シズクの効果!相手フィールドのモンスターの攻撃力と守備力は、ボクの墓地の魔法カードの数×100ダウンする!」
セアミンの数値が200下がるが、俺は黙ってデュエルを続ける。
「手札からフィールド魔法✧『P.U.N.K.JAMエクストリーム・セッション』発動。続けてセアミンの効果発動。600LP払い、デッキから『P.U.N.K.』モンスター1枚を手札に加える」
─【LP8000→7400】
「サーチ効果……!そうはさせない!速攻魔法⚡︎『閃刀機─ウィドウアンカー』発動!その効果を無効にする!」
シズクがアンカーを投擲。
機械の腕にガッチリと掴まれ、和服をしわくちゃに乱されたセアミンが苦しそうな顔をする。
ちょっとエロい……っあ、ゴメンなさいセアミンさん睨まないで。
「フィールド魔法✧セッションの効果。自分フィールドのサイキック族効果でLPを払った時、1枚ドローする。このカード名のこの効果は1ターンに2回、発動できる」
「くっ!でも特定サーチよりかはマシか……」
ユウキがそう言うが、対して俺は良いカードを引いた。
「俺は速攻魔法⚡︎『緊急テレポート』発動。デッキから娑楽斎を特殊召喚。そして600LPを払って娑楽斎の効果発動。フィールドのセアミンと娑楽斎を素材に、『P.U.N.K.』モンスターを融合召喚する」
─【LP7400→6800】
『Uk-P.U.N.K.カープ・ライジング』
─DEF/2600
「魔法カードを使わない融合だって!?」
驚くユウキの前に、浮世絵で描かれた巨大鯉が出現する。
……娑楽斎の融合効果に驚くだけで、ユウキはカードを発動しなかった。どうやらウィドウアンカーは無いらしい。
なら気兼ねなく進めさせてもらおう。
巨大鯉がボチャン、と地面に潜って消える。
「融合召喚したカープ・ライジングをリリースして効果発動。手札・デッキからレベル8以外の『P.U.N.K.』モンスターを2体まで守備表示で特殊召喚する」
現れるのは『No-P.U.N.K.ディア・ノート』と『Jo-P.U.N.K.Mme.スパイダー』の2体。
さぁセッションして行くぞ。
「スパイダーの効果。600LP払い、デッキから『P.U.N.K.』罠を1枚手札に加える。……そして、スパイダーとディア・ノートをチューニング」
─【LP6800→6200】
罠カード『Jo-P.U.N.K.デンジャラス・ガブ』を手に、2体のモンスターが流動する粒子となって光輪を形作る。
〈〈〈レベル3チューナー+レベル5=⑧〉〉〉〉〉
「浮世絵の絵柄を身に纏い、フィールドという舞台を舞い踊れ。S召喚」
レベル8『P.U.N.K.JAMドラゴン・ドライブ』
-ATK/2700→2400
浮世絵のドラゴンを被ったセアミンとディア・ノートの演目がハデに開催される。
その光景にユウキと氷が釘付けとなっていた。
「わあ。可愛くてカッコイイ……」
「融合の次はS召喚かっ!けど、そのモンスターの攻撃力はシズクの効果で下がるよ!」
ユウキの言う通りシズクの効果で攻撃力が300下がるが、焦るなよ。
舞台が盛り上がるのはまだまだこれからだ。
「ドラゴン・ドライブの効果。S召喚または『P.U.N.K.』の効果で特殊召喚した場合、600LP払いデッキからサイキック族レベル3モンスター1枚を手札に加えるか墓地に送る。それにチェーンして、墓地に送られたディア・ノートの効果。墓地からレベル5以外の『P.U.N.K.』1体を特殊召喚する。俺は娑楽斎を呼び戻す」
─【LP6200→5600】
墓地復活のゲートが地面に開くが、そこにユウキが反応した。
「そうはさせない!速攻魔法⚡︎『閃刀機─シャークキャノン』発動!相手の墓地のモンスター1体を除外する!蘇生される前に娑楽斎を除外だ!」
シズクが新たな武器──鮫のアギトのような兵器を構える。
その武器からビームが射出され、墓地のゲートごと娑楽斎は除外された。
っく、これは地味に痛い。
「ドラゴン・ドライブの効果でワゴンを手札に。そしてフィールド魔法✧セッションの①の効果を発動。1ターンに一度、墓地の『P.U.N.K.』カードを1枚除外して、手札の『P.U.N.K.』モンスター1体を特殊召喚する」
この効果で俺は墓地のディア・ノートを除外し、今サーチしたワゴンをフィールドに出した。
「ワゴンの効果発動。600LP払い、デッキから『P.U.N.K.』魔法カード1枚を手札に加える。そして✧エクストリーム・セッションの2回目のドロー効果を、ここで使う」
─【LP5600→5000】
「くそ、2回も妨害したのに全然止まらない……!ていうか、これだけ展開しといて手札が5枚のまんまじゃんか!?」
「それよりもユウキ。あのワゴンはチューナーモンスター……、何か来るわよ!」
氷の警告が飛ぶが、もう遅い。
「レベル3のワゴンに、レベル8のドラゴン・ドライブをチューニング」
モンスターたちが光の輪に変換され、チュィイン……とホログラムでサイバネティックスな台座が輝く。
その台座の上で、輝く数字が合算する。
〈〈〈レベル3チューナー+レベル8=⑪〉〉〉〉〉〉〉〉
「終焉の時は今……。その罪を正し、最後にして最高の罰を与えよ。S召喚!」
レベル11『サイコ・エンド・パニッシャー』
-ATK/3500→3100
「コイツは……!暗黒界のおっちゃんを倒したセアミのエースモンスター!」
