人の心があるタイプの改造TS機械生命体の話   作:葛城

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第5話: わたし、悪い宇宙人じゃないよ

 

 

 

 大成功、それが彼女の正直な感想であった。

 

 

(おや、なにやらバラエティ番組でも取り扱われるようになったな)

 

 

 しかし、だ。

 

 思っていたよりも好評だったことに満足していた彼女だが、なにやら、想定していた方向とは違う事態に世間の反応が動いていることに、ちょっと首を傾げた。

 

 ニュースにしろ、テレビやSNSで取り上げられるにしろ、どうにも、想定してたような騒がれ方ではない。

 

 具体的には、だ。

 

 

『謎のアカウント!? 宇宙へ招待!?』

 

『購入者が語る、アレはぜったい宇宙人だ』

 

『俺はUFOに乗ったんだ、そうA氏は語る!』

 

 

 と、いった感じで、なんかこう……異常な事態に遭遇して混乱極まる、といった感じなのだ。

 

 もちろん、全員が全員、そうではない。

 

 混乱しつつも、『怖いけど、宇宙を見られたのは良かった』とか、『考えると恐ろしいけど、感動した』といったコメントを残している者もいる。

 

 中には、悪質なデマを流したり、一度として購入していないのに購入者を装って注目を集め、小金を稼いでいる者もいる。

 

 そういうのは良くないと判断している彼女は、そういったアカウントに対して何度か警告を発している。

 

 素直に警告に従ってくれるならば見逃すが、無視したり、従ったフリをして別アカウントを作って……という者に関しては、容赦なく制裁を与えている。

 

 具体的には、そのアカウントが所有している全財産の没収である。

 

 現在、彼女は既に地球上全てのインターネット回線を完全に掌握していて、何時でも手に取るようにあらゆる秘密の箱に手を入れることが出来る状態になっている。

 

 人間が少しずつ積み上げ発展し続けた末の高度な情報社会……だがそれは、彼女からすれば、より抓みやすくなっただけであった。

 

 あらゆる暗号、防壁、ハッキング対策の全てが、彼女にとっては有って無いようなモノ。

 

 まず、ネットバンキングを根こそぎ漁って、銀行口座なども掻っ攫い、その他様々な金融資産を根こそぎ奪う。

 

 そのうえで、当人が出金などを行っているという偽の記録も必要に応じて残しておく。

 

 こうすると、現在の人間の科学力では、『本人が自分で引き出した』という客観的なデータだけが残されるわけだ。

 

 その前の段階で物理的に現金化していたり、書面に認めているモノなら少しばかり手間が増えるだけで、同時並行で書き換えてしまえば、同じこと。

 

 いくら偽造であると訴えたところで、書面もデータも全てが別人であるならば、その言葉は戯言である。

 

 たとえ偽造だと訴える者が100人、200人になろうとも、結果は同じ、よほど血迷っていない限りは、改められることはない。

 

 もしもその無理を押し通したが最後、それから先、人数を集めて訴えれば書面に認めようが何をしようが撤回できるという前例を作ってしまうことになる。

 

 そう、どれだけ訴えたところで、その証拠が無ければ……よほど気が狂っていなければ、そこで終わりなのだ。

 

 

(哀れなものだ。再三に渡って警告を発し、それを無視した結果なのに、自分は何一つそんな事をされる人物ではないと思っている……)

 

 

 制裁を受けた者の反応は、いつも同じ。

 

 SNSなどで動揺や混乱をアピールし、中には動画配信を行い大泣きして、自らが被害者であることを訴える者……でも、対応は変わらない。

 

 警告はした。

 

 何度も、何度も、警告した。

 

 それを払いのけたのは、相手だ。

 

 なら、己が甘い対応を取る理由も必要性もないわけで。

 

 その結果、既に制裁を与えた者は20人にも及び、現金資産に換算して、既に1億を超えていた。

 

 まあ、1億あろうが1兆あろうが、彼女にとっては風景の一部でしかないから、嬉しいも悲しいもないのだけど。

 

 

(……おお、今回は、テレビ局の者が購入したな)

 

 

 そんな事よりも、だ。

 

 以前からけっこう人気が出ていて話題になっている宇宙2時間パックのやつだが、どうもテレビ関係者が狙っていたっぽい。

 

 いや、ぽいというか、放送こそしていないが、どうも取れたら番組に……という感じで、毎日粘っていたのは確認している。

 

 接触したいとか、コンタクトを取りたいとか、そういう話は全てシャットアウトしているのだが……だから、なのかもわからないけれど。

 

 ご丁寧に、毎回深夜1時前にスタンバっていて、人数を活用した人力にて購入を狙い続けていたようで。

 

 この度、ようやく購入したわけ……なのだけど。

 

 

(……明らかに、私を撮影するつもりでいるな)

 

 

 正確には、この一連の商品すべてを……まあ、いい。

 

 これまではまあ特に理由なく撮影を禁止していたけれども、本当に理由なんて無いから、なんとなく……って程度だった。

 

 強いて理由を挙げるならば、『特別な……?』といった、フワッとしたモノ。

 

 だから、真正面からこちらが定めたルールに則って権利を勝ち取った相手が、こちらを撮りたいというのであれば……彼女は、それを無下にするつもりはなかった。

 

 それに、購入出来たことが確認出来た彼ら彼女らはとても喜んでいる。

 

 想像するまでもなく、購入してからが本番……どれだけ機材と人を用意したとしても、買えなければ意味がない。

 

 その証拠に、喜びもそこそこに、彼ら彼女はバタバタと慌ただしく動き始める。

 

