遅筆なのもありますが、マジでデュエル構成考えるのムズいです。
互いの見せ場を用意しつつも勝つ、プロレス遊戯王。
もう負けても良くね?と何回思った事か…(書いてる時、「あれ?これ負けじゃん」と何回もなる
「……という成り行きで、今日から外部講師としてこの精霊セアミさんが我が学園に協力してくれます。皆さん、お見知り置きを」
人でひしめく闘技場のような形の体育館にて、理事長のそんな言葉が響き渡る。
普段はこんなスピーチなど絶対聞かない少年少女たちだが、今はザワザワと興味津々な視線を中央の壇上に寄せていた。
その視線を一身に受けるのは理事長──ではなく、その隣に立つ
そんな注目の的になっている俺は、死んだ目で壇上に立っていた。
(あばば……っ。好奇の視線が痛い……!)
セアミンの無表情フェイスのお陰で泰然としているように見えるが、内心カチコチだ。
こんなに大勢から……しかも360°囲まれる形で注目されるのは初めてすぎる。
俺が「目の前にいるのは皆じゃがいも……じゃがいも……いや無理だろ人の顔にしか見えんわ」と緊張を和らげる手法に失敗していると、その顔ぶれの中に見知った顔を見つけた。
遊姫と氷だ。
ツンツン頭の男装姿の遊姫とバチッと目が合うと、彼女はパァ!と花が咲くような笑顔を浮かべて手を振ってきた。かわいい。
隣の氷も控えめに手を振ってくる。可憐。
そんな遊姫の笑顔にドキッとしながら、俺も控えめに手を振り返した。
すると子どもたち全員がワァ!と盛り上がった。
うん、猛烈に帰りたいな。
大勢の人から注目されるのはストレスフル過ぎるッ。
俺は再び死んだ目になって、時が過ぎ去るのを待った。
──……さて、なぜ俺がこんな衆目に晒されているのかというと、隣でスピーチを続ける人のせいである。
「知っての通り、カードの精霊の力は我々デュエリストにとって絶大です。そんな精霊であるセアミさんが我が校に来てくれた事を、皆さんも感謝しましょう」
遊姫とデュエルする前に倒した“暗黒界”使いのおじさん。
彼がまさかのこの学校の理事長だったのだ。
遊姫との対戦が終わったあと、ギャラリーに介抱されていた彼はフラつく足で俺たちに近づき、俺を外部講師として招きたいと言い出してきたのだ。
俺は現実逃避も兼ねて、つい2時間前のその時のことを脳裏に思い出した。
◆◇◆◇
「……ッお、男の子!?セアミちゃんが……!?」
俺のカミングアウトに、氷が信じられない目で見てくる。
まぁそうだよな。俺だって傍から見たらセアミンは少女にしか見えない。
でも現実にこの身体には♂の象徴が鎮座しているし、自認も男なので、そこはしっかりと伝えておきたかった。
俺は証拠に、顎を上げて白い喉元の膨らみを見せた。
氷が目を見張る。
「わっ、ホントに喉仏ある……っ。本当に男の子なんだ!でも証拠を見せられても、まだ信じられないくらい可愛いよね、遊姫。……?、遊姫?」
ひとり驚く氷が、なんの反応もない隣の友人を見て目を見張った。
俺と握手したままの遊姫は、その視線を下の方……、俺の下腹部をジーッと熱っぽい視線でガン見していたのだ。
視線の先に気付いた氷もボッ!と赤くなる。
「ゆ、遊姫!?ちょっとドコ見てんのよ!?さすがにソッチを見るのは失礼過ぎない!?」
「っえ、あ、ごめっ……、っあ」
氷にツッこまれ、正気に戻った遊姫が端正な顔を真っ赤に染めて謝ってくる。
しかしその小さな鼻から、赤い筋がツー……と垂れてきた。
「ちょっ!?遊姫、鼻血出てる鼻血!!」
「わわっ、これは違くてっ!さっきのダイレクトアタックで転んだ時に鼻を打ってて……ッ!決してセアミにおちん……男の子だっていう事に興奮したワケじゃ……ッ」
「あーもう動かないで!血が垂れちゃうでしょ!」
言い訳を言おうとして慌てふためく遊姫に、氷が甲斐甲斐しくハンカチで鼻を抑える。
鼻を抑えられる遊姫は「あ、ありがと氷……」と言いながらも、チラチラ俺を……俺の下腹部を見るのを止めない。興味津々過ぎだろ。
あまりにもソコばかり見てくるので、俺は居心地が悪くてさすがに言及した。
「あの……遊姫サン?さすがにそんなに見られると、俺も恥ずかしいというか……」
ただでさえ和装ミニスカという出で立ちなのだ。
そこに遠慮容赦ない視線を浴びせられると、男の俺でもヒジョ〜に気恥ずかしかった。
セアミンフェイスは無表情だろうが、たぶん俺の顔も真っ赤だろう。
俺は股間部分を長い袖でそっと隠した。
そんな俺の姿を見て、遊姫の喉がゴクリと盛大に鳴る。
……あの、遊姫さん?キミ、だいぶムッツリだね?
