どうせなら、キャンバスは白いほうがいい   作:中山の補題

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働くって大変。
やっと6月表が終わります。戦闘シーンなんてかけないくせにKASSENを書きたがる馬鹿がここに。けど思うんですけど、原作でのKASSEN影薄くないですか。まぁそうゆう内容の作品ではないのわかってるんですけど。だからこそ二次創作で書きたくなったみたいな。
今回も読んでくれてありがとうございます。


6月 ウキウキ?な日々 表③

11話 ウキウキ?な日々

 

「大丈夫か清水!?」

 

桃から出れずに自由落下するしかなかった情けない僕を鈴村君が気遣ってくれている。大丈夫だけど、大丈夫ではない。これってもしかして相手の方にも見られちゃってる感じなんだろうか。いや対岸の天守閣はすごい距離があるしみられているわk……

 

『ふふふっ……し、しみず、……だ、だいじょうぶふぅぅ!!』

 

めっちゃ笑てます、酒寄さん。見れるのかよ、こんな離れているのに。この時点で僕のMPは0になった。マジックポイントじゃなくてメンタルポイントの方だけど。

 

「シャキッとせんかい。今回の主役がそんなんじゃあ、かっこつかないやろ。

 とりあえず作戦をいうさかい、ちゃんと聞いとけよ」

 

「ねぇ、M4ken。こんなこと言ったらあれなのはわかるんだけど……、

 二人がいて僕いる? 正直僕の出番の前に二人が全部やっちゃいそうだと思うんだけど」

 

「ああ、清水はカワのKASSENのこと知らんもんな。俺たちTeam Absolute coreは確かに最高ランクに位置するチームではあるんだけど、その中でもカワは特別。こいつは別にファイトは強くなくて、作戦立案とゲーム中のコールだけでそこにいるから。正直、今回の相手3人の誰にもカワはタイマン勝てないぞ」

 

「そういう事や。俺は極端にVR適性が低くてな。努力してもそこそこのプレイヤーが限度や」

 

「な、なるほど。とは言ってもFreeStyleがいれば関係ないんじゃあ……?」

 

「あ、今回俺いつものビルドじゃないから。タンク寄りビルドにしたから火力でないわ。火力は頼むぞ清水。…いつもならウルト使えばファイタービルド並みに火力出るけど、スズの指示で今回サポートよりのウルトだからな」

 

こ、この人達、本当に僕をこの試合で主役にしようとしている。この試合で僕はレベル5から一気に10くらいまで上がっちゃうんじゃなかろうか。これぞパワーレベリングというやつか。

 

「話戻すぞ。作戦は簡単。

 清水行ってこ~い作戦や。細かいデティールは俺たち二人に任せて一人でトップレーン行って来い。そして相手が何人いようと引かずに戦ってこい。勝てとは言わん、精一杯やってこいや」

 

「………もうそれ作戦じゃないでしょ。わかったよ、ウジール君も助けながらどうにかやってみる。すぐやられても文句はなしで頼むよ?」

 

「男に二言はない、…そろそろ始まるで。

おいスズ、ボットレーンに行く。ついてこい」

 

「へいへい。王様の言う通りに」

 

法螺貝の音が聞こえる。その瞬間僕たち3人は戦場へと飛び出していった。

 

 

 

 

 

Side 河木

 

「なぁ、スズ。なんで清水一人をトップレーンに行かせたんだ?

 俺は今回タンクビルドだし、1対2くらいなら余裕で耐えれる。

 お前が清水と一緒にトップに行って指示してやれば清水も勝率かなり上がるだろ」

 

「簡単な事や。あいつを単騎で動かす作戦の方が勝率は高いから。

 始めたばっかの清水に俺の指示で連携を合わせろなんて土台無理な話や。

 それならあのイカレ性能を一人で発揮してもらった方が強いし、あいつの経験にもなるやろ。今回の目的はあいつのKASSENの腕前を上げることやからな」

 

 

「ほえ~、よく考えてるねぇ。

 …そろそろ接敵するぞ。相手はROKAとまみまみの二人か。

おい、清水のとこにやばい人いっちゃったのかよ、ホントに1分持たないんじゃないか。

酒寄さんの相手は俺でもきついぞ。安定させるなら絶対カズを当てるぐらいには」

 

「予想通りや。酒寄さんほどのゲーマーなら必ず清水の所にいきたなるやろ」

 

