決闘者セアミン(♂)   作:へるしぃーぼでぃ

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デュエルが始まると、どうしても効果説明とかで文字数が多くなります…
出来る限り(効果内容を(たが)わない範囲で)短縮してますが、チョイ文字数多めでお送りします。




vs.氷水─前半

 

 

 

歌舞伎デュエル学園の敷地内。

コロシアムのような形状の体育館、その中央の壇上にて。

俺は突如としてキツ目青髪美人ヒロイン・氷と戦うことになってしまった。

 

周りの噂話を聞くに、氷はつよつよ系ヒロインらしいが、果たして。

 

俺の初期手札は……、まぁ並の手札だ。

同じく手札の5枚を眼前に並ばせて確認していた氷が、不意に優しく語りかけてきた。

 

「遊姫の時、セアミは後攻だったから今回はアナタが先行でいいわ。このデュエルはアナタのお披露目でもあるわけだし」

 

「分かった。じゃあ俺の先行で始めるぞ」

 

この世界に来てからずっと後攻スタートだった俺だが、初めて先行を譲られた。

強者の余裕か、憐れみか……

両方かな。

お言葉に甘えて、全力で行こう!

 

────────────────────────

レベル11『サイコ・エンド・パニッシャー』

-ATK/3500

 

レベル8『No-P.U.N.K.ライジング・スケール』

-DEF/2400

 

レベル3『Uk-P.U.N.K.娑楽斎』

-DEF/600

 

✧『P.U.N.K.JAMエクストリーム・セッション』

伏せカード2枚

手札4枚

────────────────────────

 

「これで俺はターンエンドだ」

─【LP4400】

 

「これはセアミ、最初から全力全開の展開だー!ライフを盛大に削り、融合とシンクロを駆使した豪快なデュエル進行!魅せてくれるね!」

 

何故か司会進行は遊姫が担当していた。

声が大きくてハキハキ喋るから、マイクが無くてもよく響く。すごい声量だ。

初動セアミンからのエースモンスター『サイコ・エンド・パニッシャー』にまで繋げた展開で、ギャラリーは中々の盛り上がりを見せている。

 

さすが遊戯王の世界。デュエルに対する熱量がハンパないな。

 

さて、純P.U.N.K.を程よく回せてライフを大幅に削れたのでパニッシャーを優先して立てたが、これが吉と出るか凶と出るか……

俺の現状の全力展開に氷はどうするのかと目を向ければ、彼女は静かに笑みを浮かべていた。

 

「初ターンでエースの登場……。全力で来てくれて嬉しいわ、セアミくん。これで私も心置き無く……全力を出せる!」

 

「あ、まずい」

 

遊姫がボソリと呟き、俺に近付いてきて耳元で囁いた。

ちょっ、近い!?

 

「氷はボクにデュエルお馬鹿って言ったけど、ボクからしたら氷の方がよっぽどデュエルお馬鹿……いや、デュエルソルジャーだよ。気を付けてね」

 

「誰がソルジャーよ、失礼ね。このデュエルが終わったら覚えてなさいよ、遊姫」

 

絶対に聞こえてないはずなのにしっかり聞き取っている氷。

遊姫は直立不動になって動かなくなった。まぁ今のは遊姫が悪い。

そんなソルジャー・氷のターンがいよいよ始まる。

 

「まぁいいわ。気を取り直して……行くわよ!私のターン、ドロー!……、私はドローした『深海のディーヴァ』を通常召喚」

 

レベル2『深海のディーヴァ』

-ATK/200

 

美しい深海の歌姫がフィールドに現れる。

水属性の海竜族……

まだ断定できないが、氷のデッキは水属性が主体のテーマか?

歌姫の美声が体育館に澄み渡る。

 

「ディーヴァの効果!このカードが召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族を特殊召喚する。来なさい、デュオニギス!」

 

レベル3『黄紡鮄(きほうぼう)デュオニギス』

-DEF/700

 

二人組の魚人バンドマンが現れる。

うん、全然知らないカードが来たな。

展開が分からないのはマズイ。

前世知識を参照に立ち回れるという、俺の大きなアドバンテージが失われてしまった。

内心焦る俺など知らず、氷はどんどんデュエルを進める。

 

「デュオニギスの効果!このカードが特殊召喚に成功した時、自分フィールドの水属性の数だけ相手のデッキの上からカードを除外する!私のフィールドには2体の水属性……、よって2枚除外よ!」

 

除外……ッ。

割とキツい効果だ。P.U.N.K.は除外に対応していない。

俺のデッキトップからカードが2枚──セアミンと娑楽斎(各2枚目)の2枚が除外された。おい!?

