Z戦士の虎杖悠仁 作:汚ねえ花火
〈三人称視点〉
月明かりが照らす夜、とある森の獣道を3人の少年が歩いていた。
「ねぇー、やっぱり止めようよ、ここ立ち入り禁止でしょ?」
そうオドオドした様子でそう言うひ弱な少年に、
「大丈夫だって!何せこっちには悠仁がいるんだからな!どんな化け物が出たって問題ないって!」
ガキ大将のような少年が元気に答える。
「俺もやめといた方がいいと思うけどなー」
悠仁と呼ばれた少年もあまり気乗りしていない様子だ。
悠仁もとい、虎杖悠仁。
超人的な身体能力を持つ現在11歳の少年である。
ガキ大将のような少年に誘われる形で現在はとある森に肝試しに来ている。
「おっ、なんかあんじゃん!」
ガキ大将はそう言うと足早に走る。
その先には、1つの祠があった。
「なんだこりゃ」
そう言うとともに、祠に貼られたお札を剥がし、中を物色し始める。
「流石にそれはやめた方がいいんじゃ……」
悠仁の忠告は、最後まで続かなかった。
それを見てしまったから。
ガキ大将の後ろに立つ、悍ましい化け物を。
「逃げろ!!!!!」
悠仁のその叫びを聞いたガキ大将は、後ろを振り向いた。
振り向いてしまった。
「ヒユッ………」
あまりの恐ろしさによる気絶。
ガキ大将はパタリと倒れた。
化け物は、ゲタゲタと笑いながら、ガキ大将が祠から取り出した何かへと近づき、口を大きく開いた。
手に握られた何かをガキ大将ごと喰らおうとしているのは明白であった。
「な……何が……」
ひ弱な少年が震えた声を上げる中、悠仁は走り出していた。
化け物が狙っているのはガキ大将が手に持った何か。
つまり、それをガキ大将から離せばと
勢いよく駆け抜け、ガキ大将の手の内にある何か……月明かりに照らされた悍ましき指を手に取り、走り出す。
「俺がこいつを引き付ける!逃げて大人を呼んでくれ!!!」
ひ弱な少年にそう叫び、反対方向へと走り出した。
後から考えれば、この指が狙いならこの指を遠くへと投げ捨ててしまえば良かったのだろう。
けれど、恐怖によって正常な判断能力を失った悠仁は、持って走ることを選んだ。
狙い通り、化け物はガキ大将をそのままに、悠仁へと向かって来た。
走るとはいっても、そこは森の中。
悠仁にとって走りやすい場所ではない。
木々を避けながら、走る場所を見極めなければすぐにつまずき、転んでしまう。
対して、化け物は違った。
木を透過し、なんの影響も受けずに悠仁へと接近する。
その差が距離を縮め、悠仁はついに追い詰められた。
「ハァ……ハァ……もう、走れねえ……」
巨大な口が近づいてくる。
恐怖より先に悠仁が思ったのは、2人の安否。
逃げられただろうか?
次いで思うのは祖父のこと。
たった1人の家族を置いて逝ってしまうことへの罪悪感。
「ごめん……じいちゃん……」
熱が近づく。
化け物の口内の熱が、触れる……その直前。
悠仁の背後の空間がひび割れた。
次元の光が暗がりを照らした。
その光に悠仁は飲み込まれた。
◆
「ハァ……ハァ……やるなぁ…ベジータぁ」
「貴様……もな」
向かい合い、肩で息をする2人の戦士がいた。
「まったく、ただの組み手だと言うのに、次元を破壊して……」
そんな2人の前に不思議な髪型で水色の肌の者が現れる。
「直すのも大変なんですよ」
その人物は、杖をコンコンと地面に当てる。
すると、たちまち次元の裂け目が閉ざされた。
「別の世界まで広がってましたよこの次元の裂け目」
「すまねぇウィスさん」
2人の戦士による組み手の余波で発生した次元の裂け目。
それは今閉ざされた。
◆
浮遊感。
悠仁が感じたのはそれだった。
自分がどこにいるのかさえ分からない。
悠仁は知らない。
本来の出口も、自身が飲み込まれた入口も、そのどちらもが閉ざされてしまっていることに。
浮遊感に次いで悠仁を襲ったのは、引っ張られるような、押し出されるような感覚であった。
次元の狭間が、元来存在しないはずの異物を排出しようとしていた。
その力に逆らえず、悠仁は、とある世界のとある時間軸に押し出された。
ふと、悠仁は目を開けた。
浮遊感、そして押し出されるような力の次に感じたのは地面のような感触。
地に足がつくと言うのは、人にとって存外安心感を与えるものだ。
謎の浮遊感を感じていた時は訳も分からず目を閉じてしまっていたが、今は目を開けてもいいと思えた。
化け物の気配もそこには無かった。
もう大丈夫だと、そう思った悠仁は、ふと思う。
(ここ……どこだ?)