ミニスカ越しにそんなアツい視線を受けると、なんだか俺もイケナイ事をしている気になってきてしまう。被害者なのに。
俺のジト目に気付いた遊姫が、ハッとなってアワアワ再び謝った。
「ご、ごめん!そのっ、そんなに可愛い顔で男の子だって言われても、どうしても信じられなくて……」
口では謝りながらも視線はアソコから外さない遊姫。ブレないな。
女子中学生から性的に見られるという、前世ではかつて味わったことの無い経験を得た。
……ていうか、遊姫こそ女の子かぁ。
「それなら俺の方こそ謝るべきかな。俺は遊姫のこと男だと思ってたから。元気のいいデュエル少年だとばかり」
俺の言葉に反応したのは氷だった。
「いやまぁ、遊姫の心はまだ少年みたいなものなので間違ってないですよ。女子制服も恥ずかしがって着てくれないし。私たちが通う学校はスカートとスラックスを選べるんですけど、そのせいで遊姫は頑なに女子制服に袖を通さないんですよ。せっかくオシャレすれば光る素材なのに」
そう言いながら髪を耳に掛ける氷。
ノースリーブで隠すもののない腋がチラリと、しかし大胆に見えた。
仁王立ちする立ち姿からは、美しい生足が惜しげも無く晒されている。
……まぁ、その制服を恥ずかしがるのは分かるな。
逆に氷や他の女子生徒は何とも思わないのか。その四肢丸見えコーデ。
遊姫はオシャレという言葉に口をへの字に曲げた。
「だってオシャレとか興味無いし……。ボクはデュエル出来ればそれでいいし……」
「このデュエルお馬鹿。髪の毛だって今みたいに下ろした方が可愛いのに」
「えー?逆立ってるのカッコイイじゃん」
「オシャレに興味ないのに、妙なファッションセンスは見せるのよね、この子……」
サラサラ流れる髪を手櫛でオールバックにする遊姫。やだ、男前……。
そんなイケメンフェイスを晒す遊姫に、氷は呆れた様子でため息をついた。
氷は何とかして遊姫を女の子として真っ当に着飾りたいようだが、どうも上手くいってないようだ。
──だが正直、俺は内心ガッツポーズしていた。
(やばいッ。女の子だって分かってからの遊姫が可愛すぎる……ッ!)
俺の目には、今の遊姫がやたらキラキラして見えていた。
男の娘やTSや異性装など、倒錯的なモノに興奮するという性癖を拗らせている俺。
そんな俺にとって、遊姫はどストライクな存在だった。少年の心を持ったままなのもグッド。
もはや主人公うんぬん関係なく、俺はこの遊姫から目を離したくなくなった。
別に恋愛したいとか、実際に性的に見るとかでは断じてない。相手は現実の女子中学生だし。
純粋に、この可愛い生物をずっと見ていたくなった。推しという概念がイチバン近い。
幸い、遊姫の方も
「ん?」
二人のやり取りを見守っていると、不意に俺の身体がボンヤリと光り始めた。
その淡い光がパァ!と霧散すると、和装は消え、元の半袖短パンサンダルのラフスタイルに戻った。
腕輪型デュエルディスクも戻ってきた。良かった……!これ高かったんだよな。
というか勝手に精霊姿になったり元に戻ったり、勝手に換装しないでください。
俺の体なのにまったく制御できないな、この精霊ボディ。
「あ。最初の姿に戻った」
「こうして見ると、骨格とかは確かに男の子ね。幼い顔立ちだからか、一見するとやっぱり女の子にしか見えないけど」
まだちょっと顔の赤い遊姫と氷が近付いてくる。
赤面する女子中学生にジロジロ見られ続けるのはたいへん居心地が悪いので、デュエルも終わったことだし俺はようやく指摘した。
「ま、まぁ俺の事は一旦置いといてっ。二人とも学校はいいのか?通学途中だったんじゃ?」
今更ながらの指摘に、氷がスマホに目を通して目を丸くした。
「え……、っわ!本当だ!間に合うかどうかギリギリだよ遊姫!」
「うぇ、ちょっと待ってよ。まだセアミと話してたい……ッ」
腕を引っ張って連れて行こうと焦る氷に、俺に後ろ髪を引かれる様子で抵抗する遊姫。
見目麗しい女の子が絡む光景は眼福だなぁ、と俺が高みの見物をしていると、第三者の声が掛かった。
「遅刻の心配なら無用ですよ。私が遅延証明書を発行しよう」
「アンタは……、暗黒界のおっちゃん……?」
遊姫が怪訝な顔をする。
声の主は俺にデュエルを挑んで返り討ちにされた、虚弱体質のロリコンおじさんだった。
まだ膝がガクガク震えているが、意外にもその表情はキリッと引き締まり、喋る声音もどこか威厳を漂わせていた。
「君たち二人は歌舞伎デュエル学園の生徒だろう?私はそこの理事長を勤めていてね、教師たちには私から説明するよ。そもそも、デュエルによる遅刻なら何も問題は無い」
「え?暗黒界のおっちゃんって理事長だったの?」
「全然知らなかった……。ただの徘徊者かと……」
遊姫は言わずもがな、氷にまでそう言われる始末の暗黒界おじさん──、改め理事長。
しかし彼は特に気にした様子もなくにこやかに笑っていた。まぁ理事長なんて、一般生徒が会う機会ないしな。
だが理事長の視線が俺に向くと、途端に鋭い目つきになって手を揉みながら寄ってきた。
「いやぁ素晴らしいデュエルでした精霊様!お名前はセアミさん、でよろしかったでしょうか?差し支えなければこの後、我が校の他の生徒にも手解きをして頂けませんでしょうか?」
「え、いや、そんな急に言われましても……っ」
理事長という肩書きを知った今、一気に目の前のロリコン虚弱おじさんに強く出れなくなってしまう俺。
理事長=偉い人だぞ?