P.U.N.K.の重要な初動要因がっ。

除外されたカードを見て、氷がニヤリに笑う。

 

「あら、ごめんなさい。可愛いセアミンと頼れるお兄さんの娑楽斎を除外しちゃったわ」

 

「……氷さん。アナタ、実はドSですか?」

 

なんかデュエルが始まってから、ちょっと性格が変わってません?

氷は優しく微笑むだけで、俺の問いには答えなかった。

隣の遊姫がブルル!と震える。なんでキミが震えてるんだ。

氷がデュエルを再開する。

 

「デュオニギスのさらなる効果!自分フィールドのレベル4以下の水属性を対象に、そのモンスターのレベルを元々のレベルだけ上げる!私はディーヴァを対象に発動!」

 

レベル上昇効果っ。

確かディーヴァはチューナーモンスター……、狙うはシンクロか!

氷はすでに召喚権を使っている。

少しもったいないが、ここが使い時だと俺は判断した。

 

「俺はフィールドの娑楽斎の効果発動!相手ターンに600LP払うことで、自分フィールドのモンスターを素材として『P.U.N.K.』モンスターをS召喚する!俺はレベル3の娑楽斎と、レベル8のライジング・スケールをチューニング!」

─【LP4400→3800】

 

〈〈〈チューナー3〔⑪〕レベル8〉〉〉〉〉〉〉〉

 

「来たわね!遊姫の時にもやった、相手ターン中にS召喚!」

 

光り輝く光輪に目を細めながら、氷が叫ぶ。

その通りだ、行くぞ!

 

「ド派手に極彩色を撒き散らし、デュエルの荒波をどこまでも駆け昇れ!S召喚!!」

 

レベル11『Uk-P.U.N.K.アメイジング・ドラゴン』

-ATK/3000

 

パニッシャーの頭上に飛び出す、極彩色に輝くドラゴン。

相手ターン中に突如として登場する大型モンスターに、初めて見るギャラリーが再び沸き立つ。

 

「おーっと!セアミのエースモンスターが2体並んだー!しかもレベル11とどちらも最上級モンスター、圧巻の光景だ!」

 

解説する遊姫のテンションも上がる。

さっきまで氷にビビって縮こまってたのに、よく一瞬でそこまでテンションが回復するな。

俺は感心しながら効果を発動する。

 

「フィールドのサイキック族効果でライフを支払った事で✧セッションの1枚ドローをし……、S召喚したアメイジング・ドラゴンの効果!アメイジング・ブレス!」

 

墓地のレベル3サイキック族の数だけ、相手フィールドのカードを手札に戻すバウンス効果。

俺の墓地には下級P.U.N.K.が3体。

よって氷のモンスター2体は共に手札へ戻り、そのフィールドはガラ空きになった。

展開を妨害された氷。

彼女は手札に戻ったカードを静かに見つめ……、しかし不敵に笑った。

 

「さすがの危機察知ね。……でも、私の動きはまだ止まらないわ!手札から魔法カード発動、

氷水揺籃(ヒスイヨウラン)』!」

 

電子状態で目の前に浮かぶ手札7枚のカード。

その中から1枚をタップし、魔法カードが発動された。

やはり氷のデッキは水属性が主体か!

 

しかし、『氷水(ヒスイ)』か……。

 

確か水属性水族で統一されたテーマだが、正直うろ覚えだ。

記憶を探る俺の前で、氷の隣に卵状の水の塊が出現する。

氷がその中に手を入れて抜き出すと、カードが1枚その手に握られていた。

 

「『氷水揺籃(ヒスイヨウラン)』は、同名カードがフィールド・墓地に存在しない『氷水(ヒスイ)』モンスター1体をデッキから手札に加えるサーチカードよ。そして私はもう1枚の

氷水揺籃(ヒスイヨウラン)』を発動するわ!」

 

「な!?ターン1制限のないサーチカード!?」

 

再び出現する水の卵からカードを手札に加える氷。

氷水デッキ、これは中々厄介……!

