どうせなら、キャンバスは白いほうがいい   作:中山の補題

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働いている人ってすごい。一日でも早く、戦力になれる人間になりたいものです。
読んでくれてありがとうございます。
まだまだ、5月表続きます。この反動が絶対6月編に来る気がする。


5月、異世界な日々 表②

酒寄さんが作ってくれた豆腐ハンバーグを完食し、緑茶を飲んで一息つく。同級生の女の子の手料理を食べるのなんて初めての経験だったが、こんなに美味しいものが食べられるとは。物凄く感激している。ラブコメ系の漫画やアニメで、仲良くなった女の子の家に上がってご飯を頂くシチュエーションは見たことあるが、自分が実際にそれに近しいことを体験できるなんて思いもよらなかった。やはり人生何が起こるかわからない。それも今日はまだメインイベントが残っているのだ。こんなにも充実した休日は中々ないだろう。スズカワの二人と酒寄さんに感謝である。

 

お皿などを片付け再び机へと戻る。まだ約束の20時には30分ほど時間がある。何かしらで時間をつぶさなければいけない。学生として勉強するというのが正しい過ごし方なのだろうが、もうこっちはツクヨミに行きたくてうずうずしてしまっている状態なのだ。

そんな時にスマートフォンから着信音が鳴る。相手は…鈴村君だ。

 

「もしもし、清水だけど。」

 

「おう、良かったすぐに繋がってくれて。あんま時間ないから、すぐ要件を言うぞ。

 21時になったらKASSENエリアのSENGOKU第一アリーナに来てくれ。お前は初心者だから道はわからないし何言ってるかわからないと思うけど、なんとか周りの人に道を聞いてたどり着いてくれ。」

 

「あっそれなら好都合かも。実は酒寄さんがツクヨミを案内してくれることになってさ。

 酒寄さんに頼んで案内してもらうよ。」

 

「マジで! それはありがたい。酒寄さんは俺とカワの都合も知ってくれてるし、なんなら酒寄さんもかなりKASSENやりこんでるらしいから教えてもらうといいぞ。

 あっ、そろそろ時間だわ。すまん清水、いきなり電話かけて言いたいことだけ言っちゃって。」

 

「全然大丈夫だよ。よくわからないけど楽しみにしてる。」

 

「おう、任せとけ。退屈させないから、じゃな。」

 

そう言って鈴村君は電話を切った。KASSEN…、SENGOKU…。現代はもしかして戦国時代へと逆行しているのかもしれない。これはもしかして日本版ルネサンスみたいなものなのか…。いや、絶対違うなこれ。確かルネサンスって古代のギリシャ文化を復興させるとかそんな感じだった気がする。戦国時代って今から精々500年前のことだ。あと、戦いわゆる合戦は文化じゃないし。これ以上は自分の歴史の知識のなさを露呈するだけだ。そんなこと考えていたら、20時まであと10分ほどになっていた。

ツクヨミは初ログインでそこそこチュートリアルもあると聞いているし、今から始めた方がいいだろう。

 

買ったばかりのスマコンをケースから取り出し、装着する。

 

「これで目を閉じればもう行けちゃうのか、科学の力ってすげー。

 それじゃあ、遠慮なく行きますか!」

 

意味もなく思い切り目を閉じる。

その瞬間、

 

広がるのは宇宙。実在しているのかも分からない銀河をまるで自分が隕石になったかのような感覚で突き抜けていく。そして気が付くと、目の前に大きな赤い鳥居が現れた。

足元にはこの世の果てまで続いてるかのような湖、その水面には沢山の灯篭が僕の来訪を歓迎するように暖かな光を与えてくれていた。

何もない世界だったはずのそこはいつの間にか鳥居の色が映し出されたかのような真っ赤な夕明けが広がり、

 

「―太陽が沈んで、夜がやってきます。」

 

軽やかに、月見ヤチヨが顕現する。

初めて見る月見ヤチヨのデザイン。おそらく海洋生物をモチーフとして作られた和装。顔のバランスと美しい白髪は、いつかの酒寄さんが言っていた女神という例えも納得だ。これがツクヨミ創設者でトップライバーの月見ヤチヨか。

 

そんなこと考えていたらなんかその女神様?が笑顔でこっちに走ってくる。

なんだと思っているうちに目の前まで来てしまった。そして僕の手を握り、目を見て話し始める。

 

「仮想空間ツクヨミへようこそ! 管理人の月見ヤチヨで~す!