「たしかにゲーマーならあの激やばアイテムが気になって対面したくなるだろうが……。

でもお前それ答えになってないぞ。マジで清水がサシで酒寄さんに勝てると思ってるのか? まぁ、お前が言うなら異論ないけども。

……お、到着。よし、いっちょやりますか」

 

接敵地点に到着した。俺の予想が正しければあと十秒ほどであちらさん方も到着するだろう。その前にスズには言っておかないといけないことがある。

 

「おい、スズ。おそらくもうウルトはたまってると思うけどな。

 清水が死にそうになっても、俺の指示があるまで使うんじゃないで。今回の試合、勝とうと思ったらそのウルトの価値バカ重いからな。考えなしに使うなよ」

 

わかってんのか、コイツ。露骨に目をそらすやんけ。まぁやらかしそうになった時の対処法はもう考えてある。その時はそうすればいい。

…きたか。

 

「スズ、頼むで」

 

「ハイハイ。ふっ!!」

 

飛んできたロケット花火型クナイをスズに迎撃させる。いきなり30発くらいぶち込んできよった。あの読モみたいな美人さん、なかなか攻撃的な性格か? やはりきれいな花には棘があるというのは嘘ではない。

 

「おー、あれだけ投げたのに無傷ですか。

 さっすがこの前のツクヨミチャレンジカップの優勝者って感じ?」

 

「流石ですな~。

 これは彩葉の言った通り手ごわいかも~」

 

お二人とも中遠距離が強い武器構成。完全に時間稼ぎ、ヘイト稼ぎのつもりだな。今回タンクよりにしているスズのレンジではなかなか骨が折れるだろう。都合がいい。トップレーンの戦いには介入するつもりがないといっているようなものだ。これは清水に期待しがいがある状況になってくれた。

 

 

 

 

Side 清水

 

一人トップレーンを進む僕は、とりあえずミニオンを倒しながら槍の中にいるウジール君と会話していた。

 

「ねぇウルト溜めるのはいいんだけどさ、肝心のウルトの内容を全く知らないんだけど。

 ちゃんと強い効果なんだよね? 

実はあまり強くないから黙っていたとか、そういうのはやめてくれよ」

 

『心配するなマスター。ウルトの性能は十分に素晴らしいものになっている。

 ただ…」

 

この流れさっきもあったような気がする。大体予想はついてきたが、彼の次の言葉を待つ。

 

『そのウルトの性能はマスター次第で大きく変わる』

 

またかよ。それ言われるのはもう3回目なのだが。もうちょっとプレイスキル関係なく、強いものが欲しかった。砂塵兵を動かすのにさえかなり頭が痛くなるのに、ウルトなんて使った日には僕の脳みそは爆発しそうだ。

 

「………じゃあその、僕次第で性能が大きく変わっちゃう性能の内容を教えてよ」

 

『なんか言葉から棘を感じるぞ、マスター?こちらへ飛んでくる

 内容自体はいたってシンプルだ。しょうかn…!?

 NE方向から投擲物、敵だ! 迎撃しろマスター」

 

ウジール君の声を認識してから反射的に僕は1体の砂塵兵を召喚しこちらへ飛んでくる馬鹿でかいブーメランを弾かせようとする。ブーメランと砂塵兵が衝突した瞬間。兵士が後ろへおもっいっきり吹っ飛んだ。

 

「へ? d、どういう事? ねぇウジール君、兵士って実は体重軽いの?」

 

『2メートルを超える巨体を持ち、それらは全部砂でできているんだぞマスター?

 軽いと思うか?』

 

知ってるよ!! 理解しているからこそ、目の前で起きたことが認められないのだ。

この攻撃を仕掛けてきた人はめちゃくちゃブーメランを投げるのがうまいか、あほみたいに力が強いかのどちらかだろう。僕の予想は後者だ。

心の中で思いの丈をぶちまけている僕をよそに、襲撃者が姿を現す。

 

「へぇ……

 そういう能力なんだ。正に説明通りだったってわけね。

けど、明らかに普通の人形師とは違う。召喚してから動作に移るまでのタイムラグが短いし、そもそも普通の人形なら受けた瞬間大破してる。けどまだまだ元気みたいだし、耐久力も桁違いだね」

 

すごい。登場してから圧倒的強者ムーブをかまし続けている酒寄さんの姿にそう思うしかない。この数秒間で起きた一連の流れで能力の分析までされてしまっている。目の前のことを分析し理解しようとしている、とても彼女らしいと思う。

