範馬刃牙VS陸奥九十九〜修羅の門と刃牙道と〜   作:中村鹿男

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第二話 どっちのハンマ?

 最強の親子喧嘩から3ヶ月。

 徳川邸の門前で加納秀明は1人の青年を迎え入れた。

 加納は失礼にならないよう、伏目がちに頭を下げ、青年の顔をジロジロと見ようとはしなかった。しかし、好奇心に負け、チラリと見る。

 涼しげな表情、見れば肉体は余すことなく鍛えられている。しかし、無駄な筋肉はない。全て最適化されている。もちろん贅肉などあろうはずもない。

 この男が…

 

 「お待ちしておりました。陸奥九十九様」

 

 「羽生つばさから、ここに来たらハンマと会えると聞いてきた」

 

 九十九は答えた。

 

 

 徳川家十一代目当主、徳川光成。

 世界トップクラスの財力を誇る、日本最後の大物と称される人である。

 

 そんな彼が住む徳川邸はとにかくデカい。

 どこまでも続く塀で囲まれたその内側は、一階建て日本家屋が広がっており、その中庭には池がある。そこで色とりどりの鯉が泳いでいる。あまりにも優雅なその姿は世俗離れしており、まるで天界からの使者のようにすら見える。

 そんな中庭を望む、和室で男が2人向かい合って座布団の上に座っていた。

 

 袴を羽織ったつるりと禿げ上がった頭をした小柄な老人がうっとりとした目つきでお茶をすする。

 向かい合った青年は対照的に涼しげな目線で老人を見るともなく見ている。

 

 老人がゆっくりと茶をおいた。

 

 「同じクラスの好きで好きで好きでたまらない女の子…デートする風景を何度も何度も思い描き、遂には夢にまで出てきてしまう。それなのに、彼女の態度はつれない。だから余計に気になってしまう。もうどうにもたまらなくてたまらなくて仕方ない。そんな時、ようやく彼女が振り向いてくれた。そんな若い頃の記憶を思い出すようじゃよ…陸奥九十九くん」

 

 「噂には聞いてたよ。東京ドームの地下には裏の闘技場があるって」

 

 「範馬じゃな?」

 

 「戦いたい」

 

 「地下闘技場でか?」

 

 「どこでもいい、いつでもいい。今でも…」

 

 その言葉に徳川光成の全身に鳥肌が立つ。

 

 良い…!!!陸奥九十九!!!いい!!!!

 

 しかし、冷静を保つ為、咳払いをひとつしてまた九十九と向きあう。

 

 「九十九くん。運命を信じるかの?」

 

 「運命…?」

 

 「本当は、もっと前、君が全日本異種格闘技選手権で優勝した3年前にはスカウトをしたかった…!九十九くんほどの男が地下闘技場に出てくれたら!!!ワシの地下闘技場戦士達との試合が見れたらッッッ!!!…しかし、龍造寺鉄心がの…」

 

 「龍造寺…鉄心…知ってるのか?」

 

 「君は知らんだろうが、ヤツも昔地下闘技場の戦士だったのよ。良き友人じゃった。ヤツに『自分の存命中は地下闘技場に陸奥九十九を出させないでくれ』と言われておった…」

 

 ピクリと陸奥九十九のまゆが動く。

 

 「どうして…?」

 

 「さぁ、ワシも知らん。地下闘技場は強者の伏魔殿。常に命を賭けた試合になることは必至じゃて。君の身を案じてのことだったんじゃろ」

 

 徳川は全日本異種格闘技選手権の決勝戦、そしてTHEApexでの九十九の試合を思い出した。陸奥九十九は強い。しかし、どこか危うい。自分が絶対に有利な状況でも相手の100パーセントを引き出した上で勝とうとする。故に試合で下手をすれば命すら危うい大怪我を負うことも珍しくない。強者中の強者が集う地下闘技場に出場するとなると、毎試合、あのような大怪我を負うことになるだろう。そうなれば、勝ったとて身体が壊れるのは必至である。龍造寺鉄心の言葉は九十九を慮っての言葉だったと徳川は推測していた。

 

 「そんな龍造寺鉄心は3ヶ月前に死去。彼が亡くなった直後、範馬親子の親子喧嘩。そして今君がワシの目の前にいる…これを運命と言わずなんという!?龍造寺との約束が無効になった瞬間、繋がるはずがなかった違う世界のAとBが急接近!!!世界が最強を決めよ!!!と言っとる!!!!」

 

 徳川は興奮のあまり立ち上がって鼻息荒く叫んでいた。

 

 「それで、俺はハンマと戦えるのか?」

 

 「もちろんじゃ!!!もちろん!!ところで、九十九君…あの親子の苗字ではなく名前は知っとるかの??」

 

  「知らない。ただ、ハンマとだけ聞いている…」

 

 にんまーーーりと徳川は笑って立ち上がると、すーっと歩いて自分の奥の襖に手をかけてパーンと開けた。

 

 そこには、範馬勇次郎と範馬刃牙が向かい合って座っていた。2人の視線を浴びる陸奥九十九。

 

 「で、君が戦いたいのはどっちのハンマ♡♡??」

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