 このモフモフはFUSHI!」

 

「ヤチヨが僕とツクヨミを作ったんだ!」

 

わざわざ管理人から直接ご挨拶をいただくとは思わなんだ。やはり人気の理由はこういうところからなのかと感心してしまう。

 

「さぁ! 出かける前に、その恰好じゃあつまらない!」

 

いやぁ、ファッションはよくわからないもんで。おそらく定型文なのだろうが、女性に言われてると思うと少し心に来る。勝手にメンタルブレイクしていると目の前にウインドウが表示される。

 

「なるほどね、キャラメイクですか。」

 

ちなみに僕のキャラメイクは頑張って凝ろうとするも、結局は時間だけが経過して普通の仕上がりになってしまうタイプだ。それをわかっていながらもぼくは毎回時間をかけてしまう。けど今回は状況が状況なのだ。酒寄さんを待たせている為、ちんたらしてはいられないのだ、が…、

 

「う~ん、決まらん。」

 

このままはよくない。おそらく、人を連絡もなしに待たせてしまっているというシチュエーションがメンタルを動揺させている。こうなれば…

 

「あの~、ヤチヨさん?

 少しお願いがあるんですけども~」

 

「なにかな? ここツクヨミのことならば!

 ヤッチョにお任せあれ!」

 

「実は友達待たせていて、その子にショートメッセージとか飛ばすことって可能です?」

 

「ふーん、なんていう子?」

 

「酒寄彩葉っていう…、

 …あ、僕ツクヨミでの酒寄さんの名前知らないや。

いやまて、そんなことよりも今僕ネットの世界で人の本名ぶちまけたか?やばい、リテラシーのリの字もないよこれ。切腹しようかな。うん、そうしよう。」

 

一人で自らの最期を悟っていた僕だったが、気づいたらさっきまで元気ハツラツだったヤチヨさんがおとなしくなってしまっている。

 

「あの~、ヤチヨさん大丈夫です?」

 

「あっ…、うん! ヤッチョなら大丈夫!

 多分、イロのことかな。あの娘のことならヤッチョも知ってるんだよね~」

 

「へ~、そうなんですね。」

 

凄いな酒寄さん。その愛が推しに届いている。やはり彼女ほどの熱烈なファンは月見ヤチヨといえども希少なのかもしれない。

 

「メッセージは飛ばせないけど~、

 代わりにヤッチョが知らせておいてあげるよ。」

 

「ほんとですか、いや~ありがたや~。」

 

これで本腰を入れてキャラメイクができる。そう思うと動かなかった手がスラスラと動いた。

モチーフとする動物は、鷹だ。昔から鳥類が好きで、その中でも鷹の羽ばたく姿は特に僕の心をつかんで離さない、好きだ。

ツクヨミは和の世界観だし和装がいいと思ったが…、それじゃつまらない。せっかくなら少し逆張りしてみよう。思い切ってチャイナ服だ。色はまぁ黒をメインとして差し色として銀色が入ってる感じでいいだろう。でもなんかぴっちりしてて恥ずかしいな。一応ジャンパー着とこ。靴は…スニーカーでいいや、動きやすそうだし。よし完成だ。なかなか様になっているちゃんとモチーフの翼も生えてるし僕にしてはかっこよく仕上げてある。

 

キャラメイクを完成させホクホクしていた僕を見て、ヤチヨさんは改めて近づいてくる。

 

「うんいいね、似合ってる。

 これで準備は整ったね。」

 

