人の心があるタイプの改造TS機械生命体の話   作:葛城

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第十話: ゆっくりと、沈み始める未来

 

 

 

 ──最初に異変に気付いたというか、始まったのは、とある国の山間に住まう民族の村からだった。

 

 

 その異変とは、集団流産である。

 

 そう、その村には3人の妊婦が居たのだけど、3人とも1,2時間の間に相次いで流産したのだ。

 

 当然ながら、村では大騒ぎになった。

 

 流産自体は、不運ではあるけれども、けして珍しいことではなかった。

 

 どれだけ気を付けていても起こる時は起こるし、どんな妊婦であれ絶対に起きない保証は無いからだ。

 

 しかし、相次いで3人とも流産したとなれば、これを不運と片付けるにはあまりにもタイミングが悪く……どこかに原因があるに違いないと探し回った。

 

 もしも何かしらの原因によって流産を引き起こしたのであれば、事は妊婦だけに留まらない。

 

 村には幼い子供が居るわけで、ようやく歩き始めた子供もいる。原因によっては、その子供たちすらも犠牲になる可能性がある。

 

 ゆえに、村人たちは必死に記憶を巡らせ、どこかに原因があるかを探そうとした。

 

 その日どころか前日、前々日に食べた食事の内容や、日中は何をしていたか、何かに触ったりしたか、変な場所に行ったか、等々など。

 

 

 けれども、原因は何一つ見つからなかった。

 

 

 なにせ、村人たちが食べている食事はだいたい似たようなモノだったし、そこに原因があったならば、とっくに他の村人たちにも影響が出ているはずだと思ったからだ。

 

 日中の行動も、いつもと変わりない。変な場所も何も、そんな場所があったら村人の誰もが知っている。

 

 結局、原因らしい原因が掴めないまま、『これは精霊の呪いに違いない』という

 

 ことで結論が付いて、祈祷師にお祓いを……ということで終結したのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………しかし、そのように騒動が終えようとしている中での……距離にして250km離れた場所にある、とある町。

 

 

 そこでもまた、同様の異変が起こった。

 

 

 当時、町に住まう妊婦は98人居たのだけど、その妊婦たちがこれまた一斉に……時間にして2時間の間に立て続けに流産を起こしたのである

 

 さすがに大騒ぎになり、町中のテレビ局だけでなく、都市部の方からマスコミが毎日のように押しかけ、町の名が悪い意味で広まる事となった。

 

 また、この同時多発流産を非常事態と判断した国の機関が調査に乗り出し、妊婦たちだけでなく、その友人たちにも入念な調査を始めた。

 

 血液検査から、様々なアレルギー検査。

 

 病気の有無に、使用している薬の確認、生活習慣など、とにかく片っ端から検査を行い、原因を探ろうとした。

 

 また、この事件においては、自然現象あるいは野生動物が運んだウイルスや病原菌を提唱した、様々な分野の学者が集結し、原因究明に動き始めようとしていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………しかし、そのようにして98名の胎児の命を奪った事件が連日報道されている中で……そこから180kmほど離れている……いや、そうではない。

 

 

 妊婦の集団流産現象は、様々な場所にて連続して起こるようになった。

 

 原因もキッカケも不明。

 

 一人の妊婦が流産したのを皮切りに、次から次に『赤子が流産したの、助けて!』という連絡が病院や警察へと殺到し。

 

 最初に村で集団流産現象が起こってから二ヵ月と経たないうちに、その国を始めとして近隣諸国では、延べ20万人を超える妊婦が流産したのである。

 

 その事に……そう、自分の国だけでなく、他国でも短い期間で万単位の妊婦が立て続けに流産しているのが分かり。

 

 ようやく、WHOが公式に動いたのは、最初の時から約3ヵ月が経過しようとしていた頃であった。

 

 この頃には、既に妊婦の流産件数がたった3ヵ月で100万人にも達しているのではと報告されるようになり。

 

