超かぐや姫! ヤチヨのかくれんぼ   作:夜叉竜

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 ここまで来て、いまだ登場人物が主人公と彩葉とかぐやとヤチヨだけなことに今更気づき、戦慄しました。


第7話 ライバーかぐや、爆誕

 「燐祢おかえり!ねぇねぇ聞いて燐祢!彩葉がひどいの!遊んでくれないの!」

 

 ヤチヨカップ開催の次の日。美大から帰ってきた燐祢を彩葉の部屋から飛び出してきたかぐやが勢いよく出迎える。

 

 「おぉ、ただいまかぐやちゃん……で、いきなりどうした?」

 

 主語も何もない難解な訴えに燐祢は首を傾げると、かぐやは来て!と彩葉の部屋に引きずり込む。

 

 「ちょっとかぐや!また燐祢さんに……!」

 「まぁまぁ、大丈夫だから。それで、何があったんだ?」

 「ああ、これですよこれ。これを見たかぐやが私と遊んでって……」

 

 そう言って彩葉が指さしたのは壁に貼り付けられた予定表だった。

 

 「夏休み……ああ、酒寄さんはいよいよ夏休みか」

 

 一瞬女子高生の予定を見て大丈夫なのだろうかと思ったが、立てた本人が気にしてないならいいか?と燐祢は予定表に目を通し、えぇ、と引きつった声を漏らす。

 

 「なんだよこの予定……ほとんど勉強とアルバイトで埋め尽くされてるぞ……」

 「こうでもしないと勉強は追いつけないですし、生活費も稼がないと……」

 「それにしたってだなぁ……花の女子高生がこれでいいのか?こんなの青春じゃないよ。黒春だよ。ペンと汗で真っ黒になっちゃってるよ。ちょっとは遊ばないと……」

 「もちろん遊びますよ。ほらここ。芦花と真実と一緒に海に行きますよ」

 「いやまぁ……それは良いんだけどなぁ……にしたって詰め込みすぎだろ……いくら東大を目指しているからってなぁ……」

 「それが目標……ですから」

 

 そういう彩葉を横目で見て、燐祢ははぁ、とため息をつきながらかぐやに目を向け、

 

 「すまんがかぐやちゃん。ちょいと酒寄さんのこと気にかけてやってくれ。何かあったら俺に連絡してな」

 「ちょ、なんで私が面倒みられる側何ですか!?」

 「また倒れる未来しか見えないからだよ!念のために諌山さんと綾紬さんにも気にかけるよう言っておかないと……」

 

 ったく、と頭を掻く燐祢と彩葉が不服そうに睨んでいると、くいくいと袖が引っ張られる。目を向ければかぐやがきょとんとした表情を浮かべ、

 

 「ねぇ、彩葉。東大ってなに?」

 「え、えぇっと、それは………大学って言う、燐祢さんが通ってる学校の中でもトップレベルの場所で……」

 「え、それって……彩葉は燐祢と同じ学校に通いたいってこと?」

 「ちょっ!?、何を言って「それはちょいと違うな、かぐやちゃん」燐祢さん……」

 「俺が通っているのは美術大学の一つでな、そこでは主に美術……つまり絵とかそういうものを中心に学ぶんだ。酒寄さんが目指している東大とは全く違う場所だ。ちなみに東大って言うのはまぁ、簡単に言えば、この国で一番頭のいい人が集まる大学だな。俺が通っているところとは学ぶ内容が全く違うんだよ」

 

 燐祢の説明にかぐやはほへ~、と声をあげる。

 

 「そんなところを目指すなんて、すごいね、彩葉!」

 「あ、う、うん……まぁね……」

 

 キラキラとした目を向けてくるかぐやに彩葉は小さく頬をぴくつかせる。はぁ、と燐祢はため息を吐き、

 

 「だからって無理だけはするなよ。本当に……で、さっきから気になってたんだが……この部屋の惨状はなんなんだ?」

 

 そう言って燐祢は彩葉の部屋を見渡す。彼女の部屋はたった一日で様変わりしていた。昨日まではなかったはずの変なキャラクターのぬいぐるみによく分からないおもちゃにどこから調達したのか分からないトーテムポール、そのほかよく分からないものが部屋の大部分を占領していた。

 

 「配信用の小道具たち!」

 「配信用って……もしかしてヤチヨカップか?」

 「あ、燐祢も知ってたんだ!そうだよ!私ヤチヨカップに出て優勝する!そしてヤチヨとコラボライブをするんだ!」

 「じっとしていられないとは思っていたがフットワーク軽いなぁ……」

 