……しかし、助かった。もちろんさっきのブーメラン攻撃のこともあるが、さっきの心のうちで叫んだ言葉を表に出していたのなら僕の体は上下真っ二つになっていたかもしれない。口は禍の元という言葉を胸に刻んでいた甲斐があった。

 

『あの女傑があの攻撃を……、あの華奢な姿からは考えられん程の力を隠しているな』

 

女傑って……いやその通りだな。彼女の在り方的にその表現はかなり近いのかも。とは言え彼女に面と向かってこんなこと言ったら、彼女の地元、京都で鍛えられてきた京ことばのオンパレードを食らってしまうだろう。

 

「酒寄さーん。僕まだプレイして30分くらいのペーペーなんですけど、いきなりその攻撃は容赦なさすぎない? 僕の体真っ二つになるところだったんですけど……。

ていうか! なんで僕のところに来てるの!?

 行くなら絶対あの二人の方でしょ。あちらさんの方が僕よりも、ものすごーく強いと思うけど?」

 

僕の必死の抗議を聞いた酒寄さんは何故かポカーンとした表情をする。

 

「え? もう忘れたの清水。

 別れるときに行ってくれたじゃん。私と一緒にKASSENをプレイしたいって。

 折角こんな偶然を引けたんだから、いい機会だし応えようかなって」

 

「酒寄さん……

 

嬉しいよ。けど、

対戦相手としてという意味ではないんじゃないかなとは、僕は思う。

それにさっきから……

 

「にやけ顔、隠せてないよ。どれだけ僕と戦うの楽しみにしてんの!?」

 

「なによ、そんなに怖がって。

 そこは少しくらい嬉しがってくれても……いいんじゃない!!」

 

酒寄さんが力強く地面をけった。

来る。そう察知した僕はさっき吹っ飛ばされた兵士を呼び戻し、追加で2体召喚する。

さっきの攻撃で初心者の僕でも理解した。僕の目の前にいるのは狐の少女ではない。狐のふりをした猪、またはクマだ。そうじゃないと説明がつかない。さっきは投擲物だったが、今回は自らの体で突進してきている。さっきは何とか受け流すことができたけど、今回の攻撃は兵士の数を増やしてもどうなるのか想像ができない。

そんなことを考えているうちにもう彼女は間合いの中に入っている。兵士に防御姿勢を取らせ僕は衝撃に備えた。

 

直後、僕は自分の判断が間違っていなかったと思い知ることになる。

彼女が武器を振りそれを受けた兵士が2体それを受けきれず、その体の形を失った。残った1体は何とか持ち堪えているが、その隙を逃さない酒寄さんではない。続けて攻撃を仕掛けてくる。

 

「くっ…、容赦ないなぁ」

 

先ほどと比べたら攻撃の重みは全くと言っていいほどないが、代わりに手数がものすごいことになっている。二体の兵士を失った事で酒寄さんの圧倒的な攻撃の物量に対応しきれない。たまに攻撃が僕の方に抜けてきて、精神衛生上もよろしくない。明らかに抜けてくる攻撃は僕のHPを刈り取るという意思を感じる。

このままではいつか抜けてきた攻撃を食らってしまい、あっけなく倒されてしまうだろう。

 

ウジール君! この絶望的状況をひっくり返す作戦出して、役目でしょ。

 

『マスターの我の扱い、やっぱりなんか冷たくないか?

 ……いやそんなことを言っている場合ではないな。今のマスターが一矢報いるならば一つしかあるまい。アルティメットスキルだ。本当は実践でいきなり使うようなものでもないのだが……初回特典だ。我が少し頑張ろう』

 

初回特典……、いやいつもがんばれよ。なんで頑なに僕が負担を担うようになっているんだ。そこはフィフティフィフティでいこうじゃないか、僕たち相棒らしいし。

とは言え背に腹は代えられない。できれば早く教えてくれ!この最中にも酒寄さんの凶刃は僕に迫ってきている。

 

『ではそのように。

 我らがアルティメットスキルは……

 砂塵兵の召喚リキャストを0にし、砂塵兵の性能を底上げする』

 

……続きは? なんかすごい攻撃とか出ないの? 破壊光線とか。

 

『そんな安っぽいものはない! あったとしても使わせるわけがないだろう。

 このスキルのすばらしさは体験すれば分かる。ほら! サッサと使えマスター』

 

わかったよ。

不満はあれど、今はそれにすがるしかない。僕は覚悟を決めてウルトを発動した。

……特に身の回りに変化はない。強いていうなら、というかこれしか変化ないんだけど。

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。

 力が……力がみなぎるぅぅぅぅ------!!!!』

 

