超かぐや姫! ヤチヨのかくれんぼ   作:夜叉竜

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 結構筆が進んでいます。こんなに筆が好調なの本当に久しぶり………

 まさか赤評価いくとは……本当に人気なんですね……

 ではどうぞ!


第3話 貴女はかぐや姫?

 「正直に言うとな、この三日間内心戦々恐々してたんだわ。酒寄さんが半日で一回り大きくなったって言ってたから、もしもそれが本当だったらこの三日で幼稚園児まで行くんじゃないかと。でも三日間でそんな急激な成長はなかっただろ?だから、あっ、気のせいだったんだなって。ゲーミング電柱から生まれた以外は普通の赤ちゃんだったんだなって。それが………まさか幼稚園どころか小学生の大部分をすっ飛ばすなんて誰が予想できるか………!」

 「はい、完璧に予想外です……あまりにも唐突すぎますよね……せめて予兆ぐらいは見せてほしかった……!」

 

 深夜の彩葉の部屋にて、ちゃぶ台で頭を抱える燐祢と彩葉の前では件の少女がうまうま!と猛烈な勢いでコンビニのオムライスにがっついていた。

 あの後、情報の処理が限界を迎え、呆然としていた燐祢を正気に戻したのは彩葉と目の前の少女の空腹の音だった。少女はお腹が空いて彩葉を起こし、彩葉も燐祢と一緒に夕飯を食べたが、起きた時にはすっかり空腹だったらしい。

 とりあえず飯にしようと燐祢はコンビニまで行って少女の分のオムライスと彩葉の分のチャーハン、そして自分の分のカップ麺を買ってきたのだ。流石にこの時間に夜食を作る材料はなかった。

 

 「あの、陸堂さん。明日の警察……」

 「無理無理。考えた言い訳は全部お釈迦になったし、それ以前にどう考えても警察の手に負える事態じゃない……碌でもないことになる未来しか見えん……!」

 

 ですよねぇ、と彩葉ががっくりと肩を落としていると、

 

 「ねぇねぇ燐祢!オムライスお替り!」

 

 そんな二人の心境なんて知らないと言わんばかりにオムライスを完食した少女が満面の笑みで燐祢にお代わりを要求してくる。

 

 「オムライスはないけど、代わりにハンバーグ弁当があるからこれで我慢な」

 

 燐祢はコンビニ袋からハンバーグ弁当を取り出し、ふたを開けて少女に差し出す。少女はすぐさまハンバーグを一口で平らげ、

 

 「このオムライスもおいしい!」

 「それはオムライスじゃなくてハンバーグな」

 「ハンバーグ美味しい!」

 

 目に星をちりばめながらハンバーグ弁当を次々と口に運ぶ少女を見て、燐祢は小さく苦笑を浮かべる。こうも無邪気な笑みを浮かべられたらもはや文句を言う気にもならない。

 

 「それって、燐祢さんの分じゃ……」

 「いや、俺の分は最初からこのカップ麺だけだ。こいつはまぁ……この子の朝食のつもりで買ってきたんだが……」

 「そんな……すいません。本当に……」

 「謝る必要なんてない。深夜に食べるカップ麺こそ至高の贅沢だ。つまり、俺はこの中で一番高いものを食べていると言っても過言ではない」

 

 少し得意げな顔をする燐祢になんですかそれ、と彩葉は呆れた顔をしてからタブレットを操作する。

 

 『年の差があると周りにいろいろ言われたり、遠慮しちゃったりってあるよね~。ヤチヨ的にはそういう年の差のある友達みたいなの大好物なんだ~☆』

 「ああ、ヤチヨの配信やってんのか」

 

 配信に耳を傾けながらずるずるとカップ麺を啜る燐祢を後目に彩葉は少女に問いかける。

 

 「あなた、どこか来たの?」

 「んっ」

 

 その問いに少女はあそこに決まってるでしょ、と言わんばかりに窓の外に見える満月を指さす。

 

 「月………まさか、あの月か?人間じゃないとは思ってたが……」

 「で?宇宙人は何しに来たの?侵略?」

 「う~~~ん、何かあんまりよく覚えてないんだけど~~、とにかく毎日超つまんなくて~~~。楽しいところに逃げた~~いって思った気がする」

 「なんで自分の家は覚えてて家を飛び出した理由は曖昧なんだよ……」

 

 頭痛を覚えたように燐祢は目頭を揉む。

 

 「逃げんな~~」

 「え~~~、なんで~~~」

 「逃げるのは簡単だけど、そのあとの再スタートって大変だよ?覚悟あんの?」

 「覚悟~~~?やりたくなかったらやんない、やりたかったらやる!」

 

 はっきりと言い切る少女に彩葉が顔をしかめていると、

 

 「ま、だからと言って立ち止まらないのもダメだと思うけど。逃げるとはいかなくても、たまには立ち止まって休んだり、自分の道を見つめなおすのも進むには必要だとは思うけどさ」

 「さっすが燐祢、話が分かるね!」

 「いや、別にそっちの味方をしたわけじゃ……」

 「それより、ちなみにだけどさ、これに心当たりは?」

 

 話をそらすように素早くタブレットを操作し、彩葉が少女に見せたのは竹取物語の絵本だ。

 

 「なにこれ?」

 「竹取物語。月からやってきた姫が竹の中から出てきて、翁が拾って育てて、結婚迫られたりとか色々とあって……まぁ、ごちゃごちゃありますって感じのお話」

 

 カップ麺を口に運びながら燐祢はなるほど、と頷く。

 