 WHOは正式に『緊急事態』であると明言し、世界同時多発流産現象の原因究明と、解決に向けて動き始めた。

 

 

 ……が、しかし。

 

 

 世界中で、それまでの検診では問題が見られなかった妊婦までもが次々に流産しているという摩訶不思議な現象に対して、そう簡単に答えが見つかるわけもなく。

 

 一ヵ月、二ヵ月、月日を経るたびに、流産件数が増えていき。

 

 そして、調査を始めてから1年後……人類史上最悪の事件として、『調査を始めてから一年間、一人も赤子が生まれなかった』という非情な報告がなされたのであった。

 

 

 ……実は、だ。

 

 

 世界では1年間の間に約6000万人ぐらいが亡くなっていると推定されている。

 

 あの恐怖の円盤の活動が止まったことでひとまずの安心を得ていた人類だが、そこで終わらなかった。

 

 ここに来て、来年にはさらに悪化する可能性が極めて高いと発表されたのだ。

 

 

 当たり前……という言葉が正しいのかは不明だけど、パニックが起こった。

 

 

 特に、人口が増大し続けていた国では、その影響はすさまじかった。

 

 なにせ、一日に何百人、何千人という妊婦が次々に流産を起こし、あまりにも流産が多発したことで様々なデマが流れ……しかも、事はそこで終わらなかった。

 

 流産してしまった女性だけでなく、妊娠したことがない年若い女性ですら、どう頑張っても妊娠することがなくなったのである。

 

 女性たちが一斉に病気になったとかではなく、どういうわけか、誰も妊娠しなくなったのだ。

 

 最初の頃は多発する流産騒動によって誰もが目を向けていなかったが、一ヵ月、二ヵ月、三ヵ月が経った頃。

 

 世界各国の産婦人科よりその報告が成された時の混乱は、もはや言葉では語り尽くせるモノではなかった。

 

 

 ──誇張どころではない、まさしく、人類絶滅の危機であった。

 

 

 これは人類に限ったことではなく、女性が子どもを生める(妊娠できる)年齢には限りがある。

 

 閉経するまでは妊娠出来るというのはあくまでも理論上の話であって、実際に女性がリスク少なく妊娠出来る期間というのは、思いのほか短いのだ。

 

 言い換えれば、もしもこれから30年、この危機を解決できなかったら……人類の絶滅は確定するといっても過言ではない。

 

 ましてや、精度の高い不妊治療が行える国ともなれば、元々出生率が低迷していた先進国ぐらいで……自然妊娠が成されなくなったという衝撃は、あまりにも衝撃的であった。

 

 この事態を受けて、それまでとは比べ物にならないぐらいに子供の保護が叫ばれ、男女の区別なく、子どもを殺せば一発で死刑だと即座に刑法を改正した国も出たぐらいであった。

 

 

 ……そんな中で、だ。

 

 

 秘密裏に、原因を探り当て、原因排除に動き出した者たちもいた。

 

 一般的には全く知られていない……一部で、『反宇宙人団体』と呼ばれている者たちである。

 

 その者たちは、それまで積み重ねて来たデータ、様々な情報網を駆使して、最初に流産が多発した地域を割り出し……そして、見つけ出した。

 

 そう、34人の宇宙人たちが死なば諸共と覚悟し、対人類絶滅を目論んだ、超強力な避妊薬を垂れ流す装置を。

 

 合わせて、居合わせた宇宙人とは対話もなく交戦となり……最終的には破壊に成功したけれども、それに至るまでの4週間、ずっと薬液は垂れ流しになっていた。

 

 

 これに伴って、世界中での調査が行われたが……まあ、すぐには見つからなかった。

 

 

 当たり前だが、地球は広いのだ。

 

 超巨大な施設ならばともかく、件の装置の大きさはそこまでではなく、隠そうと思えばいくらでも隠せるサイズであった。

 