僕の相棒を名乗るちびキャラが、さっきから心の内で叫び続けてるうるさい奴になったということだ。いや元々うるさくはあったか、もっとうるさくなった。ほんっ!とうに要らない変化だな。

 

『ふぅ、ふぅ。

 待たせたなマスター。 このウジール! ここ数年で最高に調子がいい。

 最高の出来というやつだ!!』

 

ボジョレーヌーボーかよ。まずお前今日起きたばっかりなんだからここ数年の自分知らないだろ、寝てたんだから。

 

『さぁマスター、遠慮は要らない。

 思う存分にやりたいことを思い描け。そのすべてを俺が実現してやろう』

 

言ったな? 兵士もバンバン使い捨てにするぞ? コマ数もさらに上げるよ?

途中で音を上げられても止まれないからね。

 

『ノープロブレムだ。

 この状態の我に手心などふようぉう!!」

 

言質は取った。負担は肩代わりしてくれるらしいのでおもっいっきり描いてやろうじゃないか。高校受験が終わった後の暇な時間でずっとアニメ調の絵をかいていたのがここに来て活きてくる。現実に限度はあるが、頭の中にそれはない。

いきます、120Fの世界。

 

「もらったっ!!」

 

酒寄さんが遂に最後の兵士を破壊して間合いに入ってきた。僕から見て、左からの袈裟斬りを振るってくる。さっきまでの僕なら兵士の展開が間に合わず迎撃できず、その攻撃の行方を見守るしかなかっただろう。しかし、

 

「‒‒‒っ!!」

 

今なら迎撃だけでなくその先まで狙える。酒寄さんからの攻撃を受ける兵士、そしてその後カウンターを仕掛ける兵士の2体を即座に召喚し、反撃を始める。

さすがの彼女もこの対応は予想外だったようで初めて僕の攻撃をまともに食らってくれた。

このまま兵士達の攻撃の物量で押し切って、勢いのままに勝ち切る。それが僕たちのプラン。

勝ちの目が出てきて調子に乗っているのか、口が勝手に動いてしまう。

 

「ねぇ……僕がこの勝負に勝ったら、明日の賄いで1品作ってよ。この前食べさせてもらった豆腐ハンバーグ美味しかったし、酒寄さんのほかの料理もたべてみたいなって思ったんだよね。どう?」

 

「いいよ。じゃあ私が勝ったら……

 一つ清水に聞きたいことが出来たからそれについて聞こうかな」

 

聞きたいこと? まぁ互いに差し出すものとしてはそこそこ釣り合っていそうだし、酒寄さんなら変なことを聞くこともないだろう。まぁ聞かれてしまったらその時はその時。

 

「その条件乗った。モチベーションも上がってきたし、続きといこうよ」

 

僕は槍を彼女に向けて構える。それに続いて兵士たちも攻撃姿勢を取る。そしてそのまま酒寄さんへと突貫していく。様子見なんて弱気な行動は絶対取らない。いくら攻撃を食らったとしても僕は人形と近い位置を取って自らも兵士の一人として近距離戦闘を挑んでいく。

出来るだけ兵士たちに身を隠しながら彼女の気を少しでも散らせるように攻撃をはさんでいく。それによりさっきまでは全く通る気配すらなかった兵士達の攻撃が少しずつ彼女のアバターをかすめるようになっていった。正にアルティメットスキル様々である。いつもなら兵士の操作で脳のリソースが持ってかれているが、ウルト中は頭の中で絵を垂れ流すだけでいい。自分の負担が減るのももちろんだが、さっきまで一回しか攻撃できなかったところが2回、3回と攻撃に厚みが出てきた。単純な戦闘力強化もうれしい。ホントに常時この状態でお願いしたいくらいだ。今、この瞬間に溜まりに溜まっていたアイデアとそれを形にできなかったフラストレーションが発散されていくのを感じる。

 

今の僕なら、KASSENを心から楽しんでいると確信を持って言える。

そんな心の中は絶好調である僕の実際の状況はというと……

 

『す、すまないマスター……。

 アルティメットスキルはあと20秒ほどで効果が切れ……る、ぞ』

 

ピンチだ。おい、その時間通りなら1分くらいしかウルト持ってないじゃないか。さっきまでの強気な発言はどこにいった。

 

『違う……考えろマスター。

 なぜこの状態の我らを相手にして目の前の女人は未だ体力を半分残しているのだ。

 他の者ならばとっくに動きに対応できず、10秒であの世行きだ

 あとマスター、初めてのウルトのくせにやりすぎだ。我まだ寝起きぞ、うっぷ』

 

頼むから吐くのはやめてくれよ。

なぜ相手がまだ立っているかなんてそんなの相手が酒寄彩葉だからで十分だ。そんなことよりもあと10秒くらいでどうやってこの人を倒せば……。

 

『……マスター。私らしくないことを言うが恐らく今の私たちの実力では無理だ。

 しかしだな。この勝負は負けたとしても、試合に勝てばいい』

 

なるほど。つまり?