 

「行くわよ!私は手札からチューナーモンスター

氷水帝(ヒスイテイ)エジル・ラーン』の効果発動!手札の『氷水(ヒスイ)』カードか水属性モンスター1枚を捨て、このカードを特殊召喚する!私は手札から『氷水(ヒスイ)のトレモラ』を捨て、特殊召喚!」

 

レベル7『氷水帝(ヒスイテイ)エジル・ラーン』

-DEF/2500

 

フィールドに顕現する、肉体が水そのもののように透過している女性型のモンスター。

フリフリのドレスのような服も半透明で、……ちょっと、その、目のやり場に困りますね………

その液体チックな身体を持つ彼女の後頭部には、こちらは固体の二本の巨大な巻き角が生えていた。

物憂げな表情を彩るように、前頭部にはティアラ……いや、王冠がキラリと乗っている。

遊姫の解説が走る。

 

「おぉっと、氷!召喚権を囮にセアミのエースモンスターの効果を躱して、本命の展開を上手く通してきた!さすがのデュエルタクティクス!」

 

「やっぱりコッチが本命の展開かっ。アメイジング・ドラゴンを出すのは早すぎたか!?」

 

「そうでもないわ。ディーヴァ初動の展開が通ってたら、それはそれでもっと暴れ回ってたもの」

 

氷が楽しげに嗤う。

もうドSなのは隠す気ないらしい。

遊姫が小声で「ヒェッ」と息を飲んだ。

なんでさっきから君の方が怖がってるんだ。普段の行いが窺えるな。

 

「さて、エジル・ラーンの効果はまだあるわ。この特殊召喚後、自分フィールドに『氷水(ヒスイ)トークン』(水族・水・星3・攻/守0)1体を特殊召喚できるわ。だけどこの効果で特殊召喚したトークンが存在する限り、自分は水属性モンスターしかEXデッキから特殊召喚できないけどね」

 

制約についてさも困ったふうに語るが、その顔はこれっぽっちも困っていない。

そりゃぁ、EXデッキも水属性だらけだろうからなぁ……

レベル7の大型チューナーモンスターであるエジル・ラーンに、そしてレベル3のトークン。

これはS召喚が来るっ。

だがそうはさせない!

 

「俺はリバースカードオープン!罠カード『Jo-P.U.N.K.ナシワリ・サプライズ』!自分フィールドに『P.U.N.K.』モンスターが存在する場合、相手フィールドのカード1枚を対象に破壊する!俺はエジル・ラーンを破壊!」

 

傀儡人形が現れ、その顔面からビームのような衝撃波のような波動を放出。

エジル・ラーンを破壊した。

これで俺からの二度目の妨害。

しかし氷の顔にはまだ余裕があった。

 

「へぇ、やるわね。けど甘いわ!墓地の『氷水(ヒスイ)のトレモラ』の効果発動!自分フィールドの表側表示の水属性モンスターが戦闘・効果で破壊された時、このカードを除外して手札・墓地からトレモラ以外の『氷水(ヒスイ)』モンスターを特殊召喚する!蘇れ、エジル・ラーン!」

 

「なに!?そんな効果が!?」

 

復活するエジル・ラーン。

せっかく破壊したのに、これではムダに罠カードを発動してしまっただけだ。破壊するならトークンの方だったかッ。

しかも破壊後に発動する効果──チェーンが絡まないから、俺の墓地のドラゴン・ドライブのセルフ蘇生効果が発動出来ない。完全なる無駄撃ちだ。

内心悔しがる俺に、氷が得意げに口角を上げる。

 

「さて、S召喚……と行きたいところだけど、その前にやる事があるわ。私は永続魔法∞『氷水呪縛(ヒスイジュバク)』を発動!」

 

フィールドに現れる、恐らくテーマ専属のサポートカード。

くそ、効果を確認したい……!が、絶妙に遠くて効果を読めない!

