ゴブリン退治に向かう新人達とドワーフの話   作:お前の隣の後ろの斜め右

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ちょい長めです。筆が乗りました。


第十二話 縁

 

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「すまナイ……」

 大百足の蟲人の胸を、白く柔らかな翅を少し展開し震わせながら、蛾の蟲人は指で軽く刺した。鱗粉が舞う。

 彼女の後ろで蟋蟀が囃し立てるが、すぐ蛾に気付かれて、部屋の隅にいた蜘蛛の影に隠れる。

「怖イ」

「今ノはオマエが悪いダロ」

 討伐から帰って来た盾鉱人達を迎えたのは、触角を忙しなく動かしていた蛾の蟲人だった。

 何か言葉を発する前に、全員の傷を確認。致命傷はないことがわかると、息を吐きながら「おかえりなさい」と迎えてくれたのだ。

 一人ずつ順番に、しっかりと傷を診ていくうち、大百足が、手に傷を負っているのに、改めて気付いた。

「傷が増えてますが……?」

「ソレは、仕方なかッタ」

 大百足が言い訳をするたびに、蛾の触角がぴくりと動き、盾鉱人達でも分かるくらいに、眉間の辺りにシワが寄っていく。

「毒は克服シタ」

 蛾は黒い瞳で大百足を見詰める。

 大百足は目を逸らした。

「貴方が特殊体質なのは知っています」

「けどこの短時間では、無効ではなく耐性が限界ですよね?」

「薬があるとはいえ、完璧ではないのですよ?」

 分かっていますか?、と蛾は無理やり大百足の顔を掴み、目を合わせた。

「何か、言うことは?」

「すまナい……」

「デモ勝てると思っタし、実際勝ッタ」

「それでもです」

 彼女は顔から手を離した。

 深く、息を吐く。

「無理をするなとは言いません。けれど余計な心配はさせないでください」

 翅を折りたたむ。

「そウ、ダナ。気を付ケる」

 大百足は俯いて、肩から力を抜いた。

 もう一度、蛾の蟲人は息を吐く。

 そして、触角をふわりと揺らした。

「改めて、おかえりなさい」

 彼は顔を上げた。

 そして、小さく顎を震わせる。

「アア、ただイま」

 