 

『マスターの残機を使って相手をここから動けなくさせる。確実にマスターは倒されるが、高確率で相手は行動不能になるだろうな』

 

確実とは言わないんだね。

 

『これは相手へのリスペクトだ。もしかしたら……と、我に考えさせられるくらいの敵だということだ』

 

ウジール君も酒寄さんの凄さがわかってきたようだ。了解、ウジール君の策に乗ろう。

どうすれば?

 

『ウルトが切れる数秒前に我がさっきまで動きの再現に使っていたリソースを全て召喚の方にまわして、奴を拘束するに足りる兵士を召喚する。しかし、動きの再現に避けるリソースは我にはもうない。だからマスターはその補助とどうにかして奴の動きを止めてくれ』

 

OK。肉どころか骨まで切らせてでも彼女の動きを止めよう。ちなみに何体くらい召喚する気でいるのかを聞いても?

 

『教えてもいいが、おすすめはしない』

 

ありがとう、君にそんな気遣いをしてもらえるなんて嬉しいよ。

……失敗したら取り敢えずお尻たたきだな。

 

『マスター!?

 ええい、そろそろ時間だ。腹は決めたか!?』

 

モーマンタイ。成功させて見せよう。

 

僕は脳内の創造のバーゲンセールを停止させ、次に来る衝撃に備える。

……きた。恐らく酒寄さんはいきなり攻撃を止めた兵士に違和感を感じているが、ウルトの効果が切れたという判断を下したのだろう。その判断は99%合っている。しかし、ここで僕が攻撃を受けきれれば、話が変わる。

頼む、どうにかなってくれ。そう淡い願いを抱える僕のことなどつゆ知らず、酒寄さんの初撃はシンプルに一文字斬り。この状態の僕では何とか攻撃の軌道を目で追うのが精いっぱいふぁ。しかし、体勢を崩しながらもなんとかはじくことはできた。そんな僕の胴体は完全にがら空きで、その隙を逃さず酒寄さんは返す刃で追撃するはず。そこを捕まえr……

 

「いい狙い。センスいいね清水。

 これは次に一緒にプレイするのが楽しみかも。けど……

 作戦が成功するまでは顔に出さない方がいいよ。ばれちゃうから……ね!」

 

酒寄さんはそのまま攻撃するのではなく、一回モーションを止めて居合の要領で一気に僕を切りながら背後へと回っていた。

初心者が必至こいて実行したやけくそ作戦もあっけなく見破られてしまった。僕のHPバーが物凄い勢いで減っていく。このまま僕がリスポーンするのはほぼ確定。だけど、最後に置き土産をするくらいには時間があったようだ。

 

グサッ。

 

「えっ?」

 

僕は手に持つ槍で酒寄さんの足元を刺した。それも地面に刃が潜り込むまで力強く。

もう既にウジール君の用意は終わっていた、あとは僕が号令を出すだけ。

 

 

「酒寄さん、少しの間だけおとなしく捕まっといて。直ぐにお迎えが来ると思うから……」

 

やれ、兵士たち。

 

消えゆく視界の隅で沢山の兵士がさすまたのようなもので酒寄さんをつついているところが見えた。なんで異国風の兵士が江戸時代の道具持ってるんだ。あまりのミスマッチに少し笑ってしまう。あーあ、勝ちたかったなぁ。

 

 

 

 

 

Side 河木

 

「Team M4kenワンダウン」

 

ゲーム内アナウンスがキルを報告する。そのアナウンスを聞いて俺はトップレーンの状況を見る。

 

「マジか、やっぱ酒寄さんの相手はきつかったよなぁ」

 

スズがなんかほざいているがその予想は大きく外れている。これは俺が期待していた状況に近しいものになっている。

 

「おいスズ! 早くトップレーンにウルト使えや。ウィンコンディションが整った!」

 

「はぁ!? お前、確かに俺の今回のウルトはテレポートだけど肝心の清水がいないから飛べないだろうが。」

 

「バッカお前、清水が召喚した兵士たちに飛べ!できんだろ。」

 

「あ、なるほど。了解しました~」

 

そう言うとスズはトップレーンへとTPで飛んで行った。

 

「あらー、いかれちゃったか。けどいいの?

