人の心があるタイプの改造TS機械生命体の話   作:葛城

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第六話: 転載ヤ―、許すまじ(収益無しなら、まあ許す)

 

 

 この日、撮影されたテープを、重役たちと一緒に拝見していたディレクターの尾花孝(おばな・たかし)は、興奮で両足の震えを抑えられなかった。

 

 それは、身をもって体感し、本物の宇宙人との接触を果たした記録映像を、初めて公開したからだ。

 

 そう、実はあの日あの時、尾花もあの場に居合わせていて、一緒に宇宙へと行ったわけだが。

 

 尾花は、生まれて初めて興奮のあまり失神しそうになる……という感覚を経験した。

 

 幸いにも、失神はしなかった。

 

 また、失神しかけたのは尾花だけでなく、居合わせた誰もが大なり小なりな感じだったけれども……で、だ。

 

 

 とにかく、言葉では言い表せられない光景であり、出来事であり、時間であった。

 

 

 芸能界という世界に属してから色々な経験をしてきたけど。

 

 常識が根底からひっくり返る経験、それを言葉ではなく体感させられた尾花は、とにかく見てくれと重役たちに声を掛けたわけである。

 

 普通なら、一介のディレクターが声を掛けたぐらいでは、重役たちは集まらないし、逆に怒鳴られても不思議ではない行為だ。

 

 けれども、今回ばかりは尾花の反応がいつもと違ったせいだ。

 

 とにかく見てみないと一生後悔すると何度も何度も何度も念押しし続けたことで、そこまで言うのならば……と、重役の一人を動かしたのである。

 

 これがせめて尾花だけだったならば、そうでもなかっただろう。

 

 けれども、明らかに反応が異なるのは、尾花だけではない。その日、撮影に参加していた者たち全員が、是が非でもと意見を一致させたのである。

 

 全体としてみれば、少人数も少人数ではある。

 

 それでも、出演した芸人、昔の大御所、売り出し中の女性タレント、聞き取り調査に答えたスタッフ一同が口を揃えたとなれば、そこまで言うなら……と、予定を合わせたわけである。

 

 そして、プロジェクターによって映し出された、その映像を確認した重役一同は……なんとも言えない顔で、映像を見つめていた。

 

 それは、懐疑的な眼差し……とは、少し違う。

 

 いや、少しは混じっているかもしれない。

 

 けれども、それ以上に多いのは……見せられているこの映像をどう扱えば良いか、その判断に尽きた。

 

 

『──詳細は省きますが、宇宙人の一種だとでも思ってください』

『──住んでいる場所? この星のどこかとだけ』

『──はい、銀河の果てからやってきました』

『──侵略の意思などありません』

『──笑顔です。意図があるならば、それだけです』

『──私の商品を買って、笑顔になる』

『──それを見るために、やっているのです』

 

 

 カメラを向けられた少女は、淡々と答える。

 

 そこに、恐れも何もない。

 

 ただ、質問を受けたから答えるだけ。

 

 見たままを語るのであれば、とくに不自然な点は見られない……モデルとしてもやっていけるぐらいの美少女だ。

 

 そう、姿だけを見るならば、不自然な点は無い。

 

 その背後には……彼らの言葉では上手く説明出来ない、メタリックな光景が広がっている。

 

 なんとなく、機械の一種であるのは察せられる。だが、彼らの知る機械とは、どうにも見た目が違う。

 

 CGの一言で終わらせるのは簡単だ。

 

 だが、わざわざ、それも重役たちを騙すためだけに、ここまで精密な3DCGを作る意図が分からない。

 

 そもそも、それほどの3DCGを作るとなれば、100万円や200万円では……ゆえに、重役たちは……そのうちの一人が、尾花に問いかけた。

 

 

「それで、これを見てどうしろと?」

「直ちに特番を組んで、放送すべきかと思います」

 

 

 それは、重役の誰もが想像していたとおりの返答であった。

 

 

「……残念ながら、これだけでは難しいな」

「何故ですか!? 世紀の大発見じゃないですか!! 本物の、未知との遭遇なんですよ!?」

 

 

 そして、それに対する返答もおおむね重役たちが脳裏に浮かんだモノであり、尾花の反応も想像そのままであった。

 

 

「まさか、これが偽物だと思うんですか!?」

「そうは言っていない」

 

 

 憤る尾花に、重役の一人がキッパリと否定した。

 

 

「だが、そんな事よりも、もっと重大な事がある」

 

 

 と、同時に、言葉を続けた。

 

 

「それは、映っている人物が未成年の女の子なのが問題なんだ」

「──っ! 彼女は、宇宙人です! 未成年ではありません!」

「事実がどうかは関係ない。未成年の女の子に見える、それだけでも大問題なのだよ」

 

 

 ジッと、その重役は尾花を見つめた。

 

