俺にとっては…そうだな…宇宙かな…
昼下がりの小さな喫茶店のテーブル席で高級スーツに身を包んだ男が座っていた。日本三大商社三井商事社長、堂林銀次は少し考え込んだのち、そう呟いた。
堂林は50歳にして大企業の社長に上り詰めたキレ者中のキレ者。恰幅がよく、眼光鋭い。ニュースで時折見かける彼は画面越しからでも分かるほど、威圧感に満ちている。そんな彼が今、まるで少年のように目を輝かせ語り出した。
何年か前に宇宙旅行に行った社長さんがいたじゃないですか?いいですよね〜アレッッ!!!
宇宙に行ったってさ、正直なんの利益にもならない!!!そりゃ宣伝にはなりますよ!!!ただ、準備やら打ち上げやらにかかった費用を考えると赤字も赤字。大損!!!
でも行ったんですよ、彼は、なぜだと思います?
ロマンだからですよ。
今の時代、男とか女とか言うのはタブーですけど、敢えて言わせて下さい。
男はバカなんです。
男は時に『自分の人生』よりも上に『ロマン』を置いちゃうんです。
で、僕に取ってのロマンってのが、『あの試合』だったんですよ。
そう、東京ドームの地下闘技場!!!あそこで行われた「あの試合』。
どーーーーーーーーッッッしても見たかったんです。
でも、あそこ招待制でしょ?
で、御老公に頼んだんです。どうか、どうか、どうか見させてくださいって…
そしたら、明日までに100億持ってきたら良いよって…
準備したかって…ははは…
うん、大変でしたよ、まずは家財の見積もり、もちろん足りないから土地代、貯金、株…ぜーんぶうっぱらってね…いや、その時ほど独身で良かった…と思ったことはないです。
それでも1億足りないのよ。
で、御老公に1億足りないです…って言ったら、残念じゃったな…って言われて…それで…それで引き下がれなかったんですよね〜…
なら私はどうですか!?って言っちゃってました。
とう、無意識。わははは!!!
私を御老公に売ります。この堂林銀次、1億どころか10億、100億の働きを見せる男ですよッッッ!!!ってね。
それが良かった…御老公笑ってくれてね。
その漢気買った!!!
ってね…
金はいらん!!!当日を楽しみにしておけって!!!
私なんかが言うのも、烏滸がましいんですけど…あの人…いや、御老公は…ほんッッッとうに格闘技がお好きなんですね…
え、なんでそこまでするかって…???る
そこで堂林は自分の興奮を抑えるためか、手元のコップを手に取り、水を氷ごと一気に飲み干した。しかし、それでも興奮は抑えきれず、立ち上がると氷を口から吐き出しながら叫んだ。
だって、『全日本異種格闘技制覇、ボクシングヘビー級統一王者、ブラジルヴァーリトゥード王者、ジエイペックス優勝者、陸奥圓明流の陸奥九十九』と『東京ドーム地下闘技場最年少王者にして、最大トーナメント優勝者、あの範馬勇次郎の息子、範馬刃牙』が試合するんですよ!!!
陸奥九十九と範馬刃牙が試合をするのです。
それは、私にとって全てに優先されることです…