 君ひとりじゃ私たちさばけなくない?」

 

「ふっ、Team Absolute coreのリーダーをなめちゃいかんで。

 パンピーの二人くらい華麗にさばいたるわ」

 

 

 

……30秒くらいはもったかな、おん。

 

 

 

 

Side 鈴村

 

トップレーンに飛んだ俺を待っていたのは面白すぎる光景だ。

 

「ぐっ、なんかこの兵士たち力つよっ、さっきまでだったらすぐ壊せてたのに。

 何なのよ全く」

 

我らがクラスの才媛、酒寄さんが10体以上のさすまた持った兵士達に押さえつけられている。その光景を観察していると酒寄さんの方も気づいたらしい。

 

「あっFreeStyle、ちょうどいいところに。早く私にとどめさして。もうかれこれ1分はこのままで困ってるんだ」

 

とどめを刺してほしいとかいうお願い初めて聞いたわ。武士なのかこの同級生は。

しかし、こちらとしてはとどめを刺す理由は全くと言っていいほどないので放置しy……

 

「あっ、右手抜けた」

 

即座に一太刀いれてリスポーン待機して頂いた。油断の隙もありゃしない。

清水が作ったこの勝機を放り投げるわけにもいかないしこのまま櫓を占拠しにかかった。

 

 

 

 

Side 清水

リスポーンした僕を待っていたのは二つのアナウンスである。

 

「Team M4kenトップレーン櫓占拠完了。

 Team IRO ボットレーン櫓占拠完了」

 

いつの間にか試合は大きく動いていたらしい。呆然としていた僕に鈴村君から通信が入る。

 

「おい、清水。大砲でトップレーンのやぐらに飛んで相手の本陣までこい。決着つけるぞ」

 

「えっ、こっちの本陣はどうするの?

 ROKAとまみまみ、近くまで来てるらしいけど。」

「それはカワに任せろ。まぁ……あいつならどうにかすんだろ」

 

鈴村君がそういうならば、そうするか。僕は急いで大砲で櫓へと飛んだ。

 

 

 

 

 

鈴村君と共に相手本陣を駆け上る。その時、見おぼえがある鉄製ブーメランが飛んでくる。全くの意識外からの攻撃に体が固まるが、その攻撃を鈴村君が弾いてくれたことでなんとか脱落からは逃れた。おいでなすったらしい。

 

「さっきはどうも、お陰で戻ってこれたよ。

 清水、やるね。まんまと引っかかっちゃたし、櫓まで取られちゃった。ここでその借りくらいは返さないと二人に怒られちゃうから。通さないよ、ここは」

 

「上等だ。おい、清水。兵士たくさん出して攻撃だけに専念してくれ。

 ヘイトは俺が全部受け持つから」

 

「うん!……といいたいところなんだけどさ。実はさっきまでの戦闘でウジール君が完全にオーバーヒートしちゃって、結局僕一人のマニュアル操作なんだよね」

 

「はぁ? てことはお前!」

 

「うん、僕今火力全くでないね」

 

……この場にいる全員が黙り込んだ。完全にこの後の結果を悟ってしまったから。

結局、僕たち二人では体力マックスの酒寄さんは倒しきれずに河木君が突破されて試合にはあっけなく負けてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~面目ない。

 まさかウルト後にあんな副作用あると思わなかったよ」

 

「まぁ、しゃあないやろ。それよりもよく酒寄さんをあそこまで追い込めたな。

 マジ才能あるで清水。今後が楽しみやな」

 

「そうそう! マジでよかったよ。

 いやぁ~清水のウルト中の動きやばかったなぁ。あの状況、俺だったら酒寄さんみたいに対応できないかもなぁ」

 

それはないだろ、僕を含め三人が心の中で葛野君へつっこむ。しかし、その想いは僕たちだけではなかったらしい。

 

「それは嘘でしょ、私をSETSUNAでぼっこぼこにしたくせに」

 

後ろを振り返るとさっきまで対戦相手だったお三方の姿が。

 

「お疲れー。いやぁ~、さっきはなかなかにグットゲームだったね」

 

「久しぶりにここまでゲームで白熱したよー」

 