 宇宙人を尋問して場所を聞き出そうにも、交戦した宇宙人は例外なく素早く自殺してしまったことで叶わず……結果、一つ一つ地道に調査するしかなくなってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、人々が人類の絶滅をはっきりと予感し始めようとしていた……そんな時であった。

 

 

『──お久しぶりですね、『ファンタジーパック』の販売を始めます』

 

 

 更新が途切れてから一度として投稿されていなかった、例の宇宙人のアカウントに、そんな投稿がなされたのは。

 

 これに対して……それはもう、これまでとは桁違いの罵詈雑言がそのアカウントに寄せられた。

 

 言うまでもなく、世界中の人々は……この一連の流産多発現象を、この宇宙人の仕業だと断定していた。

 

 

 それも、致し方ないのだ。

 

 

 人々のほとんどは、宇宙人と聞けば、彼女のことしか知らなかった。反宇宙人団体の存在も、この星には彼女以外の宇宙人が居たということも、知らなかったのである。

 

 それゆえに、全ての責任が彼女にあると考える者が多かった。

 

 名指しでの殺害予告は毎日何千何万と行われ、彼女が隠れ潜んでいると噂されたところは放火されたり銃撃されたり……いかに、人々の怒りが凄まじいのかが察せられた。

 

 

 ──まあ、もちろん、彼女は何も変わらなかったのだけれども……とにかく、だ。

 

 

 憎悪は別として、『ファンタジーパック』なる商品について、人々は様々な仮説や憶測が生まれ、すぐには買う人が現れなかった。

 

 これまでの商品とは違い、数は無制限、値段も日本円で200円という破格の金額なのに……まあ、それもまた当然だろう。

 

 なにせ、商品説明が、『ファンタジー、ありますよ』とかいう、説明する気が有るのか無いのか、あまりにもふざけたモノだったからだ。

 

 なお、どの国も恐れて規制には動かなった……ので、ある意味、無法地帯になってしまった。

 

 おかげで、同人販売サイトには膨大な数の誹謗中傷が寄せられ、サーバー攻撃すらも行われ……たのだけど、それはすぐに治まった。

 

 何故か……それは、『買わないのであれば、あるいは攻撃のために購入するとこちらが判断致しましたら、攻撃と見なしますよ?』というコメントがアカウントより成されたからだ。

 

 実際、世界中にて次々に爆発事故が発生し、たった一日の間に世界13万個所が同時に爆発したのが後に判明し……そうして、ついに、だ。

 

 

 購入する者が、現れた。

 

 

 そして、実際に購入した者よりレビューが投稿され……そこで、驚くべきことが分かった。

 

 そこは、説明されたとおり、まさしく『ファンタジー』であった。

 

 まず、購入すると、アクセス権限を所有している証明キーが腕にタトゥーの形で記されるらしい。

 

 一回の往復で、200円。

 

 一往復するたび自動的に引き落としされるとのことで、その都度買い直す必要はないらしい。

 

 コレがある者に限り、件の宇宙人が語る『ファンタジー』とやらの世界……レビュー者曰く、だ。

 

『目の前に淡く光り輝く空間が生じ、そこを通れば別の空間にワープする』とのことで、実際にその先で、初心者パックとして剣と盾が用意されていた、とのこと。

 

 そこは、自分が知っている世界とはまったく別物だったらしく。

 

 絵本や小説や漫画などのサブカルチャーに出てくるような生物が居て、倒せば食用可能な食物に転じ、実際に食べてみてもなんの異常も起こらなかったというのだ。

 

 そのうえ、なんとそこで……人語を介する、人間によく似た知的生命体と接触したのだという。

 

 その者はとても友好的で、まだ顔を会わせてから数回程度だが、とても心優しく、今のところは怪しい動きは見られないとのこと。

 

 今後も調査を続ける予定だが、人類の危機に対する有効的なナニカが有るかはまだ分からない……というのが、レビューの全容であった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………人々が『ファンタジーパック』購入のためにサイトへ殺到するのは、それから5分と掛からなかったのであった。

 

 

 

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