 

「さらにフィールド魔法✧『氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドル』発動!このカードの発動時の効果処理として、墓地及び除外から『氷水(ヒスイ)』モンスター1体を手札に加えるわ!私は除外したトレモラを手札に戻す!そしてこのトレモラの効果発動!」

 

氷のデッキが回る。

ヤバいな。

俺のフィールドにはほぼ無敵のパニッシャーが居るとはいえ、少し不安になってきた。

 

「このカードを捨て、手札から水属性モンスター1体を特殊召喚する!来て、エジル!」

 

レベル3『氷水(ヒスイ)のエジル』

-DEF/2000

 

エジル・ラーンの隣に、彼女を幼くしたようなツインテールの幼女が現れる。

こちらも身体と衣服が半透明で、しかし角は生えていない。

だがその小さな頭には、ひと回り小さな王冠がちょこんと乗っていた。

ジト目の翡翠の目が、俺をジッと見据えてくる。かわいい。

 

「召喚・特殊召喚したエジルの効果!デッキから『氷水(ヒスイ)』魔法・罠カードを1枚手札に加える!そしてこれを発動!『氷水大剣現(ヒスイダイケンゲン)』!」

 

和む俺を置いて、エジルから手渡された厳ついカード名のカードを使用する氷。

展開が一向に止まらない。

 

「相手フィールド・墓地にモンスターが存在し、自分フィールドに水属性が存在する時に発動可能。デッキから『氷水(ヒスイ)』モンスター1体を、墓地へ送るか特殊召喚する。私はチューナーモンスター、エーギロカシスを特殊召喚!」

 

レベル7『氷水艇(ヒスイテイ)エーギロカシス』

-DEF/2000

 

ここまで女性型だけの氷水(ヒスイ)モンスターだったが、ここへ来て異形が現れる。

水の身体なのは共通っぽいが、その形は人型からかけ離れ、艇や要塞といった無機質な風貌だ。

正しくモンスター然としたモンスターの登場に、氷のフィールド魔法が呼応する。

 

「エーギロカシスが場に出た瞬間、✧イニオン・クレイドルの効果!モンスターが召喚・特殊召喚された時、私のフィールドの水属性モンスター1体を対象にして発動する。そのモンスターの元々の攻撃力分だけ、そのモンスター及び相手フィールドの表側表示モンスターの攻撃力をターン終了時までダウンさせるわ!私はエーギロカシスを選択!」

 

「エーギロカシスの攻撃力は2000……!セアミ、これは相当な戦力ダウンだ!」

 

遊姫の言う通り、これはだいぶキツい弱体化だ。

素直にマズいが、デュエリストとして虚勢を張っておく。

 

「っだが、攻撃力が下がるのはアメイジング・ドラゴンのみ!サイコ・エンド・パニッシャーは俺のライフが相手より低い時、相手が発動した効果を受けない!」

 

レベル11『Uk-P.U.N.K.アメイジング・ドラゴン』

-ATK/3000→1000

 

ふむ。

調子に乗ってアメイジング・ドラゴンを攻撃表示で出してしまったのが悔やまれるな。

ライフを削る戦法のP.U.N.K.。

自分ターンで攻撃しない限り、例え大型モンスターだろうとパニッシャー以外は守備で出すのがセオリーだろがっ、俺。

内心でセルフ突っ込みする俺に、氷の方もふむ、と頷く。

 

「そう、やっぱりパニッシャーにはこの効果は効かないのね。……でも、ここからが本番よ!私はレベル7のエジル・ラーンに、レベル3の氷水(ヒスイ)トークンをチューニング!」

 

〈〈〈〈〈〈〈チューナー7〔⑩〕レベル3〉〉〉

 

とうとう来た。

阻止しようとしたレベル10のSモンスターが、ついに来る……ッ!

 

「帝冠を受け継ぎし幼子よ。その悲哀を胸に抱き、汝の憎き敵を眼前から排除せよ!S召喚!」

 

レベル10『氷水啼(ヒスイテイ)エジル・ギュミル』

-ATK/3000

 

少女となったエジルの姿。

エジル・ラーンと似ているが、周囲に漂わせる巨大な尖った氷柱はこちらに向き、攻撃的な雰囲気を纏っていた。

間違いなく、このカードが氷のエースモンスターだろう。

改めて身構える俺に、氷の声が響く。

 

「これが私のエースよ。……けど、まだ終わりじゃないわ!セアミ君が2体のエースを並べるなら、私ももう1体のエースを召喚する!」

 