よく酒寄さんと一緒にいるお二人も挨拶に来てくれたようだ。一応クラスメイトだから二人共全く交流がないわけじゃない。

けれど積極的なかかわりがあるわけではなかった。BAMBOOcafeにはちょくちょく通ってくれてはいるが僕は厨房なので話すような機会はないし。

 

「酒寄さん、葛野君と戦ったことあるんだ?」

 

「前に少しね。5先で1本しか取れなかったけど」

 

おお……、酒寄さんを5-1で下したのか。

流石は葛野君だな。

 

「俺から言わせればカズ相手に5先で1本奪えるアンタに驚くけどな。

 こいつからまともに1本取れるだけ凄いはずやのに」

 

「まぁそこは……。

 ゲーマーの意地ということで」

 

分かる。格ゲーって勝つまで辞められないよね。昔姉ちゃんのセスにぼこぼこにされて、悔し涙を流しながら連コし続けたことを思わず思い出してしまう。

 

「てかなんで会いに来てくれたんだ?

 あんまり親交があるわけじゃないだろ俺ら。清水と酒寄さんはともかくさ」

 

鈴村君の単純な疑問に綾袖さんが食いつく。

 

「そう!そこ!

 気づいたら彩葉と清水君がすごい仲良しになってるからさー。

やっぱり気になるじゃん、清水君ってどんな人なのかとか、その友達はどんな人たちなんだろうって」

 

「私と芦花は東京出身だからね~。勿論、清水君の名前ぐらいは知ってたけど、噂話ばっかり飛び交っていたから、全くって言っていいほど人となりの方は不明瞭なんだ」

 

こ、これは来たのか、人生初のモテ期。

 

『マスター、おめでたい想像中に悪いがそれだけはないと言っておく。

 どちらかと言えば新種の生き物を観察しに来ているといった方が近い』

 

うるっさいですねぇ~。意識を取り戻して最初に言うことがそれ?

僕にもそれくらいはわかるっての。

 

「今日こうやって対戦相手として君の戦う姿をみて、今こうやって会話してなんとなくだけど分かったよ。清水君、君はなんていうか………面白い人だね。私も普通に君に興味が出てきちゃった。……というわけで、これから友達としてよろしくね!」

 

「よろしくね~」

 

この前ステ力、これが真の陽キャなのか。僕が真似しようとしてもできないやつである。

 

 

「あっ、そっちの3人組もよろしく~」

 

「なんか雑やな……。まぁええけど」

 

「異論はないな、なんか複雑だけど」

 

「明らかに清水とゆかいな仲間たちって感じだよな。別に構わないけど」

 

 

 

圧倒的な芦花さんの陽キャパワーでこの場の支配は完了してしまった。そのまま彼女が進めるままに会話が進み、発展していく。凄いな、MCとかできるだろ綾袖さん。

 

「そういや来月の期末テスト前に妙な行事あったよな。えっと……」

 

「芸術鑑賞会ね。ほかの学校でいう遠足に近いものなんだろうけど、まさか期末テスト前にやるなんてね。元々は今月にやる予定だったらしいけど。」

 

酒寄さんの説明でなんとなく存在を思い出す。普通に楽しみにしてたけどいきなり目の前からなくなっていた。内容は確か……

 

「劇団雨季のミュージカルな。演目はそのままだったらライオンキングのはずだ」

 

そうそう。6月に開催される予定だったから、本当に雨季じゃん、と内心面白がっていたのを覚えている。

 

「それってかなり自由に動けたよね?」

 

「ああ、班みたいなものは作らないらしいし、ミュージカル見た後は各自解散だ。

 正直思い切ってるよな、うちの学校」

 

確かに。うちの生徒がそういうやんちゃな奴が少ないというのはわかってるけど、若気の至りというものは誰にでも起こりうる。まぁ信用されていると考えるか。

 

「じゃあさ! ミュージカル終わった後、遊ぶ?このメンバーでさ。

 せっかくここで仲良くなれたんだし」

 

……友達と平日昼間から遊ぶ!? それも男女グループで。

あまりにも青春すぎる。このビッグウェーブには乗らなければならない。

 

「その話乗った! 