ヤチヨさんは僕の手を引きながら、ゆっくりと鳥居へと歩く。

なんだか酒寄さんに悪いことしてる気分だ。これは黙っといた方がいいだろう。

 

「これから君が行くこのツクヨミという世界は沢山の人がいて、その人たちが作った沢山のものもある。様々な素敵なものであふれている世界。それを君がその目で見たとき、どう感じるのか。それを大事にしてね。

 

いまこの人はどこを見て今の言葉を言った? 明らかに僕の左目を見て言ったはずだ。

何故?この左目のことは先生と姉ちゃんにしか話していないはずだ。

理解できない。なぜAIである彼女の口からそんな言葉が……?頭の中で沢山の疑問が浮かんでくる。けれど…

 

そのヤチヨさんの言葉は、自分でも驚くほどになぜかスッと受け入れることが出来た。

 

「分かりました。いきなりで理解できないけど、やってみますよ。」

 

「うんうん、それでいいの。

 そういう難しいことは人生の大先輩に任せなさーい。」

 

「あー、八千歳ですもんね。ヤチヨさん。」

 

「おっと、女性にそんなこと言っていいのかニャー。

 イロに告げ口しちゃおうかなぁ~」

 

「自分で話振ったくせに酷い!

 てか、それだけはほんとにやめて。人でいられなくなる。」

 

なんて恐ろしいこと言うんだこの御方…。この人はまだどれだけ酒寄彩葉という少女から好かれているのかをわかってないのかもしれない。

 

「それじゃあ、行ってみようか!」

 

確かに、ヤチヨさんが酒寄さんに伝言してくれたとはいえこれ以上の遅れはよくない。

意を決し、ぼくは鳥居へと飛び込んだ。

 

「行ってらっしゃい、○○」

 

後ろから聞こえた微かな声を全部聞き取ることはできなかった。

 

 

…。

 

「ついに来たな、ヤチヨ。」

 

「うん、やっと会えたぁ。○○ったら、全くツクヨミ関係のものに触らないんだもん。

 もう来ないと思ったんだから…。

 …ねぇ眞白。私の創ったこの世界は貴方の●●を取り戻す助けになるのかな。

 なったら…、いいなぁ。」

 

 

 

 

 

目の前が物凄く光っていて眩しい。そんなこと思ってたら、目の前に空間が現れた。

かなり勢いがついていた僕はその空間に投げ出され、コケそうになる。だが、

 

「おっとっとと、よし。」

 

何とか踏ん張る。良かったツクヨミデビューの初手がずっこけて顔面雑巾がけになるところだった。すると、右側から声が聞こえる。

 

「おーやるじゃん。大体初ログインの初心者はここでずっこけるんだよ。」

 

その声の先にいたのは…

着物にパーカーとベルト、そしてブーツを履いている狐娘であった。そして顔を見ると…

 

「あっ、酒y…。

 えっとイロさんだっけ?」

 

「あっうん、そうだけど。知ってたんだ私のハンドルネーム。

 そっちは…、マロだっけ?

 なんか似てるな…」

 

「うん。X(クロス)での活動してる僕のイラスト投稿用アカウントの名前そのまんま持ってきた。もしかしてヤチヨさんに聞いたの?」

 

「まぁね。てかあんた前代未聞だよ。ヤチヨにフレンドへのメッセージを届けさせるなんて。このツクヨミの創始者でトップライバーの月見ヤチヨをそんな風に扱える初心者なんてあんたくらいだろうね。」

 

「いやぁ本当におっしゃる通りでございます。

 でもイロさん?僕にかける言葉はそっちじゃないんじゃない?

 僕が厚かましいお願いをヤチヨさんにしたおかげで…?」

 

「うん、普通にマジでありがとうマロ。

 推しと二人きりで話せる時間とかもう天国以外の何物でもなかったよ。

 もう正直、この時点で最高。どんなところでも案内する。いやさせて下さい!」

 

あの酒寄さんが僕相手に凄い熱量の感謝をしている。効果てきめんだな月見ヤチヨ…。できるならば、良い交流を続けて僕を守る盾にでもなってもらいたい。いや…、でもそんなことしてたらいつかヤチヨさんのファンから背中刺されてもおかしくないかも。

…目の前の人は正面から拳が出てきそうだが。

 

「あっ、イロさん。これからいろいろと案内してもらいたいところではあるんだけど、一つだけお願いがあって。」

 

「なにかな、清水君!