 「竹取物語か……確かに似通ってるところはかなりあるが………それでもこれは創作物だろ?」

 「でも無関係とも思えないんですよねぇ」

 「けっこん?たけー?」

 「まぁ、アンタが出てきたのは竹じゃなくて電柱だったけどね………あんた、かぐや姫なの?」

 「さぁ?でも、そうなるとこの翁は彩葉?」

 「八十年後未来でも見えちゃってるのかなぁ~~?」

 「落ち着け酒寄さん。そもそも性別が違ってる事にツッコんでくれ」

 

 どうどう、と燐祢になだめられた彩葉は八つ当たりのようにチャーハンを口に掻き込む。

 

 「で、お話はどうなるの?」

 「ああ、その後かぐや姫のところに月からのお迎えが来て、帝っていう偉い人と翁達が引き渡すまいと戦うんだが敵わず、姫は羽衣着せられて、地球でのことは忘れて月に帰る。で、終わりだな」

 「おー……で、続きは?」

 「ない。終わり。めでたしめでたし」

 

 チャーハンを食べ終わった彩葉が告げると、少女はぽかんと口を半開きにして慌ててタブレットを操作してページを送ろうとするが、最後のページから先は何もなかった。

 

 「え、月に帰って終わり?なにそれ、なにがめでたいの?超バッドエンド!かぐや姫絶対不幸じゃん!しかも何かいい話風になってるのが余計許せないよ!」

 

 展開が気に食わないのか騒ぎ出す少女を呆れたように彩葉が眺めていると、

 

 「まぁ、続きがないことはないんだけどな……」

 

 カップ麵を食べ終えた燐祢が頬杖を突きながらそんな事を呟く。

 

 「え、そうでしたっけ?」

 「ほら!そうだよね!こんなバッドエンド許されるわけないよね!それで燐祢、続きはどうなるの!?」

 

 早く聞きたいと言わんばかりに詰め寄ってくる少女にたじろぎながら燐祢は口を開く。

 

 「あ、ああ……かぐや姫は月に帰る前に帝に特別な薬をあげるんだ。まぁ、効果は置いといて、帝はその薬を使わず、富士山っていう高い山の頂上に薬を捨てた」

 「…………え、続きは?」

 「いや、今度こそ終わりだ。これで完全に終わり」

 「何それ!?完全に蛇足じゃん!むしろバッドエンド感をさらに強めてない!?」

 「だから一般には伝わってないんじゃないか?」

 「バッドエンドやぁーだぁー!」

 

 少女はじたばたと駄々をこねだす。

 

 「ハッピーなのがいーいー!」

 「ああ、ちょっと落ち着いて……」

 「バッドエンド、や~~~だ~~~~~♪はっぴなのが、い~~~い~~~~♪」

 

 急に歌いだした少女に燐祢が呆然としていると、流しで皿を洗っていた彩葉がため息交じりに振り返り、

 

 「どうしようもないじゃん。暴れたって、歌ったって決まってることが変わるわけじゃないし。受け入れて、覚悟するしか、ない」

 

 そう言い切る彩葉を、少女はじっと見つめる。黙り込み、固まったように動きを止めて見つめ続ける。

 

 「ま、そう悲観するな、酒寄さん」

 

 数秒後、カップ麺の容器を手に燐祢が立ち上がる。

 

 「人間なんざ、明日どころか一時間先の未来すら見通せてないんだ。酒寄さんだって、まだまだどうなるか分からない。自分が望む未来をつかみ取るために足掻くのも暴れるのも泣くのも無駄じゃないと思うぞ。むしろそれすらも楽しんじまえ。人生楽しんだもん勝ちだ」

 「何言ってるんですか貴方は………」

 

 ケラケラと笑いながら燐祢がスープを捨てていると、

 

 「よし、決めた!」

 

 少女は勢いよく立ち上がって決然と言い放つ」

 

 「自分でハッピーエンドにする!そんで、ハッピーエンドに彩葉と燐祢も連れてく。一緒に!」

 「……ハッピーエンドいらない。ふつーのエンドで結構です」

 「うそうそうそ!なわけないでしょう!」

 「また擦れちまって……ま、俺もバッドよりかはハッピーの方がいいけど。それで、えっと………そういえば君、名前は?」

 

 ここで彩葉と燐祢は目の前の少女に名前があるのかという素朴な疑問を抱いた。と言っても、ここまでペラペラしゃべれるし、何よりも月から来たと言っているのだ。名前はある「名前?名前は、えーーーとっ………」と思っていたのだが、思案するように頬に指をあてる少女に燐祢はえっ、と目を点にする。

 

 「まさか、名前ないのか?」

 「もしくは思い出せないでは?」

 「家は覚えてるのに?」

 「でも飛び出した理由曖昧ですし……」

 「そういうもんか……?しかしそうなると、流石にちょっと不便だな………」

 「え、名前つけるんですか!?」

 「流石にお前とかじゃ可哀想だろ。一応……………生後三日だし」

 

 微妙な顔をするぐらいなら言わなくていいんじゃ、と思いながら彩葉は顔をしかめ、

 

 「じゃぁ、かぐやでいいんじゃないですか?」

 「かぐやか……そのまんまな感じもするが、しっくりくるし、それでいいか」

 

 燐祢がそれで決定、と言わんばかりに頷くと、

 

 「かぐや?かぐや……かぐや……そっかぁ、かぐやかぁ~!」

 

 存外嬉しそうにはしゃぐかぐやを見て、やれやれ、と言わんばかりに燐祢は苦笑を浮かべ、彩葉ははぁ、と疲れたように溜息を吐いた。




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