 鈴村君たちはどうする?」

 

「断る理由がないな。カワとカズ、お前たちは?」

 

「「異議なーし」」

 

知ってた。ただ、問題があるのはあの御方なのだ。個人の事情もあるので押しつけるきはさらさらないが、初めての行事だしここは……

 

「酒寄さん! 俺もバイト入れるから一緒にがんばr……「えっ、全然行くけど。」」

 

あれ、これもしかして杞憂だったのか。

 

「清水の賄いのおかげで食費は抑えれてるし、何より祖母からの仕送りが強化されて物がそろってきたからね。後最近はヤチヨグッズに高額の品が少ないし。

 ていうか清水にお金の心配されるなんて心外なんですけど? そういうあんたはどうなの?」

 

至極全うな返しが来た。しかし、その問いには期待されるような答えは出せないのだ。

 

「あんまこういうこと友達に言うのあれなんだけどさ。色々あって、小金持ちなんだよね僕」

 

シーン。そりゃそうだ、触れられないだろこの話題。

 

「じゃ、じゃあ皆さん参加ということで~、今日は解散しよっか?」

 

諌山さんが勇気の一声。ありがとう、お金の話題という絶妙なものを処理してくれて。

 

皆それぞれログアウトする中で酒寄さんから少し待ってほしいといわれた僕は、他の人が全員落ちるまで待つことになった。最後の人がログアウトし、僕は酒寄さんに問いかける。

 

「それで? どうしたのいきなり呼び止めて。」

 

「賭けしたでしょ私と。勝ったら相手に何させるかって。

 それを精算しようと思って。」

 

「確かにそんなこともありました。ちなみに勝負の判定は?

 流石に酒寄さんの勝利だよね。」

 

「いや?

 あれだけの拘束を受けたなら、私の方もほぼ死んでいるようなもんだし引き分けだと思う」

 

「それじゃ、どちらも罰ゲームなし?」

 

「うーん、それでもいいんだけどさ。どっちも罰ゲームっていうのはどう?」

 

なるほどね、味方によってはどっちも負けたという風にも捉えられる。せっかくあんなに頑張ったんだし少しはご褒美をもらってもいいか。まぁ今日一日で十分にもらってけど、少し欲張りになったっていいだろう。

 

「OK! それでいいよ」

 

「そう? ならそういうことで。

 お詫びに条件では明日だけだったけど一週間は頑張って作るよ」

 

本当ですか! いやぁ~酒寄さんは気が利くなぁ。

 

「ねぇ、聞いてもいい? 早速なんだけどさ」

 

「えっ? 勿論。どーんとこい」

 

なんだか酒寄さんがもじもじしている。自分から切り出してくれた割には勢いがどんどんしぼんでいる。そんな聞きづらいこと聞きたいのか? 僕は何を言われてしまうのか少し恐怖してしまう。

 

「ねぇ、」

 

「なんだい、酒寄さん?」

 

「清水ってさ、もしかしてだけど左目……見えてない?

 今日のKASSEN中で打ち合っていた時、明らかに清水から見て左側の攻撃の反応が右側に比べて遅かった。それに無理やり首を動かして右目を使おうとしていたようにも見えたし。

けど日常生活ではそんな様子はあまりなかったし、車道から離れようとしている様子は度々見受けられたけど……

ごめん、他人が踏み込んで良いとこじゃないよね。わすれt「いいよ、酒寄さん」

 

「別にどうしても隠したかったわけじゃない。地元の人なら知ってる人もいるにはいるしね。

その通り、僕は生まれつき左目がほとんど見えない。

小さい頃はそれでかなり苦労したけど、今はご覧の通り。酒寄さんでもなかなか気づかないぐらいには上手くやれるようになったからね。そんなに心配してもらうようなことじゃないよ。」

 

「そう……なんだ。

 ごめんね、少しセンシティブなことに触れちゃって。別にだからどうこうってわけじゃないんだけど、確認したくて」

 

「いいよ。そりゃ気にもなるでしょ、目が見えてないって可能性知ったら。

 ……もしかして、これからエスコートとかしてくれる感じ? カッコイイ~」

 

「からかわないでよ。まぁ必要だったら全然するけど」

 

優しいね、酒寄さん。僕とは大違いだ。

僕は少し嘘をついた。僕の左目は今も、景色を全くうつすことはない。しかし、その代わりに様々な色を僕の脳裏に焼き付けてくる。

それは白いはずのキャンバスを塗りつぶす灰色であったり、

 

 

 

 

 

……目の前の少女の真っ白な心だったり。

 




ウジール君の元ネタがわからない人は、「lol アジール」で検索してみてください。
スキルとか映像で見るとどういうやつかわかりやすいと思います。
芸術鑑賞会。元ネタである国分寺高校の年間予定にあったので入れてみました。自分の通っていた高校も似たようなことありましたね。どの高校にもあるんですかね。

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