 この酒寄彩葉が何でも叶えてあげましょう!」

 

怖い、怖いよ酒寄さん。やはり好きなものは人を簡単に変えてしまう。あと普通に僕と貴方の本名が出ちゃってます。頼む、いつもの酒寄彩葉成分の半分くらいは帰ってきてほしい。

 

「ツクヨミにログインする前に、…HN分からないから名前言っちゃうんだけど鈴村君から電話があってさ。『21時になったらKASSENエリアのSENGOKU第一アリーナに来てくれ』って言われたんだけどお願いできる?」

 

「あ~成程ね、うんまぁいいよ。いつもだったら断ってたけど、何でも叶えるって言っちゃったしね。そう…鈴村君たち勝ち上がったのか、凄いな…。」

 

なんかいきなりテンションが爆下がりしている。そこまでの変化を見せられてしまうとそのSENGOKUアリーナとやらに何があるのかとても気になってしまう。とはいえ約束の時間までまだかなり時間がある。

「じゃそういうことで、とりあえず行きましょうか。こちとらさっきから向こう側の景色ずっと見せられてうずうずしてるんだ。」

 

「それもそうだね。とりあえずこのバカ長い橋を渡らないと。

 時間もたくさんあるわけじゃないし、走るよ。」

 

「えっあ、ちょっと…。

 初心者置いて本気ダッシュしないでくださいよ~。」

 

 

 

 

「はぁ、はぁ。マジで見失うかと…、思っ…た。」

 

「ごめん。チュートリアルでは走り方まで教わらないの忘れてた。」

 

呼吸を整えながら、徐々に顔を上げていく。このツクヨミは夜の暗い空でおおわれている。しかし、その目の前に広がる世界はその闇を全く感じさせないくらい煌びやかで美しいものが広がっていた。それは東京のネオン街みたいなものではなく、上品さまで感じられまさに異世界と呼ぶべき光景だった。道の両脇には五重塔みたいなのがポンポン建っている。その先を進んで街に入ったら道に広がるのは無数の出店。この世界、どんだけの人が表現者やってんだ…。

 

「やばいなツクヨミ。探索するだけでも一月は軽く消し飛びそうだ!」

 

「―初ログインおめでとう!ツクヨミではみんなが表現者!君も何かをして人の心を動かしたら、運営から『ふじゅ~』がもらえるよ☆」

 

さっきチュートリアルでであった。謎のモフモフ生命体の声が聞こえると、何もないはずの空間からいきなり金色の小銭みたいなもんがわいてきた。なんか和同開珎みたいだなこれ。オマージュなんかな。

 

「ふじゅ~は、このツクヨミでユーザー間の取引で扱う仮想通貨。また、現実の世界の通貨にも変換できる。だからこのツクヨミで人気なコンテンツクリエイターは、昔でいうUtuberみたいな感じで凄い暮らしをしてるみたいよ。」

 

酒寄さんがすかさずこの似非和同開珎について補足してくれる。なるほど、この手の中にあるものは中々貴重なものであるらしい。人の心を動かす…か。自分も絵描きのはしくれだ。このツクヨミでも試しにやってみてもいいかもしれない。幸いこの世界は絵の題材には死ぬまで困らないぐらいにはありそうだ。

 

「さて、基礎的な説明は大体済んだことだし。どこに行く?正直、21時の予定考えたら今日は行けて一つだと思うけど。」

 

「ふふっ、それはもう考えてあるのですよ。酒寄さん僕たちは何ですか?」

 

「えっ何その質問?

