盾鉱人と冒険者の話(旧:ゴブリン退治に向かう新人達とドワーフの話) 作:お前の隣の後ろの斜め右
短めです。
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「お久しぶりです。お元気ですか」
商人が一歩前に出ながら、軽く会釈をした。彼の表情は穏やかだ。
前任者は盾鉱人を睨みながら、商人を一瞥する。
彼女は鼻を鳴らした。
「貴方は、相変わらずね」
口調は皮肉気だが、顔は笑っていない。
「そうですか?」
「……そういうところとかね」
商人は笑顔を崩さない。
彼女が小さく舌打ちした。
「抜け目ないな」
盾鉱人は呟いた。
「何ですって?」
聞こえていたようだ。
盾鉱人は首を小さく回す。
「何でもない」
「勘違い、しているようだから言うけどね」
前任者は息を吸う。
「あれ、わざとじゃなくて、素よ」
「言葉でスカしてるように見えるけどね」
「……自然にできているなら才能だ」
盾鉱人が盾帯を握り直す。
前任者は少し硬直する。
「それは、冗談のつもり?」
「いや本気だ」
「そう」
前任者は身を少し乗り出し、手を広げた。
「じゃあもう一度だけ言う」
「あれは、彼の、『素』よ」
隙だらけに見える構えだ。だが飛び込めば手痛い反撃を喰らうだろう。
「私を混乱させる気なんてない」
それまで感情の読めなかった彼女の顔に、初めて表情が浮かぶ。
盾鉱人は口だけ動かした。
「それを世間では才能と言うのだろう」
彼女は、頭を乱雑にかく。
ため息を吐いた。
「貴方と彼の付き合いが短いのは分かった」
気を取り直すように右手の剣を手首で回す。
彼女の目つきに鋭さが戻る。
短く息を吐き直した。
「お喋りはおしまい。彼を置いて去りなさい。見逃してあげる」
前任者は顎で商人を指した。
盾鉱人は深く腰を据える。
「前金で貰っている。引けない」
彼の後ろで、魔術師がスリングを構える音がした。
前任者は薄く笑う。
「良い冒険者ね。でもそれが命取りよ」
言うが早いか、彼女は盾鉱人に駆け出した。
もうすぐ日が沈みそうだった。
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前任者が右手の剣で突きを放つ。
盾で軌道を逸らしながら、盾鉱人は棍棒を振り上げる。
しかし振り下ろす前に、前任者は無理やり体当たりをしてきた。
盾で衝撃を受け止める。間合いが空く。
すかさず魔術師が石弾を放つ。
前任者の口が僅かに弧を描いた。
「良い判断」
盾鉱人に駆け出しながら、彼女は石弾を最小限の動きで避ける。
盾鉱人は手投げ斧を投げつけた。
速度を落とす事なく、彼女は左手の鉤で弾く。
地面に斧が刺さる前に、盾鉱人の間合いに踏み込んできた。
咄嗟に盾を構える。彼女は鉤を盾に振り下ろした。
がきり、と鉤の先端が盾の縁を回り、裏側に食い込んだ。
盾が、動かない。
盾鉱人は目を見開いた。
(『盾剥がし』だと⁉︎……商人が言ってたのはこれか‼︎)
背中が総毛立つのを押し殺しながら、盾鉱人は自分の言葉を思い出す。
「自身の身体操作と、腕力、あとは盾の角度だ」
「要するに、剥がされないように空かすってことだ」
(鉤に力を掛けさせなければ良い)
鉤にかけられた力と同じ方向に、盾を動かす。
それから力が抜けたと同時に盾を引く。
敵に引っかからないように盾を傾けながら、最後に転ばせる。
何度も練習した、けれど当の『師匠』からは「使うな」と言われた動き。
(だが、できる。できるはずだ)
こんな状況でも、『師匠』なら不敵に笑ってみせるだろう。
