今日も今日とてグラスを磨きつつお客様を待つ。
看板を出したし、新規のお客様来ないかな? なんて思っているが、出したばかりだし高望みというものか。しかしいい加減、店の中で銃をカチャカチャ弄っている圧のある人と、その同僚のムキムキっぽい兵士さんばかりだと、店の雰囲気が喫茶店というよりかは「ヤバいバー」みたいになっている。なんとかしたい。
いや、常連さんはありがたいのだ。最近はうちで軽い打ち上げとかもしてくれるし、「警邏隊だとこういうお店は入りづらいから、何も言わないでお手軽料金でたむろ出来る場所は助かる」と言ってくれる。そういう長居する客層を狙っているからいいのだが、殺伐としすぎるのはちょっと困る。
そんな事を考えていたら、お客さんがやってきた。
「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」
「あのぉ、ここって本当に銅貨3枚で飲み物飲めるんすか?」
入ってきたのは、近くの魔法学校の制服を着た、小学5年生くらいの少年少女のペアだった。
男の子の方は、女の子に良い所を見せたい「ええかっこしい」なのだろう。度胸試し的に「俺は度胸があるんだぜ」と見せるために入ってきた感じだ。口調も「〜だぜ!」みたいな喋り方。対する女の子の方は、幼馴染だろうか。「ちょっと高そうだしヤバそうだよぉ」と怖がりな感じで、彼に従って入ってきたようだ。
「ええ、銅貨3枚で席料も取ってませんよ。ささ、どうぞ。テーブルの方が宜しいですか?」
「どういうお店かわからないので、出来れば色々教えてほしいです!」
「ではカウンターでお話しながら注文を決めましょうか。こちらへどうぞ」
席についた二人にメニューを渡す。種類がありすぎて何を頼んでいいかわからないようだ。苦い、甘い、酸っぱい。大雑把な味の所感を教えていく。最初は「苦いコーヒー」を大人の味として注文しようとしていたが、流石に上級者向けがすぎる。ブラックコーヒーは眠気覚ましや頭の回転を上げるために飲む「薬」のような物だから、と他の物をお勧めした。これで正解だろう。
男の子は甘酸っぱいレモネードを、女の子はラテを注文した。
珍しく来た新規客に、鼻歌を歌いながらラテアートを施す。独学で勉強したが、ついぞ「葉っぱ」くらいしか描けなかった。不器用ってやつだ。レモネードにはコップの縁にカットレモンを刺して、はちみつとレモン汁たっぷり。大容量のコップで提供する。
「お待たせしました。こちらドリンクとおまけのカットケーキです」
ホール単位で作ったケーキをおまけに添える。廃棄するのも勿体無いし、次回の注文に繋がると信じて、新規客には大体つけている。
このケーキ、実は安上がりだ。ラテを作るのに牛乳がいるため毎日買っているが、少し鮮度が落ち始めたやつを煮沸ギリギリで煮て、カッテージチーズにしている。土台は、安い保存食の乾パンを粉々に砕いて敷いただけ。使い回しが安さの秘訣だ。
「甘い!」「美味しい!」と目をキラキラさせながら飲食する二人。こういうのでいいんだよ、こういうので。
本当に銅貨3枚!?としつこく確認されるが、銅貨3枚だ。
「まぁ普段はケーキ別売りで銅貨3枚だから、トータル6枚だよ。今日はサービスだけど。」
提供するのはチーズケーキ、牛乳を火に掛けてレモン汁を入れると固まってチーズになるというお手軽チーズがあるんだがこれを利用している。
ラテ用に毎日購入している牛乳も時間がたつと悪くなってしまうが、その悪くなり始めた牛乳を煮て煮沸し、レモン汁を入れてチーズにして、そこからチーズケーキにしてしまうので安くできるわけだ。
保存食のクソ安い乾パンをハンマーで砕いて底に敷き、その上にチーズで作ったクリームを乗せる、お手軽に廃棄品でケーキが出来あがり。
こちとら600円でちょっと豪華な休憩タイム、ってのが売りなんだ。本当は500円みたいなラインでやりたかったけど、中々こっちの世界だと甘味をお安くするのは難しい、砂糖が高い、だからこの値段で全部売れたとしても儲けはあんまり出ないのだ。高くても許せ、まぁ、ガキには甘い物付けときゃ喜ぶねん。おいちゃん知っとるで
心の中でそう呟きながら、満足して帰っていく二人を見送った。