 まぁ何かといわれたら、学生でしょ。」

 

「それは!……そうなんですけど。

 いいですか、僕たちはカフェの店員ですよね。」

 

「まぁそうだね。」

 

「そうでしょう。だからまずはこのツクヨミでのカフェを体験したいわけですよ。

 もしかしたら、このツクヨミでの体験がBAMBOOcafeで生きてくるかもしれないし!」

 

「あ~、まぁいいけど。あんまり期待しないでよね。」

 

「謙遜しなさんな。酒寄さんがセレクトしてくれたお店ならそんなこと……

 

 

 

「…………、

 味がしないんだね。ツクヨミの食べ物って。」

 

先ほどの会話が終わってから、裏道へ入り、郊外へと抜けていった。彼女の後ろをついていくと、海の上に浮かぶカフェへと到着し、なんとまぁ凄いカフェだろうかと。これは期待できるぞと思っていたのだが。

自分が手に持っている豪華なパフェには味が……ない。

 

 

「やっぱり知らなかったか……。言ったでしょ、期待しないでって。」

 

うっ、折角案内してもらったのにこの反応は流石に失礼だ。それに正直言うほど落胆しているわけではないのだ。

 

「でもほら!こうやって見た目のインスピレーションもらえるだけでもこちとら嬉しいから!どうやって現実で再現してやろうかな~なんて。この紫色のシャーベットなんて、何を使ってんだ?普通に考えたらブドウとかだけど、紅芋とか使ってみるのもありだよね!」

 

「ぷっ、なに必死になってんの。いいよ、そんなにポジらなくて。物事ってそういうもんでしょ。どんなに完璧に見えても、どこかでは結局欠点だったり弱点がある。ツクヨミもその例に漏れないってだけ。結局は人間が作ったものだしね。」

 

「……。

 ねぇ、酒寄さん。僕がこのパフェ、リアルで再現したらさ。味見してよ。

自分じゃない、他人の意見って凄く大事だと思うんだよね。多分何回も失敗すると思うからさ。その度にお願いするよ。」

 

「いいの?それ。私が沢山得してない?」

 

「いいのいいの。結局材料費は、巡り巡って店長もちだし。好きなだけ食べてってよ。」

 

「……、まぁ。

たまにならいいかな。」

 

良かった。中々いい笑顔するじゃないか。そんな顔向けてくれるんだったら、僕も気合が入るってものだ。

一人モチベーションを上げていたその時、アラームが鳴る。

時刻は……、20時50分!

 

「時間だ。行くよマロ。」

 

「オッケー、ちなみにここから遠いの?」

 

「そこそこね。だから走るよ。操作は大丈夫そ?」

「おかげさまで。」

 

「りょーかい。じゃあちゃんとついてきてね。」

 

 

 

 

 

5分ほど走りついたのは大きなスタジアム?だ。何やら人だかりがすごい。本当に鈴村君たちは僕に何を見せたいってんだ。酒寄さんの後ろをピク○ンのようについていきスタンドへと到着、席に座る。スタンドもすごい人の数だ。大きなイベントが今から始まろうとしているのがわかる。

 

「先に軽く説明しとくね。

 このツクヨミでは色々なゲームがプレイできるけど、その中でもダントツに人気なのが『KASSEN』。で今から行われるのはKASSENの中のルールの一つであるSENGOKU。どんなゲームかというと……。ねぇMOBAゲープレイしたことある?」

 

「いいや。僕がプレイしたことあるのはRPGと格ゲーくらいだけど。」

 

「格ゲーはあるんだ……。まぁすごく簡単に言うと3対3の陣取り合戦で最終的に相手の本陣を落とすゲーム。それが今から行われる超簡単なゲームの概要。

 次になんでこんなに人が集まっているかだけど……

 

酒寄さんの次の声が発せられる瞬間に大きな声が会場内に響き渡る。

 

『皆様、お待たせいたしました!このツクヨミチャレンジカップ残す試合は1つのみ!

 最後の戦いは一般公募から集められた数多のチームをすべて薙ぎ払ったアマチュア最強のチームが日本最強のプロゲーミングチームに挑みます!