「それで、報酬ですが」

 盾鉱人は蛾の蟲人の声に顔を上げた。

 手入れ中だった盾を、背中にしまう。

 「鼠」と書かれた、油の入った瓶に蓋をする。「意外と悪くないでしょう?」蛾の蟲人は瓶を目で追い、触角をふわりと揺らした。

「ああ、存外臭いも少ない」

「普段使いでも、問題ないくらいだ」

 盾鉱人は布切れで指を拭う。

「まさか報酬は油だけ、なんてことは無いだろう?」

 蛾の蟲人は肩をすくめて、おどける。

 盾鉱人は僅かに口元を崩した。

「まさか。確認、というか相談がありまして」

「今回の報酬、金銭ではなく物品でも良いでしょうか」

 盾鉱人は僅かに眉をひそめる。

「珍しいな。何故だ」

「地上に薬を売っている、と言いましたが、その時の手続きに金銭が必要なのです」

「組合ニ認可さレないカら、色々面倒なノサ」

 蜘蛛の蟲人が付け足す。

「原液をそのまま使ってるみたいだし、まあ、おりないでしょうね」

 魔術師が机に散らばったメモ帳を一瞥して、同意する。

 棚に並ぶ薬品のラベルを覗いて、片眉を上げた。

「私の調合方法では、地上の薬師組合との折り合いがどうしても付かないのです」

「なので出荷本数管理や、お店の仲介を自分達でしなければならず、どうしても入用で」

 蛾の蟲人は、目を伏せる。

 盾鉱人が頷く。

 冒険者に支払われる報酬の基本は金銭だが、稀に物品な場合もある。

 今回はそれだろう。

「分かった。それで、肝心の物はどれだ?」

 蛾の蟲人は立ち上がり、机の引き出しを開けた。

 中から包みを取り出して、慎重に紐を解く。

「これは?」

 横から魔術師がのぞく。

 蛾の手の上には、不思議なペンダントが置かれていた。

 白い翅の欠片が樹脂で覆われており、樹脂を雫型にかたどる金属は真鍮製で傷や歪みも見られる。

 光にかざすと白い翅の欠片が瞬いて、淡く光っているようにも見える。

「私特製の、護符です」

 蛾の蟲人が、盾鉱人に差し出した。

 彼は慎重に、革でできたストラップ部分を持つ。

「……これ、あんたの翅か」

「はい」

 護符を下から覗き込んで訊ねた。

「体力を、微量ですが回復する効果があります」

「私が作る護符の、特別によく出来た物の一つ」

 魔術師が蛾の蟲人に向いた。

「翅、切り取って大丈夫なの」

「大丈夫です。元々の蛾とは違い、私の翅は生え変わります」

 ふわり、と鱗粉を舞わせながら、蛾は翅を開く。

 キラキラと部屋に煌めきが舞った。

「ご覧の通り、傷ひとつないでしょう?」

 大きく広げた翅をゆったりと戻す。

 もう一度盾鉱人に向き直った。

「これで、よろしいでしょうか」

 盾鉱人は護符を見回した。

 真鍮の歪みを指でなぞる。

 その後に無言で、魔術師へ差し出した。

「ああ。むしろ金を払いたいくらいだ」

「なら、交渉成立ですね」

 蛾の蟲人は細い腕を合わせて、軽く頭を下げる。

 そして、首を少し傾けた。差し出されたままの盾鉱人の手に視線が移る。

「……どうした」

「いや、回復効果があるんだから前衛が持つべきでしょ」

 盾鉱人が訝しげな声を出すと、魔術師は手を押し返してきた。

「俺には盾がある」

「報酬なんだから、頭目の貴方が持つべき」

「お前に何かあったら困る」

 魔術師が一瞬固まる。

 それに、と盾鉱人は付け足す。

「防具はお前に回す約束だった」

 目を見開いた魔術師が、ゆっくりと肩を落とす。

「分かった。じゃあこれは、借りておく」

 盾鉱人から護符を受け取り、首に付ける。

 蛾の蟲人が小さく、笑い声を漏らした。

「……良い、感じだ」

「褒めるのヘタクソね。貴方」

 魔術師は、半目で盾鉱人を睨む。

 そして吹き出した。

「でも確かにしっくり来るわ」

 ありがとう、と蛾の蟲人に笑顔をむける。

 蛾の蟲人も頭を下げ返した。

「ああ。それと」

 帰り支度を始めていた二人に声をかける。

 魔術帽と鉄兜が彼女に向く。