氷がカッ!と目を見開き、宣言する。

 

「レベル7のエーギロカシスに、レベル3の氷水(ヒスイ)のエジルをチューニング!霊峰にて研鑽積みし勇猛なる剣よ。水魚の交わりのために今、培ったその剣技を振るえ!S召喚!」

 

「2体目のレベル10シンクロ!?」

 

驚く俺の前に、その偉丈夫は現れた。

 

レベル10『相剣大公─承影(ショウエイ)

-ATK/3000

 

荘厳な甲冑に身を包んだ幻竜族の剣士が、エジル・ミュギルの隣に立ち並ぶ。

その姿はさながら、女王を護る近衛騎士。

煌びやかな戦士と美しい女王の立ち姿に、俺含めこの場の全員が息を飲んだ。

遊姫が興奮した様子で叫ぶ。

 

「おお!凄いぞカッコイイぞー氷!セアミのレベル11Sモンスター2体に対して、氷も対抗するようにレベル10Sを2体並べた!熱すぎる展開だよ!」

 

本当に、ずいぶん魅せる展開をしてくれるぜ、氷。

そしてマズイな。承影(ショウエイ)の効果は確か……

 

承影(ショウエイ)の永続効果!このカードの攻撃力・守備力は除外状態のカードの数×100だけアップし、逆に相手モンスターはダウンする!除外されているカードはセアミン2体と娑楽斎1体、∞クラッシュ・ビート1枚……、よって400の変動!」

 

『相剣大公─承影(ショウエイ)

-ATK/3000→3400

 

「ぐっ!?」

 

『Uk-P.U.N.K.アメイジング・ドラゴン』

-ATK/1000→600

 

『サイコ・エンド・パニッシャー』

-ATK/3500→3100

 

「あれ?さっき✧イニオン・クレイドルの効果じゃパニッシャーの攻撃力は下がらなかったのに、今度は下がった…?」

 

遊姫がコテンと首を傾げる。かわいい。

そう、俺が承影(ショウエイ)を恐れたのはこの永続効果だ。

氷が頷く。

 

「やっぱりね。パニッシャーの効果は一見無敵に見えるけど、以外と穴があるのよ。『相手が発動した効果を受けない』という事は、発動を伴わない効果や、発動せず常時効果を発揮するカード効果は受けるという事」

 

「???、……なるほど!」

 

氷の説明に、遊姫は絶対に分かっていない顔で元気よく頷いた。

さすがは俺のパニッシャーをリリースで雑に対処した遊姫だ。面構えが違う。

そんな遊姫の反応を予測していたであろう氷は、静かにため息をついていた。苦労してるみたいだね。

 

「お馬鹿デュエリストの遊姫は置いといて、さらに私はこのカードを手札から特殊召喚するわ」

 

氷の手札に残る、最後の1枚。

そのカードがタップされ、そのモンスターがフィールドに出現した。

 

レベル10『氷水帝(ヒスイテイ)コスモクロア』

-DEF/3000

 

「なっ!?レベル10をなんの前触れもなく召喚した!?」

 

「このカードはフィールドゾーンにカードが表側表示で存在する場合、手札から特殊召喚出来るのよ。今は✧イニオン・クレイドルと✧エクストリーム・セッションの両方が存在しているから、召喚し放題ね」

 

巨大な王冠を頭上に浮かばせた、新たな氷水(ヒスイ)の女性型モンスター。

他の氷水(ヒスイ)同様にその身体は半透明だが、全体的に黒く濁っていて異様な存在感がある。

Sモンスターに並ぶレベル10……、メインデッキのエース級モンスターに違いない。

 

「これで準備は整ったわ……。行くわよセアミ、バトル!」

 

氷が手を前に突き出し、フェイズ移行を宣言。

だが俺もここで宣言する。

 

「この瞬間、パニッシャーの効果発動!バトルフェイズ開始時、互いのライフの差分攻撃力がアップする!サイコ・アンプリフィケーション!」

 

パニッシャーの唯一無二の固有能力を発動。

ライフの差は8000-3800=4200。

つまりパニッシャーの攻撃力は驚異の7000オーバーに跳ね上がり、承影(ショウエイ)の弱体効果などモノともしないステータスを得る!

 

……、?