 なにせ、猶予は現在時刻より22時間後の、当日の23時だ。

 

 一旦撮影するから後日撮り直しを……なんて話を私が拒否すればそこで終わってしまう以上は、必死にもなるわけで。

 

 事前にある程度の準備をしておいたとはいえ、それでも決まってからでないと動かせないこともあるから……本当に、彼ら彼女らの動きは慌ただしかった。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 彼女が姿を見せるのは、基本的に契約した端末がある場所である。

 

 つまり、スマホから購入したのであれば、そのスマホがある場所に。PCなど設置してあるところならば、そこに出現する。

 

 もちろん、その時間にそこから離れている場合なんていくらでもあるから、あくまでも、基本的に……の話なのだけど。

 

 で、その日の夜。

 

 『23:00』になると同時に、彼女は待ち構えている彼ら彼女ら……すなわち、テレビクルーたちの前に出現した。

 

 何故ならば、テレビクルーが購入した際に使っていた機材は、ノートPC。そして、そのノートPCは、この場にある。

 

 だから、彼女はそのPCがある場所に出現したわけだ……で、だ。

 

 

 ──その瞬間、ザワッ、と。

 

 

 どよめきが、室内に広がった。

 

 既に調べていたので分かっていたが、そこはとあるテレビスタジオで、いくつもの照明と、いくつものカメラ、それを横目に、彼女は……眼前の者たちへと視線を向けた。

 

 直接顔を合わせるのはコレが初めてだが、ちょっと人気になっている芸人……以前の記憶では、名前は聞いた覚えがある程度。

 

 その横には、バラエティ番組などにも売り出し中の女性タレント……以前の記憶では、ファンではないが美人ではある、という評価。

 

 他にも、名前は知っているけど、昔は人気だった芸能人。そして、カメラの撮影範囲外にはチラホラと撮影スタッフが……まあ、確認はこれぐらいにしといて。

 

 

「──お買い上げありがとう。それでは、ただいまより宇宙へ招待しましょう」

 

 

 早速、彼女は商品を与えようと手を伸ばした──のだが。

 

 

「あ、あの、ちょっと待ってください!」

 

 

 その手が、スポットライトを浴びている芸能人たち……ではなく、その陰、大勢いる撮影スタッフの中の一人へと向かっているのを見て、芸能人が手を挙げた。

 

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 

 ぐるりと、振り返れば、『なぜ、そちらに?』との質問を投げかけられた彼女は、笑顔のまま答えた。

 

 

「それは、購入したのが彼だからです」

「え?」

「購入ボタンを押したのは、彼です。なので、彼が対象となります」

「え、あ、あ~」

 

 

 まずいぞ、そう言わんばかりに顔色を変えた芸人──そこで、ハッと何かに気付いた様子で、彼女を見やる。

 

 

「共同! その、僕たち共同で購入したんですけど、その場合はどうなるのでしょうか?」

「その場合は、共同で購入した全員分となります」

「──っし!」

「ただし、ですよ」

 

 

 思わずガッツポーズを取る芸人に対して、彼女は先に釘を刺しておく。

 

 

「私は既に、貴方達のことを調べております。今回、この場に居合わせた者を対象としますが、今後、同じ方法でこっそり人数を水増ししようとしたのが分かった時点で、契約違反となります、ご了承ください」

 

 

 その言葉と共に。

 

 彼女より『宇宙へ向かう者は、購入した彼と手を繋ぐか、手を繋いだ者に手を繋いで数珠繋ぎになってください』と指示を出せば、彼ら彼女らは慌ただしく手を繋いで──っと。

 

 

「あ、あの、撮影したいのですけど、カメラとか機材の持ち込みは……」

「数珠繋ぎのように機材を私たちの間に挟む形に差し込んでください、指示に従う限りは、基本的に自由です」

 

 

 心配そうに尋ねられたので、そう答えれば、スタッフたちは先ほどよりもずっと慌ただしく……それでも、3分と経たずに準備を終えて、OKが出たので。

 

 

「さあ、行きましょう」

 

 

 彼女は、これまでで一番の大所帯になる、宇宙への旅に彼ら彼女らを招待したのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ちなみに、だ。

 

 

 最初の頃とは違い、ここ最近になると、けっこう客の反応も変わって来る。

 

 噂はどこからでも必ず漏れる(さすがに、口コミまでは……)から、事実にしろデマにしろ、ある程度の情報を仕入れたうえで購入している人が多くなっている。

 

 実際、初めて購入した人でも、『これ、本当だったんだ!』ってな感じで。

 

 最初の頃は未知との遭遇にビビり倒していた人ばかりだったけど、いつの間にか『これ、〇〇で見たやつだ!』みたいな感じで。

 

 テレビスタッフたちも人海戦術で購入しただけあって、事前に調べていたっぽくて、怖気づくよりも驚きの方が強く、すぐに状況に慣れて撮影をし始めた。

 

 それは、芸能人たちも同じだが……例外は、この場で一番高齢の、昔は人気だった芸能人……まあ、とにかく、だ。

 

 

「あの~、その、急で申し訳ないのですけど、インタビューしても良いでしょうか?」

「構いませんよ。お答えできることは、お答えいたしましょう」

「その、貴女はいったい、何者なのでしょうか?」

「説明すると長くなりますので詳細は省きますが、宇宙人の一種だとでも思ってください」

 

 

 購入した彼ら彼女らがそれで良いのであれば構わないのだけど、せっかく宇宙を見ているわけだし、もう少し景色を見たら……と思わなくはない、彼女なのであった。

 

 

 

 

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