「それ返却できませんから」

 仲間の印なので、と蛾の蟲人は付け足す。

 二人が固まる。数秒固まって、

「え?」

 魔術師が間抜けた声を出した。

「あと一族の宝でもあります」

「いやそれ最初に」

「でも受け取りましたよね?」

 魔術師は口篭った。

 こつこつ、と床を叩く音に彼女は振り返る。

「こレで俺ラと同じダな」

 カタカタと牙を震わせて、魔術師の横に移動した蜘蛛が、肩を組んできた。

 面食らっていた彼女は、すぐさま肩を振り解く。

「同じって、何がよ」

「俺らト同ジ匂いがスル」

「まだ身につけて数秒でしょ」

「時間ハ関係ない」

 自身の襟元を持ち上げ、魔術師は鼻をひくつかせる。

 植物の匂いに薬草の薬臭さしか感じなかった。

 揶揄うように近寄る蜘蛛の蟲人と、一歩ずつ後退する魔術師。

 蜘蛛の足元で、蟋蟀が飛び跳ねている。

「オ前もダゾ」

 彼らの様子を眺めていた盾鉱人は、後ろから声をかけた大百足に振り向く。

 彼は腕を組んで、楽しそうに笑っていた。

「騙シタようで、悪いガ」

 大百足は肩をすくめる。

「でも、せっかく出来た縁だもの。大切にしなくちゃ」

蛾の蟲人が触角を揺らしながら、盾鉱人の近くに歩いてきた。

「……やられたよ」

 盾鉱人の口調は、穏やかだ。

「でも良いのか?あの護符、貴重な物なんだろう?」

「良いんです」

「貴方達はもう、仲間、ですから」

「だから、これからもよろしくね」

 わざと口調を崩して、いたずらっぽく彼女は笑う。

 隣で大百足もカタカタと顎を震わせた。

 二人を見比べて、盾鉱人も釣られて静かに笑った。

 蟲達と盾鉱人の笑い声と魔術師の困惑した声が、明るく、下水道に響く。

 笑い声は灰色の石壁に反射して、なかなか消えなかった。

 

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「オルクボルグよ!」

「この冒険者ギルドにいると聞いたのだけれど」

 緑色の短髪で、軽装な弓使いが、受付嬢に何やら言葉を投げかけている。

 特徴的な長い耳と、妖精のごとき相貌から、森人、それも上森人である、ということは窺えた。

「オルクボルグ……」

 カウンターに片手をついて身を乗り出す森人に、受付嬢は顎に手を当てて応対する。

「ごめんなさい。ちょっと調べてみますね」

「あ〜いやいや、それにはおよばんわい」

 奥に資料を取りに行こうといした彼女を、呼び止める。

「耳長言葉が通じるわけがあるまいて」

「『かみきり丸』と言えばわかるじゃろう」

 白い髪に白い髭。

 森人の腰ほどの背丈と、道士風の服装。

 全身を小綺麗にまとめた鉱人が、したり顔で髭を扱いていた。

「……そういう方は、ちょっと」

「おらんのか!?」

 受付嬢の記憶に、「かみきり丸」なる人物に心あたりはなかった。

 鉱人道士の後ろで、森人が、口に手を当てて、鼻で笑う。

「何よ。全然通じて無いじゃない」

「やはり鉱人は、頑固で偏屈で自分ばかり正しいと思ってるから、ダメね」

「なにおうっ!?」

 売り言葉に買い言葉。そこから二人の口論が始まった。

 お互いの性格だけでなく、種族の特徴を貶し合い、さらに激しさが増す。

「あの、喧嘩はやめて……」

 受付嬢の静止も二人の言葉にかき消される。

「すまぬが、二人とも」

「喧嘩ならば拙僧の見えぬところでやってくれ」

 困ったように彼女が笑っていると、さらに二人の後ろから、大きな影が彼らを仲裁した。

 蜥蜴のような顔。深緑の肌色。

 聖職者風の服装に、鋭い爪と牙。

 長身と長い尻尾。

 特徴は蜥蜴人と一致していた。

「拙僧の連れが騒ぎを起こしてすまぬな」

 蜥蜴僧侶は低い声で、頭を下げる。

「いえ。慣れてます」

 受付嬢は、眉を八の字にして微笑む。

 改めて、彼らを観察する。

 上森人、鉱人、蜥蜴人。しかも全員銀等級。

(不思議なとり合わせ)