明らかに植生が違う。
今まで悠仁がいた森よりもさらに深い。
そう分かってしまうほどに、森が険しかった。
木々は絡み合い、不気味な獣のものらしき鳴き声がした。
パァンと音を立て、両頬を叩き、悠仁は立ち上がる。
「クヨクヨしてたって仕方ねえ!」
そう言い、歩き出した。
「何これ何これ何これー!!!!!」
悠仁は逃げていた。
巨大な恐竜から。
(おかしい!おかしい!おかしい!恐竜って絶滅したんじゃないの!?)
まだ11歳の悠仁でも知っている。
恐竜はとっくの昔に絶滅したはずだ。
恐竜の目の届かない場所まで走り、巨大な木の陰に隠れて息を潜めた。
恐竜がその場を去るのを待ち、やっと息を落ち着けた。
「どこだよ……ここ……」
不安感が押し寄せる。
当然だ。
何せ悠仁はまだ11歳なのだから。
涙が頬を伝い、大粒の雫となって流れ落ちる。
泣き続け、泣き疲れ、気付けば悠仁は眠っていた。
目が覚めたのは、空腹からだった。
時間にして、もう35時間、悠仁は何も食べていなかった。
空腹は、正常な判断能力を失わせる。
故に悠仁は、それを口に含んだ。
祠の指を口に含み、飲み込んだ。
空腹の中、少量のものを食べた場合、空腹感はさらに増大する。
その空腹感から、悠仁は気絶した。
悠仁の体に刺青のような模様が浮かび上がった。
「クハッ!久方ぶりの空気!!!受肉の
悠仁の口で喋るそれは、体を見回し、辺りの状態を見てあらかたの状況を理解した。
「なるほどなるほど、この餓鬼は遭難したのか。そして、空腹故に俺の指を喰らったといったところか……空腹……空腹か」
「体を貰うのだ。満足ゆくまで腹を満たしてやろう」
そう言うとともに、それ……両面宿儺は歩み出した。
両面宿儺の受肉後初めての生物との邂逅。
その相手は、奇しくも先ほど悠仁が逃げていた恐竜であった。
「まずは貴様で腹を満たそう」
獰猛な笑みを浮かべ、いざ開戦……とはならなかった。
橙色の道着を着た青年が恐竜を殴り倒したのだ。
「大丈夫か?」
ツンツンとした黒髪のその青年は両面宿儺にそう問いかけ、
「もしかして、余計なことしたか?」
そう尋ねた。
「いや、何。問題ない。獲物が貴様に変わっただけのことよ!!!」
強烈な蹴りが、青年に向かって放たれる。
その蹴りを青年はなんの苦もなく避けた。
次いで、両面宿儺は拳を繰り出すが、それも避けられる。
「避けるのは分かっていた!『解』!!!」
避けた先に斬撃を飛ばす。
しかし、その斬撃は青年の薄皮一枚を切り裂くに留まった。
「クハッ!やはり相当な術師か!!!」
「ん?なんだ術師って」
「しらばっくれるな!!!!!」
「オラ、術師ってのじゃなくて武道家だぞ?」
「俺の『解』で薄皮一枚しか切れない者が、知らぬものか!!!!!」
「本当に知らないんだけどなあ」
「そうか…あくまでしらばっくれるのなら仕方ない。もう終わらせるとしよう」
両面宿儺は攻撃の手を止め、掌印を結ぶ。
それは、閻魔天印。
「領域展開………『伏魔御厨子』」
呪術の真奥が解き放たれる。
景色が移り変わり、地獄としか表現しようもない暗黒の空間が広がり、ありとあらゆる全てを切り裂く斬撃の雨が青年に降り注ぐ。
「なんか分かんねえけど、ヤバそうだな……カァッ!!!!!!!!」
青年の大声と共に空気が揺れた。
衝撃波が斬撃の雨を打ち消し、領域そのものさえ消し去った。
領域が解けた時、そこには無傷の青年がいた。
「これで術師を知らぬだと?馬鹿を言うな」
両面宿儺が忌々しそうにそう呟く。
両者が向かい合い、空気が張り詰め……ることはなく、腹の音が鳴った。
それは、両面宿儺の腹からか、それとも青年の腹からか……まあ、つまるところ空腹音によってその戦いは幕を下ろした。
「オラ腹減っちまったや。お前も来るか?今頃チチが美味い飯作ってっからよ」
「腹が減っては全力も出せぬ。良かろう。着いて行ってやる」
「へへっ、そうかなくっちゃ!そういえば、自己紹介がまだだったな。オラ、孫悟空だ。よろしくな」
「………両面宿儺だ」
この出会いは、いずれ大きな渦となり、世界の流れを変える。
それをまだ、誰も知らない。
続きは…書きたいとは思ってます!!!