戦慄するユウキ。
だが実を言うと、俺の方も少し焦っていた。
ユウキの二度の妨害で、モンスターの最終盤面がこのパニッシャーを立てるだけなのだ。
ドローしたカードはちょっと頼りにならないカードばかりだし……。
この手札だと、ここはこうするしか無いっ。
「俺は永続魔法∞『Ga-P.U.N.K.クラッシュ・ビート』発動。そしてさらにもう1枚……」
「うわっ。パニッシャーだけでもお腹いっぱいなのに、まだ何かあるのか!?」
「俺はフィールド魔法✧ 『P.U.N.K.JAMエクストリーム・セッション』を墓地へ送り、手札から2枚目の✧『P.U.N.K.JAMエクストリーム・セッション』を発動」
「……なに?同名カードのフィールド魔法を張り直した……?」
「どういう事?わざわざ張り替えるなんて、なんの意味が……」
困惑するユウキと氷だが、大丈夫。
俺も前世のネットで調べるまで、このカードのこんな使い方思いつきもしなかった。
「セッションの①の効果発動。1ターンに一度、墓地の『P.U.N.K.』カードを1枚除外し、手札から『P.U.N.K.』モンスター1体を特殊召喚する」
「ふふ、セアミ。その効果はさっき使ったじゃないか?自分で『1ターンに一度』って言ってるぞ?」
ユウキが呆れ顔で言ってくるが、俺は黙ってカードをタップする。
「墓地の✧セッションを除外し、手札からオーガ・ナンバーを特殊召喚!」
レベル8『No-P.U.N.K.オーガ・ナンバー』
-ATK/2500→2100
鬼面を被り、おどろおどろしく紫に光る和服に身を包んだ上級モンスター版のセアミンが現れる。
問題なく特殊召喚された事に、氷が目を見開いた。
「え?なんで効果が適用されてるの!?」
①の効果は名称ターン1じゃないからだ!
P.U.N.K.カードは基本的に名称ターン1だが、セッションの①だけ『1ターンに一度』なのだ。なので再びカードを発動すれば、効果を使用できる。
対して②のドロー効果には『このカード名の~』と明記されているので、こちらは張り替えても2枚以上のドローは出来ない。
1枚のカードに2種のターン1テキストが混ざった、実に変なカードなのだ。
「というワケだ。……分かった?」
「いや、よく分かんない……」
「複雑なルールね……。だけど奥が深いわ!」
俺の説明にユウキは頭から煙を上げていたが、氷の方は納得してくれたようだ。本当、複雑ですのよね。
「よく分かんないけど、そういうもんなら仕方ないな!来るなら来なよ、セアミ!」
「バトル!この瞬間、パニッシャーの効果発動。サイコ・アンプリフィケーション!」
─【LP5000】
レベル11『サイコ・エンド・パニッシャー』
-ATK/3100→6100
「っく!?攻撃力が3000もアップ……!」
─【LP8000】
「ライフ差分のアップ……ッ。分かっていたけど、とてつもなく強力な効果ねっ」
さっきのデュエルを見ていたから覚悟はしていたのだろう。
この圧倒的なパワーを前に驚きはしても、その目はしっかりと前を見据えていた。
「まずはオーガ・ナンバーでシズクを攻撃」
俺の攻撃宣言に、迷うことなく動くユウキ。
「ボクは速攻魔法⚡︎『閃刀機─イーグルブースター』を発動!シズクはこのターン他の効果を受けず、さらに墓地に魔法カードが3枚以上ある時、戦闘では破壊されない!」
「加えて墓地に魔法カードが5枚になって、セアミちゃんのモンスターの攻撃力は500ダウンになるわ!」
「だけどまだオーガ・ナンバーの方が攻撃力が上だ。ダメージは受けてもらう」
オーガ・ナンバーが操る巨大な鬼がシズクに向かってダブルスレッジハンマーを見舞う。
シズクはブースターで攻撃を避けたが、爆風がユウキを襲った。
─【LP8000→7500】
「っく、まだパニッシャーが来るけど、シズクもボクもその攻撃じゃ倒し切れないよ!」
確かに、どちらかと言えばシズクは戦闘破壊したかったところだ。
ここは攻めても無意味どころか悪手となる。
「バトルフェイズを終了。カードを3枚伏せてターンエンド」
場に3枚のカードを置き、ターンを渡す。
ユウキがキョトンとした。
「あれ?パニッシャーで攻撃して来ない……?」
「ユウキ、パニッシャーは相手ライフより自分のライフが低い時、相手カードの効果を受けない効果を持ってるわ。ここでシズクに攻撃したらライフが逆転して耐性が無くなるから、敢えて攻撃しなかったのよ」
「あ、そうか。攻撃力アップがスゴすぎて忘れてた。……なるほど、攻めるだけがデュエルじゃないのか」
なんだか氷の方がデュエルタクティクス高いな。
閃刀姫って割と臨機応変さが求められるデッキなんだけど、大丈夫なのかユウキ……
ユウキは不安そうに、緑色のエネルギー波を纏うパニッシャーを見上げる。
「くそっ、関心してる場合じゃない。このパニッシャーをどうにかしないと……」
「大丈夫よ、ユウキ。アナタならきっと勝てるわ!」
氷の励ましの言葉に、ユウキの目に力が戻る。
ホビーアニメしてるなぁ。
しかしこうなると俺、完全に敵役だな。まぁパニッシャーの見た目は完全に悪役か。
ソリッドビジョンのパニッシャーが「え?オレ何もしてないのに」と言いたげにチラリと俺を見てくる。
ユウキの気合いの声が、早朝の路上に響いた。
「行くよ!ボクのターン、ドロー!」