 どこか感心したように呟く燐祢にへへ、とかぐやは笑みを浮かべたが、直後にはっとすると、

 

 「あ、そうだ。彩葉!これ、ここにある物のレシート!全部百均だけど後でちゃんと返すから!」

 「お、おぉ?」

 

 差し出されたレシートを受け取りながら彩葉は目を丸くし、燐祢もきょとんとした表情を浮かべる。

 

 「えっと……昨日燐祢に怒られたから……それで、彩葉と燐祢のやり取りを真似てみたんだけど………やっぱり駄目だった?」

 

 不安げな表情を浮かべるかぐやに彩葉は少し困ったような表情を浮かべ、

 

 「まぁ、私としてはちゃんとお金を払ってくれるならまぁ、別に……って、これ、燐祢さん提案じゃないんですか?」

 「ああ。俺は何も言ってない……うん、一度相談はしてほしかったが、そういう考えは大事だぞ」

 

 燐祢が頭を撫でてやるとかぐやは嬉しそうに目を細める。

 

 「えへへ~~。そうだ!もう配信も始めたんだよ!二人とも見てみて!」

 

 自信満々にかぐやが見せてきたPC画面には手作りらしきかぐやのイラストがぎこちなく手を振り、

 

 『かぐやっほー!月からやってきた、かぐやだよー。今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃぁねー………ん?これで切れてるのかな?』

 

 後半は実写画像に切り替わる。

 

 「おいおいおいおい、最後インカメになってんじゃん!顔映ってるって!」

 「ちょ、ちょっと待て!何か所在が分かるような情報は映ってないよな!?」

 

 彩葉と燐祢は慌てて動画を見ていくが、次第に顔をしかめていき、

 

 「とりあえず……このなんか、嫌な音はどうにかできないのか……」

 「かぐや、この不協和音は一体何……?」

 「ジングルだよ」

 「ジングル………ジングルベル?」

 「違います、陸堂さん。ここでいうジングルって言うのは軽やかなメロディでリスナーの印象に残ることを目的とした音楽の形態です」

 「そうなんか……まぁ、ある意味印象には残ってるな。脳にこびりついて離れそうにない」

 「力ずくで離してください……これ、どうしたの?」

 「自分で作ったの」

 

 これで、とかぐやは引っ張り出してきたのは古いキーボードだ。

 

 「あ、私のキーボード!勝手に使わないでよ!」

 「あ、その感じ、彩葉もしや弾けるね?全然うまくいかなくてさ、いっちょお願いしますよ先生!」

 「いっちょお願いって……酒寄さん、弾けるのか?」

 

 かぐやがさっさとガラクタをかたずけていくのを眺めながら燐祢は問いかける。

 

 「まぁ、少しはですけど……って、なんで私がそんな事」

 「お願~~~い☆」

 

 自分の可愛さを分かっているような甘え方に彩葉はもう、頭を掻き、

 

 「そもそもまずコードってのがあって……」

 

 そう言いながら彩葉鍵盤に手を触れ、直後にその状態で動きを止めてしまう。

 

 「酒寄さん?」

 

 燐祢が訝し気に名前を呼んだ瞬間、彩葉はっとすると、わくわくした表情のかぐやを見た後、そっと鍵盤に触れ、

 音が躍る。

 

 「わぁ……」

 「ほぉ……」

 

 かぐやと燐祢は感嘆の声を漏らす。

 彩葉の指は鍵盤の上を駆け回り、軽やかに音楽が溢れていく。その音色に二人は一瞬で虜になってしまう。

 

 「………こ、こういうのは?」

 

 聞き惚れている間に弾き終わったのか彩葉がどこか不安げに聞いてくると、かぐやは大きく身を乗り出し、

 

 「彩葉すごい!すごすぎる!天才だよ!」

 「こいつは驚いたな.......すごくいい曲だったよ」

 「いえ、あの.........中途半端なだけですよ。私なんて全然.......」

 「いやいや大したもんだよ」

 

 感心したように頷く燐祢に彩葉が満更でもなさそうにほおを緩ませていると、かぐやは興奮したように手を叩いて飛び回り、綺麗にターンを決めてから彩葉と向き合って、

 

 「彩葉、プロデューサーになって!」

 「は?プロデューサー?なんで?」

 「だってだって!今、ヤチヨカップで暫定一位の黒鬼って三人組なんだよ、ズルくない?かぐやなんて一人で頑張って八千位なのに」

 

 ヤチヨカップの現在の暫定順位を見て、燐祢はやっぱりか、と内心納得したように頷く。そしてかぐやの順位は8910位。ほぼドベだ。

 