 

「昨今はとにかく、未成年の扱いにうるさい。たとえ傷つける内容ではなくとも、必ず子供の身元や保護者から承諾を得ているか……そういう確認がスポンサーから来る」

「それは……」

「知らなかったでは、済まないんだ。この際、本物であるかどうかなんてのは、些細な問題なんだよ」

 

 

 その言葉に続いて、「客観的に、考えてみなよ」別の重役が言葉を引き継いだ。

 

 

「視聴者からしたら、宇宙人に扮する少女にしか見えないわけだ。それで、あの子は誰だって視聴者からスポンサーから尋ねられて、どう誤魔化すつもりだね?」

「それは、本物の宇宙人、あるいは守秘義務という体で……」

「仮にそれで誤魔化せたとして、当の向こうが『無理やり演技しろと脅された』なんて言ってきたらどうなる?」

「そ、そんなこと──」

「なんの保障があって否定出来るのかね? もしもそうなったら、『未成年を脅して出演させているテレビ局』の汚名を被り、全世界デビューだ」

 

 

 そこで、ため息を一つ吐いた。

 

 そこまで話したあたりで、尾花はがっくりと肩を落とした。

 

 引きずられて興奮冷めやらぬといった感じの者たちも頭が冷えたのか、少し居心地悪そうにしていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そのまま、少しばかりの沈黙が流れただろうか。

 

 

「……正直なところ、私から見て、これは本物だと思う」

 

 

 けれども……そう言わんばかりに、重役は尾花の行動を責めはしなかった。

 

 

「君たちが会ったのは、本物の宇宙人だと思う。もしも私が君たちの立場だったなら、同じように死に物狂いで上に話を通そうとしたと思う」

「…………」

「だが、時代が悪かった。今は何かとコンプライアンスだの何だの騒がれる……せめて、あと20年早かったら……」

 

 

 その言葉に、尾花はさらにがっくりと肩を落としたのであった。

 

 

 

 

 

 ……だが、この後、この場に居る誰しもが思いもよらぬ事が起こった。

 

 

 それは、関係者による情報流出である。

 

 人の噂はどう足掻いても防げないとはよく言ったモノだが、噂ではなくとも、人の意思とはあまり強くはない。

 

 やはり、何時の時代もお金目当てだったり、承認欲求だったり、嫌がらせのためだったり。

 

 けしてポジティブではない様々な理由で秘密が暴露されたりするもので……それはテレビ局の人であろうと同様であった。

 

 

 ……誰が流出させたのか、それはもう考えるだけ無駄である。

 

 

 問題は、流出した後で……最悪なことに、一切のモザイク処理が施されていない元テープだっただけでなく。

 

 よりにもよってそれを、世界でも有数の動画配信サイトにアップロードされたのである。

 

 しかも、大々的に宣伝したわけではなく、『宇宙人との交流』というタイトルと共に……もちろん、最初はほとんど再生されなかった。

 

 しかし、少しばかり時が流れた後……たまたま、とある配信者が、その流出動画を取り上げたことで、雲行きが一変した。

 

 その日のうちに、5万再生。

 

 翌日には12万再生。

 

 翌々日には19万再生、その次の比には23万再生と、着実に再生階数を伸ばしていき。

 

 テレビ局がそれに気づいた時にはもう、取り返しがつかない段階にまで進んでいた……が、しかし。

 

 

 ……正直なところ、テレビ局の反応はあまり早くはなかった。

 

 

 意味が無いと分かっていても動くべきだと声をあげる者、そうする前にあの宇宙人の少女が動くだろうと楽観視している者。

 

 むしろ、下手に動かない方が良いのではという日和見……とにかく、意見が統一されなかったことで、初動がとにかく遅かった。

 

 

 ……それは、件の少女が沈黙を保ち続けるという不気味な動きが理由でもあったのだけど……いや、動いた形跡はあったのだ。

 

 

 ただ、動く基準が分からなかったせいで、少女を知る者たちは動くに動けなかったのだ。

 

 そうして、気付けば動画は100万再生を超え、200万、300万と伸びていき……そして、ついにSNSを飛び越え、地上波へと。

 

 

 そう、アメリカのテレビ局にも取り上げられたことで、話は日本だけに留まらなかった。

 

 

 その動画に映っている『宇宙人と名乗るこの少女は何者なのか?』という質問に答えられる者は誰もおらず。

 

 本人だと自称する者や、関係者だと自称する者が現れる……そんな中で。

 

 

『物より思い出……しかし、私ばかりが与えるのはダメですね、皆さまの思い出のためにも、新たな商品を販売することにしました』

 

 

 例の同人販売サイトの、例のアカウントからは、そんなコメントが追加され……その揺れは、確かに全世界へと広がりつつあった。

 

 

 

 

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