 まずはアマチュアの方から登場していただきましょう。

 Team Absolute Core !』

 

実況?の方のコールが入り会場全体が盛り上がる

ステージからは白煙が吹き上がる。そこから何やら人影のようなものが現れる。あの人たちがそのアマチュア最強チームなのだろう。

そろそろ煙が消えていく。そこから現れたアバターの姿を見て僕は既視感しか感じなかった。

 

「えっ、あれってもしかして……?」

 

『メンバー紹介に入りましょう!

 チームリーダー! FreeStyle、

ショットコーラー M4ken

エース      Takenoko

の3人となっております。このチームの特徴は何といってもデスの少なさ。この日まで行われた予選大会では、決勝戦でのTakenoko選手の1デスのみ!圧倒的な連携力と戦略で勝ち上がってきたチームです。その知略がプロにどこまで通用するか楽しみですね。』

 

見覚えがある方が若干二名ほど見える。どういうことなんだ。

 

「ツクヨミチャレンジカップ。

 簡単に言えば、一般プレイヤーの中でチームを組んでアマチュア最強を決める大会。その大会で鈴村君たちは優勝して今あそこにいる。そしてその優勝チームには、プロゲーマーへの挑戦権が与えられる。毎回プロゲーマーのメンツは違うけど……今回は特別。」

 

「え、なんで特別なの?」

 

「今にわかるよ。」

 

『さぁ、皆様ここから大本命の入場です!大きな声と拍手でお迎えくださーい!

 黒鬼! ご来臨——————————!』

 

その瞬間にスタジアムが揺れた。物凄い黄色い歓声が上がり、もはやそれ以外の音は何も聞こえない。呆然としていた僕が意識を戻したときには歓声が落ち着いており、ステージには圧倒的な存在感を示す三人組がいつの間にか立っていた。

 

「よう、子ウサギども。お前らの帝様がきたぜ」

 

赤髪のおそらくリーダー格の人がその発言をした瞬間再び歓声が沸く。

や、やばい人が来てしまったのか?すごいメンタルだ。正直聞いているこっちが恥ずかしくなってしまう。いたたまれなくなってしまい、横の酒寄さんに話しかける。

 

「な、なんかすごいひと……だね。」

 

そう言って酒寄さんの顔を見てみると……?

えっ死んでる?無表情通り越してなんの感情も読み取ることができない。心配になった僕は酒寄さんの肩を揺らす。

 

「酒……、イロさん大丈夫ですか!意識をはっきり持って!」

 

「はっ! 私さっきまでどうなってた?」

 

「あの黒鬼?っていう人たちが出てきてから意識を失ってたよ?

 なんかトラウマでもあるの?」

 

「まぁそんな感じかな。たはは……、はぁ。

話を戻すけど、今回招待されたプロゲーミングチームは黒鬼ことブラックオニキス。

いま日本で一番人気があって、一番強いチームだよ。あの人たちは多様なゲームで優勝してるけど、その中でもSENGOKUの戦績はレベルが違う。彼らがチームを組んでから、この日本で行われたSENGOKUの大会では1ゲームも落としたことはない。鈴村君たちも十分に強いけど、相手が悪いよ。なんせ、才能がある人たちが人生かけてゲームやってるんだから。学生とは訳が違う。」

 

おそらく酒寄さんの言ったことに何一つ間違いはない。この会場にいる人たちはほぼ全員が思っていることだろう。ただ、黒鬼が登場してからもずっと鋭い目つきで真剣な表情を貫いている鈴村君たちの姿を見ていると、そんな簡単に彼らが終わるわけがないと、そう思ってしまうのであった。

 




次回、ゲーマーたちのプライドがぶつかります。

以下オリジナルキャラクターたちの本名
FreeStyle:鈴村則正
M4ken:河木綾人
Takenoko:葛野功太
この3人はこれからも出番あります。

主人公のツクヨミアバターコスチュームイメージ
ストリートファイター6 ジェイミー outfit3color6
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