相手の鉤を見つめる。
呼吸を、読む。
しかし僅かに強張った盾鉱人を、前任者は見逃さなかった。
「見過ぎ」
言葉に顔をあげれば、獰猛に笑いながら顔に目掛けて、突きを放ってきた。
慌てて頭を傾けてかわす。
視線が鉤から外れる。
(まずいーー)
「獲った」
彼女の声が盾鉱人の鼓膜に響く。
思い切り、身体が引っ張られる。
盾を手放そうとして、手が動かなかった。
(クソ)
咄嗟に身体に力を入れる。次ぐ剣戟に備えた。
けれど、攻撃は続かなかった。
「お忘れですか」
商人の声が聞こえた。
彼が剣を振り下ろす。
商人は、盾鉱人と前任者の攻防中に、静かに距離を詰めていた。
気付かれなかったのは、彼の経験と少しの幸運のおかげだ。
前任者は僅かに振り向くと、素早く横に転がる。
つんのめって転ぶ盾鉱人を、商人は避ける。
体勢を立て直して追撃しようとする彼女へ、商人は攻撃を加える。
「変わらないわね。やっぱり」
鉤で捌きながら忌々しげに呟いて、彼女は飛び退く。
着地の瞬間に魔術師が石弾を撃つ。
もう一度、前任者は大きく飛び退いた。
「助かった」
魔術師と商人が、盾鉱人の前に出る。
魔術師が差し出してきた手を断りながら、盾鉱人は盾を構える。
商人が目だけでこちらを確認した。
「貴女は後ろから援護を。今度は二人で仕掛けます」
「いや」
語尾が強くなった。彼と魔術師がこちらを向いた。
「意地を張っている場合で無いのは、その身で体験したのでは?」
「分かっている。だが同じ轍は踏まん」
「信頼度が低い。二人で行きます」
「……喧嘩しないで」
魔術師が鋭い目つきで二人を睨めば、一度言葉が途切れた。
しかし盾鉱人はもう一度口を開く。
「次は上手くやる。俺に任せてくれ」
「目の前で失敗しておいて何を」
「喧嘩するなってば‼︎」
言葉を続けようと口を開いた商人は、不自然に動きを止めた。
顔を見ると、僅かに笑っている。
「どうした」
「いえ。少し昔を思い出しました」
商人は笑みを隠して、小さく息を吐いた。
下を向いて、目を瞑る。
少し俯いたあと、顔を上げて、正面を見た。
「わかりました。任せます」
「……助かる」
「お礼は結構です。実力で答えてください」
「承知した」
盾鉱人が二人の前に出る。盾を構えた。
前任者は、懐かしむような、苦々しいような、微妙な瞳でこちらを眺めている。
「本当に、やり辛い」
彼女のつぶやきは、誰にも拾われなかった。
商人だけが、彼女を見つめていた。
「俺の武器では、あまり有効打にならん。どうする」
盾鉱人は盾で口元を隠しながら、後ろに問いかけた。
「また後ろに回るか」
「彼女は熟達した戦士です。一度使用した戦術は通用しない」
「遠距離はどう?」
「弓はありますが、心得がなくて」
「只人用の弓は、俺には合わんな」
「私の石だと避けられるし、あの調子だと魔術も当たるかどうか」
「ならどうする」
盾鉱人はうなる。
魔術師が身じろぎをした。
「一応、策はあるの」
盾鉱人と商人が彼女に反応する。
「具体的には?」
魔術師が口を開く。
その様子を、前任者は眺めている。
頭を乱雑にかいた後、彼女は首を回した。
ため息を吐いた後、前任者は盾鉱人たちに向けて、歩みを進める。
「策があるなら策ごと突破する。難しいことは苦手なのよ」
誰に聞かせるでもなく、彼女は口の中でつぶやいた。
しなやかで静かな姿だった。
彼女と盾鉱人達を見比べると、馬が小さく、いなないた。
書けてるんだが書けてないんだか分からない文章になってます。
直すより出せの精神で、文が納得できなくても出しているので、きちんと伝わってるか不安です。