肩書きってコワイ。
萎縮する俺の代わりに、なぜか遊姫が反応した。
「え。学校に来てくれるのセアミ!?やった!ありがとう理事長センセイ!」
「はっはっは。私は先生ではないですよ。でもそう呼ばれて悪い気はしないですな」
俺が臆している内に、目をキラキラさせた遊姫が勝手に話を進めてしまった。
理事長も権力を振りかざして得意げだ。
いやまぁ、どうせ何もやること無い身だし別にいいんだけどさ……
脱力する俺の肩に、氷の手がポンと置かれた。
「諦めてセアミちゃん。遊姫は一度暴走したら止まらないの。……それに加えて理事長なんて、もう私にはどうしようもないわ」
「……同情してくれてありがとう、氷さん。あと、俺の事は呼び捨てでお願いします」
笑い合う権力者と主人公に、諦めた顔を浮かべるしかないヒロインと俺だった。
◆◇◆◇
「──……という事で、セアミさん歓迎デュエルを行いたいと思います!ではセアミさん、立候補者の中から誰か一人とデュエルして頂けますか?」
俺が回想を終えて現実に戻ってくると、いつの間にかデュエルする流れになっていた。
体育館の中には我先にと手を挙げる生徒、生徒、生徒に教師。教師もかよ。
立候補者は視界のほぼ全員だった。
わーい、大人気だ(棒
「なんなら、私でも良いですよ?」
理事長がネットリと小声で主張してくる。
遠くからは遊姫の「はいはいはーい!」というよく通る声が響いてきた。
アンタらはさっきデュエルしたろっ。
ウゴウゴと熱気に包まれるデュエル体育館。誰も彼もが俺とデュエルしようと荒ぶっている。
……これ、俺が選ぶのか?ソッチで勝手に選出してくれません?
多過ぎる人数に加え、知らない人たちからの熱気が籠る好奇の視線。
……本当に帰りたくなってきたな。
本物のセアミンみたいに緊急テレポートを使って脱出したい。俺も精霊なのに何故出来ないんだ。
そんな困り果てた俺の視界に、唯一と言っていい挙手していない人物が目に入った。
俺は指を差して指名する。
「あの……じゃあ、あそこの氷さんで」
「え!?私!?」
周囲の人間がバッ!と氷に目を向ける。
立候補してなかったのに、悪いな氷。
でも目をギラギラさせた見ず知らずの人たちとデュエルするの、ちょっと怖いんだ。情けない男でゴメン。
「ちょっ、押さないでよ遊姫!」
「せっかくのセアミからのご指名だよ!?デュエルしなきゃ損だって!」
遊姫に背中を押されて前に出てくる氷。
俺と目が合うと、ジトッと恨めがましい顔を向けてきた。
美人の睨み顔は迫力があってコワい。
俺は両手を合わせて誠心誠意、謝意を示した。
「ごめん、氷さんは手を挙げてなかったのに。……でもこの空気の中、知らない人を選べるほど俺の心は強くない、強くないんだ……」
「……、はぁ。ま、気持ちは分かるわ。私もあんまり人前に出たくない性格だし」
女子中学生に再び同情される俺。本当、情けない男ですみません。
まったく、ガワが可愛いセアミンじゃなかったら許されない情けなさだぞ俺。
俺が自省していると、目の前で氷が腕輪型デュエルディスクを構えた。
「それはそれとして、デュエルは本気でいくわよ。本音を言うと私だってセアミとデュエルしたかったんだから。同情してたから立候補してなかったけど、選ばれたのなら仕方ないわね。ええ、仕方ない」
思いのほか好戦的な笑みを浮かべる氷。
その隣の遊姫が「ヒェ……」と引き攣った声を上げた。
え、なに。
周囲の反応も「氷さんだ……」「入学式で先輩デュエリストを泣かしたっていう、あの……!?」とザワついている。
あれ?もしかして氷さんって……強い系ヒロイン?
「じゃあ行くよ!デュエル!」
─【LP8000】
「デュエル」
─【LP8000】
これは俺も泣かされるかもしれん。