 「だからさ、一緒にやろ?彩葉の曲を私が歌えば大バズ確定じゃん!このボロアパートから伝説が始まる!」

 「いやいや、そんなのカバーでいいじゃん……」

 「オリジナルがい~い~!ね、燐祢もそう思うでしょ!?」

 

 かぐやがパッと燐祢に同意を求めると、燐祢は難しげな表情を浮かべる。

 

 「いや、かぐやちゃん。確かに酒寄さんの音楽はすごくいいと思う。でも、経験はないが、曲を作るってのはすごく大変なもののはずだ。ただでさえ酒寄さんは無理をしている。今の状況で一から作曲って言うのは流石に……」

 「え~~~!?」

 「陸堂さんの言う通りよ。作曲何て時間な……」

 

 そこで不意に彩葉は思案するように言葉を区切ると、おもむろに自身のノートパソコンを持ってきて、

 

 「そういえば、これ………」

 

 彩葉は作曲したものを収めたファイルを開いて見せる。

 

 「あるじゃ~~~ん!」

 「なんだこれ?」

 「大昔、少し作曲してみたやつです。もうほとんど黒歴史ですけど………」

 

 聞きたい聞きたいとせがむかぐやに彩葉はワイヤレスイヤフォンを差し出し、ファイルを開く。

 

 「おぉ……お~~~~!やばすぎぃ!」

 「はいはい……とりあえず、歌ってみたら?」

 

 彩葉に促されると、かぐやはリズムをとる様に体を揺らし始め、静かに歌い始める。それだけのはずなのに、その横顔はすごく楽しそうで、思わず燐祢の頬は緩んでしまう。彩葉もそう思っているのか、その横顔を見つめ続けている。

 たった二人のコンサートを終えたかぐやは小さく頷くと、

 

 「………うん、彩葉!やっぱりプロデューサーになって!彩葉となら絶対にヤチヨカップ優勝できるよ!」

 「いや、だから……アレンジできるとしても時間が………」

 

 彩葉が渋るように顔をしかめると、かぐやは涙を浮かべながら両手を握りながら上目遣いで微かに首を傾げ、

 

 「お願い彩葉。このまま終わりたくない……ハッピーエンドにしたい……な?」

 

 渾身のおねだりを繰り出す。そのうるんだ眼差しに射抜かれた彩葉はうぐっ、と顔を歪め、葛藤するように表情を目まぐるしく変えていき、

 

 「まぁ、ちょっとだけなら……いいけど……」

 

 本当!?と歓声を上げるかぐやにはぁ、とため息をつく彩葉の顔を燐祢が覗き込んできて、

 

 「大丈夫なのか?酒寄さん。ただでさえパンパン状態なのに……」

 「まぁ、昔作った曲をアレンジするだけならそこまで負担にはなりませんし……私も楽しかったですから、いい息抜きになると思いますし」

 「…………まぁ、確かにさっきの酒寄さん、いい顔をしていたが………」

 

 年上の友人を安心させるように彩葉が笑みを浮かべると、燐祢は難しい顔で腕を組む。

 

 「大丈夫ですって。絶対に無理はしませんから」

 「お願い燐祢!そうだ!だったら燐祢も一緒にライバーやろうよ!3人でさ!」

 「あ、いや、それは………ちょっとマジでやめておいた方がいい。もしも優勝を狙うなら絶対に俺は参加させない方がいいって」

 「でも、燐祢さんも多少はゲームの配信やってますよね?だったら……」

 「それは俺だけ(・・)だからいいんだよ。男が参加するだけでもあれだが、俺がチームに所属するのは不味いんだ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 どういう事だろうか、と彩葉とかぐやが首を傾げていると、燐祢ははぁ、とため息をつきながら頭を掻き、

 

 「悪いけどライバーとしては参加できない。でも、それ以外でだったら色々サポートするよ。何かあったら相談しに来な」

 「むぅ……一緒にやりたいのに~~~!」

 

 ぶ~~、と唇を尖らせるかぐやに燐祢はごめんな、と手を合わせていると、おずおずと彩葉が口を開く。

 

 「あの………いいんですか?大学の方は………」

 「ある程度単位には余裕があるから、ひと月なら大丈夫。と言っても、普通に大学には行くからその時は勘弁してくれな」 

 「あ、それはもちろん………本当、ご迷惑を「こういう時はありがとうって言うんだ。謝られるよりもずっと嬉しいもんだ」………はい、ありがとうございます」

 

少しためらいがちに告げられた感謝に、燐祢はまだ固いなぁ、と苦笑を浮かべた。




 燐祢と他の人物たちとの関係はまた追々。

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