 鉱人の冒険者は身近にも居るので目新しさはないが、彼らと仲が悪い上森人に、滅多に姿を見ない蜥蜴人まで。

 何かあるのでは、と彼女は勘ぐりそうになるのを、堪えた。

「つまり、『かみきり丸』『オルクボルグ』とはその者の字名でな」

 蜥蜴僧侶が受付嬢に話しかける。

 彼女は意識をそちらに向けた。

「拙僧も共通語に明るくは無いのだがーーー」

「ゴブリン、だろう」

 全員が、声の方に一斉に振り返る。

 受付嬢だけは、声に聞き覚えがあった。

「お二人とも、おかえりなさい」

 盾鉱人は、彼女の言葉に頭を軽く下げて応える。

 盾鉱人の後ろで、魔術師が何事か、と受付の一党と盾鉱人を見比べた。

「……貴方、今ゴブリン、といったのかしら」」

「ああ」

 妖精弓手は振り返り、特徴的な耳を、ぴくり、と動かした。

 盾鉱人は、鉄兜を被ったまま、カウンターに、牙や白い毛皮を置くと、確認するように指で軽く叩いた。

「『オルクボルグ』『かみきり丸』は、どちらも神話に登場する魔剣の名前をもじったものだろう?」

「只人では『小鬼殺しの剣』、と呼ぶ」

「小鬼……ああ」

 盾鉱人の隣で、魔術師が息を吐きながら目を逸らす。

 妖精弓手は彼女の様子を目で追いながら、無言で話の続きを促した。

「つまり、あんたらの探している人物は『ゴブリンスレイヤー』という名前で呼ばれている、あいつだ」

 盾鉱人は彼女を見た後、視線を受付嬢に滑らせた。

 受付嬢は素早く、書類を確認する。

「ゴブリンスレイヤーさんなら、依頼で出ていますね」

 もうすぐ帰ってくると思いますが、と彼女は妖精弓手を見上げた。

「なら待つわ」

 彼女は凛々しい顔をさらに引き締めて、どっかりと近くの椅子に腰を下ろした。

 腕と足を組んで、そっぽを向く。

 それがまた絵になっていて、魔術師と受付嬢は、少しだけ羨ましく思った。

「しかし、こんなところで同胞に会えるとは思わなんだ」

 盾鉱人がカウンターから牙や毛皮を取っていると、鉱人道士が話しかけてきた。

 盾鉱人は毛皮を魔術師に渡して、自分は牙と尻尾を持った。

「俺もだ。だから、何か理由があるはず、とも思っていた」

「やはり鉱人の方がよほど早く本質に辿りつくのう。なあ耳長」

 したり顔で鉱人道士が後ろへ向く。

「うるさいわね‼︎ この石頭‼︎ たまたまよ」

 ぎゃあぎゃあとまた言い争いを始めた二人を、蜥蜴人が長い尻尾で宥める。

 見かねたギルド職員が、応接間に案内をし出した。

 ーーーズ、と二人の後ろを歩いていた蜥蜴僧侶の足が止まる。

 彼はふいと顔を巡らせて、辺りを見回す。

 チロチロ、と先の割れた舌を覗かせると、空気の匂いを探るように鼻を動かした。

 微かに鼻先を、植物の匂いがくすぐった。

「……おやおや」

「どうしたの?」

 不思議そうに振り返った妖精弓手に蜥蜴僧侶は首を振った。

「いや、なんでもござらん。古い知り合い、『同胞』の匂いと似た香りがしたのでな」

「地上では嗅がぬ匂いゆえ、拙僧の勘違いだろう」

 蜥蜴僧侶は、魔術師に目礼すると、長い尻尾を揺らしながら、廊下の奥へと消えていく。

 彼の視線に気付いた魔術師は、不思議そうにお辞儀を返した。

 同じように首を傾げて、蜥蜴僧侶を追う妖精弓手。

 そして、それを横目に、盾鉱人たちは依頼の報告を始める。

「依頼の巨大鼠は狩れたが、まあ色々あった」

 下水での顛末と「白い鼠」について。

 ひっそりと暮らす「蟲人」達との共闘や、貰った報酬品について。

 薬を売っていたことや、知られるとまずそうな部分はぼかして伝えたが、概ね正直に報告した。

「この度は申し訳ございませんでした」  

 偶発的なこととはいえ情報と違う敵が出てきた、と受付嬢に謝られて、逆に彼女を二人でフォローする場面もあったが、順当に報告し終えた。