 

「あれ?攻撃力が上昇、しない……?」

 

攻撃力が上がる、ズオオ!⤴︎という力強い音がしない。

俺は不思議に思ってパニッシャーを見上げ、目を見張った。

 

パニッシャーがいつの間にか、黒く濁った水の塊に覆われていたからだ。

 

パニッシャーだけではない。

隣のアメイジング・ドラゴンも、宙に浮かぶ透き通る水の中に沈んでいた。

これは……ッ!?

 

「ふふ、戸惑っているわねセアミ君。永続効果を持っているのは、なにも承影(ショウエイ)だけではないのよ。このコスモクロアの能力こそ、私の本命……!」

 

静かに佇む、暗淡としたコスモクロア。

彼女の瞳が薄らと開かれる。

 

「フィールドに✧『氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドル』が存在する限り、相手フィールドのモンスターは召喚・反転召喚・特殊召喚したターン『にしか』効果を発動出来ない!よって前のターンにS召喚したパニッシャーは、その能力を封じられる!」

 

「っな!?そんな効果がっ!?」

 

パニッシャーの能力をそんな形で封じるとは!?

これでは攻撃力が上昇せず、承影(ショウエイ)に攻撃力を上回られている今、屈辱の戦闘破壊をされてしまう。

だが、その効果を聞いて疑問が浮かんだ。

 

「しかしそうなると、何故アメイジング・ドラゴンも同じように水に封じられているんだ?コイツはこのターンに召喚したのに……」

 

「それは永続魔法∞『氷水呪縛(ヒスイジュバク)』の効果よ。こっちの効果は、フィールドに『氷水(ヒスイ)』モンスター及び✧『氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドル』が存在する限り、『このターン』召喚・反転召喚・特殊召喚された相手モンスターは効果を発動出来ないわ」

 

俺の疑問につらつらと答える氷。

つまり、現状は……

 

「……つまり、コスモクロアと∞呪縛と✧イニオン・クレイドルの3つが揃っている限り、俺はフィールドのモンスターの効果を発動出来ないのか……!?」

 

「正解。セアミ君は理解が早くて助かるわ。遊姫には何回説明しても分かってくれないのよ」

 

「いや、分かるよ!要はモンスター効果がぜんぶ無効化されるって事だよね!」

 

「「全然違う」」

 

「ええ?二人して?」

 

『無効』と『発動できない』は全く違う。

そんな認識で閃刀姫デッキを回してるのか。さすが主人公、伸び代しかないな。

 

「……まぁ遊姫には、結局魔法カードを連打されて負けるんだけどね」

 

「うん!閃刀姫には専用の武器がいっぱいあるからね!一騎当千のレイは簡単には負けないよ!」

 

遊姫、恐ろしい子……!そして氷はご愁傷さますぎる……。

無邪気にはしゃぐ遊姫を、ジロンヌと冷たい眼差しで見る氷。

 

「ムカつく笑顔の遊姫は後で引っぱたくとして……、改めて行くわよセアミ君!バトル!」

 

「なんで引っぱたくのさ!?」

 

百合漫才を見て和むが、そんな場合ではない。このままでは俺が先にご愁傷さまになってしまう。

切り抜けられるか?この盤面……っ!

 

 

 

 

 





セアミ初ターンの動き

セアミン通常召喚(NS)
600LP払いライジング・スケールをサーチ
手札の∞魔法クラッシュ・ビート除外しスケール特殊召喚(SS)
スケール効果(ef)で600LP払い娑楽斎SS
娑楽斎efで600LP払い、セアミンと娑楽斎を素材にカープ・ライジング融合召喚(FS)
ライジングefでワゴン&ディア・ノートSS
ワゴンefで600LP払い✧エクストリーム・セッションをサーチ

✧セッション発動

ワゴンとノートを素材にドラゴン・ドライブをシンクロ召喚(SS)
ノートefで娑楽斎を墓地から蘇生
ドラドラef600LPでスパイダーをサーチ(✧セッション1枚ドロー)
✧セッションで墓地のセアミン除外しスパイダーSS
スパイダーef600LPで罠ナシワリ・サプライズをサーチ(✧セッション1枚ドロー)
スパイダーとドラドラでサイコ・エンド・パニッシャーSS
2枚魔法・罠ゾーンに伏せてターンエンド

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