「下水の蟲人達のことは、組合も把握しているのね」

「住民としても登録してあるとはな」

「ええ。まあ」

 受付嬢は曖昧な笑みを浮かべる。

 次に顎へ手を当てて、資料と盾鉱人たちを交互に見比べながら、眉間にシワを寄せた。

「……何か不備があったかしら」

「いえ。そういうわけでは」

 ただ、と受付嬢は口籠る。

「蟲人達のことか」

 盾鉱人は訊く。

 受付嬢が頷いた。

「本来なら下水だろうと保護……」

 そこまで言って、彼女は言葉を止めた。

 手元の資料を再度見て、難しい顔をする。

「保護、の対象なのですが」

 彼女は周囲に視線を走らせて、誰もいないことを確認する。

 カウンターから身を乗り出した。

 盾鉱人達も、顔を近づける。

「これは、内密にお願いしたいのですが」

「いや、言うな」

 鉄兜の奥から、盾鉱人の声が響く。

 彼は無造作に手を振って、受付嬢の言葉を遮った。

「え……?」

「本人達が俺らに言わなかったんだ。あんたでも、代わりに話して良い事じゃないだろう」

 盾鉱人は、机の上に置いた尻尾を手に取って、魔術師に差し出す。

 眉をしかめて、魔術師はカウンターから、牙を取った。

「私たちは依頼を受けて、巨大鼠を倒して、変異種が出たから「たまたま」近くにいた協力者と一緒に倒した。それだけでしょ」

 尻尾の乗った手を盾鉱人に押し返しながら、受付嬢に笑いかける。

「割りの良い仕事だった」

「そうね」

 ペンダントも手に入ったし、と魔術師は素材を雑嚢に詰める。

 盾鉱人も尻尾を雑に、背嚢に詰めた。

「……そうですね。ありがとうございます」

 受付嬢は二人の対応に、一瞬目を見開くと、すぐに静かな笑みを返した。

「出過ぎた真似でしたね」

 自然に力の入っていた肩の力を抜く。

「では、俺達はこれで」

 盾鉱人は、受付嬢に会釈すると、出口の扉へと向かう。

 後ろに魔術師が続き、自身の襟元の匂いを嗅いだ。

 首を傾げながら、盾鉱人に「浴場に行きましょう」と提案を投げかける。

「あ」

「あ、どうも」

 ちょうど、ゴブリンスレイヤーと女神官が扉をくぐり、入ってきた。

 入り口付近で、魔術師と女神官がお互いに顔を見合わせて、笑顔を浮かべる。

「依頼帰りですか?」

「ええ、ちょうど報告が終わったところ。そっちは、またゴブリン?」

「……はい」

 苦笑いを浮かべる女神官と、朗らかに話す魔術師。

 気まずげに一歩引いていた盾鉱人は、同じようなゴブリンスレイヤーを見つけ、会釈をした。

 低く、全周鎧の奥からうなり声が聞こえた。

「……魔術師どの。もう行くぞ」

 浴場が混む、と盾鉱人は声をかける。

 彼女達がこちらを向いた。

「あー、そうね」

「じゃあまた今度、ゆっくり話しましょう?」

「はい。是非」

 名残惜しそうな顔で、魔術師は離れた。

 女神官も小さく手を振替して離れる。

 背中を向けて、扉から出ていく盾鉱人達。

「……」

「どう、しました?ゴブリンスレイヤーさん」

「いや」

 立ち止まっていたゴブリンスレイヤーに話しかけると、ゆっくりと動き出す。

 歩き出す直前、「蟲の羽、か」と呟いた気がする。

 出ていった彼ら、ひいては魔術師の胸元に視線が向いていた気がして、女神官は少しだけ顔を赤らめて、眉をひそめる。

 うつむいて、彼の後に続いた。

「おかえりなさい」

 カウンターについた途端に、「お客様が来ていますよ」と笑いかける受付嬢にゴブリンスレイヤーは応える。

「ゴブリンか?」

 困ったように彼女は笑うと、彼を応接間に案内する。

 組合のカウンターの奥、白い毛皮が、居心地悪そうに居座っていた。




タグ追加のやり方、マジで分からん。
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